資金ショートが起こる原因とは?未然に防ぐ対策などをわかりやすく解説
更新日:2025年02月12日

資金ショートとは、資金繰りが厳しく経営の継続が難しい状況をいいます。資金がショートすると各種支払いがストップし事業の継続が不可能になるため、早急な対応が必要です。この記事では、資金ショートの概要および原因と対処法、資金がショートしたときの相談先を解説します。会社の資金繰りに不安がある方や安定した経営を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
資金ショートとは何か?
資金ショートとは、手元の資金が不足し企業活動の継続に必要な支払いができないことです。具体的には、資金不足により給与の支払いや借入金の返済、仕入れ代金、経費などの支払いができない状況をいいます。
資金ショートは、会社の売上が悪いときにだけ起こるわけではありません。仮に十分な売上があったとしても、支払いのタイミングで資金が手元になければ、企業の存続は難しくなります。
資金ショートと似た言葉に、赤字と債務超過があります。ここでは、それぞれの概要と違いを確認しましょう。
資金ショートと赤字の違い
資金ショートとよく似た言葉に、赤字があります。それぞれの概要は以下のとおりです。
- 資金ショート:手持ちの資金が不足している状態
- 赤字:売上がマイナスの状態
赤字とは、支出よりも利益が少なく儲かっていない状況です。たとえば代金50万円、必要経費20万円で仕入れた商品から60万円の売上しか得られなかった場合、10万円((50万円+20万円)-60万円)の赤字となります。
赤字だからといって、すぐに経営困難になるわけではありません。手元に資金がある場合は、事業戦略の立て直しにより赤字の改善を目指せるでしょう。言い換えれば、黒字であっても資金ショートを引き起こして支払ができなくなれば倒産してしまいます。これを黒字倒産と呼びます。
一方の資金ショートは、各種支払いの滞りにより事業活動ができなくなる可能性が高いです。資金ショートは、赤字以上に迅速な対応を求められる状況といえます。
資金ショートと債務超過の違い
資金ショートと似たもう1つの言葉に、債務超過があります。債務超過の概要は、以下のとおりです。債務超過とは、貸借対照表の負債が資産を超えている状態を意味しています。
つまり、債務超過は返済が必要な借金額が、預貯金や不動産といった資産をすべて合わせた資産額を上回っている状態です。ただし、債務超過だからといって、すぐに会社の存続が難しくなるわけではありません。
返済計画の見直しや資金調達をすれば、経営を続けられる可能性はあります。資金不足により支払いの滞りが発生している資金ショートのほうが、会社にとって切迫した状況と考えられます。
資金繰りがショートする原因
資金ショートは赤字や債務超過と比較しても、会社にとって緊急度が高い事態です。そのためできるのであれば、資金ショートを起こさないことが一番です。
資金ショートを起こさないためには、資金繰りが悪化する原因を知っておく必要があります。ここでは、資金繰りを悪化させる4つの要因を解説します。
資金繰り・資産管理の不足
資金繰りや資産の管理が不足していると、資金ショートを起こしやすくなります。資金ショートを起こさないためには、日ごろから支払いと入金のサイクルをしっかりと把握しておくことが重要です。
支払いは、従業員の給与や商品の仕入れ代金など頻繁に発生するものから、固定資産税や法人税など年に1回必要なものなどさまざまです。支払い時に慌てなくてすむよう、スケジュール管理をするとともに、資金を計画的に準備してください。特に税金の納付は頻度が少なく、金額が大きくなることも多いため忘れずに用意しましょう。
売上の減少による収入減
売上が減少すると、当然のことながら手元に入ってくるお金が減るため、資金繰りは苦しくなります。特に急激な収入の減少は予定していた支払資金が用意できなくなるため、対応が間に合わず資金ショートに陥る可能性が高くなるでしょう。
急激な売上減少につながるケースとしては、以下があげられます。
- 商品の評判が急落した
- 競合他社が大きく売上を伸ばした
- 不正や不祥事が発覚した
- 取引先が倒産した
- 自然災害の発生
これらの事態の発生を予見することは、不可能です。資金ショートを防ぐには、不測の事態に備えてある程度の資金を用意しておくことが肝心です。
売上金・売掛金の回収トラブル
取引先の業績悪化や倒産によって売掛金が回収できなくなると、予定していた収入が得られず資金がショートする要因となります。売掛金とはモノやサービスの代金を、後払いで回収する権利です。
商品と引き換えに代金を受け取る場合は、売掛金は発生しません。一方、建設業やサービス業、卸売業、製造業などでは、売掛金の発生が多くあります。
売掛金の相手方である企業が、売掛金の支払い前に経営悪化や倒産してしまうと、予定していた売掛金を回収できない事態になりかねません。そうなると、取引先企業と共倒れで倒産する連鎖倒産になる可能性もあります。
売掛金の回収不能による連鎖倒産を防ぐには取引先を分散させたり、売掛元が被る貸倒損失を補填できる売掛保証サービスを利用したりしましょう。
災害やトラブルなど不測の事態による多額の出費
災害やトラブルなど不測の事態が発生すると、売上が減少するだけでなく修繕費といった多額の出費が発生するケースもあります。
売上が減少したうえに出費が増えると当然に資金繰りは厳しくなり、資金ショートの可能性が高くなります。不測の事態が発生したときに慌てず対処するには、余剰資金をしっかりと用意したり、資金調達の方法を複数用意したりすることが重要です。
資金ショートが発生しそうなときの対処法
資金繰りが立ち行かないときは、資金ショートにより会社の継続が困難になる前に迅速な対応をとりましょう。資金ショートを回避するための対処法には、以下があげられます。
- 現在の資金状況や入出金予定を確認する
- 支払い・出金日の延期を相談する
- 融資を受けて資金調達する
- 資産の売却で資金調達する
- 手形割引を利用して資金化する
- ファクタリングを利用して売掛金を現金化する
会社を存続させるためには、いかに手元に資金を集められるかがポイントになります。本項の内容を参考に、資金作りに取り組んでください。
現在の資金状況や入出金予定を確認する
資金繰りが厳しいかもしれないと感じたら、まずは現在の資金状況や入出金予定を確認しましょう。収支予定を明確にしておかないと、支出の把握し忘れが発生し資金がショートする可能性があります。
今後の収支を確認し整理するにあたっては、資金の動きを月ごとにまとめましょう。ただし、資金ショートが差し迫っているときは、日単位で入出金を押さえておく必要があります。
支払い・出金日の延期を相談する
資金繰りが難しいと判断したときには、支払いや出金日の延期もしくは分割での支払いを取引先と相談しましょう。相談するにあたっては、支払う意思があることを伝えるだけでなく、支払計画書などを作成し具体的な支払い日時や金額を提示することが肝心です。
なお支払日の延期の申し出は、相手方との信頼関係を損なう可能性があります。やむを得ず相談をする場合も、誠実な姿勢で望むことが何よりも大切です。
融資を受けて資金調達する
支払日が近いにもかかわらず手元に資金が用意できないときは、融資を受けるのも1つの方法です。ただし融資を受けるには、金融機関が実施する審査に通る必要があります。
審査を受けるにあたっては、経営状況や業績の見通し、返済計画などを明確にしておきましょう。返済能力を明示できれば、審査の通過と融資の獲得を実現できます。
中小企業や法人が融資を受けられる主な借入先には、以下があります。
日本政策金融公庫 | 銀行 | ビジネスローン | |
特徴 | 政府系金融機関。主に小規模事業者へ融資をする | プロパー融資と信用保証協会による保証付き融資がある 中小企業は保証付き融資を利用することが多い |
事業資金向けカードローン |
メリット | 中小企業の融資に強い | 保証が付いているため、中小企業でも審査に通りやすい | 融資までの時間が短い 無担保・無保証でも審査に通る可能性がある |
デメリット | 融資が希望額に満たないこともある | 借り入れまでに時間がかかる | 金利が高い |
どの借入先を選ぶかによって審査の厳しさや金利の高さ、融資までの所要日数に違いがあります。必要な資金額や、支払い日までの猶予を確認し、自社に合った借入先を選びましょう。
資産の売却で資金調達する
使用していない資産があるときには、資産の売却による資金調達も選択肢です。資産を売却すれば手元に資金を用意できるだけでなく、コストの軽減にもつながるでしょう。
たとえば、土地や建物などの不動産は、保有しているだけで管理費や固定資産税のランニングコストがかかります。事業で稼働している資産であれば、それらのコストは必要経費と考えられるでしょう。一方、遊休資産の場合には不要なコストを払い続けていることになります。
不要な資産を保有している場合は、ぜひ資産の見直しと整理をしてください。
手形割引を利用して資金化する
現金化前の手形を保有しているときには、手形割引も検討しましょう。手形とは、受取から一定期間後に現金化できる証書で、手形に記載されている支払日以降に金融機関で手続きをすると額面金額を受け取れる仕組みです。
手形割引とは、支払日到来前の手形を銀行や手形割引事業者を通して現金化することをいいます。今すぐに現金が手元に必要な場合には、手形割引は有力な選択肢となるでしょう。
なお手形割引を利用すると、当初の支払期日までの利息相当分や手数料の支払いが発生することは覚えておいてください。
ファクタリングを利用して売掛金を現金化する
未回収の売掛金があるときには、ファクタリングの利用も選択肢です。ファクタリングとは、売掛債権を利用して資金調達をする方法です。売掛金をファクタリング会社に売却することで、額面金額から手数料を引いた金額を受け取れます。
ファクタリングでは、売掛金の相手方の経営状態が重視されます。そのため自社の資金繰りが悪化していても、比較的資金調達がしやすい方法といえるでしょう。ファクタリングには、主に以下の2種類があります。
2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | |
契約に関わる人 |
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概要 |
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メリット |
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売掛金未回収のリスクが減るため、手数料は低め |
デメリット | 手数料が高め |
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手数料が少なくより多くの資金を得られるのは3社間ファクタリングですが、契約に手間がかかるため現金を受け取るまでに時間がかかります。一方2社間ファクタリングは手数料は高めですが、手続きが簡単で現金を得るまでの時間が比較的短いです。
それぞれの特徴をしっかりと確認し、自社の資金状況に合った方法を選ぶことが肝心です。
参考)ファクタリングとは
資金ショートを未然に防ぐための対策
資金ショートを起こすと、さまざまな方法で資金を調達しなければなりません。場合によっては取引先からの信用が低下する可能性もあるため、できるだけ資金ショートを防ぐことがポイントです。
ここでは、資金ショートを未然に防ぐための5つの対策を確認しましょう。
資金繰り表の作成でキャッシュフローを把握する
資金ショートを防ぐには、先述の通り収入と支出の把握が重要です。不測の事態を要因とする場合を除き、資金ショートは突然発生するわけではありません。資金ショートを防ぐには、半年先までの収支を把握し計画的に資金を用意する必要があります。
半年先までの資金計画を立てるには、まずは資金繰り表を作成しキャッシュフローを管理しましょう。資金繰り表に記載するべき事項には、以下があります。
- 前月から繰り越された現金額
- 今月期待できる現金収入額
- 今月予定される現金支出額
- 翌月に繰り越す現金額
資金繰り表を作成したら、前月から繰り越された現金額と今月期待できる現金収入額を合わせて、今月予定される現金支出額を賄えるかを確認します。その後、翌月に繰り越す現金額を確定し、翌月以降に予定されている支払いに足りるかを精査しましょう。
来月以降に予定されている支払いに対して資金が不足しそうであれば、早めに資金調達や事業戦略の見直しをすることで、資金ショートを防げるケースもあります。
必要以上に在庫を持たないようにする
資金ショートを防ぐには、必要以上に在庫を持たないこともポイントです。在庫が過剰になると、以下の問題が起きる可能性があります。
- 保管費がかかる
- 商品が劣化する
在庫が多いと、保管する場所代や管理する従業員の人件費がかかります。在庫が多すぎるときには、余計なコストがかかっている可能性があることは押さえておきましょう。
また在庫過多になり保管期間が長くなると、品質が劣化し商品として販売できなくなるかもしれません。在庫が溜まっているときには少しでも資金を回収できるよう、早めに販促キャンペーンなどを展開しましょう。
請求漏れや未入金の有無を確認し対処する
売掛金が発生したときには、請求漏れや未入金がないようしっかりと確認し適切に対処することが重要です。売掛金がどの程度発生するかは業種や会社の規模などによって異なりますが、頻繁に売掛金が発生する会社であれば請求漏れが発生する可能性が高くなるため、より注意が必要です。
請求漏れがあると、本来受け取れるはずの収入が減り資金繰りが悪化するかもしれません。資金状況を良好に保つには、掛先ごとの売上帳を作成し未請求、請求済、回収済を定期的にチェックしましょう。
事業に使っていない資産がないか見直す
資金状況を改善させるには、資産の見直しも有効です。稼働していない遊休資産や稼働率が悪い資産がある場合には、売却も検討しましょう。見直しをするべき資産の一例には、以下があげられます。
- 土地
- 建物
- 工場
- 機械設備
- ソフトウェア
これらの資産は、保有しているだけで管理費や固定資産税がかかります。今後も使う予定がない資産があるのであれば、売却し整理することでコストの削減につながります。
ランニングコストを見直す
会社を経営するにあたっては、前項で解説した管理費や固定資産税の他にもさまざまなコストがかかります。健全な資金状態を保つには、コストを削減して支出を減らすことも重要です。
事業活動をするうえで必要なおもなコストには、以下があります。
- 家賃
- 通信費・水道光熱費
- 人件費
- 交通費
- 仕入代
- 税金
- 保険料
通信費や水道光熱費、保険料はプランの変更によって代金を下げられる可能性があるでしょう。テレワークを導入すれば、交通費の削減を図れます。仕入代を下げるには、仕入先を変えたり、大量購入による単価の値下げを交渉したりしてみてください。
資金ショートに関しての相談先
資金ショートしそうだと感じたら、何よりも早急に対処することが重要です。ここでは、資金ショートに詳しい以下の3つの相談先を解説します。
公的機関 | 士業専門家 | ファクタリング会社 | |
相談できること |
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メリット | 民間よりも低金利で融資が受けられる | 税金や法律、経営など専門分野の詳しいアドバイスを受けられる | ファクタリングを利用した資金調達方法を詳しく相談できる |
デメリット | 融資を受けるには審査に通過する必要がある | 専門分野が決まっているため、包括的な相談は難しいことがある | ファクタリング以外の調達方法は相談が難しいことがある |
公的機関(日本政策金融公庫など)
相談先の1つめは、公的機関です。具体例としては、以下があげられます。
- 日本政策金融公庫
- 一般社団法人 全国信用保証協会連合会
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
- 都道府県等中小企業支援センター
- 全国商工会連合会
公的機関では幅広い経営相談はもちろん、融資制度の紹介や特別貸付も受けられます。公的機関のため全国に支店があり、誰でも相談しやすい点も特徴です。
民間の機関と比較して低金利で融資を受けられるケースが多いですが、そのためには審査を通らなければなりません。借入を希望する方はしっかりと準備をして相談に行くことが重要です。
士業専門家(税理士・行政書士・中小企業診断士)
相談先の2つめは、税理士や行政書士、中小企業診断士といった士業専門家です。それぞれの専門分野によって、相談できる内容は以下のように異なります。
- 税理士:決算書をもとにした事業計画の見直し
- 行政書士:公的書類の作成
- 中小企業診断士:経営課題のアドバイス・資金繰り改善の支援
士業専門家は、それぞれが得意とする専門分野があります。税金や決算書について知りたい、書類作成を手伝って欲しいなど、相談したい範囲が限られているのであれば、士業専門家が選択肢となるでしょう。
ただし、専門以外の内容は相談に答えられないケースもあります。士業専門家に相談する場合は、そのほかの相談先と併用するとよいでしょう。
ファクタリング会社
相談先の3つめは、ファクタリング会社です。ファクタリング会社はファクタリングによる資金調達を専門に行っているだけでなく、経営コンサルティングといった包括的なサポートを提供している場合もあります。
支払日到来前の売掛金を保有しており、取り急ぎ現金を用意したいと考えているのであれば、ファクタリング会社に相談してください。
資金ショートについてまとめ
資金ショートとは、手元の資金が不足し各種支払いができない状況です。売上がマイナスの状態である赤字や、負債が資産を超えている債務超過と比較して、会社存続のための緊急対応が必要とされます。
資金ショートを起こさないためには、日ごろから資金繰り表を作成したり資産や在庫の見直しをしたりすることが重要です。それでも資金繰りが難しくなったときには、自社に合った方法で資金調達をしましょう。支払いの延期を相談することもできますが、取引先からの信頼が低下する可能性もあるため注意が必要です。
資金ショートを起こしたら、できるだけ速やかな対応が必要です。自社だけでは対処が難しい、今後の経営が不安だと感じる方は公的機関や士業専門家、ファクタリング会社といった専門家に相談しましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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