売掛債権担保融資とは?メリット、注意点について解説

更新日:2024年06月27日

売掛債権担保融資とは

売掛債権担保融資とは、売掛金を担保にすることにより融資を受ける手段を指します。資金調達しやすい点や、資金繰りを改善できる点が主なメリットです。本記事では、売掛債権担保融資とファクタリングの違いや、利用する際の注意点についても解説します。

目次

売掛債権担保融資とは?

売掛債権担保融資とは、ビジネスで融資を受ける際に、売掛債権を担保として差し出すことです。ファイナンスの中ではデットファイナンスに分類されます。

売掛債権とは、商品・サービスを顧客に販売したり提供したりするも、まだ受け取っていない代金を請求できる権利(資産)のことです。売掛債権の具体例として、売掛金・受取手形電子記録債権などが挙げられます。

ここから、売掛債権担保融資の流れや活用する場面、ファクタリングとの違いについて確認していきましょう。

売掛債権担保融資の流れ

売掛債権担保融資は申込人(借入する人・会社)、売掛先、融資元の三者間で成り立っています。売掛債権担保融資の一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. 申込人が商品販売・サービス提供(売掛債権の発生)
  2. 売掛債権の情報や決算書などを提供して、融資元に融資申し込み
  3. 融資元が売掛先の調査
  4. 融資元が審査を承認
  5. 申込人と融資元で契約を締結
  6. 融資の実行
  7. 債権譲渡登記(債権の登記が必要な場合)
  8. 売掛金による代金支払・申込人による返済

債権譲渡登記とは、法人が有する金銭債権の譲渡や質権の設定について、第三者に対抗要件を備えるための制度です。債権譲渡には、司法書士への報酬(依頼する場合)や登録免許税がかかります。

なお、債権譲渡登記した内容は誰でも確認できるため、売掛先に売掛債権担保融資を申し込んでいることが知られる可能性がある点に注意しましょう。

売掛債権担保融資を活用する場面

土地・建物を所有していない、不動産を所有しているが別の融資ですでに抵当権が設定されているなど、不動産担保融資を利用できない場面で、売掛債権担保融資を活用することがあります。また、債務超過や赤字決算などで銀行からの借入金が難しい場合も、売掛債権担保融資を検討する場面のひとつです。

さらに、創業したばかりで信用力が足りない、事業が急成長していて取引銀行の融資枠だけでは仕入れ資金が足りないなどの場面でも、売掛債権担保融資を検討することがあります。

売掛債権担保融資とファクタリングの違い

売掛債権担保融資と同じく、売掛債権を活用して資金を調達する方法のひとつが、ファクタリングです。ただし、売掛債権担保融資とファクタリングは、「負債」として計上されるかという点で異なります。

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング事業者に売却することにより、資金を調達する手法です。売掛債権担保融資は「融資」のため資金調達時に負債が増えるのに対し、ファクタリングは利用しても負債は増えません。

売掛債権担保融資はABLのひとつ

売掛債権担保融資はABLのひとつです。ここでは、ABLの概要や売掛債権担保融資以外でABLに該当する手法を紹介します。

ABLとは

ABL(Asset Based Lending)とは、申込人の流動資産を担保として差し入れて、資金を調達する方法です。銀行などの貸し手は、差し入れられた担保の価値を見極めた上で、融資の可否や融資金額を判断します。

企業が所有するさまざまなものが担保の対象となりうる点、企業の事業価値が注目される点、貸し手へ資産に関する状況を随時報告する点などが、ABLの特徴です。

参考)経済産業省「ABLのご案内 在庫や売掛金を活用した新たな資金調達の方法」

動産担保融資もABLに分類

売掛債権担保融資だけでなく、動産担保融資もABLのひとつとして分類されます。動産担保融資とは仕入れによる商品在庫や製造業の製品在庫、原材料、自動車、機械・器具などを担保として差し入れる融資のことです。動産担保融資の流れは、基本的に売掛債権担保融資と変わりありません。

なお、金融機関によって動産担保融資の中に売掛債権担保融資を含めたり、ABLを「動産・債権担保融資」と表現したりする場合があります。

売掛債権担保融資のメリット

売掛債権担保融資のメリットは、主に以下のとおりです。

  • 資金調達しやすい
  • 資金繰りを改善できる

各メリットを解説します。

資金調達しやすい

比較的に資金調達しやすい点が、売掛債権担保融資のメリットです。不動産を所有していない、所有する不動産にすでに抵当権が設定されている、などの理由で不動産担保融資を利用できない場合でも、売掛債権担保融資で資金調達できる可能性があります。

また、すでに銀行から借入している融資に対してリスケ(返済日の繰り延べや返済スケジュールの変更など)を受けている場合、仕入れ資金が必要でも新たな借入は難しいでしょう。その点、売掛債権担保融資であれば、リスケ中でも必要資金を調達できることがあります。

資金繰りを改善できる

資金繰りが厳しい状況を改善できる点も、売掛債権担保融資のメリットです。

売掛債権を回収できるまでの期間は、業種や取引相手との関係によって異なります。たとえ自社の目標売上金額を達成していても、売掛債権を回収するまでに数か月かかる場合、運転資金が足りなくなり、最悪の場合は黒字倒産してしまうこともあるでしょう。

そこで、売掛債権担保融資を利用して必要な資金を借り入れれば、売掛債権を回収するまでの資金繰りに対する不安を解消できます。とくに事業が急成長しているときに、売掛債権担保融資が役に立つことがあるでしょう。

売掛債権担保融資の注意点

売掛債権担保融資は「融資」のため、金融機関の審査が必要である点に注意しましょう。運転資金が必要になった際に売掛債権担保融資を頼りにしても、信用力などの観点で審査が通らなければ資金を調達できません。

また、審査が承認になる場合でも、融資可能額・利率・期間が自社の希望するものになるとは限りません。とくに、利率が高い場合一時的に資金調達はできても、長い目で見ると利息の返済に追われて資金繰りが悪化することがあります。

さらに、金融機関からすると売掛金が不良債権になると担保の価値がなくなるため、融資実行後に金融機関へ売掛先の情報などを定期的に報告しなければならない点にも注意が必要です。

売掛債権担保融資の他の主な資金調達手段

売掛債権担保融資やファクタリング以外の主な資金調達手段として、以下が挙げられます。

  • 銀行融資
  • 補助金・助成金
  • 出資

それぞれの特徴を紹介します。

銀行融資

銀行融資の種類もさまざまです。ここでは、不動産担保融資や信用保証協会による保証付融資の概要について解説します。

不動産担保融資

不動産担保融資とは、自分が所有する不動産を担保に差し入れて、融資を受けることです。法人名義や、代表者名義の土地・建物などが差し入れる担保の対象となります。

不動産担保融資では、抵当権設定の手続きが必要です。債権譲渡登記と同様に、抵当権設定登記時には司法書士報酬(依頼する場合)や登録免許税などがかかります。

信用保証協会の保証付融資

信用保証協会の「保証付融資」とは、信用保証協会を保証人とすることで銀行から融資を受ける借入方法です。万が一、返済が滞った場合は信用保証協会が代わりに金融機関へ残額を支払います。

借入側にとっては、信用保証料がかかる点が保証付融資のデメリットです。それに対し、銀行から融資を受ける際に信用保証協会の保証を付けない「プロパー融資」では、保証料が発生しません。

なお、信用保証協会の保証制度の中には、ABLを対象としたものもあります。

参考)全国信用保証協会連合会「さまざまな保証制度 流動資産担保融資保証制度(ABL保証)」

補助金・助成金

補助金や助成金は、国や地方公共団体・一部の民間団体などから支給される資金のことです。

支給されるもののため、基本的に補助金や助成金には返済の義務がありません。ただし、審査が必要な上に、業種や状況などさまざまな要件が設けられているため、利用できないことがあります。

また、金額に上限があり、支給されるまでにも時間がかかるため、他の資金調達手段もあわせて検討が必要です。

出資

出資とは、一般的に自社の株式と引き換えに資金を調達することです。

出資のメリットとして、返済の義務がないことが挙げられます。ただし、出資によって議決権比率が変動し、経営権を奪われる可能性がある点に注意が必要です。

また、近年は従来の出資と異なる、クラウドファンディングにより資金調達するケースもあります。クラウドファンディングとは、不特定多数の人がインターネットなどを通じて資金を提供することです。

クラウドファンディングのメリットとして、幅広く資金を募れる点が挙げられます。一方で、必ずしも十分な資金を調達できるとは限らない点がデメリットです。

売掛債権担保融資まとめ

売掛債権担保融資とは、ビジネスで融資を受ける際に、売掛金や受取手形などの売掛債権を担保として差し出すことです。動産担保融資と同様に、売掛債権担保融資はABLに分類されます。

売掛債権担保融資のメリットは、資金繰りを改善できる点などです。ただし、審査が必要な点や利息が発生する点に注意しましょう。

売掛債権担保融資以外にも、さまざまな資金調達手段が存在します。自社の状況にあった方法で、資金調達を検討してください。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒103-0006
東京都中央区日本橋富沢町12-8 Biz-ark日本橋6F
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加