貸借対照表(バランスシート)とは?見方や損益計算書との違いも紹介

更新日:2023年06月13日

貸借対照表

貸借対照表(バランスシート) を見れば、企業の財産状況や財務状況をある程度把握できます。また、特定時点の状態を示している点が、一定期間を示す損益計算書との違いです。本記事で、貸借対照表の読み方や、流動比率・固定比率を理解し、財務分析できるようになりましょう。

目次

貸借対照表(バランスシート) とは

貸借対照表(バランスシート)とは、決算日など特定の日の企業の財産状況・財政状態を示したものです。企業は、税務署に提出する法人税の確定申告書に、貸借対照表を添付しなければなりません。

また、会社法第440条で、「株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない」と規定しています。つまり、貸借対照表はすべての株式会社で作成しなければならない重要な書類です。

ここから、貸借対照表の構成や、損益計算書との違いを解説します。

参考:e-Gov「会社法第四百四十条」

資産・負債・純資産で構成

貸借対照表は以下のように資産の部、負債の部、純資産の部で構成されています。

貸借対照表
資産の部 負債の部
純資産の部

負債の部や純資産の部は会社が調達した資金、資産の部はその使い道を示したものです。ここから、それぞれの概要を確認していきましょう。

左側の「資産の部」

企業の資金の使い道を示す「資産の部」は、貸借対照表の左側に記載されている部分です。資産の部には、「流動資産」「固定資産」「繰延資産」があります。

参考:資産とは

流動資産とは、現金および1年以内に現金化できる資産や、通常の営業活動で生じる資産です。流動資産には、主に以下の勘定科目があります。

  • 現金
  • 普通預金・当座預金
  • 受取手形(営業取引により受け取った約束手形や為替手形)
  • 売掛金(商品販売・サービス提供後、後払いを回収する権利)
  • 短期貸付金
  • 有価証券(国債・社債のように現金化できる証券)
  • 棚卸資産(商品や製品などの在庫)

固定資産とは、1年超にわたって利用する資産や、現金や価値を生み出すまでに時間を要する資産です。固定資産には、主に以下の勘定科目があります。

  • 建物
  • 機械装置
  • 土地
  • のれん(営業権、M&Aなどで買収価格が売り手の純資産を上回った分)
  • ソフトウェア
  • 短期的な売買目的以外の有価証券

建物・機械装置・土地を「有形固定資産」、のれんやソフトウェアを「無形固定資産」、短期的な売買目的以外の有価証券を「投資その他の資産」に分類することもあります。

繰延資産とは、過去に支出した費用のうち、効果が来期以降に及ぶ資産です。「創立費」や「開業費」などの勘定科目があります。

参考:繰延資産とは

右側の「負債の部」

貸借対照表の右上に記載されている「負債の部」に記載されるのは、将来返済しなければならないものです。1年以内に支払う予定の「流動負債」と、1年超にわたって返済予定の「固定負債」があります。

流動負債の主な勘定科目は、以下のとおりです。

  • 買掛金(商品・サービス代金を将来的に支払う債務)
  • 支払手形
  • 短期借入金
  • 未払金
  • 預り金(従業員や取引先などから一時的に預かったもの)

固定負債の主な勘定科目は、以下のとおりです。

  • 長期借入金
  • 社債

なお、借入が短期借入金にあたるか、長期借入金にあたるかは、一般的に返済期間(1年)で判断します。

参考:借入金とは

右側の「純資産の部」

貸借対照表の右下に記載されている「純資産の部」に記載されるのは、株主から調達した部分と過去の利益の積立部分です。純資産の部には、主に以下の区分があります。

  • 資本金(株主が出資した部分)
  • 資本剰余金(設立後新たに株式を発行した際などに発生する余剰金)
  • 利益剰余金(これまでの利益のうち、残っている部分)

なお、資本金・資本剰余金・利益剰余金をまとめたものが「株主資本金」です。

参考:資本金とは

貸借対照表と損益計算書の違い

貸借対照表と同様に企業が作成しなければならない書類として、損益計算書があります。貸借対照表は、ある特定のタイミング(決算日)の企業の資産・負債・純資産の金額と内訳を示す表であるのに対し、損益計算書はある一定期間(決算期)の企業の収益と費用を示す表である点が違いです。

貸借対照表では、企業の財政状況や財務の安全性を確認できます。一方、損益計算書を読み解くことで、企業の収益力の把握が可能です。

なお、貸借対照表と損益計算書にキャッシュフロー計算書を加えて、財務三表と呼ぶことがあります。

個人事業主も青色申告特別控除で貸借対照表が必要

個人が確定申告する際は、基本的に貸借対照表の作成は不要です。ただし、個人事業主が青色申告特別控除を受ける際に、貸借対照表の作成が必要とされることがあります。

青色申告特別控除とは、確定申告で青色申告した際に10万円・55万円・65万円のいずれかを所得から控除できる制度です。55万円もしくは65万円の控除を受けるためには、申告書に貸借対照表と損益計算書を添付しなければなりません。

なお、貸借対照表の提出など55万円の青色申告特別控除の各種要件を満たした上で、e-Taxで申告(もしくは電子帳簿保存)していれば、65万円の控除を適用できます。

参考:青色申告とは

貸借対照表の読み方とは?

貸借対照表の読み方のポイントは、以下のとおりです。

  • 左右の合計額が一致しているか確認
  • 5つのブロックをチェック
  • 勘定科目をみる

貸借対照表の読み方・見方がわかれば、自社が抱える財務面での課題や競合企業との比較ができます。それぞれのポイントを理解し、自分で財務分析ができるようになりましょう。

左右(貸借)の合計額が一致しているか確認

ミスやおかしな点がないか確認するため、最初に左右の合計額が一致しているか確認しましょう。

原則として貸借対照表は、左右の合計額(資産の部の合計額と負債の部・純資産の部の合計額)は一致します。負債の部・純資産の部には調達資金を、資産の部でその運用形態を表示していることが一致する理由です。

たとえば、300万円を元手に会社を設立し、創業資金として銀行から200万円長期で借入したケースを考えてみましょう。300万円は資本金、200万円は長期借入金となります。

用意した金額に手をつけなければ、基本的に500万円は現金か預金になっているでしょう。貸借対照表は、現時点で以下のようになります。

貸借対照表
資産の部 負債の部
流動資産 500万円 流動負債 0円
 現金・預金 500万円 固定負債 200万円
固定資産 0円  長期借入金 200万円
純資産の部
株主資本 300万円
 資本金 300万円
純資産の部合計 300万円
資産の部合計 500万円 負債及び純資産合計 500万円

どちらも、500万円で一致しました。

また、ビジネスをはじめるためには、商品などが必要です。100万円で商品を仕入れ、200万円で法人用車両を購入します。残った金額(200万円)に手をつけていなければ、そのまま現金もしくは預金にあるでしょう。

貸借対照表
資産の部 負債の部
流動資産 300万円 流動負債 0円
 現金・預金 200万円 固定負債 200万円
 商品 100万円  長期借入金 200万円
固定資産 200万円 純資産の部
 車両運搬具 200万円 株主資本 300万円
 資本金 300万円
純資産の部合計 300万円
資産の部合計 500万円 負債及び純資産合計 500万円

この場合も、資産の部の構成が変更されただけで、左右の数字は同じ(500万円)ままです。

5つのブロックをチェック

最初のうちは細かな部分まで読むことは難しいため、貸借対照表を以下5つのブロックに分類してみましょう。

  • 資産の部の「流動資産」
  • 資産の部の「固定資産」
  • 負債の部の「流動負債」
  • 負債の部の「固定負債」
  • 純資産の部

5つのブロックのバランスから、各企業の大まかな財務状況を把握できます。

たとえば、流動資産が流動負債より大きければ、流動資産を現金化すれば流動負債を返済できるため、比較的短期資金に余力があるといえるでしょう。その反対に、流動負債が流動資産を上回っていれば、何かのきっかけに資金ショートを引き起こすおそれがあります。

なお、財務指標を使って計算すれば、5つのブロックのバランスを一目で確認できるでしょう。

勘定科目をみる

5つのブロックのバランスから大まかな財務状況を確認できるようになったら、勘定科目をみましょう。たとえば、資産の部の売掛金が異常に大きければ、取引先から回収できておらず、不良債権になる可能性があります。

また、棚卸資産が過大な場合、売れない在庫を大量に抱えていることを疑わなければなりません。投入した資金を回収できていないことになるため、そのうち資金繰りが悪化する可能性があります。

参考:勘定科目とは

貸借対照表分析に必要な指標

貸借対照表の分析に必要な指標はさまざまです。指標によって、収益性チェック・安定性チェック・効率性チェック・生産性チェックなどと目的が異なります。

その中でも貸借対照表の分析にあたってとくに理解しておきたい指標が、流動比率や当座比率、固定比率、自己資本比率です。

指標を覚えておけば、以下のような貸借対照表を見ただけで、ある程度財務状況を把握できます。

A社貸借対照表(単位:千円)
資産の部 負債の部
流動資産 40,000 流動負債 14,000
 現金・預金 30,000  支払手形 7,000
 受取手形 5,000  買掛金 2,000
 売掛金 3,000  短期借入金 5,000
 棚卸資産 2,000 固定負債 20,000
固定資産 60,000  長期借入金 20,000
 建物 40,000 負債の部合計 34,000
 建物付属設備 300 純資産の部
 機械装置 700 株主資本 66,000
 土地 18,000  資本金 20,000
 投資有価証券 1,000  利益剰余金 46,000
純資産の部合計 66,000
資産の部合計 100,000 負債及び純資産合計 100,000

ここから、各指標の意味や、上記架空の企業A社を例にした計算方法などを確認していきましょう。

支払い能力をチェックする流動比率や当座比率

支払い能力をチェックするには、流動比率や当座比率が役立ちます。それぞれ確認していきましょう。

流動比率

流動比率とは、企業の短期的な債務の支払能力を把握するための指標です。流動資産の流動負債に対する割合を計算します。

計算式は以下のとおりです。

  • 流動比率(%)=流動資産 ÷ 流動負債 × 100

A社の貸借対照表を確認すると、流動資産は4,000万円、流動負債は1,400万円です。そのため、流動比率は約286%(4,000万円 ÷ 1,400万円 × 100)と算出できます。

流動比率が高ければ高いほど、早期に現金化できる資産が多く、短期的な債務の返済能力が高いといえるでしょう。財務総合政策研究所によると、2018年度の全産業・全規模の平均流動比率は144.5%でした。

参考:流動比率とは

当座比率

当座比率とは、企業の短期的な債務の支払能力を厳密に把握するための指標です。当座資産の流動負債に対する割合を計算する当座比率を使えば、流動比率より厳しく企業をチェックできます。

計算式は以下のとおりです。

  • 当座比率(%)=当座資産 ÷ 流動負債 × 100

当座資産とは、流動資産の中でもとくに早く現金化を見込める現預金・受取手形・売掛金・有価証券の4つを指します。

A社の貸借対照表を確認すると、当座資産は3,800万円(3,000万円+500万円+300万円)、流動負債は1,400万円です。そのため、当座比率は約271%(3,800万円 ÷ 1,400万円 × 100)と算出できます。

当座比率が高ければ高いほど、早期に現金化できる資産が多く、短期的な債務の返済能力が高いといえるでしょう。財務総合政策研究所によると、2018年度の全産業・全規模の平均当座比率は89.2%で、平均流動比率を大幅に下回っています。

参考:当座比率とは

長期的な安全性を確認する固定比率

長期的な安全性を確認するには、固定比率が役に立ちます。固定比率とは、固定資産がどれくらい自己資本でまかなわれているかを確認する指標です。

固定比率を出すには、純資産に対する固定資産の割合を以下のように計算します。

  • 固定比率(%)=固定資産 ÷ 純資産 × 100

A社の貸借対照表を確認すると、固定資産は6,000万円、純資産は6,600万円です。そのため、固定比率は約91%(6,000万円÷6,600万円×100)と算出できます。

固定資産は返済期限のない自己資本(純資産)で調達することが望ましいとされているため、固定比率が低ければ低いほど長期的な安全性が高いです。財務総合政策研究所によると、2018年度の全産業・全規模の平均固定比率は134.7%でした。

参考:固定比率とは

財務基盤の安定性を確認する自己資本比率

企業の財務基盤の安定性を確認するには、自己資本比率が役に立ちます。自己資本比率とは、総資本のうち、新株予約権を除く純資産の割合のことです。

以下の計算式で算出します。

  • 自己資本比率(%)=(純資産ー新株予約権)÷ 総資本 × 100

総資本とは、他人資本と自己資本(純資産)を合計したものです。一般的に、負債の部と純資産の部を合計した数字を指します。

A社の貸借対照表を確認すると、純資産は6,600万円、総資本が1億円です。新株予約権はないため、自己資本比率は66%(6,600万円÷1億円×100)と算出できます。

自己資本比率が高ければ高いほど、返済する必要のない資金が占める割合が高いため、健全性・安定性が高いです。財務総合政策研究所によると、2018年度の全産業・全規模の平均自己資本比率は42.0%でした。

参考:財務省 財務総合政策研究所「法人企業統計調査からみる日本企業の特徴」

参考:自己資本比率とは

貸借対照表の作り方の流れ

貸借対照表を自分で作る際の流れは以下のとおりです。

  1. 仕訳
  2. 元帳記入
  3. 試算表に転記
  4. 試算表から貸借対照表作成

各工程を簡単に解説します。

1. 仕訳

貸借対照表を作成するには、日々の取引を仕訳しなければなりません。取引を左側の「借方」、右側の「貸方」に分けて記入(仕訳)することを「複式簿記」と呼びます。

参考:仕訳とは

取引が発生したら、該当する勘定科目を確認して「仕訳帳」に記載していきましょう。資産の増加や負債・純資産(資本)の減少は「借方」、資産の減少や負債・純資産(資本)の増加は「貸方」に記入することがポイントです。

たとえば、金融機関から500万円を借りて事業用車両を購入した場合、資産(車)も負債(借入金)も増加します。

(借方) (貸方) (備考)
車両運搬具 500万円 長期借入金 500万円 事業用車両購入

上記で、車両運搬具は借方、借入金は貸方に仕訳しました。

2. 元帳記入

仕訳帳に仕訳を記録したら、勘定科目ごとの総勘定元帳に転記します。仕訳帳は日々の取引を順に記録し、取引の流れを把握するものであるのに対し、総勘定元帳は各勘定科目の特定日の残高や内容を確認するものです。

仕訳帳から総勘定元帳に転記することで、各勘定科目の集計がしやすくなります。借方・貸方を間違えずそのまま転記するようにしましょう。

参考:総勘定元帳とは

3. 試算表に転記

作成した総勘定元帳を確認し、試算表に各勘定科目の借方・貸方残高または合計額を転記していきます。

試算表とは、決算などのタイミングで仕訳帳の数字が総勘定元帳に正しく転記されているか検証するための集計表です。試算表の種類には各勘定科目の残高をまとめた「残高試算表」、総勘定元帳から各勘定科目の借方・貸方の合計額をまとめた「合計試算表」、残高試算表と合計試算表を合わせた「合計残高試算表」があります。

参考:試算表とは

4. 試算表から貸借対照表作成

試算表を作成したら、減価償却費の計上などを考慮して貸借対照表を作成します。試算表から貸借対照表を作成する際、以下の点がポイントです。

  • 「貸倒引当金」は貸方に記入せず、「売掛金」「受取手形」などから控除する形式で借方に記載
  • 「減価償却累計額」は固定資産から控除する形式で借方に表示
  • 繰越商品は「商品」と表示
  • 「繰越利益剰余金」は試算表の金額に当期純損益を加えて表示

このように、貸借対照表作成には一定の手間がかかります。会計ソフトを導入・利用すれば、手作業で進めるよりも簡単に貸借対照表を作成できるでしょう。

貸借対照表の貸借)が合わないときのチェックポイント

本来一致すべき左右(貸借)の数字が合わないなど、貸借対照表に不具合がある場合は、以下の対応がポイントです。

  • 各勘定科目に異常な金額でないかチェック
  • 総勘定元帳や仕訳帳を確認

各ポイントを解説します。

各勘定科目に異常な金額でないかチェック

貸借対照表に記載された各勘定科目を確認し、異常な金額がないかチェックしましょう。たとえば、機械設備を使う機会が少ない卸売業で、多額の固定資産が計上されていたら転記ミスの可能性があります。

また、勘定科目があるべき場所に記載されているかもチェックしましょう。現預金や受取手形は左の借方、買掛金は右の貸方など各勘定科目の概要をある程度理解しておくことが大切です。

総勘定元帳や仕訳帳を確認

勘定科目を確認しても、異常が見つからない場合は、総勘定元帳や仕訳帳を確認しましょう。転記時に借方と貸方を反対にしてしまう、金額の桁を間違えるなどがよくある転記ミスです。

また、「売掛金」と「買掛金」のように、一見すると似た名称で間違えてしまうこともあります。手書きの場合は、「0」と「6」のように見間違いやすい数字に注目することも必要です。

参考:売掛金とは

参考:買掛金とは

貸借対照表のまとめ

貸借対照表とは、決算日など特定の日時点の企業の財産状況・財政状態を示したものです。貸借対照表を使って財務状況を分析する際は、「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「純資産」のバランスを見ることがポイントです。

また、流動比率や固定比率、自己資本比率などの指標を使えば、企業の様子がわかりやすくなります。今回紹介した指標を使い、自社や上場会社の貸借対照表を分析にしてみましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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