貸借対照表とは~財政状況が分かる見方について解説~

貸借対照表

会計期間の財政状態を確認する上で欠かせない貸借対照表。貸借対照表の見方を理解すれば、会社の経営状態を正しく把握できるようになります。今回は貸借対照表の基礎知識をはじめ、貸借対照表の正しい見方、経営状況の判断方法、目安となる水準について分かりやすく解説します。※2021年11月24日に更新

決算日時点の財政状態を表す貸借対照表

貸借対照表とは、決算日時点における財政状態を表す書類です。法人は、事業年度を終えた時点で1年間の事業状況をまとめた財務諸表を作成します。財務諸表には、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の3つの書類が含まれており、貸借対照表はこの「財務三表」のひとつとです。それぞれで表される数値は異なりますが、貸借対照表では会社の資金調達方法や調達資金の運用方法について見ることが可能です。

貸借対照表のイメージ

貸借対照表を正しく見るためには、表に含まれる項目がどのようなルールによって記載されているか理解しておくことが重要です。なお、貸借対照表はバランスシートとも呼ばれ、「B/S(ビーエス)」と省略されることもあります。

貸借対照表は、以下のような形式になっていることが一般的です。

▼貸借対照表の例

資産 金額 負債・純資産 金額
現金 90,000 円 借入金 150,000 円
売掛金 10,000 円 資本金 100,000 円
建物 200,000 円 利益余剰金 50,000 円
300,000 円 300,000 円

貸借対照表では、左側(借方)に資金の運用状況を示す「資産の部」が表示され、右側には資金の調達方法を示す「負債の部」「純資産の部」が表示されます。貸借対照表のルールとして、この左側と右側の合計は必ず一致しなければなりません。

また、貸借対照表は「流動性配列法」がルールとされているため、上から流動性の高い順に資産や負債が表示されています。貸借対照表の詳しい見方は以下で紹介します。

(左側)資産:資金の運用状況

貸借対照表の左側(借方)には、会社が調達した資金の運用状況、つまり資産を記載します。資産には「流動資産」と「固定資産」の2種類があります。

流動資産

流動資産とは、短期間で現金にすることが可能な資産を指します。例えば、営業サイクルで発生する資産や、1年以内に現金化又は費用化できる資産です。主な流動資産には、現金預金・受取手形・売掛金・商品や製品・前渡金・未収入金・貸倒引当金などが挙げられます。現時点で回収していない受取手形や売掛金も流動資産として含まれることに注意が必要です。

固定資産

固定資産とは、長期間保有することによって現金化、費用化される資産を指します。「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」といった3つの種類があり、有形固定資産には土地・建物・車両など、無形固定資産は特許権・借地権など、投資その他の資産は投資有価証券・長期貸付金・樹木を含む生物などが含まれます。ただし、不動産会社等が販売することを目的で購入した土地などは商品にあたるため、固定資産ではなく流動資産として計上します。

(右側上部)負債:返済義務がある調達資金

貸方となる右側には、負債と純資産を記載します。このうち、右側上部には返済義務がある調達資金を記載し、貸借対照表においては「負債」として取扱います。負債には「流動負債」と「固定負債」の2種類があり、流動負債より固定負債が多ければ、経営が安定していると判断できます。

流動負債

流動負債とは、支払い期限が1年以内の負債のことを指します。主な流動負債には、買掛金・支払手形・未払金・借入金・預り金などが挙げられます。従業員の給与から差し引いて預かっている社会保険料・源泉所得税・住民税なども、預り金として流動負債に含まれます。買掛金と支払手形のような返済義務のある調達資金は「仕入債務」とも呼ばれます。この流動負債は、貸借対照表の流動性配列法に則り、固定負債より上に記入するルールとなっています。

固定負債

1年以内の返済が必要な流動負債に対し、1年以内に支払い義務が発生しない負債を「固定負債」と呼びます。主な固定負債には、社債・長期借入金・預かり保証金・繰延税金負債などが挙げられです。

借入金については「短期借入金」と「長期借入金」に分けられます。短期借入金は1年以内の返済が求められるため流動負債に該当しますが、長期借入金は1年以上の返済期間があるため固定負債として計上します。

繰延税金負債とは税効果会計の一つで、会計上の利益と税務上の所得に差がある場合の調整をするために生じる負債です。

(右側下部)純資産:返済義務がない調達資金

返済義務がない調達資金は「純資産」とし、貸借対照表の右下に記載します。この純資産は会社自身の資金にあたるため「自己資本」と呼ばれることもあります。主な純資産には、株主資本、評価・換算差額金、新株予約権などが挙げられます。株主資本とは、株主からの出資金を指し、「資本金」「資本剰余金」に分けられます。

評価・換算差額金は、株などの有価証券を所持しているときに記載する項目です。株などの有価証券を購入した時の価値と、決算時の価値における差額を記載します。

新株予約権とは、発行した会社に対して権利を行使することで、定められた価格でその会社の株式を購入できる権利のことをいいます。

貸借対照表から分かること

貸借対照表でどのようなことが分かるのか、具体的に紹介します。紹介するのは、財務分析の安全性分析の経営指標です。

純資産の割合を示す自己資本比率

自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達に対して何%を占めるか示す数値です。この自己資本比率から、経営上の安定性が分かります。

自己資本比率は、下記の計算式で算出できます。

自己資本比率(%) = 純資産÷ 総資産(資産合計)×100

自己資本比率が高いほど返済するお金が少なく、つまり経営が安定していることを意味します。自己資本比率の安全ライン(目安)は業種により異なりますが、中小企業庁が令和2年に行った中小企業実態基本調査による自己資本比率の平均値は、下記のとおりです。目安ではありますが、平均値を下回ると経営に問題があると考えられます。

▼業種別 自己資本比率の平均値

産業大分類別 平均値 産業大分類別 平均値
建設業 41.62% 不動産業、物品賃貸業 35.87%
製造業 46.86% 学術研究、専門・技術サービス業 76.48%
情報通信業 56.86% 宿泊業、飲食サービス業 16.44%
運輸業、郵便業 35.07% 生活関連サービス業、娯楽業 38.44%
卸売業 39.36% サービス業(他に分類されないもの) 46.68%
小売業 32.76%

出典:中小企業庁『令和2年 中小企業実態基本調査 確報』

短期の支払能力を示す流動比率

流動比率とは、短期間に現金化できる流動資産に対して、短期間に支払い義務のある流動負債がどの程度占めているかを示す指標です。この流動比率をもとに、1年以内に返済が必要な流動負債の支払い能力を把握できます。

流動比率は下記の計算式で算出できます。

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

流動比率が高ければ経営が安定しており、低すぎると経営状況に問題があると判断できます。流動比率の目安は、150%以上が優良水準、120%~149%の範囲内であれば安全水準、100%~119%の範囲内であれば改善の余地あり、99%以下は危険水準です。流動比率が99%を下回る企業は銀行からの融資が受けられなくなる可能性があり、外部からの会社の評価が悪くなる懸念があります。

より厳しく支払い能力が確認できる当座比率

流動比率よりも正確な支払い能力を判断したい場合には、「当座比率」に着目します。当座比率とは、流動負債に対する当座資産の割合です。当座資産には、現金・預金・受取手形・売掛金・有価証券などが挙げられ、流動資産の中でも特に現金化しやすい資産を指します。

当座比率は、下記の計算式で算出できます。

当座比率(%) = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

当座比率の安全ライン(目安)は、120%以上は優良水準、90〜119%の範囲内であれば安全水準、70〜89%の範囲内であれば改善の余地あり、69%以下は危険水準です。当座比率が69%を下回ると、資金繰りがかなり厳しい状況にあると判断できます。企業の印象も悪くなり、銀行からの融資を受けにくくなる可能性が高くなります。

自己資本の割合を示す固定比率

固定比率とは、純資産(自己資金)に対して固定資産がどの程度を占めているかを示す指標です。固定比率に着目することで、経営の安全性や長期的な支払い能力を判断できるようになります。

固定比率は下記の計算式で算出できます。

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

一般的に固定比率が100%未満であれば、純資産でカバーできているため安全性が高いと判断できます。固定比率が100%以上であっても、純資産と固定負債でカバーできていれば、比較的安全とされています。一方で、固定比率が100%を以上であり、純資産・固定負債・流動負債でカバーしている場合は危険といえます。経営状況が不安定な状態にあるため、融資を受けにくくなります。

資金のバランスを確認できる貸借対照表

貸借対照表は、決算日時点の資産・負債を把握し、現在の財政状態を把握するための書類です。貸借対照表を正しく理解することにより、自己資本比率・流動比率・当座比率・固定比率を算出でき、資産と負債のバランスを正確に把握できるようになります。また、経営の安全性を短期・長期の視点から判断できるため、翌年度以降の事業計画立案にも役立ちます。貸借対照表の作成方法や見方を正しく把握し、適正な財務管理を目指しましょう。

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