RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは?メリットや他の資金調達手段との違いを解説

更新日:2024年04月09日

RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス

RBFとは、将来発生する売上を先に現金化することによって資金調達する手段のことです。銀行融資や株式発行とは異なる資金調達手段として、近年注目を集めています。

本記事では、RBFとは何かをわかりやすく説明した上で、企業が用いるメリットを紹介します。

目次

RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは

RBFとは、Revenue Based Finance(レベニュー・ベースド・ファイナンス)を略した言葉です。銀行融資(借入)や株式発行とは異なる新たな資金調達手段を指しています。ここから、RBFの仕組みや種類について確認していきましょう。

参考)資金調達とは

RBFの仕組み

RBFは、対象の企業で将来発生する売上を予測し、その一部を現金化することで資金調達する方法です。一般的に、過去の売上実績が将来発生する売上を予測する際の根拠になります。

RBFの基本的な流れは、以下のとおりです。

  1. 将来の売上を予測する
  2. 資金を提供する投資家を探す
  3. 投資家と交渉する
  4. 返済条件などを決めた上で契約を締結する
  5. 売上予測に基づく金額を投資家から企業が受け取る
  6. 契約に基づき、返済を開始する
  7. 金額に達するまで、返済を続ける

なお、RBFで調達した金額は、貸借対照表上「負債」として計上します。

参考)貸借対照表とは

参考)負債とは

RBFの種類

RBFには、Flat fee(定額制)とVariable collection(変動制)の2種類があります。主な違いは、返済方法(返済額)です。

ここから、それぞれの概要を確認していきましょう。それぞれの違いを理解しやすくするため、返済開始後のA社の売上が以下であったと仮定して、説明しています。

2024年1月 2024年2月 2024年3月 2024年4月 2024年5月 2024年6月
売上(万円) 800 750 900 1,100 1,200 1,250

Flat fee(定額制)

Flat fee(定額制、定額型)とは、発生した売上から毎月同額を返済する仕組みです。一般的に、返済期間は1年以内に設定されます。

Flat feeは返済額が決まっているため、返済計画を立てやすい点がメリットです。一方で、月によって売上額と返済額が乖離することがあるため、資金繰りに注意しなければなりません。

たとえば、Flat feeで返済額を50万円と設定した場合、売上が異なる2024年1月も2024年6月も返済額は同じ50万円です。そのため、2024年1月に売上に対して返済が占める割合は6.25%であるのに対し、2024年6月は4%と差が生じます。

Flat feeの場合、企業が成長すれば、その分だけ返済負担を抑えられるでしょう。

参考)資金繰りとは

Variable collection(変動制)

Variable collection(変動制、変動受取型)とは、売上に連動した返済額を投資家に返済する仕組みのことです。業績が良い企業ほど早く返済し終える可能性が高く、思うように業績が伸びない企業ほど返済にかかる期間が長くなります。

毎月、売上に対して5%を返済すると仮定した場合、A社の毎月の返済額は以下のとおりです。

2024年1月 2024年2月 2024年3月 2024年4月 2024年5月 2024年6月
売上(万円) 800 750 900 1,100 1,200 1,250
返済額(万円) 40 37.5 45 55 60 62.5

返済開始の当初は40万円であったのに対し、業績が拡大しつつある2024年6月には返済額が62.5万円まで増えています。

RBFは日本で利用可能な資金調達サービス?

RBFによる資金調達は、日本でも利用できます。なぜなら、日本で将来債権(継続的な取引により、将来も定期的に発生する債権)の譲渡が可能なためです。

従来、法律で将来債権に関する定めはありませんでした。2020年4月に改正民法が施行されたことで、民法第466条の6に「債権の譲渡は意思表示のときに債権が現に発生していることを要しない」などが定められました。

すでにいくつかの事業者が、国内でRBFによるサービスを提供していますが、日本ではまだ普及していません。日本でRBFが一般的でない理由として、投資家がリスクを懸念する点、まだ仕組みが周知されていない点、銀行融資などの資金調達が根強い点などが挙げられます。

日本でスタートアップが増加するのに伴い、今後RBFが浸透していく可能性もあるでしょう。

RBFと他の資金調達手段の違い

RBF以外にも、さまざまな資金調達手段があります。ここから、RBFと銀行融資・ファクタリング・株式発行の違いを確認していきましょう。

RBFと銀行融資の違い

RBFと銀行融資の主な違いは、返済原資です。

一般的に銀行融資とは、企業が銀行から資金を借りる方法を指します。融資元は、主に民間の銀行や日本政策金融公庫などです。

調達した資金を貸借対照表で「負債」として計上する点は、RBFも銀行融資も共通しています。しかし、RBFが売上を返済原資とするのに対し、銀行融資は主に利益から返済する点が違いです。

また、銀行融資は、場合によって個人の保証や担保を条件にすることがあります。

RBFとファクタリングの違い

現金化する対象が、RBFとファクタリングの主な違いとして挙げられます。

ファクタリングとは、企業が保有する債権をファクタリング業者に売却することで、資金を調達する方法のことです。資金調達した企業が取引先から債権を回収してからファクタリング業者に支払う2社間ファクタリングと、取引先が直接ファクタリング業者に支払う3社間ファクタリングがあります。

RBFが将来の売上の一部を現金化する手段であるのに対し、ファクタリングは売掛債権(売掛金、受取手形)を現金化する点が違いです。売掛債権を少額しか有していない場合、ファクタリングでは十分な金額を調達できません。

参考)ファクタリングとは

参考)売掛金とは

参考)約束手形とは

RBFと株式発行の違い

株式譲渡や返済の有無が、RBFと株式発行の主な違いとして挙げられます。

株式発行による資金調達とは、公募増資・第三者割当増資・株主割当増資により、株式の発行と引き換えに投資家から資金を受け取る方法のことです。RBFでは、株式発行と異なり投資家に株式は発行しません。

また、株式発行の場合、投資家に調達額を返済する義務はない分、株式の数に応じて投資家へ配当を出すことがあります。一方、RBFでは、調達した資金を投資家に返済していかなければなりません。

企業がRBFを用いるメリット

企業がRBFを用いる主なメリットは、以下のとおりです。

  • 株式が希薄化しない
  • 赤字でも利用できる可能性がある
  • 担保や個人保証の必要がない
  • 比較的に早い段階で利用できる

それぞれ詳しく解説します。

株式が希薄化しない

資金調達しても、株式が希薄化しない点がRBFのメリットです。株式の希薄化とは、企業の発行済み株式が増えることに伴い、1株あたりの価値が下がることを指します。

株式の希薄化の問題点は、既存株主にとって1株あたり利益が減少することや、既存株主の持株比率が減少する可能性があることです。株式発行で資金を調達すると株式の希薄化が生じるため、既存株主からの反発を招くことがあります。また、創業者の持株比率が減ることで、経営に関する意思決定がスムーズに進められなくなることもあるでしょう。

その点、RBFは株式譲渡を伴わない資金調達手段のため、株式の希薄化が生じる心配がありません。

赤字でも利用できる可能性がある

赤字の場合や利益が安定していない場合でも、売上次第で資金調達手段として利用できる可能性がある点もメリットです。銀行融資では利益も厳しく見られるのに対し、RBFでは主に売上高を中心に金額が決まります。

なお、RBFでも審査は必要です。審査では、売上だけでなく事業リスクや将来性・成長性、事業計画の妥当性なども判断材料となる可能性があります。

担保や個人保証の必要がない

担保や個人保証の必要がない点も、RBFのメリットです。

資金用途が設備資金(建物や機械・車両などの購入)の場合、銀行融資では担保や個人保証の提供を求められることがあります。しかし、スタートアップをはじめ、担保の提供が困難な企業も少なくありません。

RBFは基本的に担保や個人保証の必要がない手段のため、スタートアップでも資金調達しやすいです。

比較的に早い段階で利用できる

比較的に早い段階で利用できる点も、RBFのメリットです。

銀行融資の場合、申し込んでから審査を経て資金を受け取るまでに、数か月の期間を要することがあります。また、株式発行の場合も、募集事項の決定や株主への通知、発行後の変更登記などさまざまな手続きを踏まなければなりません。

RBFの場合、申込後1日〜数日で資金を得られることがあります。ただし、資金提供を受けるまでの期間は、投資家やRBFのサービス提供事業者によって異なる点に注意が必要です。

企業がRBFを用いる際のデメリット

企業がRBFを用いる際のデメリットは、主に以下のとおりです。

  • 一定の売上を計上していなければならない
  • 銀行融資の金利と比べて手数料が高い

それぞれ詳しく解説します。

一定の売上を計上していなければならない

一定の売上を計上していなければならない点が、企業がRBFを用いて資金調達するデメリットです。

RBFは、過去の売上データを参考にして将来の売上を予測します。そのため、売上が低ければ、将来も大きな売上を見込めず、期待した金額を調達できないでしょう。直近の売上が高くても、ばらつきがあれば十分な額を調達できない可能性があります。

銀行融資の場合、設立したばかりで売上が十分でなくても、審査次第で日本政策金融公庫の新創業融資制度などを利用して数千万円の資金を調達可能です。

銀行融資の金利と比べて手数料が高い

一般的に、銀行融資の金利と比べると手数料が高い点が、RBFを用いて資金調達するデメリットです。RBFに頼りすぎると出ていくお金が増えて、資金繰りが悪化する可能性があります。

そのため、まずは銀行融資を前提に検討した方がよいでしょう。企業を成長させるために設備投資したくても、利益赤字で銀行の審査がとおらないときが、RBFを検討するタイミングのひとつです。

なお、株式発行と比べると、RBFの方がコストを抑えられることがあります。株式発行でコストが高くなる主なケースは、配当金を高く設定している場合です。

RBFに向いている企業とは

RBFに向いている主な企業は、以下のとおりです。

  • SaaS(サブスクリプション型)の企業
  • D2Cの企業

各企業の概要や、RBFに向いている理由について詳しく解説します。

SaaS(サブスクリプション型)の企業

SaaS(サース)とは、Software as a Serviceを略した言葉で、「サービスとしてのソフトウェア」を指します。SaaSの主な特徴は、契約しているアカウントを使えばどのデバイスからでも、ソフトウェアを利用できることです。サブスクリプション型(サブスクリプション方式)のSaaSとは、ユーザーが一定期間ソフトウェアを利用する権利を得るために、定額で料金を支払っていく仕組みを指します。

サブスクリプション型SaaSをビジネスモデルとする企業は、一度販売して終わりではなく、解約されない限り継続して収益を得られる点が特徴です。そのため、将来の売上を予測しやすく、RBFに向いているといえます。

D2Cの企業

D2C(ディーツーシー)とは、Direct to Consumerを略した言葉で、「消費者直結」のことです。主に、メーカーが仲介業者を挟まず、自社の製品を直接消費者に販売するビジネスを指します。

D2Cの企業は消費者との接点を直接構築できるため、データを収集しやすい点やマーケティング戦略やキャンペーンを実施しやすい点が特徴です。そのため、将来の売上予測を立てやすく、RBFにも向いています。

RBFまとめ

RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは、対象の企業で将来発生する売上を予測し、その一部を現金化することで資金調達する方法のことです。株式が希薄化しない点や、比較的早い段階で利用できる点がメリットとして挙げられます。

ただし、一般的に銀行融資の金利と比べて手数料が高い点に注意が必要です。毎回RBFで資金調達するとコストがかかり、資金繰りが悪化する可能性があります。

そのため、利益が安定せず銀行からの融資を受けられないけれど、企業の成長のためにどうしても資金調達しなければならない場面などにおいて、活用を検討するとよいでしょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加