経費とは何か?計上するメリットと注意点を解説

更新日:2023年12月11日

経費とは

経費とは、「人件費」や「消耗品費」のように事業のために使った費用のことです。経費計上するメリットとして、支払う税金を抑えられる点が挙げられます。

本記事で、経費の概要や「経費で落とす」ことの意味をわかりやすく解説します。

目次

経費とは何かわかりやすく説明

一般的に、「経費」とは、事業のために使った費用のことです。確定申告などの場面で、事業による所得のために使った経費を「必要経費」と呼ぶこともあります。

ここから、ビジネスシーンで使われる「経費で落とす」とは何か詳しく解説します。

「経費で落とす」とは?

一般的に、「経費で落とす」とは、かかった費用を経費として計上(経費計上)することです。また、従業員が立て替えた経費を会社側が「経費で落とし」て従業員に支払う(会計処理する)ことを経費精算と呼びます。

ただし、かかった費用を「経費で落とす」ことができる場合と、「経費で落とす」ことができない場合がある点に注意が必要です。ルールやタイミングを守らなければ、「経費で落とす」ことはできません。

「経費で落とす」例

条件を満たせば、さまざまな費用を経費として計上できます。「経費で落とす」具体例は以下のとおりです。

  • 人件費
  • 消耗品費
  • 旅費交通費
  • 通信費
  • 新聞図書費
  • 福利厚生費
  • 租税公課
  • 地代家賃
  • 広告宣伝費
  • 支払手数料

それぞれの内容を簡単に紹介します。

人件費

人件費とは、主に従業員の雇用に伴い発生する費用のことです。給与・賞与・各種手当など、従業員に対して支払われる金額が該当します。

参考)人件費とは

消耗品費

消耗品費とは、使用可能期間が1年未満か、取得価額が10万円未満の什器備品の購入費です。帳簿・文房具・用紙・ガソリンなどの消耗品購入にかかった金額が該当します。

使用可能期間が1年以上で取得価額も10万円以上の業務用パソコンなどの購入金額は、一般的に「消耗品費」ではなく「備品」です。

旅費交通費

旅費交通費とは、業務上の移動に伴い発生した費用です。タクシー代・電車代・飛行機代、出張する際の宿泊代などが該当します。

通信費

通信費とは、業務上使用する通信にかかった費用です。会社の電話代、従業員に支給しているスマートフォンの利用料金、書類を郵送する際にかかった切手代などが該当します。

新聞図書費

新聞図書費は、業務上必要な情報・知識を得るために購入した雑誌や書籍の代金や、新聞の購読料です。紙媒体だけでなく、電子書籍や情報サイトの登録料も含まれます。

福利厚生費

福利厚生費とは、給与・賞与など以外で従業員のモチベーションアップを目的に支出する費用です。慶弔見舞金や社員のレクリエーション活動費用などが該当します。

また、全従業員が自由に受講できる研修も福利厚生費のひとつです。ただし、業務上必要で参加が義務付けられている研修は「研修費」に該当します。

租税公課

租税公課とは、経費にできる税金や公的な負担金などのことです。印紙税や事業税、印鑑証明書の発行手数料などが該当します。

参考)租税公課とは

地代家賃

地代家賃とは、会社や事務所を運営するための賃料のことです。業務上必要で駐車場を借りている場合も該当します。

広告宣伝費

広告宣伝費は、自社の商品やサービスをアピールする際にかかる費用です。テレビCMを流すためにかかる費用や、商品を宣伝するためのWebサイト作成料などが該当します。

支払手数料

支払手数料は、事業で発生する各種手数料のことです。銀行の振込手数料や税理士・司法書士への報酬などが該当します。

「経費で落とす」ことが可能か判断する方法

「経費で落とす」ことが可能かについて、明確な基準はありません。ただし、少なくとも事業の運営に関係する費用である点は徹底する必要があります。

「事業」に関係するか判断する際のひとつの基準が、最終的にその出費が売上につながるかという点です。出張した際に同僚や家族に買ったお土産などは、当然「経費で落とす」ことはできないため注意しましょう。

「経費で落とす」(経費計上する)タイミング

「経費で落とす」(経費計上する)タイミングは、現金主義の立場をとるか、発生主義の立場をとるかによって異なります。現金主義はお金が動いた日を基準に計上する考え方で、発生主義は収益や費用が発生した段階で計上する考え方です。

企業会計原則の損益計算書原則では「発生主義の原則」が規定されているため、会社では一般的に発生主義で経費を計上します。つまり、購入が確定した日が4月30日、実際に商品の代金を支払ったのが5月10日の場合、経費計上するのは「4月30日」です。

経費計上するメリット・デメリット

経費計上する際は、あらかじめメリットとデメリットを理解しておくことが大切です。経費計上するメリットとデメリットを解説します。

経費計上するメリット

支払う税金を抑えられる点が、経費計上するメリットです。理由を確認していきましょう。

まず、法人税は「課税所得 × 税率」で計算できます。そのため、利益が増えれば増えるほど納税する法人税も増えることが一般的です。

課税所得は、法人税を計算する際の収益(益金)から損金を引いて算出します。経費が損金として認められる場合、経費計上すれば課税所得が下がるため、法人税も下がるでしょう。

たとえば、利益が50万円の法人の場合、法人税率40%と仮定すると法人税額は20万円(50万 × 40%)です。しかし、事業に必要な支出(5万円)を経費計上すれば、法人税額は18万円((50万円ー5万円) × 40%)に下がります。

経費計上するデメリット

税法上の手続きが必要な点が、経費計上するデメリットです。経費関連の書類を整理・保存する、経費計上する理由がわかるようにするなど、現場で一定の手間をかけなければなりません。

また、経費を計上することで利益が減少したり、赤字になったりする点もデメリットです。利益が減少すると一般的に法人税を抑えられる分、外部からの信用に悪影響を与えてしまいます。

自社の利益が少ないことや赤字であることなどを理由に、金融機関の融資審査に通らないこともあるでしょう。

経費計上を誤るとペナルティを課される

誤った経費計上をしたり、期限内の税金申告や納付を怠ったりするとペネルティを課されることがあります。法人税の申告期限や納付期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。

誤った経費計上などのペナルティとして、以下の点が挙げられます。

  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 過少申告加算税
  • 重加算税

それぞれ詳しく解説します。

参考:国税庁「申告と納税」

無申告加算税

無申告加算税とは、期限後に申告・決定があった場合や、期限後の申告・決定に修正申告・更生があった場合に課されるペナルティです。たとえば、申告そのものを失念していた場合、経費計上などで悩み期限を過ぎた場合には、無申告加算税を課される可能性があります。

2023年4月1日現在、無申告加算税の税率は15%(納税額が50万円超の部分は20%)です。ただし、遅れたことに正当な理由がある場合や、法定申告期限から1か月以内の期限後申告する場合など、条件次第で無申告加算税が適用されないこともあります。

不納付加算税

不納付加算税とは、源泉徴収による国税(源泉所得税など)について、法定納期限後に納付・納税の告知があった場合に課されるペナルティです。

2023年4月1日現在、10%の不納付加算税が課されます。ただし、納税の告知を予知しない法定納期限後の納付の場合は5%です。

なお、遅れたことに正当な理由がある場合や、法定申告期限から1か月以内の期限後申告する場合など、条件次第で不納付加算税が適用されないことがあります。

過少申告加算税

過少申告加算税とは、本来の税額より少ない金額で期限内申告していたことが発覚し、後に修正申告・更正した場合に課されるペナルティです。たとえば、経費を過大に計上した場合、本来の税額より少ない金額で申告したことになるため、過少申告加算税を課される可能性があります。

2023年4月1日現在、過少申告加算税の税率は10%です。期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分には、15%が課されます。

なお、正当な理由がある場合や税務調査以前の申告には、過少申告加算税が課されません。また、税務調査の通知があった場合に、更生通知を予知した修正でなければ、過少申告加算税の税率は5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分には10%)です。

重加算税

重加算税とは、無申告加算税・不納付加算税・過少申告加算税などに該当するケースのうち、事実などの仮装・隠蔽があった場合に、対象のペナルティの代わりに課されるものです。意図的に経費を過大に計上し、隠蔽した場合も重加算税が課されます。

2023年4月1日現在、重加算税の税率は、過少申告加算税・不納付加算税に代えて課される場合は35%、無申告加算税に代えて課される場合は40%です。重加算税には、不適用や軽減割合などはありません。

紹介した4つのペナルティ以外にも、税金納付が期限を遅れる際に税金の利息分に相当する「延滞税」がかかります。

参考:e-Gov「国税通則法」

経費計上する際の注意点

経費計上する際は、以下の点に注意が必要です。

  • エビデンスが必要
  • 経費の対象外のものがある
  • 減価償却の考えを理解しておく
  • ペナルティを課されないための対策を考えておく

注意点をそれぞれ解説します。

エビデンスが必要

経費計上する際は、支払った内容が経費にできるものと証明できるように、エビデンスを用意しておかなければなりません。エビデンスの具体例は、領収書やレシートなどです。

自動販売機の飲み物代や割り勘した接待交際費など、領収書やレシートを受領できない場合は、出金伝票で対応することがあります。出金伝票は、会社からお金が出て行く際に使う伝票です。

税務調査が入る際、経費計上が過大でないかエビデンスをチェックされます。

経費の対象外のものがある

事業に関係する支出でも経費計上の対象外のものがあるため、注意しましょう。たとえば、事業税や事業所税などは租税公課として経費計上できるのに対し、以下は対象外です。

  • 法人税・地方法人税・都道府県民税・市町村民税の本税
  • 各種加算税・各種加算金・延滞税・延滞金・過怠税
  • 罰金および科料ならびに過料
  • 法人税額から控除する所得税・復興特別所得税・外国法人税

また、取引先との飲食も支出額を参加者で割ったひとりあたり金額が5,000円超で「接待交際費」に該当すれば、基本的に全額損金に算入できないため、法人税軽減につながりません。一定規模の会社に限り、損金算入が認められています。

なお、ひとりあたり金額が5,000円以下であっても、飲食した年月日・参加者・参加人数などを記載した書類を保存していなければ、「接待交際費」に該当するため注意しましょう。

参考:国税庁「No.5300 租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期」
参考:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

減価償却の考えを理解しておく

経費計上する際は、減価償却の考え方も理解しておくことが大切です。減価償却とは、設備投資などの費用を一定期間に配分する会計処理を指します。

個人事業主の場合と異なり、法人は減価償却が任意です。大きな設備投資をした際に、減価償却すれば、翌年以降も利益を抑えて節税につなげられます。ただし、減価償却には会計の手間がかかる点に注意が必要です。

なお、減価償却の方法として、毎年一定額を計上する「定額法」と毎年一定の償却率を乗じた金額を計上する「定率法」などがあります。

参考)減価償却費の仕訳

ペナルティを課されないための対策を考えておく

経費計上を誤り、無申告加算税や過少申告加算税などのペナルティを課されないように、あらかじめ対策を考えておきましょう。対象外のものを経費計上していないか気になる場合は、曖昧にせず早めに税務署や税理士に確認しておくことが大切です。

また、計上漏れや計算ミスを防ぐために、会計ソフトを利用することも検討しましょう。

経費を精算する際の流れ

一般的に、経費精算の流れは以下のとおりです。

  • 社員が費用を立て替える
  • 領収書やレシートを受け取る
  • 経費精算申請書を提出する
  • 決済権限がある人が承認する
  • 経理担当者が確認する
  • 経理担当者が仕訳する
  • 社員に払い戻しする

経費を立て替えた社員がすることや、経理担当者がすることについて説明します。

経費を立て替えた社員がすること

出張や移動時、消耗品購入時などに、社員が自分の所持金で立て替えて支払うことがあります。立て替える際は、事業に関係することが証明できるように、日付や金額、品名などが記載された領収書などを受け取ることがポイントです。

その後、経費精算申請書を作成して上司(決済権限者)に提出します。会社によって申請のルールが異なるため、社員は事前に把握しておかなければなりません。

社員から申請を受けた経理担当がすること

決済権限者経由で社員から申請を受けた経理担当者は、記載内容に問題がないかを確認します。問題なければ、旅費交通費・消耗品費など実際の支払いに対応する勘定科目で仕訳が必要です。

たとえば、電車代2万円の申請を受けて現金で社員に立替分を支払う場合、以下のように仕訳します。

借方 貸方
旅費交通費 20,000 現金 20,000

また、実際に社員に申請額を支払わなければなりません。現金以外に社員の銀行口座へ振り込む場合もあります。

経費とは何かのまとめ

経費とは、人件費や消耗品費など、一般的に事業に必要なことに使う費用のことです。事業に必要なことのために支払った費用を経費計上することを「経費で落とす」といいます。

経費計上すると、支払う税金を抑えられる点がメリットです。ただし、その分利益が少なくなったり赤字になったりすることがある点に注意しなければなりません。

経費の概要を理解した上で、経費計上するようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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