国際ファクタリングとは?海外取引に用いるメリット・デメリットも紹介

更新日:2024年04月11日

国際ファクタリングとは

国際ファクタリングとは、輸出企業がファクタリング業者に申し込み、海外取引による売掛金の支払いを保証してもらうファクタリングのことです。4社間取引である点が、国際ファクタリングの主な特徴として挙げられます。

本記事では、国際ファクタリングのメリット・デメリットや、L/C(信用状)との違いについて解説します。

目次

国際ファクタリングとは

国際ファクタリングとは、主に海外企業との貿易をしている企業がリスク軽減のために結ぶ契約のことです。ここから、国際ファクタリングの仕組みや流れ、特徴について詳しく解説します。

そもそもファクタリングとは

そもそもファクタリングとは、売掛金や受取手形のように企業が保有する売掛債権をファクタリング業者に売却することで、資金を調達する方法を指します。

ファクタリングを主に利用するタイミングは、銀行の審査にとおらず融資を受けられない場合、資金繰りが悪化しすぐに現金が必要な場合などです。また、一般的にファクタリングには2社間ファクタリングと、3社間ファクタリングの2種類があります。

2社間ファクタリングとは、資金調達する企業とファクタリング業者で契約を結ぶ方式です。2社間ファクタリングの場合、資金調達した企業が取引先から売掛金を回収してから、ファクタリング業者に支払います。

3社間ファクタリングとは、資金調達する企業とファクタリング業者、資金調達する企業の取引先とファクタリング業者で契約を結ぶ方式です。3社間ファクタリングでは、資金調達した企業の取引先が直接ファクタリング業者に売掛金を支払います。

ファクタリングの主なメリットは、貸借対照表上「負債」として計上する必要がない点、一般的に銀行融資よりもすぐに資金を調達できる点などです。ただし、利用にあたって手数料がかかること、売掛債権の範囲内でしか資金調達できない点に注意しなければなりません。

参考)ファクタリングとは

参考)負債とは

国際ファクタリングの概要・仕組み

「ファクタリング」は、一般的に資金を調達する企業も、その取引先の企業も国内企業のケースを想定しています。それに対し、「国際ファクタリング」は、海外取引を対象にしたファクタリングです。国際ファクタリングは、通常のファクタリングと一部仕組みが異なる部分があります。

一般的に、国際ファクタリングは海外企業へ輸出する日本企業が、日本のファクタリング業者にファクタリングを申し込み、海外取引による売掛金を保証してもらう仕組みです。取引後に発生した売掛金を、日本企業(輸出企業)は日本のファクタリング業者を通じて受け取ります。

海外取引において、取引で発生した売掛金を必ず回収できるとは限りません。そこで日本のファクタリング業者は、リスク軽減を図るために現地のファクタリング業者(ファクター)を通じて信用調査を実施し、問題ない場合にファクタリング契約を締結します。

国際ファクタリングの流れ

一般的な国際ファクタリングの流れは、以下のとおりです。

  1. 日本企業(輸出企業)が海外企業(輸入企業)と売買契約を締結する
  2. 輸出企業が輸入企業に対して、国際ファクタリングを利用することの承諾を得る
  3. 輸出企業が日本のファクタリング業者にファクタリングを申し込む
  4. 日本のファクタリング業者が、海外の提携ファクタリング業者に信用調査を依頼する
  5. 輸入企業の信用調査に問題がない場合に、4社間でファクタリング契約を締結する
  6. 輸出企業が商品を船積みする
  7. 輸出企業がインボイスと船積書類を国内ファクタリング業者に提出する
  8. 国内ファクタリング業者が海外の提携ファクタリング業者にインボイス情報を通知する
  9. 支払期日に、輸入業者が海外の提携ファクタリング業者に代金を支払う
  10. 海外の提携ファクタリング業者が日本のファクタリング業者に代金を送金する
  11. 日本のファクタリング業者が輸出企業に代金を支払う

なお、輸出企業に代金が支払われた段階で、ファクタリングの取引が完了します。

国際ファクタリングならではの特徴

通常のファクタリングは2社間もしくは3社間であるのに対し、4社間の取引である点が国際ファクタリングならではの特徴です。国際ファクタリングでは、日本企業(輸出企業)・取引先(輸入企業)・国内ファクタリング事業者に、海外ファクタリング事業者(ファクター)も加わります。

海外取引特有の事情(慣習・文化の違い・法律など)を考慮している点も、国際ファクタリングならではの特徴です。たとえば、日本から海外企業の信用調査を実施することが困難なため、国際ファクタリングにおいて、国内ファクタリング業者は提携する海外のファクタリング業者に調査を依頼しています。

従来のリスクヘッジ手段との違いとは

国際ファクタリングは、従来のリスクヘッジ手段と異なる手法です。従来、海外取引のリスクヘッジ手段として、L/C(信用状)が用いられてきました。

ここで、L/C(信用状)の概要について説明してから、国際ファクタリングと何が違うのかを解説します。

L/C(信用状)とは

L/Cとは、Letter of Creditを略した言葉で、「信用状」のことです。L/Cは、海外取引において、輸入企業の取引銀行が輸出企業の取引銀行に対して代金支払いを保証する書類を主に指します。

L/C(信用状)を用いた取引の主な流れは、以下のとおりです。

  1. 輸出企業が輸入企業と売買契約を締結する
  2. 輸入企業が取引銀行にL/Cの発行を依頼する
  3. 輸入企業の取引銀行が輸出企業の取引銀行にL/C通知を依頼する
  4. 輸出企業の取引銀行が輸出企業にL/Cを通知する
  5. 輸出企業が船積みする
  6. 輸出企業が船荷証券を受領したら、取引銀行に荷為替手形の買取を依頼する
  7. 輸出企業の取引銀行が輸出企業に代金を支払う
  8. 輸出企業の取引銀行が荷為替手形を輸入企業の取引銀行に送る
  9. 輸入企業の取引銀行が輸出企業の取引銀行に代金を支払う
  10. 輸入企業の取引銀行が輸入企業に船積書類の到着を案内する
  11. 輸入企業が取引銀行に代金を支払う
  12. 取引銀行から船積書類を受け取った輸入企業が、船会社に船荷証券を提出する
  13. 輸入企業が貨物を引き取る

L/C(信用状)を利用するメリットは、輸出企業も輸入企業も取引リスクを軽減できる点です。輸出企業は代金回収に遅れが出ること、輸入企業は代金を前払いすることを避けてスムーズに取引できます。

一方、手数料がかかる点がL/Cのデメリットです。輸出企業は信用状通知などで、輸入企業はL/Cの発行などで取引銀行に手数料を支払わなければなりません。

国際ファクタリングとL/C(信用状)取引の違い

国際ファクタリングとL/C(信用状)取引の主な違いは、仲介する業者・会社です。国際ファクタリングでは、ファクタリング事業者が取引先との間に入るのに対し、L/Cでは双方の取引銀行が仲介します。

L/C(信用状)の場合、信用金庫を含むさまざまな金融機関で利用できる可能性が高いです。一方、国際ファクタリングの場合、利用できる業者は国内に数社しかありません。

また、輸出企業と輸入企業のどちらが主体となって進めるかも主な違いです。国際ファクタリングの場合、輸出企業が輸入企業の同意を得た上でファクタリング業者に申し込みます。一方、L/Cは輸入企業が取引銀行に発行を依頼して始まる取引です。

国際ファクタリングを利用するメリット

国際ファクタリングを利用する主なメリットは、以下のとおりです。

  • L/C(信用状)開設の手間を省ける
  • スムーズに売掛債権を回収できる
  • 輸入企業が支払不能に陥っても債権回収できる

各メリットを解説します。

L/C(信用状)開設の手間を省ける

L/Cを開設する手間を省ける点が、国際ファクタリングを利用するメリットです。

海外取引にあたってL/C(信用状)を利用する場合、輸入企業が取引銀行へ信用状開設を依頼しなければなりません。また、そのほかにも輸出企業が荷為替手形の買取を依頼するなどの手続きが必要です。

その点、国際ファクタリングは基本的にインボイスと船積書類で対応できるため、手間がかかりません。

スムーズに売掛債権を回収できる

スムーズに輸入企業に対する売掛債権を回収できる点も、国際ファクタリングを利用するメリットです。

L/Cと比べて書類のやり取りが少なく、書類の不備によるやり直しや、相手から書類が届くまでの時間を短縮できます。そのため、国際ファクタリングを利用すれば代金回収が遅れて資金繰りが悪化することを未然に防げるでしょう。

輸入企業が支払不能に陥っても債権回収できる

万が一、輸入企業が支払不能に陥っても、債権回収できる点もメリットです。

原則として、国際ファクタリングではL/Cなしの送金取引が100%保証されます。輸入企業からの支払いが期日から90日以上遅延した場合でも、国内のファクタリング事業者が原則100%支払いを保証しているため、安心して海外企業と取引できるでしょう。

国際ファクタリングを利用するデメリット

国際ファクタリングを利用するデメリットは、以下のとおりです。

  • L/Cより手数料が高い
  • 海外企業の承諾が必要
  • 必ずファクタリングを利用できるとは限らない

デメリットをそれぞれ解説します。

L/Cより手数料が高い

L/Cよりも高い手数料がかかる可能性があることが、国際ファクタリングを利用するデメリットです。一般的に、国際ファクタリングでは、信用調査費用に1件あたり1万円以上の費用を支払わなければなりません。

また、取引金額によってかかる料率も、国際ファクタリングの方が高いことがあります。ただし、業者によって料率が異なるため、事前に確認した上で比較した方がよいでしょう。

海外企業の承諾が必要

海外企業の承諾が必要な点も、国際ファクタリングを検討する場合のデメリットとして挙げられます。

国際ファクタリングは、輸出企業・輸入企業・国内ファクタリング事業者・海外提携ファクタリング事業者の4社間で、契約する取引です。輸入企業の承諾を得られなければ、輸出企業が前向きでも国際ファクタリングを利用できません。

必ずファクタリングを利用できるとは限らない

輸入企業の同意があっても、必ずしも利用できるとは限らない点が、国際ファクタリングのデメリットです。

ファクタリング事業者によって、国際ファクタリングでカバーできないケースが定められています。あらかじめファクタリング事業者に条件を確認した上で、国際ファクタリングの契約を締結するようにしましょう。

そのほか、国際ファクタリングのサービスを提供している事業者が少ない点もデメリットとして挙げられます。

国際ファクタリング向きの企業の特徴

国際ファクタリング向きの企業の特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 初の海外展開を検討している
  • 銀行でL/C(信用状)を開設できない

それぞれ確認していきましょう。

初の海外展開を検討している

初の海外展開を検討している企業は、国際ファクタリングの利用に向いています。

今まで海外の企業と取引したことがない場合、リスクを軽減するために信用調査した方が望ましいです。しかし、法律や文化、言語の違いなどの壁があるため、現地とコネクションがない限り自社で信用調査を実施することは難しいでしょう。

国際ファクタリングでは、信用情報調査も依頼できるため、取引先の信用情報を把握できます。

銀行でL/C(信用状)を開設できない

取引相手(輸入者)が銀行でL/C(信用状)を開設できない場合も、国際ファクタリングを検討するとよいでしょう。

L/Cを発行するには、銀行による輸入者に対する所定の審査が必要です。L/Cの審査は厳格なため、輸入者が現地でL/Cを発行できない場合でも、輸出者が国際ファクタリングを申し込むことでリスクを軽減できる可能性があります。

国際ファクタリングに対応している会社・業者とは

日本で国際ファクタリングに対応している主な会社・業者は、以下のとおりです。

  • 三菱UFJファクター
  • みずほファクター
  • SMBCファイナンスサービス

いずれも、世界の銀行や子会社ファクターなどで構成されるFCIのネットワークを利用しています。各社の概要を確認していきましょう。

三菱UFJファクター

三菱UFJファクター株式会社は、メガバンクである三菱UFJ銀行の完全子会社です。東京本社・支社のほかに、名古屋・大阪・九州に支社を構えており、ファクタリング業務・代金回収業務・でんさい一括ファクタリング業務を担っています。

三菱UFJファクターで国際ファクタリング利用にかかる費用は、ミニマムチャージ(最低料金、最低手数料)が1万円です。原則として輸出者負担で、インボイス金額に対して所定料率をかけた金額が保証料としてかかります。また、信用調査にかかる費用は、1バイヤーにつき一律1万円(税別)です。

なお、取扱できる国については非公開のため、事前に事業者に直接お問い合わせください。

参考)三菱UFJファクター「サービス概要」

みずほファクター

みずほファクター株式会社は、メガバンクであるみずほ銀行の完全子会社です。東京本社のほか、大阪と福岡に支店を構えており、国内ファクタリング業務・代金回収業務・国際ファクタリング業務を担っています。

みずほファクターで国際ファクタリングを利用する場合も、インボイス金額に対して所定料率を乗じて保証料率がかかる仕組みで、ミニマムチャージは1万円です。また、初回のみ、バイヤーの所在国によって1件あたり最大3万円(税別)の調査費用がかかることがあります。

なお、みずほファクターで利用可能な国は、以下のとおりです。

  • 米州(アメリカ・カナダ・チリ・ブラジル・メキシコ)
  • 欧州(イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・ポルトガル・オランダ・ベルギー・ルクセンブルク・フィンランド・ノルウェー・スウェーデン・デンマーク・アイルランド・スイス・オーストリア・ポーランド・チェコ・スロバキア・ハンガリー・ルーマニア)
  • アジア(韓国・台湾・中国・香港・シンガポール・タイ・インド・ベトナム・インドネシア・フィリピン・マレーシア)
  • オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)
  • 中近東・アフリカ(トルコ・南アフリカ・UAE・イスラエル)

ただし、金融情勢によって利用できないケースもあるため、事前に事業者にお問い合わせください。

参考)みずほファクター「国際ファクタリング 輸出ファクタリング」

SMBCファイナンスサービス

SMBCファイナンスサービス株式会社は、SMBCグループの一員である三井住友カードの完全子会社です。SMBCグループには、メガバンクである三井住友銀行も属しています。SMBCファイナンスサービスは名古屋本店と東京本社を構えており、主な業務内容はカード事業・信販事業・トランザクション事業・融資事業などです。

SMBCファイナンスサービスの国際ファクタリングならではの特徴として、信用リスクだけでなく、カントリーリスクも引き受けることが公式HPで明記されている点が挙げられます。

なお、手数料や対応可能国については非公開のため、直接事業者にお問い合わせください。

参考)SMBCファイナンスサービス「ファクタリング(保証業務)」

国際ファクタリングまとめ

国際ファクタリングとは、輸出企業がファクタリング業者に申し込み、海外取引による売掛金の支払いを保証してもらうファクタリングのことです。同じく海外取引のリスク軽減を図るL/C(信用状)では銀行に対して申し込むのに対し、国際ファクタリングではファクタリング業者に申し込む点が異なります。

国際ファクタリングの主なメリットは、原則としてファクタリング業者が100%保証するため、輸入企業が支払不能に陥っても債権回収できる点です。一方、海外企業(輸入企業)の同意が必要な点がデメリットとして挙げられます。

今後初の海外展開の予定がある場合は、リスク軽減手段として国際ファクタリングも検討しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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