不良債権とは?回収および会計処理の方法をわかりやすく解説

更新日:2024年05月27日

不良債権とは

不良債権とは、貸出債権のうち元本の返済や利息の支払いが滞ったり、支払いが行われなかったりする債権のことです。不良債権が発生すると、予定していた代金の回収ができず財務が悪化する可能性があります。不良債権の概要や回収方法、会計処理方法などをあらかじめ確認し、対処方法を押さえておきましょう。

目次

「不良債権」とは回収が難しい債権のこと

不良債権とは、企業の経営悪化や倒産等によって元本の返済や利息の支払いができない、もしくはその可能性が高い債権です。一般的に銀行等の金融機関が行った融資のうち、回収ができなくなったものを不良債権と呼びますが、個人でやり取りした貸付金や法人の売掛金なども不良債権とされます。

不良債権には、いくつかの種類があります。ここではまず不良債権の具体例および、不良債権の程度を示す「不良債権比率」を確認しましょう。

不良債権の具体例

個人で考えられる不良債権には、未収家賃や未収地代、未回収貸付金などがあります。法人で考えられる主な不良債権は、以下のとおりです。

不良債権の種類 詳細
売掛金受取手形 商品やサービスを引き渡した代金の売上債権
取引の相手が代金の支払いをしなかったときに、不良債権となる
貸付金 関連会社や特定の個人に貸し付けたお金
所定の期日までに返済が行われなかったときに、不良債権となる
立替金 社内外に関わらず、取引先や従業員が本来負担するべきお金を、一時的に建て替えるもの
負担した発送費等が回収できないと不良債権となる

上記のほか未収加工料や未収家賃、未収請負金、工事未収金等も不良債権になる可能性があります。

不良債権はもともとは債権のため、一見すると額面どおりの資産があるように見えるでしょう。しかし資金を回収できない場合には、その価値は大きく低下します。健全な財務体質を維持するには、不良債権をいかに減らせるかが重要なポイントです。

不良債権の程度を示す「不良債権比率」

不良債権比率とは、債権のうち不良債権が占める割合です。不良債権比率を知ることで、未回収リスクが高い債権がどのくらいあるかを測れます。不良債権比率は、以下の式で計算します。

不良債権比率(%)=不良債権の合計額÷売掛金など債権の合計額×100

仮に、売掛金などの債権が300万円で不良債権が2万円であれば、不良債権比率は約0.67%(2万円÷300万円)です。

当然のことながら不良債権比率が低いほうが、健全な経営状態であるといえます。しかし不良債権比率をどのくらいに収めるべきかは、業種によっても異なるため一概にはいえません。不良債権比率を考えるにあたっては、一括評価金銭債権の貸倒引当金における「法定繰入率」も1つの指標となります。

一括評価金銭債権の貸倒引当金とは、損失となる見込みがない債権を将来の未回収リスクに備え、負債として計上するものです。国税庁では、貸倒引当金の法定繰入率を業種別に以下のように定めています。

業種 法定繰入率
卸売および小売業(飲食店業を含む) 1.0%
製造業(電気業を含む) 0.8%
金融および保険業 0.3%
割賦販売小売業等 1.3%
上記以外 0.6%

このように、業種によって貸倒引当金として計上できる割合に大きな差があります。不良債権比率をみる際には、ぜひこの割合も参考にしてください。

参考)貸倒引当金の繰入限度額を計算する場合における法定繰入率の取扱い|国税庁

不良債権が発生したときの問題点

不良債権が発生すると、どのような問題が起きるのでしょうか。この章では、法人の売掛金を例に解説します。

運転資金がさらに増える

売掛金は、後払いの売上代金のことです。現金取引であれば、その場で売上代金を回収できますが、売掛金は後日に売上代金を回収します。お金を回収する権利があるため、売掛金は債権なのです。この売掛金が不良債権になり、支払が遅延、貸倒になると何が起きるのでしょうか。

通常のビジネスサイクルは、仕入れ、販売、回収といった段階を進んでいきます。このとき、売上代金の回収よりも先に仕入代金の支払期限が到来することが多いため、売掛金の回収までを運転資金が必要で、主に借入金で資金調達をします。こういった場合に、もしも売掛金が不良債権になったら、借入金の返済原資が不足して資金ショートしてしまうかもしれません。あてにしていた売掛金が回収できず困った経験がある方もおられるでしょう。また、売掛債権担保融資で借り入れた場合、担保の売掛金が不良債権になってしまったら、返済資金は不足し、担保価値もなくなるという二重苦にもなりかねないのです。

ちなみに、運転資金が不足すると、黒字なのに倒産する黒字倒産の憂き目に遭ってしまう懸念もあります。

収益が減少し、健全性が悪化する

不良債権の会計処理の方法は後述しますが、ここでは売掛金が回収不能になり貸倒損失を計上した場合を例に、その影響について解説します。貸倒損失を計上すると、その分だけ 損失を計上するため収益が減少します。また、売掛金の分だけ流動資産が減少するため、短期的な健全性が悪化します。健全性というのは「支払能力」のことで、流動資産は1年以内の支払に充てる原資と見なすため、売掛金が貸倒すると短期的な支払能力が悪化するのです。

なお、短期健全性の経営指標の中で、売掛金も計算対象に含める指標には「流動比率」や「当座比率」があります。それらの指標も常にチェックしておきましょう。

不良債権の回収方法

債権が回収できないもしくは、回収できなくなる可能性が高いときには、回収の手続きを進めなければなりません。不良債権の回収は、以下の6つの手順で行います。

  1. 電話で支払いを促す
  2. 催告書を郵送する
  3. 民事調停で話し合う
  4. 裁判所を通して支払督促する
  5. 裁判を行う
  6. 強制執行により相手の財産を差し押さえる

民法166条によると、不良債権には原則として支払期限から5年の時効があります。そのため不良債権が発生したときには、速やかに対処することが重要です。

参考)民法第166条| e-Gov法令検索

電話で支払いを促す

債権の回収に遅れが発生したときにはまず、債務者に対し電話か書面で支払いを促しましょう。場合によっては話し合いの場を設け、相手方に支払う気持ちがあるのか、返済能力があるのか、なぜ支払いが遅れたのかなどを確認する必要があります。

今すぐの支払いが困難な場合には、分割や支払期間の延長を提案しても良いでしょう。債権を回収するには、相手とのコミュニケーションをしっかりととり、両者にとって実現可能な解決案を見つけることが肝心です。

催告書を郵送する

電話や対面でのコンタクトがとりにくい、話し合いでは解決が難しいときには、催告書を郵送します。催告書とは、債務の支払いを速やかに行うよう促すものです。返済が滞っていることが相手方に伝わるよう、支払期限や支払金額を改めて明記しましょう。

催告書を郵送しても債務の履行がなされない場合には、督促状を郵送します。督促状は、債務の履行を促す最終通告です。期限内に支払いが行われなかった場合には法的措置をとることを記載し、内容証明郵便により郵送しましょう。

内容証明郵便には、不良債権の時効を中断する効果があります。そのため時効間近の不良債権がある場合には、内容証明郵便の郵送は有効な手段となります。内容証明郵便は特殊な郵便物のため、弁護士が郵送することが一般的です。送付を検討しているのであれば、事前に弁護士に相談しましょう。内容証明郵便の作成依頼費用の相場は、1万円~5万円程度です。

民事調停で話し合う

催告や督促を行っても支払いが行われないときには、民事調停での話し合いが選択肢となります。民事調停とは、当事者の間に一般の方から選ばれた調停委員および裁判官が入り、話し合いをする方法です。法的手段のなかでは比較的円満な解決方法で、費用も低めといわれます。法的手段に進むのであれば、まずは民事調停を検討してください。

民事調停は原則として、相手方の住所がある地区の簡易裁判所への申し立てでスタートします。期日までに話し合いによる合意が得られ調停が成立すると、裁判での和解と同様の効果が得られます。

一方、期日を迎えても話し合いで解決しないときや相手方が不出頭のときは、調停は不成立です。不成立になった場合は調停に代わる決定を目指すか、裁判を行うことになります。

裁判所を通して支払督促する

民事調停で調停不成立になったときには、裁判による解決が必要です。しかし裁判は解決までの期間が長く、費用もかかります。速やかな解決を目指すのであれば、裁判の前段階として支払督促を検討してください。

支払督促とは、裁判所を通じて債務者に支払いを求める公的な手続きです。書類審査のみで手続きを進められるため、裁判と比較して手間や費用を抑えられます。相手が支払督促に対して異議を申し立てなければ、裁判の判決と同じ法的効力を得られます。債務者が異議申し立てをしたときには、訴訟を行わなければなりません。

裁判を行う

支払督促でも債務が履行されないときには、裁判を行うことになります。裁判は最終的な回収手段であり、債権者の主張が認められれば債権回収を法的に進められます。一方で、他の回収方法と比較し費用や時間がかかる点には注意が必要です。

裁判には債権が60万円以下の場合に選択できる少額訴訟と、民事訴訟があります。少額訴訟は1回の期日で審理され判決が出るため、手続きの手間や負担を抑えられます。ただし、少額訴訟で解決できないときには、民事訴訟に移行する可能性があることは押さえておきましょう。

強制執行により相手の財産を差し押さえる

裁判所で支払いを求める判決が出たにもかかわらず、債務が履行されないときには裁判所に強制執行を申し立てます。強制執行が行われれば債務者の銀行預金や売掛金、商品といった財産が差し押さえられ、債務の返済に充てられます。

強制執行の手続きは、弁護士に依頼することが一般的です。裁判で判決が出ても思うように債務の回収が進まないときには、速やかに弁護士に相談しましょう。

不良債権は回収できないこともある

前述の手順どおりに回収手続きをしたとしても、不良債権の回収がうまく進まないケースがあります。ここでは、回収が期待できるパターンと回収が難しいパターンを、それぞれ3つ紹介します。

不良債権の回収では時間や手間、費用がかかり、債権者の負担になることも少なくありません。債権回収が思うように進まないことで、通常の業務に支障が出るケースもあります。債権回収の具体的なパターンをあらかじめ知っておくことで、スムーズに対処できるよう備えましょう。

不良債権の回収が期待できるパターン

まずは、不良債権の回収が期待できるパターンを3つ紹介します。

早い段階で回収手続きを始めた

回収が期待できるパターンの1つめは、早い段階で回収手続きを始めたときです。支払いが行われない原因の1つとして、支払期日を忘れているケースがあります。その場合は、期日が過ぎていることを知らせれば速やかに返済が行われるでしょう。

また、債務者の資金繰りが厳しく、債権の支払いが後回しにされる可能性もあります。相手方の返済における優先順位を上げるためには、期日到来前に未払いの連絡を入れて催促することも効果的です。

黒字への転換期が予測できる

回収が期待できるパターンの2つめは、黒字への転換期が予測できるときです。返済期日時点には債務者に返済能力がなかったとしても、今後黒字に転換するのであれば支払いを受けられる可能性が高まります。

黒字になるであろう時期がわかっているのであれば弁済期日を遅らせる、分割での支払いにするなどの対応をとることで、回収を進めやすくなるでしょう。

連帯保証や担保が付いている

回収が期待できるパターンの3つめは、連帯保証や担保が付いているときです。企業間の取引の場合、契約時に連帯保証や担保付与の特約を付けられます。

連帯保証が付いている場合、債務者に返済能力がないときは保証人への支払い請求ができます。また、担保が付与されている場合は、担保の売却による返済が可能です。不良債権の発生を防ぎたいときには、契約時に連帯保証または担保の付与をぜひ検討してください。

不良債権の回収が難しいパターン

次に、不良債権の回収が難しいパターンを3つ紹介します。

法的手続きにより債権が切り捨てられている

回収が難しいパターンの1つめは、法的手続きにより債権が切り捨てられているときです。経営破綻により法的に倒産手続きが行われると、未収債権は切り捨てられ回収が困難になります。債権の回収が難しくなる主なケースには、以下があげられます。

  • 会社更生法の更生計画
  • 民事再生法の再生計画
  • 会社法の特別清算

法的手続きにより債権が失われたときには、資金の回収は諦めるしかなさそうです。

債権が時効を迎えている

回収が難しいパターンの2つめは、債権が時効を迎えたときです。先述のとおり、不良債権の時効は原則として弁済期日から5年と決まっています。5年経過後は時効により債権の回収が難しくなるため、時効間近の債権があるときには速やかに回収手続きを進めることが肝心です。

なお、時効は中断できます。中断をするには、前項で解説した内容証明郵便の送付や裁判所の請求が必要です。時効が迫っているにもかかわらず、回収手続きが進まないときには、併せて時効の中断手続きも進めましょう。

相手側の支払い能力が見込めない

回収が難しいパターンの3つめは、相手側の支払い能力が見込めないケースです。支払い能力が認められない主な事例には、以下があげられます。

  • 経営破綻
  • 債務超過
  • 債務者の死亡や行方不明
  • 天災や事故により支払い能力がなくなった

債務者に支払い能力がない場合、どれだけ催促をしても債権の回収はできません。このような状況に陥ったときには、連帯保証や担保による返済といった債務者以外からの回収を目指すしかないでしょう。

【パターン別】不良債権の会計処理方法

不良債権の回収手続きを進めても、回収できない債権が発生する可能性をゼロにはできません。重要なのは、不良債権が発生したときにしっかりと会計処理をし、お金の流れを記録して財務状況を把握することです。

ここでは、不良債権が発生した際の会計処理方法について、貸倒損失を使用するケースと貸倒引当金を使用するケースにわけて解説します。

【回収不能な不良債権】貸倒損失を使用する

経営破綻や時効等により回収不能な不良債権が発生したときには、貸倒損失の勘定科目により会計処理します。仮に、100万円の売掛金が回収不能な不良債権になった場合の処理方法は、以下のとおりです。

借方 貸方
貸倒損失 100万円 売掛金 100万円

なお会社が破綻した時点では、債務整理により不良債権のうちのいくらかを回収できる可能性があります。たとえば、100万円のうち50%を保証する特約が付与されていたときには、以下のように処理します。

借方 貸方
破産更生債権等 50万円 売掛金 50万円
貸倒引当金繰入 50万円 貸倒引当金 50万円

【回収困難な不良債権】貸倒引当金を使用する

回収困難な不良債権が発生したときには、回収が困難であることが現実的になった時点で、貸倒引当金を使った会計処理をしましょう。たとえば200万円の売掛金のうち、150万円について支払期限を3ヵ月超過している場合の会計処理は以下のとおりです。

借方 貸方
貸倒引当金繰入 150万円 貸倒引当金 150万円

貸倒懸念債権に対する貸倒引当金は、先述した法定繰入率に相当する分までしか損金に算入できないことは押さえておきましょう。

不良債権まとめ

不良債権とは、企業の経営悪化や倒産等によって元本の返済や利息の支払いができない、もしくはその可能性が高い債権です。具体的には売掛金や受取手形、貸付金等の支払いを受けられなかったときに、不良債権が発生します。

不良債権が発生すると予定していた収入を得られず経営状態の悪化にもつながるため、早めに回収手続きを進めましょう。手続きは電話や書面による催促から、法的手続きである調停や裁判までさまざまです。どのような手続きをとるかによってかかる費用や期間が異なるため、事前に手順を押さえておくことが肝心です。

返済期日の失念や一時的な財政悪化、連帯保証人や担保が付加されている場合等は、債権を回収できる可能性はあります。一方、経営破綻や時効により債権自体が消滅したとき、死亡により債務者がいなくなったとき等は、不良債権の回収は難しくなるでしょう。

回収困難が現実的になったときには、その時点で会計処理をして、資金の流れをしっかりと記録し経営状態を把握することが重要です。

売掛金に関しては、ファクタリングを利用することで未回収のリスクを回避することも可能です。ただし手数料もかかるため、利用時にはよく検討するようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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