資金調達ラウンドとは?シリーズA・Bの意味や調達方法を解説

更新日:2024年10月18日

資金調達ラウンド

資金調達ラウンドとは、企業の規模や成長段階を表す資金調達のための指標です。この記事では資金調達ラウンドの基本事項および、各段階の詳細、スタートアップ企業における資金調達の注意点を解説します。自社に最適な資金調達方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

資金調達ラウンドとは

資金調達ラウンドとは、スタートアップ企業が投資家などから資金調達する際に利用される、会社の成長段階の指標です。企業が資金調達をする方法には、投資家からの投資や金融機関による融資、株式の発行等さまざまな方法があります。その中から、自社の成長段階に合った手段を選ぶことが何よりも重要です。

自社の成長段階を正しく把握するには、以下の事業ステージと投資ラウンドの関係を押さえておきましょう。

事業ステージ シード アーリー ミドル レイタ―
投資ラウンド
  • エンジェル
  • プレシード
  • シード
  • プレシリーズA
  • シリーズA
  • プレシリーズB
  • シリーズB
シリーズC以降(上場)
特徴
  • 起業前の準備
  • アイデア段階
  • 起業直後
  • プロダクトのリリース段階
  • 経営が軌道に乗り始める
  • 新規プロダクトの開発段階
  • 経営が黒字になる
  • IPOの検討

たとえば企業の実績や信用力、知名度等が低いシードやアーリーの段階では、幅広い投資家から資金を集めたり、多額の融資を受けたりすることは難しいと考えられます。企業を成長させるには、自社の現在のステージを把握し今後の目標を見据えた資金調達をすることがポイントです。

エンジェルラウンド・シード

ここからは投資ラウンドごとに必要な資金および、資金調達方法を解説します。まずは、エンジェルラウンドとシードについて見ていきましょう。

おもな必要資金

エンジェルラウンドおよびシードとは起業直後でビジネスの大枠のみが決まっており、プロトタイプを開発している段階です。この時点ではそれほど多くの資金は必要ではなく、一般的に数百~数千万円の調達を目指します。

集めた資金の主な使い道は、市場調査費や人件費、会社設立費等です。また、企業の成長に必要な優秀な人材の確保に活用されることもあります。

資金調達方法

エンジェルラウンドおよびシードにおける主な資金調達方法は、以下のとおりです。

エンジェルラウンド シード
  • エンジェル投資家
  • エンジェル投資家
  • 日本政策金融公庫
  • クラウドファンディング

エンジェル投資家とは、創業から間もない企業に対し資金提供をする投資家です。資金を提供する代わりに、一般的に株式や転換社債などを受け取ります。

日本政策金融公庫とは、新規開業資金を融資する政府系金融機関です。無担保無保証で申込ができ、一般的な金融機関の融資よりも審査基準がゆるく低い金利で借入可能なため、スタートアップ企業でも資金調達がしやすいといわれます。ただし、申込から融資まで数週間~1ヵ月かかる点には注意が必要です。

クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人から援助という形で資金提供を受けるものです。実績や知名度がない企業でも、成長性が期待できる魅力的なサービスや商品があるときにはまとまった資金調達も目指せます。

またこの段階では、インキュベーターやシードアクセラレーターといった、事業の創出や助言、人脈紹介などをサポートする団体や組織を利用することもあります。

シリーズA

シリーズAはビジネスをスタートし、サービスや商品の販売を開始した段階です。ここでは、シリーズAの必要資金と資金調達方法を見ていきましょう。

おもな必要資金

シリーズAでは主に、顧客の獲得や販路拡大に努めます。マーケティング費や人件費、設備投資費などさまざまなコストがかかるため、数千万~数億円の資金が必要です。

シリーズAは、アーリー期とミドル期にわけられます。アーリー期は事業がまだ軌道に乗っておらず売上が限られるため、赤字の企業も少なくありません。この段階では、事業の立ち上げや成長のために資金が使用されます。

ミドル期は事業の成長に伴い売上が増加し、利益が出始める段階です。設備投資や人件費などをかけて、さらなる事業の成長を目指します。設備投資の規模によっては、多額の資金が必要です。

資金調達方法

シリーズAにおける資金調達方法は、以下の通りです。

  • エンジェル投資家
  • ベンチャーキャピタル(VC)
  • コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)
  • 金融機関からの融資
  • 補助金や助成金

ベンチャーキャピタルとは、高い成長性が見込まれるスタートアップ企業やベンチャー企業に投資を行う会社です。出資の見返りとして、株式を受け取ります。

コーポレート・ベンチャーキャピタルは、事業会社が設立したファンドを通じて未上場企業に出資をする組織です。

金融機関からの融資は、先述した日本政策金融公庫や銀行等からの借入です。すでに商品やサービスの販売が開始されていることから、民間の銀行からの借入も可能になります。

また、国や地方公共団体による補助金や助成金も資金調達方法として有効です。各補助金の詳細は国や地方公共団体のホームページで確認できます。

シリーズB

シリーズBは商品やサービスが評価されビジネスが軌道に乗り、黒字化する企業が出始める段階です。シリーズBにおける必要資金および資金調達方法を確認しましょう。

おもな必要資金

シリーズBでは、経営基盤の強化や市場規模の拡大を目指します。そのため設備投資費や販売促進費、新規顧客の開拓費、人件費、製品・サービスの改良費が必要になります。より積極的な事業展開のため、数億~数十億円の資金が必要です。

シリーズBでは、株式公開(IPO)を見据えた資金調達も実施します。IPOでは、以下の上場費用が必要です。

プライム市場 スタンダード市場 グロース市場
上場審査料 400万円 300万円 200万円
新規上場料 1,500万円 800万円 100万円

新規公開を目指しているのであれば、上場資金も計画的に用意しましょう。

参考)日本取引所グループ「上場料金」

資金調達方法

シリーズBにおける資金調達方法は、以下のとおりです。

  • ベンチャーキャピタル(VC)
  • コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)
  • 金融機関からの融資
  • 助成金・補助金(IT導入補助金・ものづくり補助金など)

助成金や補助金の一例には、IT導入補助金やものづくり補助金などが挙げられます。IT導入補助金とは、生産性を上げるためのITツールの導入について受けられる補助金です。補助金の対象となる費用には、ソフトウェア購入費やクラウド利用料(最大2年分)、セキュリティ対策費用等があります。

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者の製品開発などを支援する補助金です。補助金の対象には働き方改革や賃上げ費、試作品の開発費、設備投資費等が挙げられます。

補助金や助成金は、原則として返済が不要です。ただし後払いのものが多いため、資金の受け取りには時間がかかる点には注意しましょう。

シリーズC以降

シリーズCは、黒字経営が安定する段階です。企業の成長や事業拡大に応じてシリーズD以降の投資ラウンドが続く企業もありますが、イグジット(投資回収)を達成した会社はシリーズCで資金ラウンドが終了します。

おもな必要資金

シリーズCでは黒字経営の安定により、イグジットを目指した積極的な事業展開が行われます。具体的には、既存事業を活かした新規事業への挑戦や海外展開、M&A、IPO(新規株式公開)などです。

積極的なビジネス展開には、より多額の資金が必要になります。そのためシリーズCでは、数十億~数千億円の資金調達が求められます。

資金調達方法

シリーズCにおける資金調達方法の一例は、以下のとおりです。

  • ベンチャーキャピタル(VC)
  • 金融機関の融資
  • PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)
  • IPO

PEファンドとは投資ファンドの1つで、ベンチャーキャピタルと非常によく似た性質をもちます。PEファンドの特徴は、ビジネスモデルが確立した企業に投資をする点です。株式の過半数を取得することで、経営への関与と支援をします。

IPOとは、企業が初めて株式を証券取引所に上場させることです。上場により市場での売買が可能になるため、多くの投資家から資金を集められるようになります。

なお、一般的にベンチャー企業やPEファンドは、IPO実施のタイミングで保有する株式を売却し投資資金を回収します。

スタートアップ企業における資金調達の注意点

最後に、スタートアップ企業が資金調達する際に押さえておくべき注意点を解説します。

自社のステージを把握し計画的に調達を進める

資金調達では自社のステージをしっかりと把握し、計画的に調達を進めることが重要です。資金調達には融資や補助金、投資家からの投資等いろいろな種類があるものの、資金が必要なときにすぐに投資や融資を受けられるとは限りません。

資金調達のタイミングが遅れると、必要な施策が実施できなくなる可能性もあります。資金調達をするにあたっては、先のステージや事業計画を見据えて行動しましょう。

資金に余裕がある時点から調達をスタートする

資金調達を優位に進めるには、スケジュールに余裕をもって交渉を進める点もポイントです。
資金がない状態では足元を見られ、スムーズに交渉を進められず納得がいかない調達条件となる可能性もあります。

一般的に資金調達には、2~3ヵ月かかるといわれます。数ヵ月先の資金状況も考慮し、資金が尽きる前に早めに調達をスタートしてください。

資金調達時の契約や条件を十分に確認する

自社に不利な資金調達をしないためには、資金調達時に契約や条件の内容を十分に確認することが重要です。

ベンチャーキャピタルやPEファンドから投資を受ける際は、一般的に見返りとして株式の一部を譲渡します。その際に持株比率の50%超の株式を渡してしまうと、経営権を失う可能性があります。株式を譲渡する際には、譲渡により持株比率がどのように変わるかをしっかりと確認したうえで契約を進めてください。

複数の資金調達方法を用意する

資金調達を目指すのであれば、複数の資金調達方法を用意すると安心です。資金調達方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。また、投資家や金融機関によって、資金調達の条件が変わることもあります。

1つの調達方法に固執するのではなくいくつかの調達方法を並行して検討し、最終的に自社にとってもっとも好条件であると感じるものを選びましょう。

資金調達ラウンドのまとめ

資金調達ラウンドとは、スタートアップ企業が投資家などから資金を調達する際に利用される、会社の成長段階の指標です。資金調達ラウンドを活用すれば、自社の成長段階の把握と適切な資金調達ができるようになります。

資金調達ラウンドは、エンジェルラウンドからシリーズCまでの4つにわけられます。資金調達を希望してから実際に手元に資金を得るには一般的に2~3ヵ月かかるといわれるため、先のラウンドを見据えて計画的に手続きを進めることが重要です。

資金調達ラウンドを活用した戦略的な資金調達をすることで、ぜひ事業の拡大と自社の成長を実現させてください。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒103-0006
東京都中央区日本橋富沢町12-8 Biz-ark日本橋6F
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

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