借入金とは~仕訳、種類、短期と長期、支払利息の計算~

2023.02.07

借入金

借入金は、借用証書や約束手形などによって他者から借りたお金を指します。借入金には、貸し借りの方法によっていくつかの種類があり、会計上の処理方法も異なります。今回は、借入金の概要や種類、仕訳方法について解説します。

借入金の仕訳

ここからは、借入金の会計処理について紹介します。借入金の仕訳方法は、短期借入金か、長期借入金かによって異なります。使用する勘定科目とともに、借入金の仕訳方法を覚えておきましょう。信用保証協会の保証を受けている場合の保証料の仕訳については、以下の記事を参考にしてください。参考)融資の保証料の仕訳

「借入金」と「支払利息」の勘定科目を使用する

借入金に関する仕訳には、「借入金」と「支払利息」の勘定科目を使用します。「借入金」は、外部からお金を借りた際に使用する勘定科目のことです。また、「支払利息」とは、利息を支払った際に使用する勘定科目です。先述のとおり、借入金はお金を借りる方法によって4種類に分けられますが、いずれの方法でも仕訳方法は同じです。

支払利息の計算方法

支払利息については、「元金均等返済方式」か「元利均等返済方式」といった返済方式によって計算方法が異なります。それぞれの支払利息の計算方法は、以下のとおりです。

元金均等返済方式:借入金×金利÷借入期間 
元利均等返済方式:(借入残高×金利)÷365×借入日数

ここからは、返済期日が10ヶ月の借入金1,500万円と、支払利息10万円を返済した場合の仕訳方法を見ていきましょう。返済期間が10ヶ月となると、借入金の勘定科目には「短期借入金」を使います。また、すでに返済しているため、借入金と支払利息は「借方」にきます。これらを踏まえて、この場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
短期借入金 15,000,000 普通 15,100,000
支払利息 100,000

短期借入金の仕訳

返済期間が1年以下の借入金を仕訳する際の勘定科目には「短期借入金」を使います。短期借入金を借り入れた際は、勘定項目に「短期借入金」と記して、金額を貸方に記入します。返済した際は、借入金を借方に記載しましょう。ここからは、短期借入金の仕訳例を見ていきます。

例)金融機関から返済期間10ヶ月の借入金1,000万円を借り入れ、普通預金で入金された

借方 貸方
普通預金 10,000,000 借入金 10,000,000

まず、借入金が入金されたタイミングでは、短期借入金は貸方に記載します。次に、普通預金で入金されているため、借方の勘定科目は「普通預金」を使います。これらを踏まえた仕訳例は、以下のとおりです。

例)半年前に借り入れた借入金300万円を、利息10万円とともに普通預金から返済した

借方 貸方
短期借入金 3,000,000 普通預金 3,100,000
支払利息 100,000

この場合は、借入金を返済していることから短期借入金は貸方に記載します。支払った利息については「支払利息」の勘定科目を用いて、借方に記載します。

長期借入金の仕訳

借入期間が1年を超える場合は、「長期借入金」という勘定科目を使って仕訳します。長期借入金の仕訳方法は、短期借入金と同じです。ただし、短期借入金と長期借入金を別々に会計処理している場合は、来年度中に返済予定分の借入金を、長期借入金から短期借入金に振替える仕訳をしなければなりません。では、例とともに長期借入金の仕訳方法を見ていきましょう。

例)借入金を借入期間3年で銀行から300万円借り入れ、当期返済分の長期借入金20万円を利息とともに返済した

借方 貸方
普通預金 3,000,000 長期借入金 3,000,000円

まずは、借入金が普通預金から入金された場合に、上記のように仕訳をします。

借方 貸方
長期借入金 200,000 普通預金 203,000
支払利息 3,000

次に、当期返済分の長期借入金20万円を、利息3,000円とともに普通預金から支払ったことについて、借方に記載します。

借入金は他者から借りたお金

借入金とは、他者から借りたお金のことです。金融機関からの融資をはじめ、親会社や親族などから借り入れた金銭も借入金に含まれます。企業においては、新事業に向けた資金繰りや設備投資などを実施する際に、借り入れをするケースが一般的です。このような金銭の借入には利息が生じるため、債務となる元本とは別に会計処理をする必要があります。また、借入金の勘定科目は、返済までの期間によって変わります。返済までの期間が1年以内の場合は「短期借入金」、返済までの期間が1年を超える場合は「長期借入金」という勘定科目が使われます。

借入金の種類は4つある

借入金と一口に言っても、お金を借りる方法はさまざまです。借入方法によって、4種類の借入金に分けられます。

  • 証書貸付
  • 手形貸付
  • 手形割引
  • 当座借越

ここからは、それぞれの種類の概要について解説します。

金銭消費貸借契約を結ぶ「証書貸付」

証書貸付とは、金銭消費貸借契約を結んで金銭を借り入れることです。金銭を融資する人と借り入れる人が金銭消費貸借契約を結び、その契約書と引き換えにお金を借ります。金銭消費貸借契約書には、貸付金額や利率、返済期日など、借入に関する条件が多数記載されており、両者が契約書に合意した証となります。金銭を借りた人は、金銭消費貸借契約書に基づいて借入金を返済しなければなりません。証書貸付は、4種類の借入金の中で最も一般的な方法とされています。

約束手形を使う「手形貸付」

手形貸付とは、約束手形を使って融資を受ける方法のことです。証書貸付のように金銭貸借契約書を差し入れるのではなく、約束手形を金融機関に振り出すことで、手形の額面から利息を差し引いた金額のお金を借ります。手形貸付には、金銭貸借契約書のような担保は設定せず、短期の返済で受けることがほとんどです。そのため、つなぎの資金や運転資金のためなどの借入金は、多くのケースで手形貸付が選択されます。また、担保がないことを理由に返済が滞ると、会社の社会的信用を大きく損なうこととなります。

約束手形を事業者に買い取ってもらう「手形割引」

手形割引とは、個人または法人が発行した約束手形を、金融機関や手形割引事業者に買い取ってもらい換金することです。約束手形に記載された期日までに換金が行われるため、支払い期日前にお金が必要になった際に利用されることが一般的です。ただし、約束手形に記載の金額全てを受け取ることはできず、受け取れるのは割引料を引かれた残額となります。ただし、割引料は買い取り業者によって異なり、手形の振出人や企業の財務状況、実績によっては手数料が割高になるケースも少なくありません。

限度額まで自由に融資を受けられる「当座借越」

当座借越とは、金融機関の当座預金口座を開設している場合に、設定された融資限度額までの金銭を借り入れることです。借入できる口座がある場合には、金融機関に足を運ばずに借り入れできます。また、当初の契約で設定された融資限度額以内であれば、何度でも融資が受けられます。カードローンも当座借越の一種とされています。ただし、当座借越の利用は金融機関の審査が厳しく、定期預金を担保として設定されることもあります。

借入金は返済期間によって短期と長期がある

借入金は、返済期間によって大きく2つの種類に分けられており、返済期間が1年を超える借入金は「長期借入金」、返済期間が1年以下の借入金は「短期借入金」となります。この借入金が1年という基準で分けられる理由は、返済までの期間ごとに勘定科目を分ける「ワンイヤールール」が適用されるためです。また、長期借入金と短期借入金の違いは借入金の返済期間だけではなく、貸借対照表の扱いも異なります。長期借入金は固定負債、短期借入金は流動負債として扱われます。

借入金の返済能力を見極める2つの指標

運転資金や新事業の立ち上げなど、さまざまな用途で借入金を借り入れることがあるでしょう。しかし、借入金はあくまでもお金を借りた状態であるため、返済期日までに返済しなければなりません。そこで、ここからは、適切な返済期日を設定するために、借入金の返済能力を見極める2つの指標について紹介します。

借入金依存度を計算する

一つ目の指標は「借入金依存度」です。
借入金依存度とは、どの程度借入金に依存しているのかを見る指標です。借入金依存度を算出することで、借入金が会社の総資産の何割を占めているかがひと目でわかります。この借入金依存度が高いほど、総資産における借入金の割合が多く、資金繰りに悪影響を及ぼす可能性が高くなります。借入金依存度は、以下の計算式で算出できます。

▽借入金依存度の計算式

借入金依存度=(短期借入金+長期借入金+受取手形割引高)÷総資産×10

なお、受取形割引高とはすでに割引した受取手形のうち、支払期日が未到来ものです

借入金月商倍率を調べる

「借入金月商倍率」も、借入金の返済能力を見極める重要な指標となります。借入金月商倍率とは、借入金の総額が月商の何倍を占めているかを見る指標です。借入金月商倍率を算出することで、月の売り上げと借入金額と照らし合わせて、健全な借入金額であるかを調べられます。基本的に、借入金月商倍率が1倍以下の場合は借入金が少なく健全で、2倍までは許容範囲、3倍以上は要注意、5倍以上は危険とされています。借入金月商倍率の計算方法は、以下のとおりです。

▽借入金月商倍率の計算式

借入金月照倍率=(短期借入金+長期借入金+受取手形割引高)÷(売上高÷12)

借入金のメリットとデメリット

借入金は「借金」というイメージから、活用に対して消極的な方も多いのではないでしょうか。しかし、借入金を活用することで、事業運営に余裕ができたり、金融機関との信頼関係を構築できたりといったメリットも存在します。ここからは、借入金のメリットとデメリットを紹介します。

メリット

まずは、借入金のメリットについて解説します。

事業運用に余裕ができる

借入金をうまく活用することで、事業運営に余裕ができるというメリットがあります。借入金によって手持ちの資金が増えれば、新たな事業を展開したり、既存の事業を拡大したりと、事業運営に余裕が生まれます。借り入れた資金を事業運営に有効活用できれば、利益率が高まることも期待できます。また、事業運用に余裕が生まれると、従業員の給与未払いや取引先への支払いが滞るといったトラブルも防げます。このように、事業が軌道に乗る前の間や、新たな事業への運転資金が必要な場合に、借入金が活用されています。

金融機関との信頼関係を構築できる

借入金を借り入れるメリットとして、金融機関との信頼関係を構築できるというメリットがあります。金融機関から借り入れた金銭をきちんと返済することで、返済能力があることを認められるためです。金融機関との信頼関係を構築できれば、今後の融資が受けやすくなることも期待できます。

利息は経費として参入できる

借入金の支払利息は経費として算入できる点もメリットの一つです。利息を経費として算入することで、節税対策にもつながります。

デリット

続いて、借入金のデメリットについて解説します。

毎月決まった金額の返済義務が生まれる

借入金のデメリットは、毎月決まった金額の返済義務が生じることです。返済期間や金額は契約によって異なるものの、借入金を借り入れる際は毎月返済しなければなりません。事業がうまくいかない場合は、毎月の返済で経営が圧迫される可能性があります。借り入れる際は、毎月の返済義務が生じることを念頭に置き、毎月の返済金額の設定をすることが重要です。

経営判断が鈍る可能性がある

借入金を活用することで、経営判断が鈍りやすいというデメリットもあります。融資を受けて資金に余裕ができると、経営判断が甘くなってしまうケースがあります。また、高額な借り入れをして、新規事業の展開や事業の拡大をすると、失敗したときに返済が難しくなる可能性もあります。借入金はあくまでもお金を借りている状態であり、自己資産ではないことを理解しなければなりません。

借入金での資金調達は計画的に

前述の通り、借入金にはメリットとデメリットがあります。借入金を誤った使い方で利用すると倒産のリスクもあるため、計画的に借り入れることが大切です。ここからは、借入金で失敗しないための方法を紹介します。

返済計画を入念に立てる

借入金は、毎月の返済義務が生じるため、経営状態によっては資金繰りを圧迫する事態になりかねません。そのような事態を防ぐためにも、借り入れる前には返済計画を入念に立てる必要があります。会社の規模や返済能力をよく考慮して借入金額を決めるとともに、1度に多くの融資を受けすぎないことも、経営状態の圧迫を防ぐために重要なポイントとなります。

事業の運用状況に合わせて上手く返済する

事業の運営状況に合わせて、返済の方法やタイミングを工夫することも失敗しないためのポイントです。たとえば、事業が軌道に乗って会社の利益が上がっているタイミングで、繰上げて返済をする方法があります。経営状況を見て余裕がある場合は繰上げて返済をして、できる限り早い返済を心がけましょう。

借入金まとめ

借入金はうまく活用することで、経営拡大を助けるプラス要素となります。借入金の種類やメリットとデメリットを把握したうえで、借入金の利用を検討しましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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