給与ファクタリングとは?違法な事例、安全性、仕組みなど解説
更新日:2025年01月06日
給与ファクタリングは、給与を債権として売却して資金を調達できるサービスです。しかし、利用にあたっては、リスクも存在するため、正しい知識を持つことが重要でしょう。本記事を参考にして、その実態を正確に理解してください。
目次
給与ファクタリング(給料ファクタリング)とは
給与ファクタリングとは、まだ受け取っていない給与を、給料日前に現金化できるサービスです。
将来受け取る給与を債権とみなし、業者に買い取ってもらうことで、給料日よりも早く現金を受け取れます。たとえば、急な出費でお金が必要になったときに利用されるでしょう。
まずは、仕組みと前払いサービスとの違いについて説明します。
給与ファクタリングの仕組み
給与ファクタリングは、本来企業間での取引である「ファクタリング」という資金調達方法を個人向けに応用したものです。応用とは書きましたが、事業者向けのファクタリングとは全くの別物です。
そもそもファクタリングとは、企業が取引先への商品やサービスの提供後、まだ受け取っていない売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、資金を調達する仕組みといえます。
参考)ファクタリングとは
給与ファクタリングでは、この売掛金にあたるのが「給与」です。つまり、将来受け取る給与を債権とみなし、業者に買い取ってもらうことで給料日よりも前に現金を受け取れる仕組みです。
給与を買い取る業者は、法律上「貸金業」に該当します。貸金業とは、銀行以外の業者が資金の貸付を業務として提供することです。
給与ファクタリングでは、受け取る予定の給与から手数料を差し引いた額が、給料日より前に支払われます。この手数料が業者の利益となり、利用者にとっては実質的な金利となります。
給与ファクタリングと前払いサービスの違い
給与ファクタリングと似たサービスに「給与前払いサービス」があります。どちらも給料日前に給与を受け取れるという点では共通していますが、仕組みや利用条件が大きく異なるため注意が必要です。
給与ファクタリングは、個人が業者と直接契約を結び、将来受け取る給与を債権として買い取ってもらうことで現金化します。
一方、給与前払いサービスは、福利厚生の一環として企業側が導入するもので、従業員は企業を通じてサービスを利用する形となるでしょう。すでに働いた分の給与を上限として、給料日前に受け取れます。
給与ファクタリングは貸金業に該当し、貸金業法の規制対象となりますが、給与前払いサービスは企業が従業員に対して給与を支払う行為であり、貸金業法の規制対象外です。
給与ファクタリングは違法?その安全性とは
給与ファクタリング自体は違法ではありません。しかし、提供する業者は貸金業にあたり、貸金業法の規制対象となります。そのため、貸金業登録を受けずに給与ファクタリングを提供することは違法です。
無登録業者(ヤミ金業者)を利用した場合は、法外な手数料を請求される、違法な取り立てを受けるなどのリスクがあります。
実際、ヤミ金業者について、警視庁や金融庁から注意喚起が出ていることからも、安全性が高いとは言い難いです。
給与ファクタリングを利用する際は、業者が貸金業登録をしているか、手数料が妥当な範囲内であるかなどをしっかりと確認することが重要でしょう。
参考)警視庁「無登録の業者に注意!」
参考)金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
給与ファクタリングが普及した背景
近年、給与ファクタリングの利用者が増加している主な要因は、個人の短期的な資金調達ニーズに応えており、かつ手軽に利用できるためだと考えられるでしょう。
具体的には以下に挙げる特徴が、利用者にとって大きなメリットといえます。
- 勤務先に知られるリスクがない
- 担保や保証人が不要
- 資金調達のスピードが速い
特徴について、それぞれ見てみましょう。
勤務先に知られるリスクがない
給与ファクタリングは、勤務先に知られることなく利用できる点がメリットです。一般的なローンやクレジットカードの審査では、勤務先への在籍確認や収入証明書の提出が求められますが、これらの手続きが通常は不要です。なぜなら、将来受け取る給与を債権とみなして買い取るサービスであり、現在の収入や雇用状況を厳密に審査する必要がないためです。
担保や保証人が不要
給与ファクタリングは、担保や保証人が不要であることも大きな特徴です。金融機関からお金を借りる際には、担保や保証人を求められることがあります。
担保とは、借入金の返済が滞った場合に備え、金融機関が回収する権利を持つ資産のことです。保証人とは、借入者が返済できなくなった場合に、代わりに返済する義務を負う方のことを意味します。
しかし、給与ファクタリングでは、将来の給与債権を買い取るという仕組み上、担保や保証人を設定する必要がありません。
そのため、資産や信用力に不安がある方でも、比較的利用しやすいサービスといえるでしょう。利用はしやすいものの、その実態は「借金」です。その点を正確に理解するようにしましょう。
資金調達のスピードが速い
給与ファクタリングは、資金調達のスピードが速いこともメリットの一つです。金融機関からの借入では、審査に数日~数週間かかることも珍しくありませんが、最短で即日、遅くとも数日以内には現金化が可能です。審査においては、勤務先への在籍確認や収入証明書の提出が不要なケースの多い点が、資金調達の速さの理由と考えられます。
そのため、急な出費が必要になった、資金が足りないなどの状況に迅速に対応しやすいという特徴があるでしょう。たとえば、冠婚葬祭や医療費など、急いでお金が必要になった場合でも、すぐに資金を調達できます。
給与ファクタリング利用の流れ
給与ファクタリングの利用の流れは、以下のとおりです。
- 業者への申し込み(必要事項の申告や本人確認書類の提出など)
- 提出された情報に基づき、業者が審査
- 審査に通過後、業者と契約を締結
- 契約締結後、給与から手数料を差し引いた金額が指定の口座に入金
- 給料日に勤務先から給与を受け取ったら、業者に支払い
給与ファクタリングを利用するリスク
給与ファクタリングの利用には、大きく分けて2つのリスクがあります。1つは悪徳業者を利用してしまうリスクで、もう1つは生活が破綻するリスクです。
給与ファクタリングは、比較的手軽に素早く資金調達ができますが、リスクを理解せずに利用してしまうと、将来大きなトラブルに巻き込まれる可能性もあります。ここからは、利用するリスクについて、詳しく説明しましょう。
悪徳業者を利用してしまう可能性がある
給与ファクタリングを利用する際のリスクとして、悪徳業者を利用してしまう可能性が挙げられます。前述したように、業者は貸金業法の規制対象となるため、貸金業登録が必要です。
しかし、中には貸金業登録をせずに違法に営業している悪徳業者が存在します。このような悪徳業者を利用してしまうと、法外な手数料を請求されるかもしれません。
また、暴力的な取り立てや、脅迫まがいの言動で返済を迫られることがあります。悪徳業者は巧妙な手口で勧誘してくるため、注意が必要です。甘い言葉で誘ってきたり、審査が簡単であることを強調したりする業者は、悪徳業者の可能性が高いといえるでしょう。
生活が破綻する恐れがある
給与ファクタリングは、手軽に資金調達できるサービスですが、安易な利用は生活破綻のリスクを高める可能性があります。資金調達して、その場をしのいだとしても、給料日には本来受け取るはずだった業者への返済に充てなければなりません。
その結果、生活費が不足し、さらに別の金融機関から借金をしてしまうなど、多重債務に陥る可能性があるでしょう。多重債務に陥ると、金利の支払いが生活を圧迫し、借金が雪だるま式に膨らんでいく悪循環に陥りやすくなります。
また、返済が滞ると、業者から厳しい取り立てを受けたり、法的措置を取られたりする恐れもあります。最悪の場合、自己破産に追い込まれることもあり、生活の破綻につながる可能性も否定できません。
正規の業者を見極めるポイント
業者を選ぶ際には、必ず正規の業者を利用する必要があります。正規の業者を見極めるためのポイントは、次の2つです。
- 正規の貸金業登録をしている
- 利用する際の手数料が法定金利内である
なぜならば、悪徳業者は貸金業登録のないケースが多く、さらに違法な金利で稼ごうとする傾向が強いためです。重要な2点のポイントについて、それぞれ詳しく解説します。
貸金業者登録の有無
正規の業者を見極めるには、まず貸金業者登録の有無を確認しましょう。業者は、貸金業法に基づき、各都道府県または財務局に貸金業登録をする必要があります。
無登録で営業している業者は、いわゆるヤミ金業者です。法外な手数料を請求されたり、違法な取り立てを受けたりするなど、トラブルに巻き込まれる可能性が高いため、決して利用してはいけません。
業者が実際に登録されているかどうかは、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で確認可能です。このサービスでは、業者名や登録番号を入力することで、登録の有無や業者の情報を調べられます。
また、業者の公式サイトに会社概要や連絡先、プライバシーポリシーなどがしっかりと明記されているかどうかも確認しましょう。
金利の上限
給与ファクタリングは貸金業に該当し、利息制限法の規制を受けます。
利息制限法では金利の上限が定められており、元本が10万円未満の場合は年利20%、10万円以上100万円未満の場合は年利18%、100万円以上の場合は年利15%です。
正規の業者は、この上限金利を守って営業しています。しかし、違法業者の場合は、この上限を超えた金利を適用していることがあるでしょう。法外な金利を請求することで、利用者を借金地獄に陥れる悪質な業者も存在します。
給与ファクタリングを利用する際は、金利の上限についてしっかりと理解しておくことが重要です。契約前に必ず手数料を確認し、上限金利を超えていないか注意しましょう。
違法な給与ファクタリングの事例
過去には、貸金業法の登録を受けずに給与ファクタリングと称して違法な貸付をして、摘発された事例があります。
最高裁令和5年2月20日判決の事例では、被告人が約2年間にわたり、貸金業の登録を受けずに、給与ファクタリング名目で約2,700万円の貸付をしました。
この事件で被告人は、貸金業法違反の罪に問われています。貸金業法では、貸金業を営むためには、登録が義務付けられていますが、被告人は登録をせずに営業していたため違法と判断されました。
さらに、被告人は、法定利息の10倍近い利息を受領していたため、出資法違反にも問われています。出資法は、高金利による貸付を規制する法律です。法定利息を超える高金利で貸付をすることは、出資法違反に該当します。
給与ファクタリングに関するトラブルの相談先
給与ファクタリングを利用してトラブルに巻き込まれたと感じたら、速やかに警察あるいは弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
警察や法律の専門家は、状況に応じて適切な対応をしてくれます。周囲に知られたくないと考え、単独で解決しようとすると、問題が大きくなる可能性があります。
また、金融庁や日本貸金業協会、消費生活センターでも相談が可能です。自分にとって利用しやすい機関を選びましょう。
警察
業者から違法な取り立てを受けた場合は、速やかに警察に相談しましょう。
貸金業法では取り立てに関して、暴力や脅迫、あるいは午後9時から午前8時までの間の訪問や電話などの行為を禁止しています。これらの行為は、一般常識の範囲を逸脱するものであり、違法な取り立てにあたります。
もし、業者から、日常生活を脅かすような強引な取り立てを受けた場合は、警察に相談してください。取り立ての様子を録音した音声データや、脅迫めいた内容のメールなど証拠を残すと説明の際に役立ちます。
司法書士・弁護士
給与ファクタリングでトラブルに巻き込まれた場合は、司法書士や弁護士に相談することも有効な手段です。とくに、悪徳業者とのトラブルに強い司法書士や弁護士に相談することがおすすめです。
彼らは貸金業法や消費者契約法などに精通しており、状況に応じて適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。
たとえば、違法な金利を請求された場合、司法書士や弁護士が代理人となって業者と交渉し、適正な金利への引き直しを求めてくれるでしょう。
また、脅迫まがいの取り立てを受けている場合は、取り立てを中止させるよう業者に警告し、必要に応じて法的措置を取れます。
金融庁の金融サービス利用者相談室
給与ファクタリングに関するトラブルで困ったときは、金融庁の「金融サービス利用者相談室」に相談できます。
金融サービス利用者相談室は、金融サービスに関するさまざまな相談や金融機関とのトラブルの相談を受け付けている窓口です。
相談は、電話またはインターネットで受け付けており、個別トラブルについて、他機関の紹介やアドバイスなどが受けられます。
日本貸金業協会
給与ファクタリングの利用で、月々の支払いが困難になったり、生活再建の必要性を感じたりする場合は、「日本貸金業協会」に相談することを検討しましょう。
日本貸金業協会は、貸金業法に基づき設立された、貸金業者の業界団体です。貸金業者の健全な発展と利用者の保護を目的として、さまざまな活動をしています。
協会では、貸金業に関する相談窓口を設けており、給与ファクタリングに関するトラブルについても相談が可能です。
消費生活センター
給与ファクタリングに関するトラブルは、居住する地域の「消費生活センター」に相談できます。消費生活センターは、都道府県や市区町村レベルで設置されている相談窓口です。
悪質商法や不当な契約、製品の欠陥など、消費生活に関するさまざまなトラブルについて対応しています。
相談は、電話やメールなどで受け付けており、電話番号は全国共通の「消費者ホットライン」(188番)で居住する地域の消費生活センターに自動的に転送されます。なお、相談は無料で、匿名での相談も可能です。
一般社団法人ファクタリング事業推進協会
給与ファクタリングの利用で、不審な点や悪徳業者の被害にあった場合は、「一般社団法人ファクタリング事業推進協会」に相談することもできます。
一般社団法人ファクタリング事業推進協会は、ファクタリング業界の健全な発展と利用者保護を目的として設立されました。ファクタリングに関する情報提供や啓発活動、相談窓口の運営などをしています。
相談は協会の公式サイトから、問い合わせフォームを通じて可能です。
給与ファクタリングまとめ
給与ファクタリングは、給料日前に資金を調達できる便利なサービスですが、利用にはリスクが伴うことを理解しておく必要があります。
悪徳業者を利用してしまうと、法外な手数料を請求されたり、違法な取り立てを受けたりする可能性があるでしょう。また、安易な利用を続けると、返済が困難になり、生活破綻に陥る恐れもあります。
なお、業者を選ぶ際には、次の2点は必ず確認しましょう。
- 正規の貸金業登録をしている
- 利用する際の手数料が法定金利内である
もし、給与ファクタリングを利用してトラブルに巻き込まれた場合は、警察や消費生活センター、弁護士などの専門家への相談をおすすめします。
この記事を参考に正しく理解してください。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
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