債務超過とは~倒産との関係、解消する方法、予防策について~

2023.07.15

債務超過

債務超過とは、企業の負債総額が資産総額を上回る状態を指します。すべての資産を手放したとしても債務を返済しきれない財務状況であるため、倒産する可能性が高いと判断されます。ただし、債務超過になっても即座に倒産するわけではありません。

債務超過と赤字は異なるもの

債務超過は貸借対照表において負債が資産を上回る状態のことです。一方の赤字は、収入に対して支出が多いケースを指します(損益計算書を確認します)。このように判断する際の指標が異なるため、債務超過と赤字は必ずしもイコールではありません。赤字決算になっていても、債務超過には至っていないケースもあります。ただし、赤字経営が常態化して徐々に資本が食いつぶされてしまうと、最終的に債務超過に陥いる危険性が高まります。

債務超過でも即座に倒産はしない

一般的に企業は、金融機関の融資などで資金を調達し、事業活動をし、利益を創出します。しかし企業が債務超過に陥ると、金融機関からの融資を受けることが難しくなり、さらに取引先や仕入れ先からの信用までも失ってしまいます。必ずしも債務超過が倒産に結びつくわけではありませんが、負債の返済が困難になれば遅かれ早かれ倒産を免れることはできないでしょう。債務超過を解消する方法は後で解説します。

上場廃止になるリスクも

上場企業が債務超過になった場合、上場廃止になる場合があります。上場廃止の基準は取引所により異なり、たとえば東京証券取引所においては、1年以内にその状態を解消できなければ上場廃止になります。

貸借対照表で財務体質を見る

企業の財務状況を確認できる決算書は、貸借対照表(バランスシート、B/S)です。貸借対照表は調達した資金がどれくらいか、それらの資金が現在どういう状況にあるかを示します。具体的には「資産」「純資産」「負債」の3つの要素で構成されており、資産の金額は純資産と負債の合計金額に一致します。このバランスが保たれていれば健全な財務体質を維持していることになりますが、負債が資産を上回ると債務超過になります。つまり貸借対照表を見れば、自社が債務超過になっているかを判断できるのです。債務超過の状態の貸借対照表は、以下のようになります。※あくまでイメージです。

債務超過の貸借対照表の図

債務超過の状態を解消する方法

債務超過であっても即座には倒産しませんが、銀行からの新規の借り入れが困難になるなどの支障があるため、早期に解消するのが望ましくなります。端的に言うと、債務状態を解消するには「負債を減らす」「純資産を増やす(資本を増やす、利益を増やす)」という観点があります。債務状態を解消するための方法をいくつか紹介します。

債務を株式化する

過剰債務になった企業の再建手法に「DES:デッドエクイティスワップ」という手段があります。DESでは、債権者が債権の現物出資によって債権を株式化したり、債権者が金銭出資して株式を取得し、債務者はその出資金で債務を弁済できます。役員借入金を資本金へ振り替える方法もありますが、当該役員の支配力が高まるために、出資比率については考慮する方が良いでしょう。参考)DES(デット・エクイティ・スワップ)

遊休資産を売却して返済に充てる

稼働していない遊休資産があり、それを売却可能であれば処分して現金を確保し、銀行などからの借入金を返済します。ただし、この方法では債務超過を解消はできません。資産と負債の両方が減少するからです。超過額を減らすこと、借入金を返済して倒産を避けることに効果があります。

慢性的な赤字経営から脱却する

この解決策に即効性はありませんが、債務超過の根源的な問題は慢性的な赤字経営にあるため、必ず取り組む必要があります。利益の公式は、売上-コストです。利益を増やすには、売上を伸ばすか、コストを削減する他ありません。コストで考えるべきは、売上原価と販売管理費です。原価率を下げるために何かできないか、販管費に無駄が無いのかをチェックして対策をとりましょう。

債務超過を予防するには

債務超過になる前には、必ず何かしらの兆候があります。赤字続きであったり、財務的な安全性(健全性)が徐々に悪化していたり。安全性を分析できる経営指標には、以下のようなものがあります(難しい話はありません)ので、参考までに紹介します。

短期安全性(短期の支払能力)

長期安全性(長期の支払能力)

財務体質

債務超過のまとめ

  • 債務超過とは、企業の負債総額が資産総額を上回る状態のこと。
  • 貸借対照表(バランスシート)を見ると企業の財務体質がわかる。
  • 赤字と債務超過は異なるが、赤字経営が常態化して資本が目減りすると最終的に債務超過に至る可能性が高い。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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