医療ファクタリングとは?病院・クリニック向けにわかりやすく解説
更新日:2024年06月17日
医療ファクタリングとは、医療機関、調剤薬局、介護事業者向けのファクタリングサービスのことです。医療ファクタリングを利用すると、診療報酬債権などを早期に現金化できるため資金繰りを改善できます。本記事では、医療ファクタリングの仕組みや流れについて、わかりやすく解説します。
目次
医療ファクタリングとは?
医療ファクタリングとは、医療機関、調剤薬局、介護事業者などの医療関係者向けのファクタリングサービスのことです。診療報酬、介護報酬、調剤報酬の債権をファクタリング事業者へ譲渡して資金調達します。その仕組みは、売掛債権(売掛金や受取手形など)を譲渡する一般的なファクタリングの中の「3社間ファクタリング」と同様です。
ここから、医療ファクタリングの仕組みや流れについて解説します。
医療ファクタリングの仕組み
本章では、医療機関が診療報酬債権をファクタリング事業者へ譲渡する場合を例に、医療ファクタリングの仕組みについて解説します。調剤薬局、介護事業者の方が医療ファクタリングを利用するときも、大枠での仕組みは同様ですので、参考にしてみてください。
本来、診療時に医療機関が患者(被保険者・被扶養者)から受け取る代金は自己負担分のみで、残りの医療費は健康保険組合など(保険者)に請求して約2か月後に受け取ります。一方、医療ファクタリングでは、本来健康保険組合などから受け取る医療報酬額をファクタリング事業者に支払ってもらうものです。
医療ファクタリングの流れ
医療ファクタリングの主な流れは、以下のとおりです。
- 医療機関は売掛先(国保・社保)にレセプト(診療報酬明細書)を送付し、診療報酬を請求します。一般企業であれば取引先へ請求書を発行するのと同じ意味合いです。
- 医療機関はファクタリング会社に申し込みをして見積を依頼します。ここで、ファクタリング会社に審査され、審査を通過したら買取額や手数料などの見積条件を提示されます。
- 見積条件に合意できたら、医療機関はファクタリング会社とファクタリング契約を締結します。
- 医療機関は診療報酬債権をファクタリング会社に譲渡します。
- 医療機関は売掛先(国保または社保)に対し、診療報酬債権をファクタリング会社に譲渡したことを通知します(この通知を債権譲渡通知と呼びます。)。
- ファクタリング会社から医療機関に診療報酬債権額面の約80%が支払われます。100%ではない理由は、医療機関の方であればご存知だとは思いますが、レセプト送付の時点では請求金額が確定していないためです。誤請求や請求漏れがあれば請求金額が変更になる可能性があります。
- 売掛先(国保や社保)から決定した支払額がファクタリング会社へ支払われます。
- ファクタリング会社から医療機関に対し、買取対象額を差し引いた残額が支払われます。
医療ファクタリングの種類
医療ファクタリングには、主に以下の種類があります。
- 診療報酬ファクタリング
- 介護報酬ファクタリング
- 調剤報酬ファクタリング
診療報酬ファクタリングとは、病院・クリニックなどが契約するものです。診療報酬明細書が対象となります。
介護報酬ファクタリングとは、介護サービス事業者が契約するものです。介護保険給付費明細書が対象となります。
調剤報酬ファクタリングとは、調剤薬局が契約するものです。調剤報酬明細書が対象となります。
なお、本記事で解説しているのは、主に診療報酬ファクタリングです。
医療ファクタリングを利用するメリット
医療ファクタリングを利用するメリットは、主に以下のとおりです。
- 現金化までの期間が比較的短い
- 資金繰り・財務内容を改善できる
- 比較的審査の難易度が低い
各メリットを解説します。
現金化までの期間が比較的短い
現金化までの期間が比較的短い点が、医療ファクタリングを利用するメリットです。
本来、医療報酬(診療報酬)は診療した月の翌々月末に入金となるため、2か月以上の期間がかかります。一方、医療ファクタリングを利用すれば、診療後数週間で資金化できることが一般的です。また、初回は2か月分の医療報酬をまとめて申し込みできます。
資金繰り・財務内容を改善できる
医療ファクタリングを利用することで、資金繰り・財務内容を改善できる点もメリットです。
本来医療報酬を受け取るよりも早くに一定の金額が手に入るため、人件費などの必要経費や融資の返済金を支払う十分なお金がないときでも、対応できます。また、現預金が増えることで資産が増加したり、調達した資金を借入金の返済にあてることで負債が減少したりするため、財務内容を改善できるでしょう。
比較的審査の難易度が低い
比較的審査のハードルが低い点も、医療ファクタリングを利用するメリットです。
ファクタリングの審査では、申込人の審査だけでなく、取引先の信用度も考慮されます。そのため、銀行で融資の承認がおりない場合でも、医療ファクタリングを利用できることがあるでしょう。
とくに、医療ファクタリングの取引先は国保や社保のため、信用力が高い点も審査に通りやすいとされる理由です。
医療ファクタリングを利用する際の注意点
医療ファクタリングを利用する際は、以下の点に気をつけましょう。
- 受け取れる金額が本来の報酬より少なくなる
- 業者を見極めなければならない
各注意点を解説します。
受け取れる金額が本来の報酬より少なくなる
医療ファクタリングを利用すると、本来の報酬よりも受け取れる額が少なくなる点に注意が必要です。医療ファクタリングの利用時はファクタリング事業者の手数料が発生する分、入金額が少なくなります。
そのため、資金繰り改善を目的にしていたにもかかわらず、医療ファクタリングを利用し続けることでかえって資金繰りが悪化することもあるでしょう。申し込む際は、なぜ医療ファクタリングが必要なのか、どれくらいの期間利用するかをあらかじめ整理しておくことが大切です。
業者を見極めなければならない
医療ファクタリングを利用する際は、ファクタリング事業者を見極めなければなりません。
医療ファクタリングの手数料率は、事業者によって異なります。なかには手数料を割り増ししたり、突然高額な手数料を請求したりする悪質な事業者がいるケースもあるため、注意しましょう。
ファクタリングの事業者を見極める際には、周囲に評判を聞く、契約書をしっかり読み込むなどの対策が必要です。
ファクタリングを検討すべき医療機関・クリニック
医療ファクタリングを検討すべき医療機関・クリニックは、以下のケースです。
資金繰りが厳しいなか、医療機器を導入しないといけない場面では、医療ファクタリングが資金調達に役立てられます。また、従業員の給与・ボーナスを支払うのに十分な手元資金がない場合も、支払いが滞らないように医療ファクタリングを検討したほうがよいでしょう。
さらに、資金は必要だけれども新規開業したばかりで信用力が乏しく、融資で調達できる額に限りがある場合も、医療ファクタリングを利用することがあります。
医療機関が医療ファクタリング以外で資金調達する方法
医療ファクタリング以外でも、医療機関が資金調達する方法はあります。主な方法は、以下のとおりです。
- 銀行融資
- 診療報酬債権担保ローン
それぞれ解説します。
銀行融資
銀行融資は銀行に借入を申し込むことで、資金を調達する方法です。医療報酬額の範囲に限定される医療ファクタリングよりも、大きな額を調達できる可能性があります。
ただし、銀行融資は借入であり負債が増加する点に注意が必要です。また、財務内容を厳しく審査されるため、医療ファクタリングの申し込みができる医療機関でも、銀行の審査に通らない可能性があります。
診療報酬債権担保ローン
診療報酬債権担保ローン(融資)とは、診療報酬債権を担保にして受ける融資のことです。
診療報酬債権担保ローンは、診療報酬を活用して資金を調達する点で医療ファクタリングと共通しています。ただし、あくまで「ローン(融資)」のため、負債が増加する点に注意が必要です。
また、医療ファクタリングは医療機関もしくは取引先が事業者へ一度に診療報酬分の代金を支払うのに対し、一般的に診療報酬債権担保ローンでは、医療機関が元金一括返済か元利均等返済(毎月分割)などで返済します。
医療ファクタリングまとめ
医療ファクタリングは、診療報酬・介護報酬・調剤報酬を活用したファクタリングのことです。契約したファクタリング事業者に医療報酬を買い取ってもらうことで、本来入金になる時期よりも早くに資金を調達できます。
ただし、手数料が引かれるため頻繁に利用すると資金繰りが悪化する可能性がある点に注意が必要です。目的や期間を整理した上で、医療ファクタリングの利用を検討しましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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