資金繰りとは~悪化する原因、改善方法、予測と実績の重要性について~

2021.09.16

資金繰り

資金繰り(読み方:しきんぐり)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?会社を経営する上で、資金繰りは非常に重要です。資金繰りが悪化すると、黒字の会社であっても倒産してしまうことがあります。今回は、資金繰りについて解説します。

資金繰りとは何か?

資金繰りとは、経費などの支払いに対応できるよう、会社の収入と支出を管理し資金を調整することをいいます。資金とは、現金、当座預金、普通預金、定期預金など、会社としてすぐに支払いに利用できるものを指します。貸付金、売掛金、不動産などすぐに支払いに利用できないものは、資金ではない資産となります。

資金繰りが重要な理由

資金は会社にとって血液に例えられることがありますが、資金の流れが止まると会社は生きることができずに倒産してしまいます。会社を経営していく上では、資金の流れを止めてはなりません。

資金繰りはなぜ必要なのか?

資金繰りは、会社の収入と支出を管理することで、資金が足りない状況を未然に防ぐために必要です。 「利益が上がっているから資金繰りは不必要だ」と考える方もいるかもしれませんが、利益と資金は一緒ではありません。会社が利益を上げて儲かっていたとしても、資金が不足することはあります。

収益と費用の計上と現金支出の時期がズレるから

例えば、売上が発生すれば経理処理上は売上と利益が計上されますが、その売上の入金が翌月であれば資金は増えていません。また、設備投資をして現金を支払ったとしても、経理上は数年にわたり減価償却で処理をする場合もあります。

資金がショートすると倒産するから

たとえ売上や営業利益が下がったとしてもすぐに倒産はしませんが、資金が一時的にでも不足すれば取引先への支払いができなくなり、すぐに倒産の危機に直面するでしょう。資金繰りは、会社存続にとって最も重要なことのひとつなのです。

資金繰りが悪化する原因

資金繰りが悪化すると取引先への支払いが滞ったり、従業員に給与が支払えないといった問題が起こります。最悪の場合は倒産する可能性もあります。なぜ資金繰りが悪化するのか、原因を考えてみましょう。

キャッシュインの減少

売上の減少、売掛債権の回収の遅れなどが考えられます。売上が少なくなると、どうしても会社の資金繰りは悪化します。また、季節や時期によって売上が大きく変動する業種であれば、短期間で資金繰りが悪化する可能性もあります。売掛金や受取手形は貸倒れリスクもあるので、未収金はできる限り早く回収し、売上から実際の入金までのタイムラグにより資金繰りが悪化しないように注意が必要です。

キャッシュアウトの増加

過大在庫、過剰な設備投資、仕入債務の支払い、借入金返済などが考えられます。在庫の管理には場所代、人件費などのコストがかかります。過大な在庫はそれだけで資金繰りを悪化させます。

資金繰りを改善する「資金繰り表」の作成

資金繰りを改善させるには、事業を安定させることが最も重要です。あわせて、手元資金を把握していく必要があります。その手段として、資金繰り表の作成をおすすめします。資金繰り表を作成することで、今後、資金調達を考える必要があるかなどの状況把握が早くできるようになるでしょう。

資金繰り表とは何か

資金繰り表とは、お金の出入りを表すものです。会社には様々な収入・支出が発生します。仕入先が多いと財務状況の把握は難しく、頭の中では整理ができません。そこで資金繰り表を作成し、現金の収入と支出を表にすることで実際のお金の出入りを把握します。

資金繰り表の形式

資金繰り表には明確なフォーマットはありませんが、大きく分けて以下の5区分に分けて作成し、必要に応じて経費の項目などを増やしていくと良いのではないでしょうか。

前月繰越 前月分から繰越された現金
営業収支
(①+②)
①営業収入 営業活動で得た収入
②営業支出 営業活動のための支出
財務収支
(③+④)
③財務収入 営業活動と関係のない収入
④財務支出 営業活動と関係のない支出
総収支
(営業収支+財務収支)
営業活動、営業活動外の現金収支の合計
翌月繰越
(前月繰越+総収支)
翌月へ繰り越せる現金

営業収支とは

営業収支は、本業でどれだけ現金を生み出しているのかを示しています。常にマイナスの場合は、事業がうまくいっていないと考えられます。また営業収支がプラスであっても、一時的な収入によるものなのかコンスタントに利益がでているのかなど確認が必要です。(①営業収入は現金での売上のほか売掛金の回収や手形などの収入②営業支出は人件費や買掛金の支払いなどです。広告宣伝費や交通費なども含まれます)

財務収支とは

財務収支は、銀行からの借入金の収支などがあげられます。財務収支がプラスになっていると、借入金が増えていることになります。借入金の返済はマイナスとして記載します。(③財務収入は金融機関からの借入れなど④財務支出は借入金返済や設備投資などです)

資金繰りは、予測と定期的な確認が重要

資金繰り表で資金の動きを把握し、ある日突然資金が足りないと気付くことがないよう過去3カ月分と現在、そして3カ月先の資金繰り計画をたてて、実績を定期的に確認をすることが大切です。

総収支がプラスで順調な場合

例えば、総収支がプラスで順調に経営が進んでいる場合は、将来に向けて投資を検討したり借入金を返済しましょう。反対に総収支がマイナスならば、会社の経営に大きな問題を抱えていることになります。資金繰りかビジネスそのものに問題があるのかを深堀りし、売掛金の早期回収や在庫処分、資金調達、利益の向上を図るなど早急に手を打つ必要がでてきます。

総収支がマイナスで不調な場合

また、総収支がマイナスになっている場合は、営業活動による収支で借入金の返済額を賄えていない状態を示します。この状態が続くと、借入の返済原資が足りなくなる恐れがでてきます。3カ月後の翌月繰越現金を確認し、マイナスになる予測なら資金調達の検討と資金繰りの改善を検討します。

資金繰りまとめ

会社を経営する上で、資金繰りは非常に重要です。資金繰り表で定期的に資金の状況を把握するなど資金繰りを意識して経営することを心掛けましょう。現金出納帳や預金出納帳、借入金返済明細などをもとに、資金繰り表をエクセルや会計ソフトを活用して作成することも可能です。自身で作るのが難しければ、顧問の税理士事務所や税理士法人などに支援を頼んでみてください。顧問がいない場合は、こちらでも探せます。

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