売掛保証とは?ファクタリングとの違いや利用の流れを解説

更新日:2025年06月09日

売掛保証

この記事では、売掛保証を利用するメリットやデメリット、利用の流れを解説します。また、売掛保証サービスを選ぶ際の比較ポイントと、おすすめの3つのサービスを紹介します。売掛債権を利用している方は、資金繰りを安定させる選択肢の1つとしてぜひ押さえておきましょう。

目次

売掛保証とは

売掛保証とは、売掛金や受取手形などの「売掛債権(売上債権)」に対して、万一支払いが滞った場合でも、保証会社が代わりに弁済してくれる仕組みです。資金繰りの安定化を図りたい企業や個人事業主にとって、有力なリスクヘッジ手段のひとつといえます。

ここでは、売掛保証の仕組みを解説します。また、同じく売掛債権に関するサービスの1つであるファクタリングと売掛保証の違いも、あわせて見ていきましょう。

売掛保証の仕組み

売掛保証サービスを提供する会社に手数料を支払うことで、売掛金の回収不能や支払い遅延が起きた際に、損害の補てんを受ける仕組みです。

そもそも売掛債権とは、商品やサービスの代金の支払いを取引先から後日受け取る権利のことです。そのため、取引先の経営状態などによっては、期日が超過しても資金を回収できないリスクを含んでいます。

資金を回収できない未回収リスクを保証するのが、売掛保証サービスを利用する目的です。

ファクタリングとの違い

売掛債権に関するサービスには、売掛保証のほかにファクタリングもあります。ファクタリングの主な種類は、以下の2つです。

  • 保証型ファクタリング
  • 買取型ファクタリング

保証型ファクタリングは、売掛保証と仕組みが似ていますが、保証主体や契約の枠組みに違いがある場合もあります。そのため、名称は似ていても、各サービスの契約条件を個別に確認することが重要です。

一般的にファクタリングというと、買取型ファクタリングを指し、期日前に債権を現金化することで資金繰りの改善を図ります。

買取型ファクタリングは期日前に債権を現金化することで、売掛金の未回収リスクを軽減します。また、緊急で現金が必要になったときには、債権の売却による資金調達も可能です。

売掛金の未払いの発生により、初めて保証金を受け取れる売掛保証とは、この点が大きく異なるといえるでしょう。

また、売掛保証は売掛先に知られずに利用できる一方で、買取型ファクタリングの利用では売掛先の同意が必要なケースがあります。それぞれの違いを十分に確認し、自社に合ったサービスを選ぶことが重要です。

参考)ファクタリングとは?

売掛保証を利用する3つのメリット

売掛保証を利用すると、以下の3つのメリットが期待できます。

  1. 売掛金の未回収リスクを削減できる
  2. 与信管理にかかる業務負担を削減できる
  3. 取引先に知られずに利用できる

それぞれを詳しく見ていきましょう。

1.売掛金の未回収リスクを削減できる

売掛保証は、売掛金の未回収リスクを削減できます。未回収リスクは、売掛期日に支払われるはずの売掛金が、売掛先の倒産といった理由で回収できなくなるリスクです。

売掛金の未回収は、資金繰りを悪化させる要因となります。債権額によっては、連鎖倒産を引き起こすおそれもあります。

売掛債権を頻繁に利用する方は、自社を守るためにも、売掛保証の利用を検討しましょう。

2.与信管理にかかる業務負担を削減できる

売掛保証を利用する際には、与信管理にかかる業務負担の軽減も期待できます。

売掛債権を用いた取引は、代金後払いの信用取引です。そのため、実行するにあたっては、取引先の信用力や財務状況などを調査する与信管理が必要です。

これらの与信管理は専門的な知識が必要で、業務負担も少なくありません。特に個人事業主や中小企業は、スキルを持つ人材の確保が難しく、十分な与信管理を実施できないケースもあるでしょう。

売掛保証を利用するにあたっては、サービスを提供する会社によって、売掛先が審査されます。そのため、利用者側からすれば、結果的に与信管理を外部に委託できるのです。

自社での与信管理の実施が難しい企業にとっては、この点も大きなメリットといえるでしょう。

3.取引先に知られずに利用できる

売掛保証は、売掛先の承諾や報告などが不要なため、取引先に知られることなく利用できます。

売掛保証は、未回収リスクの軽減を目的としたサービスです。そのため、売掛保証の利用が売掛先に伝わると、「経営状態を不安視されているのではないか」「倒産を心配されている」と思われ、信頼関係を損なう可能性があります。

売掛保証サービスは、取引先に通知されることなく利用できるため、取引相手との信頼関係と自社の経営の両方を守れる方法といえるでしょう。

売掛保証のデメリットと注意点

売掛保証を利用するのであれば、以下のデメリットと注意点も押さえておく必要があります。

  • 手数料がかかる
  • 審査結果によっては利用できない場合がある
  • 保証を受けるまでに時間がかかる

それぞれを詳しく解説します。

手数料がかかる

売掛保証を利用するには、手数料がかかる点に注意が必要です。手数料は売掛保証を依頼する会社によって異なるため、事前に確認しましょう。

また、手数料は売掛先の与信調査の結果によって変動します。支払い不能や支払い遅延が発生するリスクが高いと判断されたときは、手数料が高めに設定されることを理解しておきましょう。

売掛保証の手数料は、保証の請求の有無に関わらず必要です。問題なく売掛金を回収できた場合でも、手数料は発生します。

審査結果によっては利用できない場合がある

売掛保証では、売掛先の審査が実施されます。審査結果が悪い場合、売掛保証の利用を断られる可能性があることは押さえておくべきポイントです。

審査結果は、売掛先の信用力や財務状況などによって変わります。また、売掛期日までの日数や売掛金額も審査結果に影響することは覚えておきましょう。

売掛債権の保証を断られたときは、与信力が低い取引先として今後の取引を検討し直す必要があるかもしれません。

保証を受けるまでに時間がかかる

売掛保証では、保証を受けるまでに一定の時間がかかる点も注意が必要です。売掛保証サービスでは、売掛金の未払いが発生しても、すぐに資金が支払われるわけではありません。

保証により資金を回収するには、請求書・納品書・通帳などの提出が必要で、入金までに日数がかかります。売掛期日から日を置かずに現金を調達したいときには、売掛保証以外の方法も検討したほうがよいでしょう。

売掛保証の利用が向いている企業

売掛保証の特徴を踏まえたうえで、利用が向いている企業には以下の3つが挙げられます。

  • 取引先の数が少ない
  • 売掛金回収までの日数が長い
  • 自社での与信管理が難しい

それぞれを詳しく見ていきましょう。

取引先の数が少ない

取引先の数が少なく、1社が売上の半分以上を占めるような企業は、売掛保証の利用を検討したい会社の1つです。

取引先が限られている場合、1つの会社に依存する売上の割合が大きくなりがちです。そのため、売掛債権の未回収が発生すると、大きな影響を被るおそれがあります。場合によっては、経営状態が著しく悪化し、連鎖倒産を招くかもしれません。

取引先の数が少ない場合は、売掛保証を利用し未回収リスクを抑えることで、安定的な経営につながるでしょう。

売掛金回収までの日数が長い

売掛金回収までの日数が60日以上あるなど、期日までが長い売掛債権を保有している場合も、売掛保証の利用が選択肢となります。

売掛期日までの期間が長いと、支払いまでの期間に売掛先の倒産といった不測の事態が発生する可能性が増加します。売掛先との信頼関係によっては、期日に資金が支払われるまで、不安を感じながら業務にあたらなければならないかもしれません。

回収リスクに煩わされることなく、業務に集中したいと考える方は、売掛保証の利用も有効な方法の1つです。

自社での与信管理が難しい

自社での与信管理が難しい場合には、売掛保証の審査の活用も有効な選択肢となります。

与信管理には、専門の知識やスキルが必要です。中小企業や個人事業主の場合、与信管理を担当できる社員を調達できないケースも少なくありません。また、自社で与信管理を実施していたとしても、取引先の数などによっては業務負担が大きくなる可能性もあるでしょう。

与信管理の実施が難しい、業務負担を軽減したいと考えているのであれば、売掛保証を利用することで、専門家による与信管理を受けられるようになります。

売掛保証サービスを選ぶ際の比較ポイント

売掛保証サービスは、さまざまな会社が提供しています。

選ぶ会社によっては、十分な保証を得られなかったり、手数料が嵩んだりする可能性があります。そのため、売掛保証サービスを有効に活用するには、自社の取引規模やリスク管理体制にマッチした保証会社を選ぶことが重要です。

売掛保証サービスを選ぶ際の比較ポイントには、以下があります。

  • 保証内容
  • 料金体系
  • 保証体制

それぞれを詳しく見ていきましょう。

保証内容

売掛保証サービスを選ぶ際に確認するポイントの1つは、保証内容です。

保証が発生するタイミングや対応可能な範囲、保証金額などは、売掛保証サービスを提供する会社によって異なります。例えば、売掛金の入金遅延が発生したタイミングで保証が発生するものと、債務者の倒産時のみを対象とするサービスもあります。

保証される金額も契約するサービスによって異なるため、過不足のない保証を受けるには、自社の債権額にマッチしたものを選ぶことが肝心です。

料金体系

売掛保証サービスの利用に必要な料金体系も、比較するべきポイントです。

売掛保証サービスの主な料金体系には、月額制や利率払い(都度払い)があります。また、保証可能な売掛債権の上限額や登録できる取引先の数などによっても、料金が変わることがあるでしょう。

どの料金体系が適しているかは、売掛保証の利用頻度や利用金額などによって変わります。例えば、利用頻度が高い会社であれば月額制、必要に応じてスポット利用するのであれば都度払い、などの使い分けが可能です。

売掛保証サービスを選ぶ際は、いくつかの会社を比較検討し自社に合った料金体系を選ぶことで、コストを抑えた利用を目指しましょう。

保証体制

売掛保証サービスを選ぶ際は、保証体制の確認も必要です。保証体制とは、万が一売掛保証会社が倒産した際に、契約者がどのように保証を受けられるかを示す仕組みのことです。

売掛保証サービスを提供する会社も、経営難に陥る可能性があります。契約中に保証会社が倒産した場合、保証が無効になるリスクもあるため、代位弁済の仕組みや第三者保証の有無を事前にチェックすることが重要です。

単独でサービスを提供している会社よりも、金融機関や他の保証機関などの外部機関と連携している会社のほうが、安心して利用できるでしょう。

おすすめの売掛保証サービス3選

おすすめの売掛保証サービスは、以下の3つです。

  1. URIHO
  2. GMO BtoB売掛保証
  3. アラームボックスギャランティ

ここでは、各サービスの概要や運営会社の基本事項、前項で解説した比較ポイントを紹介します。売掛保証の利用を考えている方や、保証会社選びに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

URIHO(ウリホ)

URIHOは、東京証券取引所プライム市場に上場している株式会社ラクーンフィナンシャルが運営する、売掛保証サービスです。

審査が早いのが特徴で、新規の売掛先は2営業日程度、追加の売掛先であれば1営業日程度で完了します。また、Web上で申し込みから契約、保証管理まで一貫して行えるため、業務負担を大幅に軽減できます。

項目 詳細
運営会社 株式会社ラクーンフィナンシャル
所在地 東京本社
東京都中央区日本橋蛎殻町1-14-14
設立日 2010年10月
資本金 4億9,000万円
保証内容 破産・民事再生・会社更生、1ヵ月以上の支払い遅延
料金体系 月額固定
保証体制 大手損保会社

GMO BtoB売掛保証

GMO BtoB売掛保証は、東京証券取引所プライム市場に上場しているGMOグループの1つである、GMOペイメントゲートウェイ株式会社が運営する、売掛保証サービスです。

売掛先の倒産時はもちろん、1日でも支払い遅延が発生したときには、保証を受けられます。

GMO BtoB売掛保証は、1回限りの利用にも対応しています。オンラインだけでなく、対面での相談や手続きにも対応しているため、初めての方でも利用しやすいサービスの1つです。

項目 詳細
運営会社 GMOペイメントゲートウェイ株式会社
所在地 東京本社
東京都渋谷区道玄坂1-2-3 渋谷フクラス
設立日 1995年3月
資本金 133億2,300万円(連結)
保証内容 倒産(破産、民事再生)、支払い遅延(1日でも可)
料金体系 月額定額プラン、カスタマイズプラン
保証体制 記載なし

アラームボックスギャランティ

アラームボックスギャランティは、2016年に設立した比較的新しい売掛保証会社です。

利用料は毎月かけた分のみで、保証期間は都度設定されるため、売掛保証の利用頻度が少ない会社でも比較的利用しやすいサービスといえるでしょう。

アラームボックスギャランティでは、無料トライアルを用意しています。無料トライアルでは、初回審査依頼と審査回答の確認ができます。利用料の目安を知りたい方や、システムの使用感を事前に確かめたい方は、無料トライアルの活用が効果的です。

項目 詳細
運営会社 アラームボックス株式会社
所在地 東京都新宿区市谷本村町3-22
ナカバビル8F
設立日 2016年6月
資本金 3億3,600万円
保証内容 倒産(破産・民事再生・弁護士介入など)、支払い遅延
料金体系 保証料率(0.1%~)+システム利用料(月額1万円)
保証体制 記載なし

売掛保証を利用する流れ

最後に、売掛保証を利用する一般的な流れを紹介します。

  1. 問い合わせと会員登録
  2. 売掛先の登録と審査
  3. 保証開始
  4. 未払いの登録
  5. 入金

利用手順を事前に押さえ、不備のないスムーズな手続きを目指しましょう。

1.問い合わせと会員登録

売掛保証を利用するにはまず、利用する保証会社を決めます。

決定前には見積もりを取り、手数料や保証内容などを相談しましょう。可能であれば複数の保証会社で取り扱い実績が多い業種や債権の規模、回収スパンなどを確認し自社に合った会社を選ぶことが肝心です。

利用する会社が決まったら、保証会社に会員登録をします。多くの保証会社では、登録料無料でホームページ上での登録が可能です。利用を迷っている保証会社が複数ある場合は、事前に登録だけ済ませておくと、審査や申請を迅速に進めやすくなります。

2.売掛先の登録と審査

自社の会員登録が完了したら、次に売掛先を登録しましょう。

登録した内容を基に審査が実施されるため、会社概要のほか保証を希望している売掛債権の内容や決済方法などの入力が必要です。必要事項を登録したら、売掛先の審査が実施されます。

審査にかかる日数は保証会社によって異なりますが、一般的には最短1営業日~3営業日ほどで審査が完了する場合が多いようです。保証開始のスケジュールに希望がある方は、計画的に手続きを進めることが肝心です。

3.保証開始

売掛先の与信審査が完了し適格債権と判断されれば、保証会社から保証可能を伝える通知が届きます。

通知内容に問題がなければ、あらためて保証を申し込みます。依頼時には手数料や保証内容、保証期間などを十分に確認しましょう。

契約後、保証開始日が到来すると、保証がスタートします。売掛期日までの日数を把握したうえで、適したタイミングでの保証開始を目指しましょう。

4.未払いの登録

保証開始後に「売掛金が支払われない」「支払いが遅れている」といった自体が発生した場合には、未払いの登録をしましょう。

登録には一般的に、取引内容を確認できる書類(発注書・納品書・メール履歴など)と入金履歴の確認できる書類(取引先元帳・通帳の写しなど)が必要です。

スムーズな入金を目指すのであれば、未払い登録時の必要書類や手続きを事前に確認すると安心です。

5.入金

未払いを登録し、保証会社による必要書類の確認が完了したら、保証会社から指定口座に保証金が入金されます。

未払いの登録から入金までにかかる日数は10日程度の保証会社が多いといわれますが、長い場合には数週間要するケースもあります。

入金までの日数は保証会社によって異なるため、契約時に十分確認しておきましょう。

売掛保証まとめ

売掛保証とは、売掛先の倒産といった理由により売掛金の支払いを受けられなくなったときに、保証を受けられるサービスです。

売掛保証は、売掛先に知られずに利用できます。利用することで未回収リスクを軽減できる点や、売掛先の与信管理を実施してもらえる点がメリットといえるでしょう。

一方で、手数料がかかる点や未払いの登録から入金までに日数が必要な点には、注意が必要です。

「未回収リスクの軽減によって業務に集中したい」「与信管理の業務負担を減らしたい」と考えている方は、いくつかの保証会社を比較検討し、自社に合ったサービスの利用を検討してはいかがでしょうか。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
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所属団体 一般社団法人Fintech協会
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