資金調達とは~4つの方法について具体的かつ簡単に解説します~

更新日:2024年04月09日

資金調達とは

資金調達とは、ビジネスに必要な資金を外部から調達することです。資金調達には大きく分けて4つの方法があり、負債、出資、資産の売却、補助金や助成金の活用があります。今回は、資金調達を検討している方に役立つ情報を紹介します。

目次

資金調達の4つの手法について

資金調達の方法は、大きく分けて以下の4種類の手段があります。ここからは、それぞれの内容について解説していきます。

  • 負債(デットファイナンス)
  • 出資(エクイティファイナンス)
  • 資産の売却(アセットファイナンス)
  • 補助金・助成金

負債(デットファイナンス)

負債(他人資本)で資金調達する手法で、デットファイナンスとも呼ばれます。金融機関や公的機関から融資、社債の発行が代表的で、特に金融機関からの融資は、中小企業が最もよく使う資金調達の手法です。

メリットは、支払利息を損金に計上できる点、資金の出し手から経営に介入されない点、他人の資本を梃子(てこ)のように活用して収益性を高められる可能性がある点です。デメリットは、元本と利息の支払義務があり、支払が滞ると倒産してしまう点と、支払の分だけキャッシュフローが圧迫される点です。また、負債が増えることで財務の健全性が低下し、場合によっては債務超過に陥るリスクもあるため、自己資本とのバランスが重要になります。

参考)債務超過とは

参考)負債とは

参考)負債比率とは

銀行からの融資

銀行融資は、古くからある資金調達手法です。銀行自らが貸倒れリスクを負ったプロパー融資と、対象が中小企業に限定された、信用保証協会の債務保証に基づく信用保証協会付き融資があります。信用保証協会付き融資は銀行に貸倒れリスクがないため、所定の審査基準を満たせば融資されることが多いのが特徴です。

銀行からの融資は、設立したての企業や前期が赤字決算だと利用できない場合が多いのですが、GMOあおぞらネット銀行の「あんしんワイド」は違います。法人向けの融資枠型ビジネスローンで、創業期や赤字でも借入が可能です。融資枠型のため証書貸付よりも利便性が高く、柔軟に返済できます。

参考)おすすめビジネスローンを比較

ノンバンクのローン

ノンバンクとは、銀行以外の金融機関のことで、いわゆる消費者金融もノンバンクに含まれます。このノンバンクのビジネスローンなども借入での調達になります。以前であれば、銀行からの融資に比べると金利は高くなる傾向にありましたが、ノンバンクが銀行の傘下に入るなどして、銀行と同等かより低い金利で貸し出しをするノンバンクも出てきています。また、審査から融資までのスピードは銀行よりも早く、数日や数時間での資金調達が可能な場合もあります。

公的機関からの融資

公的機関からの融資は、政府系金融機関(日本政策金融公庫と商工組合中央金庫)、地方公共団体の制度融資のことです。大半が中小企業を対象とした融資で銀行融資より低金利なのがメリットですが、審査項目や提出資料が多く、手続きが煩雑で時間がかかることがデメリットです。

社債の発行

社債は企業が資金調達を目的に発行する債券のことです。機関投資家向けだけでなく従業員などの個人に向けて小口化されたものもあります。社債は償還時期がきたら利息をつけて返済する必要がありますが、資金調達したい企業にとって多くの人から資金調達できるメリットがあります。

主な社債は、以下の5つです。

  • 普通社債(SB)
  • 転換社債(CB)
  • ワラント債
  • 劣後債
  • 電力債

詳しくは、別の記事で解説していますので、そちらも参考にしてみてください。

参考)社債とは

RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)

RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは、将来の予測売上(将来債権)を現金化して投資家から資金調達する手法です。新たな資金調達の手段として注目を集めています。RBFは投資家への返済義務が発生するため、本記事ではデット・ファイナンスの一種として紹介しました。

参考)RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは

出資(エクイティファイナンス)

出資者を募って投資をしてもらうことで資金調達する方法です。エクイティファイナンスとも呼ばれる手法です。具体的には第三者割当増資、ベンチャーキャピタルからの調達、エンジェル投資家、クラウドファンディングなどがあげられます。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、新しい株式を発行し、第三者に売却する方法です。メリットは資金の返済をしなくていいこと、集まった資金が財務基盤の安定を図るための自己資金の強化になる点です。デメリットは株式発行により株主が増え、経営者の経営裁量が制約され、最悪の場合は経営権そのものを奪われる可能性があります。また株主に対しては収益に応じた配当金の支払い義務が生じます。

ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタルからの資金調達は、ベンチャー企業のみが利用できる手法です。ベンチャーキャピタルは将来有望なベンチャー企業を発掘し投資します。そして、そのベンチャー企業が上場することで収益を得る投資専門会社です。よって投資審査が厳しいと考えられます。

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、起業する前や起業間もない企業に資金を出資する個人投資家を指します。企業のスタートアップ時には、融資を受けるための実績がなく審査に通りにくいケースがあります。従来の資金調達が難しい場合でも投資を受けられる可能性があります。しかしエンジェルは個人投資家のため、投資会社などと比較して資金調達できる金額が少ないというデメリットがあります。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、企業自らがファンドを作り個人投資家から資金を集める方法です。インターネットで出資を募る資金調達方法で、事業計画を説明しそれに賛同する人が投資するため不特定多数から資金調達できるのがメリットです。クラウドファンディングのサービスは様々あり、CAMPFIREなどが有名です。

参考)クラウドファンディングとは

資産の売却(アセットファイナンス)

今ある資産を現金化することで資金調達をする方法です。アセットファイナンスと呼ぶ場合もあります。メリットはコストが少なく素早く資金調達ができ、たとえ企業の信用度が低くても資金調達ができる点です。デメリットは現金化する資産がないと資金調達できない点と、その資産に信用力や価値がないと売却できない可能性があります。資産を売却する具体例は不要資産売却、ファクタリング、リースバックなどがあります。

参考)アセットファイナンスとは

不要資産の売却

不要資産の売却は、事業継続に不可欠な資産以外を売却する方法です。例えば保養所、社宅のような不動産と有価証券、ゴルフ会員権などの動産があげられます。

ファクタリング

ファクタリングとは、回収期限前の売掛債権(主として売掛金)を売却(譲渡)して早期に現金化する方法です。売却に手数料などの費用が発生します。不動産などの担保や保証人は不要です。審査されるのは売掛先(取引先)のため、創業して間もない法人でも個人事業主でも利用でき、赤字決算、債務超過、税金滞納の状態でも活用が可能なのも特徴です。ファクタリングの契約形態は2種類あり、当事者間のみで契約する二者間取引と、売掛先へ債権譲渡通知をする三者間取引があります。

ファクタリング市場は急成長しており、ベンチャー企業などによる業界への新規参入も増えています。審査から契約までオンラインで完結し、最短で即日の資金調達が可能なサービスも出てきています。ファクタリングの仕組みなどについて、詳しくは以下の記事で解説していますので読んでみてください。

参考)ファクタリングとは

手形割引

手形割引とは、手形債権が満期になるより前に、取立銀行や手形割引業者へ手形を持ち込んで、手数料を支払って早期に現金化することです。

手形割引は、その仕組みがファクタリングと似ていますが、次の点で異なります。手形には償還請求権があるため、手形が不渡りになれば、発行人に代わって弁済しなければなりません。一方、ファクタリングは償還請求権がないためノンリコースのため、売却した売掛金が回収不能になっても、代わりに支払う義務が発生しません。また、手数料で比べると、リスクを負っている分だけ手形割引の方が手数料が安くなります。

参考)手形割引とは

事業譲渡

事業譲渡とはM&A(買収と合併)の手法の1つで、会社の事業の全部または一部を有償で譲渡することです。資金調達の面で言うと、事業譲渡の対価は金銭(現金)としたいところですが、金銭ではなく譲渡先の会社の株式になる場合もあります。事業譲渡では、その事業に関わる工場や設備などの有形資産のみではなく、人材やノウハウなどの無形資産も譲渡されます。

参考)事業譲渡とは

リースバック

リースバックとは、不動産、製造設備、事務機器、営業車両などの資産をリース会社へ売却し、その資産をリース契約で引き続き利用する資金調達方法です。リース契約にすることでリース代金の支払いが発生しますが、資産の売却代金が一括で入ってくるため、早急に資金調達が必要になった場合には有効な方法です。

参考)割賦とは何か~メリット、デメリット、リースやレンタルとの違い~

補助金や助成金

資金調達の手法として紹介するのは違和感のある方もいるかもしれませんが、補助金や助成金を活用して資金を調達するという選択肢もあります。補助金と助成金は、都道府県や市区町村などの自治体または民間団体から支給されるお金で、原則としては返済が不要です。資料を準備して申請し、審査を通過できれば資金調達できます。どのような補助金や助成金があるのかは、自治体のホームページを見てみましょう。

参考)補助金と助成金の違い

資金調達には短期と長期がある

資金調達をする際には、調達した資金を短期的に利用するのか、長期的に活用するのかによって、調達手法を考える必要があります。調達資金には短期資金と長期資金があるということです。重要なのは、資金を利用する期間と返済期間のミスマッチを防ぐことです。極端な話ですが、耐用年数が10年以上の設備の導入資金を、返済期間が1年の短期借入金で調達したとします。この借入金の返済原資は設備導入で得られる10年間の収益のはずですが、返済期限は1年後に来てしまうため返済原資が足りなくなります。

短期資金と資金調達の方法

返済期間が1年未満のものを短期資金といいます。具体的には、法人税や株主配当金、賞与など毎年必要になる決算資金や、繁忙期の商品仕入れや閑散期の固定費など特定の季節に必要となる季節資金が短期資金に該当します。 また、収入の入金日より支払日が早くくる場合に必要となるつなぎ資金や経常運転資金も短期資金となります。こういった資金需要に対しては短期での借入や、資産を売却するファクタリングなどを活用します。

長期資金と資金調達の方法

対して、返済期間が1年以上のものを長期資金といいます(返済義務のない資金も含んで良いと思います)。具体的には、土地購入、機械購入などの設備資金に必要となる資金などがあたります。長期資金の調達では、返済期間の長い長期の借入金や社債、返済義務のない増資などを活用します。

資金調達が必要になるケース

事業を維持・成長させるためにはお金が必要です。自己資金でまかなえない場合には外部から資金調達します。ここでは具体的に、資金調達が必要になるケースについて解説します。

開業する時、新規事業を立ち上げる時

事業内容にもよりますが、起業する時や新規事業を立ち上げる時には、資金が必要となるケースが多いものです。ビジネスを始めても、すぐに売上を計上できるとはかぎりません。また、売上がたっても代金が入金されるまでには時間がかかります。その間にも家賃や光熱費などの固定費は発生するため、まとまった資金の準備が必要になることがあります。

事業を拡大する時

事業を大きく成長させるには、一定の資金が必要です。例えば、人員を増強するなら採用コストや人件費がかかります。設備投資をするなら機械などの購入代金が発生します。それ自体の支払いにも資金が必要ですが、ヒトやモノを増やしてから実際に事業が軌道にのってキャッシュフローを生むまでには時間がかかる可能性があり、その間の資金需要に応えられるだけの資金調達が必要です。

運転資金が不足する時

黒字倒産という言葉もあるように、ビジネスが黒字であっても現金が不足すれば事業は止まってしまい、最悪の場合には倒産の危険性もあります。事業で継続的に安定した利益があっても、売上代金の入金よりも仕入代金などの支払が先に来るのが常なので、運転資金の確保は必ず必要です。取引先からの入金が遅れて、仕入先や経費の支払いが滞ってしまうことの無いよう、余裕をもって運転資金を資金調達しておきましょう。

参考)運転資本とは

資金調達とファイナンスの違い

この記事の中でも何度か登場した「ファイナンス」という言葉と、資金調達の違いについて解説します。ファイナンスとは、会社が事業のための資金を調達・運用することです。つまり、資金調達は、ファイナンスの一部ということになります。調達したお金を運用して企業価値の向上を目指すのがファイナンス、という理解で良いと思います。

参考)ファイナンスとは

資金調達まとめ

今回は、資金調達の方法について解説しました。基本的には、資金調達の方法は「負債」「出資」「資産の売却」の3つに分かれます。そこに「補助金・助成金」を加えると、4つの方法があると考えられます。資金調達を成功させるためにも、調達資金の運用期間などを考慮して、方法を検討してみてください。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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