資金調達とは?各方法のメリット・デメリットをわかりやすく解説
更新日:2025年04月16日

資金調達とは、ビジネスに必要な資金を外部から調達することです。資金調達には大きく分けて4つの方法があり、負債、出資、資産の売却、補助金や助成金の活用があります。本記事では、資金調達の手法について、メリットとデメリット、具体例など解説します。
目次
資金調達とは
そもそも資金調達とは、会社の存続や事業の発展のために、銀行から融資を受けたり投資家から出資を受けたりして必要な資金を得る活動のことです。事業を始めるときだけでなく、運転資金が必要な場面、設備投資を検討する場面などで資金調達することがあります。資金調達時には、必要な金額や状況などに応じて適切な手法を選択することが大切です。
資金調達の4つの手法~メリットとデメリット~
資金調達には、さまざまな手法があります。ここで、そのうち4つの手法の特徴を比較しました。
資金調達手法 | デットファイナンス | エクイティファイナンス | アセットファイナンス | 補助金・助成金による調達 |
特徴 | 負債により資金を調達 | 出資者に投資してもい資金を調達 | 資産を現金化して資金を調達 | 国・地方自治体などに申請して資金を調達 |
メリット | 調達先の選択肢が多い | 信用力の強化につながる | すぐに資金調達できる | 資金繰りの安定化につながる |
デメリット | 元本・利息の支払義務が発生する | 経営の自由度が下がる | 資産がないと利用できない | 受給までに時間がかかる |
ここから、それぞれの概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
負債(デットファイナンス)
負債(デットファイナンス)とは、負債(他人資本)により資金を調達する手法です。一般的には、金融機関から融資を受けたり、買掛金などの仕入債務の額を増やしたりして調達します。
ここから、デットファイナンスのメリットとデメリットを確認していきましょう。
デットファイナンスのメリット
借入先の選択肢が多いことが、デットファイナンスで資金を調達するメリットです。仮にメガバンクで融資を断られたとしても、地方銀行や信用金庫、知人や親戚などから借りられる可能性は残ります。
レバレッジ効果を期待できる点も、メリットです。自己資本が少なくても、他人資本を活用して高額の設備投資をすることで、手元資金だけでは期待できない利益を得られることがあります。
そのほか、支払利息を損金として計上できる点、資金調達しても経営の自由度が低下しにくい点もメリットです。
デットファイナンスのデメリット
デットファイナンスのデメリットは、元本や利息の支払義務が生じる点です。資金調達後に支払負担が増えることにより、資金繰りが圧迫される可能性があります。
また、調達にあたって、事業者の信用力が問われる点もデメリットです。信用力が足りない場合は、融資を受けられなかったり、保証人(または連帯保証人)や担保の提供を求められたりする場合があります。
出資(エクイティファイナンス)
出資(エクイティファイナンス)とは、出資者を募り、投資してもらうことで資金を調達する方法です。デットファイナンスは負債(他人調達資本)を増やすのに対し、エクイティファイナンスは資本金(自己調達資本)を増やす点が異なります。
ここから、エクイティファイナンスのメリットとデメリットを確認していきましょう。
エクイティファイナンスのメリット
資金調達した際に、基本的に返済の義務が生じない点がエクイティファイナンスを利用するメリットです。返済負担が重くならない分、資金繰りを安定化させられます。
関連して、信用力の強化につながる点もメリットです。デットファイナンスによる資金調達は自己資本比率減少の要因になるのに対し、エクイティファイナンスを利用した場合は自己資本比率の増加につながります。
エクイティファイナンスのデメリット
エクイティファイナンスのデメリットは、経営の自由度が下がることです。資金調達の際に出資者に自社株式を発行して議決権割合が変動すると、経営に口出しされる可能性が高まります。
一部の出資者が多くの議決権割合を占めることにより、自社が買収されることもあるでしょう。そのため、エクイティファイナンスを利用する際は、議決権割合を考慮しなければなりません。
資産の売却(アセットファイナンス)
資産の売却(アセットファイナンス)とは、保有する資産を現金化することにより、資金を調達する手法です。アセットファイナンスのメリットやデメリットを解説します。
アセットファイナンスのメリット
アセットファイナンスのメリットは、ほかの手法と比較してコストを抑えてすぐに資金調達できる点です。デットファイナンスのように返済の義務が生じないため、資金調達後に資金繰りを圧迫することもありません。
また、信用力の不足などを理由に銀行の融資が受けられない事業者でも、アセットファイナンスであれば利用できる点もメリットです。
アセットファイナンスのデメリット
アセットファイナンスのデメリットは、不動産・売掛金など保有している資産がないと利用できない点です。また、資産があったとしても、その評価が低ければアセットファイナンスを利用できなかったり、希望する額を調達できなかったりする可能性があります。
そのほか、資産を手放すと、将来担保を提供して銀行の融資を受けられなくなる点もデメリットです。
補助金や助成金
補助金・助成金とは、国・地方公共団体・民間団体に申請し、審査が通った場合に支給される資金のことです。
補助金は要件を満たしても受給できるとは限らないもの、助成金は要件を満たせば受給できるものとして区別されることもあります。ただし、違いは明確に定義されているわけではありません。
ここから、補助金と助成金を資金調達手段として活用するメリットとデメリットを紹介します。
補助金・助成金のメリット
補助金や助成金は原則として返済が不要な点がメリットです。返済の負担が生じない分、資金繰りの安定化につながるでしょう。
また、補助金を取得したことを周知することにより、イメージアップにつながることもあります。なぜなら、「必要な要件を満たし、計画の将来性が国や自治体に認められた事業者」と取引先や顧客が判断する可能性があるためです。
補助金・助成金のデメリット
受け取るまでに時間がかかることが、補助金や助成金で資金調達することのデメリットです。支給を受けるまでに、必要書類を準備したり、計画書を作成したりしなければなりません。
また、受給には定められている細かな要件を満たす必要がある点もデメリットです。さらに、枠が設けられている補助金の場合、要件を満たした場合でもほかの企業の申請が採択されて自社の申請は認められない可能性があります。
デットファイナンスの具体例
デットファイナンスの具体例は、以下のとおりです。
- 銀行からの融資
- ノンバンクのローン
- 公的機関からの融資
- 社債の発行
- RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)
それぞれ解説します。
銀行からの融資
銀行融資は、古くからある資金調達手法です。銀行自らが貸倒れリスクを負ったプロパー融資と、対象が中小企業に限定された、信用保証協会の債務保証に基づく信用保証協会付き融資があります。信用保証協会付き融資は銀行に貸倒れリスクがないため、所定の審査基準を満たせば融資されることが多いのが特徴です。
ノンバンクのローン
ノンバンクとは、銀行以外の金融機関のことで、いわゆる消費者金融もノンバンクに含まれます。このノンバンクのビジネスローンなども借入での調達になります。以前であれば、銀行からの融資に比べると金利は高くなる傾向にありましたが、ノンバンクが銀行の傘下に入るなどして、銀行と同等かより低い金利で貸し出しをするノンバンクも出てきています。また、審査から融資までのスピードは銀行よりも早く、数日や数時間での資金調達が可能な場合もあります。
公的機関からの融資
公的機関からの融資は、政府系金融機関(日本政策金融公庫と商工組合中央金庫)、地方公共団体の制度融資のことです。大半が中小企業を対象とした融資で銀行融資より低金利なのがメリットですが、審査項目や提出資料が多く、手続きが煩雑で時間がかかることがデメリットです。
社債の発行
社債は企業が資金調達を目的に発行する債券のことです。機関投資家向けだけでなく従業員などの個人に向けて小口化されたものもあります。社債は償還時期がきたら利息をつけて返済する必要がありますが、資金調達したい企業にとって多くの人から資金調達できるメリットがあります。
主な社債は、以下の5つです。
- 普通社債(SB)
- 転換社債(CB)
- ワラント債
- 劣後債
- 電力債
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)とは、将来の予測売上(将来債権)を現金化して投資家から資金調達する手法です。新たな資金調達の手段として注目を集めています。RBFは投資家への返済義務が発生するため、本記事ではデット・ファイナンスの一種として紹介しました。
エクイティファイナンスの具体例
エクイティファイナンスの具体例は、以下のとおりです。
- 第三者割当増資
- ベンチャーキャピタル(VC)
- エンジェル投資家
- クラウドファンディング
詳しく解説します。
第三者割当増資
第三者割当増資とは、新しい株式を発行し、第三者に売却する方法です。メリットは資金の返済をしなくてよい点、集まった資金が財務基盤の安定を図るための自己資金の強化になる点です。デメリットは株式発行により株主が増え、経営者の経営裁量が制約され、最悪の場合は経営権そのものを奪われる可能性があること、株主に対しては収益に応じた配当金の支払いが生じる可能性があることです。ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、ベンチャー企業のみが利用できる手法です。ベンチャーキャピタルは将来有望なベンチャー企業を発掘し投資します。そして、そのベンチャー企業が上場することで収益を得る投資専門会社です。よって投資審査が厳しいと考えられます。
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、起業する前や起業間もない企業に資金を出資する個人投資家を指します。企業のスタートアップ時には、融資を受けるための実績がなく審査に通りにくいケースがあります。従来の資金調達が難しい場合でも投資を受けられる可能性があります。しかしエンジェルは個人投資家のため、投資会社などと比較して資金調達できる金額が少ないというデメリットがあります。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、企業自らがファンドを作り個人投資家から資金を集める方法です。インターネットで出資を募る資金調達方法で、事業計画を説明しそれに賛同する人が投資するため不特定多数から資金調達できるのがメリットです。クラウドファンディングのサービスは様々あり、CAMPFIREなどが有名です。アセットファイナンスの具体例
アセットファイナンスの具体例は、以下のとおりです。
- 不要資産の売却
- ファクタリング
- 手形割引
- 事業譲渡
- リースバック
それぞれ確認していきましょう。
不要資産の売却
不要資産の売却は、事業継続に不可欠な資産以外を売却する方法です。例えば保養所、社宅のような不動産と有価証券、ゴルフ会員権などの動産があげられます。
ファクタリング
ファクタリングとは、回収期限前の売掛債権(主として売掛金)を売却(譲渡)して早期に現金化する方法です。売却に手数料などの費用が発生します。不動産などの担保や保証人は不要です。審査されるのは売掛先(取引先)のため、創業して間もない法人でも個人事業主でも利用でき、赤字決算、債務超過、税金滞納の状態でも活用が可能なのも特徴です。ファクタリングの契約形態は2種類あり、当事者間のみで契約する二者間取引と、売掛先へ債権譲渡通知をする三者間取引があります。
ファクタリング市場は急成長しており、ベンチャー企業などによる業界への新規参入も増えています。審査から契約までオンラインで完結し、最短で即日の資金調達が可能なサービスも出てきています。以下の記事で、おすすめのファクタリング会社を紹介していますので、よければ参考にしてみてください。
手形割引
手形割引とは、手形債権が満期になるより前に、取立銀行や手形割引業者へ手形を持ち込んで、手数料を支払って早期に現金化することです。
手形割引は、その仕組みがファクタリングと似ていますが、次の点で異なります。手形には償還請求権があるため、手形が不渡りになれば、発行人に代わって弁済しなければなりません。一方、ファクタリングは償還請求権がないためノンリコースのため、売却した売掛金が回収不能になっても、代わりに支払う義務が発生しません。また、手数料で比べると、リスクを負っている分だけ手形割引の方が手数料が安くなります。
事業譲渡
事業譲渡とはM&A(買収と合併)の手法の1つで、会社の事業の全部または一部を有償で譲渡することです。資金調達の面で言うと、事業譲渡の対価は金銭(現金)としたいところですが、金銭ではなく譲渡先の会社の株式になる場合もあります。事業譲渡では、その事業に関わる工場や設備などの有形資産のみではなく、人材やノウハウなどの無形資産も譲渡されます。
リースバック
リースバックとは、不動産、製造設備、事務機器、営業車両などの資産をリース会社へ売却し、その資産をリース契約で引き続き利用する資金調達方法です。リース契約にすることでリース代金の支払いが発生しますが、資産の売却代金が一括で入ってくるため、早急に資金調達が必要になった場合には有効な方法です。
資金調達には短期と長期がある
資金調達をする際には、調達した資金を短期的に利用するのか、長期的に活用するのかによって、調達手法を考える必要があります。調達資金には短期資金と長期資金があるということです。重要なのは、資金を利用する期間と返済期間のミスマッチを防ぐことです。極端な話ですが、耐用年数が10年以上の設備の導入資金を、返済期間が1年の短期借入金で調達したとします。この借入金の返済原資は設備導入で得られる10年間の収益のはずですが、返済期限は1年後に来てしまうため返済原資が足りなくなります。
短期資金と資金調達の方法
返済期間が1年未満のものを短期資金といいます。具体的には、法人税や株主配当金、賞与など毎年必要になる決算資金や、繁忙期の商品仕入れや閑散期の固定費など特定の季節に必要となる季節資金が短期資金に該当します。 また、収入の入金日より支払日が早くくる場合に必要となるつなぎ資金や経常運転資金も短期資金となります。こういった資金需要に対しては短期での借入や、資産を売却するファクタリングなどを活用します。
長期資金と資金調達の方法
対して、返済期間が1年以上のものを長期資金といいます(返済義務のない資金も含んで良いと思います)。具体的には、土地購入、機械購入などの設備資金に必要となる資金などがあたります。長期資金の調達では、返済期間の長い長期の借入金や社債、返済義務のない増資などを活用します。
資金調達が必要になるケース
事業を維持・成長させるためにはお金が必要です。自己資金でまかなえない場合には外部から資金調達します。ここでは具体的に、資金調達が必要になるケースについて解説します。
開業する時、新規事業を立ち上げる時
事業内容にもよりますが、起業する時や新規事業を立ち上げる時には、資金が必要となるケースが多いものです。ビジネスを始めても、すぐに売上を計上できるとはかぎりません。また、売上がたっても代金が入金されるまでには時間がかかります。その間にも家賃や光熱費などの固定費は発生するため、まとまった資金の準備が必要になることがあります。
事業を拡大する時
事業を大きく成長させるには、一定の資金が必要です。例えば、人員を増強するなら採用コストや人件費がかかります。設備投資をするなら機械などの購入代金が発生します。それ自体の支払いにも資金が必要ですが、ヒトやモノを増やしてから実際に事業が軌道にのってキャッシュフローを生むまでには時間がかかる可能性があり、その間の資金需要に応えられるだけの資金調達が必要です。
運転資金が不足する時
黒字倒産という言葉もあるように、ビジネスが黒字であっても現金が不足すれば事業は止まってしまい、最悪の場合には倒産の危険性もあります。事業で継続的に安定した利益があっても、売上代金の入金よりも仕入代金などの支払が先に来るのが常なので、運転資金の確保は必ず必要です。取引先からの入金が遅れて、仕入先や経費の支払いが滞ってしまうことの無いよう、余裕をもって運転資金を資金調達しておきましょう。
資金調達とファイナンスの違い
この記事の中でも何度か登場した「ファイナンス」という言葉と、資金調達の違いについて解説します。ファイナンスとは、会社が事業のための資金を調達・運用することです。つまり、資金調達は、ファイナンスの一部ということになります。調達したお金を運用して企業価値の向上を目指すのがファイナンス、という理解で良いと思います。
資金調達に関するよくある質問
ここから、資金調達に関するいくつかのよくある質問に回答します。
どれぐらいの資金を調達すべき?
資金調達の目的によって、必要な金額が異なります。例えば、設備資金であればその設備により得られる売上高の3分の1がひとつの目安です。
また、運転資金を借りる際は、「売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務」で1か月に必要な資金を計算しておきます。資金繰りを安定させるには、3〜6か月程度の運転資金を確保することが大切です。
資金調達をスムーズに進めるには?
資金調達をスムーズに進めるには、資金使途や金額を明確にしておくことが大切です。曖昧なまま説明しても、銀行員や投資家には納得してもらえません。
また、融資を受ける際も出資を受ける際も、事業計画書の提出を求められることがあるため、事前に作成しておくとよいでしょう。事業計画書を作成することには、自身の考えや経営上の課題を明確にできるメリットもあります。
資金調達まとめ
今回は、資金調達の方法について解説しました。基本的には、資金調達の方法は「負債」「出資」「資産の売却」の3つに分かれます。そこに「補助金・助成金」を加えると、4つの方法があると考えられます。資金調達を成功させるためにも、調達資金の運用期間などを考慮して、方法を検討してみてください。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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