総量規制とは?カードローン利用時の注意点や対象外の貸付について解説

更新日:2024年10月09日

総量規制

総量規制とは貸金業法に定められた規定の1つで、貸金業者に対して契約者の年収の3分の1を超える貸付を原則禁止とするものです。この記事では総量規制の概要および対象となる貸付、カードローン利用時の注意点、総量規制以上に借りたいときの対処法を解説します。

目次

総量規制とは借入額を制限する制度のこと

総量規制とは、貸金業者が契約者に貸し付けられる金額の上限を規制する制度です。社会的な多重債務問題を解決するため2006年12月に改正貸金業法が成立した後、段階的に施行が進められ2010年6月に完全施行されました。

ここではまず総量規制の目的や施行の背景、具体的な規制内容を詳しく解説します。

参考)金融庁「貸金業法Q&A」

総量規制における借入総額は年収の3分の1まで

総量規制は貸金業法第13条の2「過剰貸付等の禁止」に定められた規定で、貸金業者が契約者の年収の3分の1を超える貸付を原則として禁止する内容です。一例を以下で確認しましょう。

年収300万円のAさんが貸金業者から借入をする場合、利用する貸金業者の数に関わらず、借入可能金額は合計100万円(年収の3分の1)までです。借入状況は個人信用情報機関に記録されるため、借入時に申告しなかったとしても総量規制以上の金額の借入はできません。

参考)貸金業法 | e-Gov法令検索

総量規制が生まれた背景

総量規制は、多重債務の返済に困窮する方の救済を目的に導入されました。改正貸金業法の成立後、多重債務者数は以下のとおり推移しています。

人数
3件以上の借入がある方 5件以上の借入がある方
2007年 443万人 171万人
2010年 374万人 84万人
2013年 211万人 29万人
2016年 130万人 12万人
2019年 120万人 9万人
2022年 116万人 10万人

改正貸金業法が成立した直後の2007年は、3件以上の借入がある方は443万人(うち5件以上の借入がある方は171万人)でした。2010年の総量規制の完全施行を経て、2022年には3件以上の借入がある方は116万人(うち5件以上の借入がある方は10万人)にまで減少しています。総量規制の施行は、多重債務者を減らす目的に一定の効果があったといえるでしょう。

参考)金融庁/消費者庁/厚生労働省(自殺対策推進室)/法務省「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」

総量規制の対象となる貸付

個人がお金を借りる手段には、カードローンやキャッシングなどさまざまなものがあります。しかしそのすべてが、総量規制の対象になるわけではありません。また、個人事業主が事業用資金を調達するビジネスローンも総量規制の対象外です。

ここでは、総量規制の対象となる貸付を詳しく解説します。資金繰りが厳しいと感じるときには、規制対象となる貸付の種類をしっかりと確認し、計画的な借入をすることが重要です。

貸金業者による貸付

総量規制の対象になるのは、貸金業者による貸付です。貸金業者の一例には、以下があげられます。

業者の種類 概要
消費者金融業者 カードローンなど主に個人向け融資を取り扱う
事業者金融業者 中小企業などの経営者向けの融資を取り扱う
クレジットカード会社 キャッシング機能付きクレジットカードの取扱がある場合は、貸金業者に該当
百貨店 貸付を実施する場合は、貸金業者に該当

銀行は、貸金業者にはあたりません。そのため、銀行カードローンは総量規制の対象外です。ただし総量規制の対象外の融資だからといって、規制と比較して大幅に多額の借入ができることはないようです。

クレジットカードのキャッシング利用

クレジットカードのキャッシング枠の利用は、総量規制の対象となります。キャッシングとはクレジットカードに付帯する機能の1つで、キャッシング利用限度枠まで現金を借りられる仕組みです。クレジットカード作成時にキャッシングの申込や利用限度額の設定を済ませていれば、必要時にすぐに貸付を受けられるため、利用しやすい借入方法の1つといえるでしょう。

なお、クレジットカードにおけるショッピング枠は、総量規制の対象外です。一時的に現金が手元に用意できない、後日まとまった収入が見込めるといったときは、クレジットカードのショッピング枠を利用し各種支払いすることで急場をしのげるかもしれません。

個人事業主に対する貸付

個人事業主に対する貸付も、総量規制の対象です。そのため原則として借入は、年収の3分の1を上限とします。ただし個人事業主が事業資金としてお金を借り入れる場合、例外的に年収の3分の1以上の借入が可能なケースもあります。

総量規制を超える借入を希望するときには、貸金業者に事業・収支・資金計画を提出しましょう。貸金業者から返済能力があると判断された場合は、総量規制以上の借入を受けられます。

総量規制の対象外となる「除外貸付」「例外貸付」

貸付の中には、総量規制の対象外となる「除外貸付」と「例外貸付」があります。ここでは、それぞれの貸付に該当するローンの具体例を詳しく見ていきましょう。

除外貸付の一例

除外貸付とは、総量規制の対象外となる貸付やローンです。

住宅ローンや自動車ローン、高額療養費など上記に該当する貸付は一般的に高額で、年収の3分の1の借入額では目的を果たせません。そのため、総量規制からは除外されます。それぞれの貸付の概要は、以下で確認してください。

【住宅ローン】
不動産購入のために借り入れるローン

【つなぎローン】
住宅の引き渡し前に必要な費用を、一時的に立て替えるローン。土地の購入費や着工金、中間金などの支払いのために利用される

【自動車ローン】
自動車を購入する際に利用される自動車担保貸付

【有価証券担保】
株式や債券といった有価証券を担保とした貸付。ゴルフ会員権なども担保の対象となる

【高額療養費】
高額療養費が支給されるまでの期間に借入可能な貸付制度

【不動産担保】
土地や建物、マンションといった不動産を担保にして借り入れるローン。不動産を担保とするため、大きな金額を比較的低金利で借り入れられる

【手形の割引】
売上代金決済として受けた受取手形を銀行が買い取り、資金提供する。手形割引は買い取りのため厳密には貸付とは異なるが、銀行では一般的に融資の1つとして取り扱われる

【法人名義での借入】
法人の名義で借り入れるローン。総量規制は個人の借入を対象とした規定なので、法人名義の貸付は対象外

例外貸付の一例

例外貸付とは顧客の利益の保護に支障を生ずることがない貸付で、主に借り手の負担を軽減する特定貸付が該当します。先述した個人事業主の事業用資金としての貸付も、例外貸付です。そのほかの例外貸付には、以下があげられます。

例外貸付には、条件が付属しているものもあります。それぞれの詳細を以下で確認しましょう。

【借り換え・おまとめローン】
消費者に一方的に有利になる借り換えや、借入残高を段階的に減少させるための借り換え

【緊急に必要と認められるとき】
社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための貸付(10万円以下で3ヵ月以内の返済などが要件とされる)

【配偶者と年収を合算するとき】
配偶者と年収を合算すると、2人の合計年収の3分の1まで貸付が可能になる(ただし配偶者の同意が必要)

【緊急の医療費を支払うとき】
顧客やその親族など、緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付

【新たに事業を営む個人事業主に対する貸付】
事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められる場合の貸付

【銀行貸付のつなぎ資金のとき】
銀行などの預金取扱金融機関から確実に貸付が行われることが確認でき、1ヵ月以内に返済できる場合

配偶者と年収を合算するケースには、どちらかの年収が低い場合があげられます。仮に夫の年収が500万円、妻の年収が60万円とすると、妻だけでは20万円(60万円×1/3)までしか借入ができません。しかし年収を合わせると、およそ186万円(560万円×1/3)までローンを利用できるようになります。

総量規制に関するカードローン利用時の注意点

ここからは、総量規制に関するカードローン利用時の注意点を解説します。カードローンは一般的に利用目的に関わらず無担保での借入が可能で、ATMからいつでも借入と返済ができる利便性が高いローンです。

そのため、緊急で現金が必要になったときには、利用を検討したことがある方も多いのではないでしょうか。万が一のときに速やかに借入ができるよう、あらかじめ注意点を押さえておきましょう。

必ずしも年収の3分の1まで借入できるわけではない

注意点の1つめには、必ずしも年収の3分の1まで借入できるわけではないことがあげられます。年収の3分の1までという基準は、あくまでも総量規制で借入可能な上限額です。

実際にいくら借りられるかは、各貸金業者が実施する審査によって決定します。なぜなら貸金業者は、貸し付けた資金が回収できなくなるリスクをできるだけ抑えたいからです。そのため審査結果によっては借入額が希望金額に満たないもしくは、審査に通らず借入自体ができない可能性もあることは覚えておきましょう。

貸付の審査基準

カードローンの借入審査では、契約者の返済能力を調べるためにいくつかの項目が審査されます。具体的な項目は貸金業者によって異なりますが、一般的に問われることが多い内容は以下のとおりです。

  • 現在保有している資産
  • 勤務先
  • 勤務形態
  • 年収
  • 健康状態
  • 信用情報
  • 他社での借入状況

現在保有している資産や勤務先、勤務形態、年収は契約者の返済能力を確認するために問われます。場合によっては、勤務先に在籍確認のための電話がかけられることもあるため、正直に回答することが重要です。

健康状態も、ローンの借入で審査されるポイントとしてあげられます。安定してローンの返済をするには、継続的な収入があることが不可欠です。病気などにより働けなくなることがないよう、借入時には健康状態も審査されます。

総量規制の観点から、他社での借入状況は必ず聞かれる項目の1つです。ローン残高や返済履歴および、クレジットカードの支払い履歴などの信用情報は、信用情報機関に集積されます。集積されたデータは、貸金業者や金融機関はいつでも閲覧可能です。仮に審査で回答しなくてもすべてチェックされるため、他の借入があるときには正直に答えましょう。

審査に通らないケース

審査の結果によっては、借入が認められない場合もあります。審査に通らないケースの一例は、以下のとおりです。

  • 借入希望額が大きすぎる
  • 短期間に複数のローン会社に申込をしている
  • 他のローンの返済を滞納している
  • 勤務先への在籍確認が取れない

短期間に複数のローン会社に申込をしていると、よほど資金繰りが厳しいまたは、ローン審査に通過できるか不安があるとみなされます。返済能力に問題があると判断され、審査に影響がでる可能性があるため、複数のローン会社に同時期に申し込むのはやめましょう。

他のローンやクレジットカードの支払いを滞納している場合は、当然のことながら返済能力が低いと判断されます。信用情報には、滞納の記録も残ります。ローンの借入をスムーズに進めるには、日ごろから滞納をせず信用情報をきれいな状態に保つことが何よりも重要です。

正規の貸金業者を利用する

カードローンを利用するのであればヤミ金や個人間融資は避け、必ず正規の貸金業者を選んでください。正規の貸金業者として貸金業を営むには、登録が必要です。登録情報は、金融庁ホームページ内の登録貸金業者情報検索サービスから見られるため、事前に確認しましょう。

違法な貸金業者から借り入れてしまうと、以下のトラブルが発生する可能性があります。

  • 総量規制以上の貸出を受ける
  • 法外な利息の支払いを求められる
  • 保証金をだまし取られる
  • 個人情報をインターネット上に晒される

法外な利息の支払いを求められたり、個人情報をインターネット上に晒されたりといったトラブルは、解決までに多大な労力と時間を要するでしょう。安心してローンを借り入れるには、信頼できる貸金業者を選ぶことが重要です。

総量規制以上(年収の3分の1超)に借りたいときはどうする?

不測の事態による急な出費や収入の大幅な減少などが発生すると、総量規制以上(年収の3分の1超)に借入が必要になるかもしれません。先述のとおり、どんなに手元の現金が足りなくても、ヤミ金や個人間融資は利用するべきではありません。

ここでは、総量規制以上の資金が必要なときにできる2つの対策を紹介します。現金が足りないときこそ、トラブルに巻き込まれることがないよう慌てずに落ち着いて行動することが肝心です。

まずは返済を優先する

総量規制の上限である年収の3分の1まで借入をしている場合、新たにローンを申し込んでも審査に通らない可能性が高いです。新しくローンを借り入れるには、まずは返済により現在のローン残高を減らしましょう。ローン返済を進めるうえで重要なポイントは、以下の2つです。

  • 金利の高いものから返済する
  • 返済計画を見直す

複数の貸金業者から借入をしているのであれば、金利の高いものから優先的に返済しましょう。それにより、支払利息の総額の軽減につながります。

また、効率的に返済を進めるには、返済計画を見直すことも重要です。自身で見直すのが難しいと感じるのであれば、借り入れている貸金業者に相談してもよいでしょう。支払利息の総額は、返済期間が長いほど大きくなります。資金に余裕があるときには、毎月の返済額を増やしたりボーナス返済を進めたりすることで、予定よりも早い完済による利息総額の圧縮を目指しましょう。

総量規制の対象外となるローンを検討する

総量規制の上限まで借り入れがある方は、総量規制対象外のローンを検討するのも1つの方法です。カードローンは資金使途を問わないため、生活費や交際費など借りたお金を自由に使えます。

一方、総量規制の対象外となるローンは、一般的に住宅ローンや自動車ローンなど、資金使途が決まっています。自身が希望する資金の使い道に合致するローンがある場合には、カードローンではなく目的別ローンの利用も検討しましょう。

なお、総量規制対象外のローンだったとしても、必ず借り入れられるわけではありません。総量規制の上限まで借入があるときには、審査に落ちる可能性もあります。ローンを利用する可能性がある方は、計画的に返済を進めローン残高を減らしておくことが肝心です。

総量規制まとめ

総量規制とは貸金業者が貸付可能な上限金額を定めた規定で、具体的には契約者の年収の3分の1までです。ただしこれはあくまでも上限のため、審査によっては3分の1よりも少ない金額しか借りられないことは押さえておきましょう。

総量規制で対象となるのは消費者金融業者や事業者金融業者、クレジットカード会社、百貨店で貸付を受けた場合です。銀行で借り入れたローンは、規制の対象にはなりません。また、除外貸付や例外貸付など総量規制には含まれない貸付もあります。

資金が足りないからといって、ヤミ金や個人間融資を利用すると大きなトラブルになるケースがあります。貸付を受けるときには必ず、金融庁ホームページ内の登録貸金業者情報検索サービスに登録された業者を利用しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
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