連帯保証人と保証人の違いとは?リスクや注意点について解説

更新日:2025年02月13日

連帯保証

連帯保証とは、主債務者が債務を履行しないときに、主債務者に代わって債務の弁済をしなければならない契約のことです。この記事では、連帯保証人の概要および保証人との違い、連帯保証人になるリスクを解説します。また、2020年の民法改正による連帯保証人制度の変更点も併せて紹介します。

目次

「連帯保証人」とは

「連帯保証人」とは、保証人の一つの種類です。連帯保証人は、主債務者による返済や支払いができなくなったときに、主債務者の代わりに債務を支払う責任を負います。債務に対し主債務者と同等の義務を負うため、一般的な保証人よりも債務に対する責任は重くなります。

ここではまず、連帯保証人が必要な場面と連帯保証人になるための条件を見ていきましょう。

連帯保証人が必要な場面

連帯保証人が必要な場面の一例は、以下のとおりです。

  • 賃貸物件の契約
  • ペアローンや収入合算の契約
  • 奨学金の申し込み

賃貸物件の契約では、賃借人が家賃を支払えなくなったときに備えて連帯保証人が必要です。ただし、物件によっては、家賃滞納時に賃借人に代わって家賃を立て替える「保証会社」を利用すればよいケースもあります。

マイホーム購入時に親子や夫婦などでペアローンや収入合算で住宅ローンを組む場合は、双方がお互いに連帯保証人となります。

奨学金の借入時も、原則として連帯保証人が必要です。奨学金における連帯保証人は4親等内とされていることがほとんどで、用意ができない場合は機関保証制度を利用します。

連帯保証人になるための条件

連帯保証人は誰でもなれるわけではありません。連帯保証人になるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 安定した収入がある
  • 高齢ではない
  • 日本国内在住
  • 2親等以内の近しい親族(親や子、祖父母)
  • 速やかに連絡が取れる
  • 連帯保証人になるのを承諾している

連帯保証人にとって重要なのは、返済能力があるかです。そのため、年収が少ない方や高額な借入がある方、高齢の方は連帯保証人にはなれません。

また、返済能力があっても信頼に足る方でなければ、連帯保証人になることは難しいでしょう。信用力を確保するために、連帯保証人と認められるのは2親等内の親しい親族に限られます。併せて、日本在住で速やかに連絡を取れる方が条件です。

連帯保証人は主債務者と同等の責任を負うため、引き受けるには多大なリスクがあります。そのため、連帯保証人になることを承諾している場合しか、連帯保証人になることはできません。

保証人とは?連帯保証人との違い

先に述べたように、連帯保証人は保証人の一つです。連帯保証人に対する理解を深めるには、保証人についても知っておく必要があるでしょう。

ここでは、保証人の概要および保証人と連帯保証人の違いを解説します。

保証人の概要

保証人とは、債務者がその債務を履行しないときに、債務者に代わり弁済する責任を負う人のことです。保証債務を負う点は、連帯保証人と同じです。

保証人の特徴には、次の2つの権利があげられます。

  • 催告の抗弁権
  • 検索の抗弁権

催告の抗弁権とは、保証人が債務の弁済を求められた際に、まずは主たる債務者に督促するよう求められる権利です。ただし、債務者が破産している場合や所在不明のときは、この権利は認められません。

検索の抗弁権とは、主たる債務者がお金を持っていることが証明された場合、まずはその財産の差し押さえなどを実施するべきと主張できる権利です。主たる債務者に財産があることが証明されたときは、債権者は保証人に債務の弁済を請求できなくなります。

このように、保証人は保証債務を負うものの債権者に抗弁できる権利を持っているため、債権者の請求に即座に応じる必要はないとされます。

保証人と連帯保証人の違い

ここで、連帯保証人と保証人の違いを以下で確認しましょう。

連帯保証人 保証人
位置づけと負う責任 主債務者と同じ 保証債務
返済の時期 返済を求められたとき 主債務者が返済困難になったとき
返済の範囲 全額 保証人の数で割った金額
裁判所の強制執行 反論できない 主債務者に強制執行した後

連帯保証人は、返済を請求されたときには主債務者が財産を保有しているかに関わらず、全額返済しなければなりません。また、裁判所の強制執行を受け入れざるを得ない点を見ても、保証人より責任が重いといえるでしょう。

連帯保証人になるリスクや注意点

前項で解説したとおり、連帯保証人は保証人よりも負う責任が重く、引き受けるリスクや注意点も増大すると考えられます。ここでは、連帯保証人になるのであれば押さえておきたい、以下の4つの注意点を解説します。

  • 元金のほか利息や違約金などの返済義務を負う
  • 主債務者が自己破産や個人再生する可能性がある
  • 主債務者の死亡または失踪時も返済義務を負う
  • 原則として連帯保証人契約は解除できない

連帯保証人を頼まれて悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

元金のほか利息や違約金などの返済義務を負う

リスクの1つ目は、元金のほか利息や違約金などの返済義務を負う点です。連帯保証人は、借金全額の返済義務を負います。そのため、一般的には利息や違約金、遅延損害金なども弁済の対象とされます。

賃貸契約における連帯保証人の場合、貸借人の故意や過失、善管注意義務違反などによる損耗棄損の原状回復費用も、弁済の対象です。また、賃貸借契約解除後に速やかに部屋の引き渡しができなかったことによる家賃相当の損害賠償費用も、弁済の対象になる可能性があります。

このように連帯保証人が弁済しなければならない金額は、債務や契約の内容によって非常に大きくなる可能性があることは覚えておきましょう。

主債務者が自己破産や個人再生する可能性がある

リスクの2つ目は、主債務者が自己破産や個人再生する可能性がある点です。主債務者が自己破産や個人再生すると、連帯保証人は以下の義務を負います。

  • 自己破産:借金の全額を債権者に弁済する
  • 個人再生:減額となった分を債権者に弁済する

自己破産や個人再生が行われると、連帯保証人は残債を一括返済しなければなりません。債権者との話し合いにより分割による返済が可能になるケースもありますが、数は多くないようです。

連帯保証人に残債を一括返済する財産がない場合、連帯保証人も自己破産や個人再生をせざるを得ない事態が発生する恐れがあります。

主債務者の死亡または失踪時も返済義務を負う

リスクの3つ目は、主債務者の死亡または失踪時も返済義務を負う点です。主債務者の死亡により消滅する契約は、債権者と主債務者の間で交わされた「金銭消費貸借契約」のみです。

債権者と連帯保証人の間で締結した「保証契約」は、主債務者が死亡しても消滅しません。そのため、契約内容に特別な記載がある場合を除き、主債務者が失踪または死亡したとしても、連帯保証人は債務の弁済をしなければならないとされます。

原則として連帯保証人契約は解除できない

リスクの4つ目は、原則として連帯保証人契約は解除できない点です。一度連帯保証人になってしまうと、連帯保証人の意思のみで契約の解除はできません。連帯保証人を引き受ける際は、リスクや注意点を十分確認し、納得したうえで契約する必要がありそうです。

なお、以下の2つのケースでは、連帯保証人の解除が認められる可能性があります。

  • 賃貸借契約において、契約解除をせず漫然と家賃を累積させている場合
  • 銀行借入において、債務を十分に返済できる担保が提供されている場合

ただし、いずれにしても連帯保証人が独断で契約解除することはできず、債権者と交渉する必要があることは覚えておきましょう。

2020年│民法改正による連帯保証人制度の変更点

前項で解説したとおり、連帯保証人契約を結んだ方は多大なリスクと責任を負うことになります。そのため、これらのリスクを軽減するべく、2020年4月から保証に関する民法のルールが大きく変わりました。

ここでは、民法改正により変わった3つのポイントを詳しく解説します。

極度額のない個人の根保証契約は無効となる

民法改正により、限度額のない個人の根保証契約は無効になりました。なぜなら、限度額が明記されていなければ、契約の時点で連帯保証人がどのくらいの債務を負うのかを明確にできないためです。

保証人が将来想定外の債務を負うことにならないよう、保証契約の際は限度額を債務者と債権者の合意で定めることが決められています。

保証人のための情報提供義務の新設

保証人のための情報提供義務の新設も、民法改正のポイントです。主債務者の収支や財産状況等がわからない状態では、主債務者が滞納する可能性を測れないため、連帯保証人になるかを決めることはできません。

そのため、主債務者は以下の情報を保証人に提供することが、新たに義務付けられたのです。

  • 保証人になるかを判断する情報
  • 主債務の履行状況に関する情報
  • 期限の利益を喪失した場合の情報

主債務者は、保証人契約を結んだ後であっても、連帯保証人から支払い状況などについて情報提供を求められたときは応じる必要があるとされます。

公証人による保証意思確認手続きの新設

公証人による保証意思確認手続きも、改正により新たに新設されたポイントです。保証契約の多くは、連帯保証人契約です。しかし、連帯保証人が負うリスクや責任についての理解が少ないまま契約を結んでしまい、思わぬ債務を背負うことになるケースが発生していました。

そのため、個人が簡単に連帯保証人契約を結ぶことを防ぐために、公証人による意思確認手続きが義務化されたのです。第三者である公証人が、連帯保証人にリスクや責任を事前確認することで、不本意な契約の締結を防ぐ効果が期待されます。

参考)法務省「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」

連帯保証まとめ

連帯保証とは、主債務者が債務を履行しないときに、主債務者に代わって弁済をする契約のことです。連帯保証を請け負う人を、連帯保証人といいます。

連帯保証人は、保証人の一種です。ただし、主債務者と同等の責任を負う点や、債務の全額返済を求められる点、主債務者の財産状況に関わらず債権者の弁済請求に応じなければならない点から、保証人よりも負う責任が多いとされます。

連帯保証人になると、債権者の合意なく連帯保証人を解除できません。主債務者が死亡した場合も弁済の義務が残るなど、連帯保証人を引き受けるにはさまざまなリスクがある点は知っておくべきです。

なお、連帯保証人のリスクを軽減させるべく、2020年に保証に関する民法のルールが改正されました。連帯保証人になる際は、引き受けるリスクと民法の改正内容を十分に確認したうえで、契約を結ぶことが肝心です。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
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