請求書カード払いとは?メリット・デメリットを解説

更新日:2024年05月01日

請求書カード払い

請求書カード払いとは、受け取った請求書の支払方法を銀行振込からクレジットカード決済に変更して、支払いを先延ばしにできるサービスです。請求書カード払いは支払代行サービスの一種で、取引先へあなた名義で銀行振込してくれます。そのため、取引先に知られる心配はありません。VISA、JCB、AMEXなどのカードであれば、法人カードでも個人カードでも利用可能です。このような利便性があるため、中小企業を中心に請求書カード払いの利用が広がっています。

本記事では、請求書カード払いの仕組み、通常のクレジットカード決済との違い、具体的な利用方法、メリット・デメリットなどを解説します。

目次

請求書カード払いの仕組み

前述のとおり、一般的な請求書カード払いのサービスは、バイヤー側(支払側)のための決済機能を提供しています。一方で、徐々に増えてきているのが、サプライヤー側(請求側)の機能も搭載している請求書カード払いのサービスです。以降で、バイヤー向けとサプライヤー向けの両方について解説しますが、現時点では、請求書カード払い=バイヤー向けと考えても差し支えありません。本記事でも、ただ「請求書カード払い」と記載されている場合は、バイヤー向けの請求書カード払いについて説明しているものと捉えて読み進めてください。

【バイヤー(支払側)】請求書カード払い

バイヤー(支払側)向けの請求書カード払いは、いわゆる支払代行サービスの一種です。取引先から請求書を受け取った後に、請求書カード払いサービス上に振込先口座、振込金額などを入力して、手持ちのクレジットカードで決済します。すると、あなたの振込人名義で、請求書カード払いサービス事業者(以下、請求書カード払い会社)が取引先へ銀行振込をしてくれます。

そして後日、請求書カード払い会社に対して支払いをします。具体的には、請求書の請求金額と請求書カード払いの手数料が口座から引き落とされます。

利用できる事業者

請求書カード払いのサービスは、法人・個人事業主ともに利用対象となっています。ただし、事業者によっては法人のみを対象としているものもあります。

決済手数料

請求書カード払いの手数料率は、約3〜4%となっており、サービス各社での開きはほとんどありません。消費税率の半分以下の手数料のため、気軽に利用しやすいといえます。

※代表的な請求書カード払いサービスの手数料

  • FINUX「INVOY」:3%
  • 三井住友カード「請求書支払い代行サービス」:3%
  • UPSIDER「支払い.com」:4%
  • デジタルガレージ「DGFT請求書カード払い」:3%
  • ROBOT PAYMENT「1click後払い」:3.8%
  • フリーウェイジャパン「フリーウェイ請求書カード払い」:2.7%
フリーウェイ請求書カード払いのバナー

支払いを先延ばしにできる期間

支払いが猶予される期間はサービス事業者によって異なりますが、1か月・40日・50日・60日などと定められており、おおむね1〜2か月の延長が可能です。 なかには120日という長期のサービスもありますが、分割払いになるため、途中で一部の金額を支払う必要があります。

代表的なサービスの最大支払い延長期間

  • FINUX「INVOY」:60日
  • UPSIDER「支払い.com」:60日
  • デジタルガレージ「DGFT請求書カード払い」:60日
  • ROBOT PAYMENT「1click後払い」:60日
  • フリーウェイジャパン「フリーウェイ請求書カード払い」:60日
  • 三井住友カード「請求書支払い代行サービス」:40日

【サプライヤー(請求側)】請求書カード払い

サプライヤー側(請求側)向けの請求書カード払いは、支払代行の類ではありません。クレジットカードの加盟店になることなく、自社で発行した請求書をクレジットカード決済できるようにするサービスです。発行した請求書を請求書カード払いにアップロードすると、クレジットカード決済用のURLが発行されます。そのURLと請求書を取引先へメールなどで送付し、取引先がそのURLにアクセスするとカードで決済され、数日後にはあなたの会社の口座に代金が振り込まれます。振り込まれる代金は、請求書の額面金額から、請求書カード払いの決済手数料が差し引かれた金額です。

請求書カード払いと他の決済方法との違い

事業者間の取引に使われる決済方法として、「請求書払い」と「クレジットカード決済」があります。これらの支払い方法は、請求書カード払いとどのような違いがあるのでしょうか。経費の支払いでクレジットカード決済を利用する事業者は増えていますが、サービス代金をクレジットカードで入金できる事業者は限られているため、請求書カード払いを活用する企業もあります。

①請求書払いとの違い

請求書払いは、一般的に銀行振り込みを利用します。そのため、銀行の取引時間内での決済に限定されます。これに対して請求書カード払いでは、銀行の取引時間の制約がなく、いつでも決済ができます。また、請求書払いの場合、支払いを先延ばしにはできません。請求書カード払いであれば、定められた延長期間内であれば支払いを先延ばしにすることが可能です。

②BtoBクレジットカード決済との違い

BtoB取引でのクレジットカード決済は、導入があまり進んでいません。請求側がカード会社と契約して、クレジットカード決済に対応する必要があります。請求書は自社発行せず、支払側にクレジット決済を依頼します。請求側・支払側ともに、クレジット決済によって支払を一本化できるため、手続きの簡素化につながります。これに対して請求書カード払いは、請求側は従来どおり請求書を支払側に送付するため、クレジットカード決済に対応する必要がありません。

請求書カード払いとファクタリングの違い

ファクタリングとは、売掛債権(主として売掛金)をファクタリング会社へ債権譲渡して資金調達する手法で、資産を売却して資金調達するアセットファイナンスの一種です。請求書カード払いとファクタリングが比較される場面もありますが、資金調達の手法としては全く別の分類に入ります。請求書カード払いは、支払を先延ばしにして資金繰りを改善する手法のため負債が一時的に増えますが、ファクタリングに比べると手数料を安く抑えられます。一方のファクタリングでは、売掛金を債権譲渡するため負債は増えません。請求書カード払いとファクタリングには、それぞれメリットとデメリットがるため、それを理解したうえで適切な方を選ぶようにしましょう。

参考)ファクタリングとは

請求書カード払いのメリット【支払側】

請求書カード払いは、支払側で利用するサービスのため、支払側にメリットがあり、請求側には直接的なメリット・デメリットがありません。また、請求書を発行せず、クレジットカード決済で取引されているケースでは、請求書カード払いにする必要性もないといえます。ここからは、支払側が請求書カード払いを利用するメリットを解説します。

メリット①支払いを先延ばしにできる(資金繰り)

支払いが重なって一時的に資金繰りに困った場合、請求書カード払いを利用すれば、特定の取引の支払いを先延ばしにできます。サービス事業者によっては、60日程度の支払い延長ができる場合もあります。ただし、長期的な資金不足の場合には、支払いを先延ばしにすると負担が大きくなるため、融資等を検討する必要があるでしょう。

メリット②審査や手続きが簡単

銀行融資を利用する場合、審査や手続きが煩雑になりやすく、融資を受け取るまでには1か月程度の時間がかかります。請求書カード払いであれば、利用にあたっての審査が不要で、手続きが簡単なため、手軽に利用できます。また、運営会社は大手カード会社や系列会社のため安心できるといったメリットもあります。

メリット③手数料が少ない

請求書カード払いは、請求書払いに比べると手数料が負担となりますが、資金繰りが目的の場合には、銀行融資等に比べて手数料が少ない点がメリットとなります。

  • 銀行融資:概ね10%以内(金利)

メリット④取引先がカード決済非対応でも利用可能

請求書を発行して銀行振り込みを求める会社は、BtoBのクレジットカード決済には対応していない可能性があります。そのような会社が取引先であっても、請求書カード払いは取引先の意向に関係なく、支払側だけの判断でクレジット決済を利用できます。

メリット⑤カード決済で支払いを一元管理できる

請求書カード払いを利用することで、取引の決済をクレジットカードに一本化できるため、支払い管理を効率化できます。すでに経費などの支払いにクレジットカード決済を利用しているなど、代金の支払いの基本をカード決済としている場合にメリットがあります。現在はスマホ決済が普及したことで、クレジットカードと連携する場合も多く、クレジットカードで支払いを一本化する動きは今後も進むと考えられます。

メリット⑥カード払いのポイントが貯まる

手持ちのクレジットカードを使うため、カード会社の設定しているポイントをそのまま利用できます。決済する金額やシーンが増えれば、ポイントの活用も広がるでしょう。

メリット⑦取引先に知られずに利用できる

請求書カード払いを利用してカード決済すると、取引先への銀行振込の際には、指定した口座名義で振り込んでくれます。通常であれば、あなた(自社)名義で振り込むことになるため、取引先から見れば、請求書カード払いを利用したかどうかは分かりません。資金繰りに困っていることを取引先に知られたくない場合でも、請求書カード払いなら安心して利用できます。

請求書カード払いのメリット【請求側】

請求書カード払いは、支払側が自由に導入できるサービスのため、基本的に請求側の請求方法を変える必要がありません。支払側の支払いをサービス事業者が立て替えて支払うため、代金を確実に回収できるメリットがあります。個人事業主が支払いを出来なくなったとしても、サービス事業者から先に代金が支払われているため、回収できないという状況は発生しません。

請求書カード払いのデメリット【支払側・請求側】

請求書カード払いを利用するデメリットには、以下が挙げられます。

  • カードの利用限度額を超えた決済ができない
  • 支払い延長期間が最大60日程度までの短期で、一時的な資金繰り対策となる
  • 個人事業主は、請求書カード払いを利用できない場合が多い。

支払側のみで完結するサービスのため、請求側のデメリットは特に存在しません。

請求書カード払いの決済の流れ

請求書カード払いは、サービス事業者との取引となります。サービス事業者が支払者に代わって取引先口座へ請求金額を振り込み、後日、支払った代金と手数料を支払者のクレジットカードから引き落とします。具体的な流れは次のとおりです。

①サービスの利用登録

サービス事業者のウェブサイトから利用登録をします。アカウントはメールアドレスがあれば作成できることが一般的です。クレジットカード情報や取引先の登録・振込名義などを設定しますが、サービスによって入力項目は異なります。また、サービス登録には費用はかからないことが一般的です。サービスの登録後は、個別に請求書への支払いを申請した場合に決済されます。

②振込先口座を指定してクレジット決済

サービスの利用登録を完了したら、請求書カード払いの申請をします。支払い先の振込口座を指定して、振込金額を入力します。この際、手持ちのカードを使用してクレジット決済をします。ECサイトでクレジット決済をするのと変わらない仕組みです。クレジット決済日は、当日または翌日となり、基本的に決済日を指定することはできません。決済時の入力・選択項目はサービスによって異なるため、使い勝手のよいサービスを利用するとよいでしょう。

③請求書カード払い会社が取引先に振り込み

請求書カード払い会社が取引先への支払いを代行して、銀行口座への振り込みを実施します。支払人名義は自社(個人)にできるため、支払いをサービス事業者が代行していることは請求側の相手には分かりません。振込日は申請の当日や翌日、5営業日以内などサービスによって異なります。平日のなかから選択できるサービスもあり、取引の関係で振込日を決める必要がある場合に便利です。

④支払い金額と手数料の引き落とし

サービス事業者は、振り込んだ金額と手数料を、支払者が契約するカード会社から回収します。支払側は、手持ちのクレジットカードで通常通り決済され、銀行口座から引き落とされます。支払える金額の上限はカード会社の利用限度額によるため、支払いにあたっては自身のクレジットカードの利用条件を確認しましょう。

請求書カード払いサービス8選

ここからは、代表的な請求書カード払いサービスの8つを比較して紹介します。前述した支払い延長期間、決済手数料、対応しているカードブランド、運営会社で簡単に比べてみました。サービスの使い勝手などは好みが分かれます。請求書カード払いサービスの会員登録だけであれば無料なので、複数サービスを利用して比較するのが良いでしょう。

サービス
名称
支払い
延長期間
(最長)
手数料 対応
ブランド
支払い.com 60日間 4.0% Visa
Mastercard
SAISON CARD
INVOY 60日間 3.0% Visa
Mastercard
JCB
DGFT請求書カード払い 60日間 3.0% Visa
Mastercard
JCB
Diners Club
フリーウェイ請求書カード払い 60日間 3.0% Visa
Mastercard
請求書支払い代行サービス 40日間 3.0%
※三井住友カードを使うと2.7%
Visa
Mastercard
1click後払い 60日間 3.8% Visa
Mastercard
JCB請求書カード払い 40日間 2.98% JCB
ラボル カード払い 60日間 3.0%~3.5% Visa
Mastercard
JCB

最短翌営業日に振込みを実行できる「支払い.com」

支払い.comは、クレディセゾンとUPSIDERが協同で提供しているサービスです。サービスの利用登録時に財務審査や書類審査がなく、会員登録だけなら無料になっています。セゾンカードまたはUPSIDERが発行しているカードで決済する場合は、カード決済の翌営業日に取引先の口座への振込が可能です。他のカードを使う場合は、振込まで2営業日かかりますが、他の請求書カード払いに比べてもスピーディーです。最低振込金額は1万円からですが、手数料は支払額の4%と固定されているため、少額の請求書でも利用しやすいでしょう。

サービス登録時の財務審査 なし
サービス登録時の書類提出 なし
手数料 4.0%
支払延長期間 最大60日間
決済から振込まで 翌営業日
※セゾンカード、UPSIDERカード以外を利用すると2営業日
利用額の上限と下限 下限:1万円~
上限:カード限度額
振込名義の指定
海外口座への振込
対応カードブランド Visa、Mastercard、セゾンカード
※JCB、AMEXはセゾンカードが発行したカードの場合のみ利用可能
個人のカードの利用
※ビジネスカードを推奨
個人事業主の利用
運営会社 株式会社UPSIDER

手数料が業界最安水準の「INVOY」

INVOYは、財務審査なく利用できる請求書カード払いのサービスです。カードで決済すると、3営業日以内に請求先へ振り込んでくれます(振込日を指定する場合は、4営業日後から最大7日後まで指定可能)。手数料は支払額の3%で業界最安水準での利用が可能になっています。ただし、支払金額が10万円以下の場合は手数料が一律3,000円のため、10万円以上の請求書での利用をオススメします。

サービス登録時の財務審査 なし
サービス登録時の書類提出 なし
手数料 3.0%
支払延長期間 最大60日間
決済から振込まで 3営業日以内
※振込日を指定すると4営業日後から最大7日後
利用額の上限と下限 なし
※上限額は、契約しているカードによる
振込名義の指定
海外口座への振込
対応カードブランド Visa、Mastercard、JCB
※JCBブランドで発行されたプリペイドカードは対象外
個人のカードの利用
※ビジネスカードを推奨
個人事業主の利用
運営会社 FINUX株式会社

Diners Clubのカードが唯一つかえる「DGFT請求書カード払い」

DGFT請求書カード払いは、ダイナースクラブのカードが使える珍しいサービスです。サービスに会員登録するときに財務審査は必要ですが、最短即日からの利用も可能です。手数料も3.0%(支払金額が1万円以下の場合は手数料が一律300円)と業界最安水準。カード決済から請求先への振込は営業日以内です。に請求先へ振り込んでくれます。

サービス登録時の財務審査 あり
サービス登録時の書類提出 なし
手数料 3.0%
支払延長期間 最大60日間
決済から振込まで 3営業日以内
利用額の上限と下限 なし
※上限額は、契約しているカードによる
振込名義の指定
海外口座への振込
対応カードブランド Visa、Mastercard、JCB、Diners Club
個人のカードの利用
個人事業主の利用
運営会社 株式会社デジタルガレージ

決済手数料が常時2.7%の「フリーウェイ請求書カード払い」

フリーウェイ請求書カード払いは、当社が運営する請求書カード払いのサービスです。最大の特徴は、決済手数料が2.7%と業界最安クラスに安いことです(手数料が600円を下回る場合には、600円になる)。支払者向けと請求者向けの両方の機能を提供しており、VisaとMastercardに対応しています。サービスに会員登録するときに財務審査は不要ですが、実在性の確認などの審査は実施されます。

サービス登録時の財務審査 なし
サービス登録時の書類提出 なし
手数料 2.7%
支払延長期間 最大60日間
決済から振込まで 3営業日以内
利用額の上限と下限 なし
※上限額は、契約しているカードによる
振込名義の指定
海外口座への振込
対応カードブランド Visa、Mastercard
個人のカードの利用
個人事業主の利用
運営会社 株式会社フリーウェイジャパン

請求書カード払いまとめ

今回は、請求書カード払いについて解説しました。請求書カード払いは支払い代行の一種で、銀行振込を求める請求書をクレジットカードで決済できるサービスです。メリットは支払いを先延ばしにできる点と、審査などの手続きが簡単で手数料も比較的に安いことです。一方のデメリットは、決済できる金額の上限がカード限度額までになり、支払を延長できても最大60日までのため一時的な資金繰り改善にとどまる点です。ご存知のとおり、資金調達の手段については、日頃から多様な選択肢を持っておくことが大切。いざと言うときに必要な資金を確保できるように、請求書カード払いについても検討してはいかがでしょうか。
請求書カード払いの主要サービスの比較表は、こちら

※本記事では、一部の広告主からの収益が発生する場合があります。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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