運転資本(WC)とは何か?計算式と減らす方法について

更新日:2023年12月18日

運転資本

運転資本(WC:ワーキングキャピタル)とは、企業が日々、事業活動を営んでいくために必要な資金のことです。運転資本は財務分析の安全性の経営指標ではありませんが、企業の短期的な債務支払能力を分析するときにも用いられます。

運転資本の3つのポイント

  • 運転資本とは、企業が日々、事業活動を営んでいくために必要な資金のことである。
  • 運転資本の計算式「売上債権+棚卸資産-仕入債務」。
  • 運転資本を減らすには、無駄な在庫を持たず、支払いサイトを伸ばし、入金サイトを短くすること。

運転資本の求め方

運転資本は流動資産から流動負債を差し引いて求めます。

運転資本 = 流動資産(現金および現金等価物を除く) - 流動負債(有利子負債を除く)

ただし、運転資本に含める項目を日常の営業取引にかかる部分だけに絞って、以下のように計算することもあります。

運転資本 = 売上債権 + 棚卸資産(在庫) - 仕入債務

※売上債権:商品やサービスを掛取引で販売し、受け取っていない代金。売掛金や受取手形など。

※棚卸資産:いわゆる在庫。完成品だけではなく、原材料や仕掛品なども含む。

※仕入債務:商品やサービスを掛取引で購入し、支払っていない代金。買掛金や支払手形など

運転資本は、入金と出金のズレを補うための資金

運転資本がプラスならば、その分だけ借入金が必要になります。運転資本は、短期的な出金(キャッシュアウトフロー)と入金(キャッシュインフロー)のズレを補うための資金です。現代のビジネスは、現金決済されることが少なく、ほとんどが信用取引で成り立っています。かつ、仕入れた製品はすぐに販売できるわけではなく、在庫として動かない期間もあります。そして、売れても代金が決済されるまでキャッシュは入ってきません。このような事情により、入金より出金が先行する場合があり、それを補うための資金が必要です。それこそが運転資本であり、主な調達手段は借入金になります。

運転資本を計算してみる

分かりやすくするために、以下のような企業を想定します。あくまで、イメージしやすさを優先していますので、その点をご理解の上で読み進めてください。

  • 4月から事業開始(売上債権、棚卸資産、仕入債務がない)
  • 仕入債務の支払いは、1ヶ月後
  • 仕入れた商品は、仕入の1ヶ月後に販売
  • 売上債権の入金は、2ヶ月後

4月末の取引

  • 商品100万円を仕入れた(支払いは1ヶ月後の5月末)

5月末の取引

  • 商品100万円を仕入れた(支払いは1ヶ月後の6月末)
  • 商品100万円を200万円で販売した(入金は2ヶ月後の7月末)
  • 4月の仕入代金100万円を支払った

6月末の取引

  • 商品100万円を仕入れた(支払いは1ヶ月後の7月末)
  • 商品100万円を200万円で販売した(入金は2ヶ月後の8月末)
  • 5月の仕入代金100万円を支払った

7月末の取引

  • 商品100万円を仕入れた(支払いは1ヶ月後の8月末)
  • 商品100万円を200万円で販売した(入金は2ヶ月後の9月末)
  • 6月の仕入代金100万円を支払った
  • 5月の売上代金200万円が入金された

運転資本

  • 売上債権:400万円(売上2ヶ月分)
  • 棚卸資産:100万円(在庫1ヶ月分)
  • 仕入債務:100万円(仕入1ヶ月分)
  • 運転資本:400万円(売上債権+棚卸資産-仕入債務)

運転資本がプラスの場合

売上債権の回収に比べ、仕入債務の支払が前倒しになっている状態。つまり、つなぎ資金が必要な状況と判断できます。運転資本が増加すると利益が計上されていても資金がショートして、黒字倒産を起こすことがあります。それを防ぐために、借入金などでの資金調達が必要です。

運転資本がマイナスの場合

売上債権の回収に比べ、仕入債務の支払が遅くなっている状態。つまり、資金繰りに余裕があると判断できます。売上が伸びている条件下においては、運転資本が少ないほうが資金繰りは楽ですが、売上が減少しはじめると一気にキャッシュ不足に陥る可能性があります。

運転資本を減らすには仕入を増やせばいい?

運転資本の計算式を見ると分かるとおり、運転資本を減らすためには3つの方法があります。仕入債務を増やすか、売上債権を減らすか、棚卸資産を減らすか、のいずれか(または同時並行)です。誤解してはならないのは、「仕入れを増やそう!」という単純な話ではないということ。仕入れても売れなければ、結局は在庫として棚卸資産に計上されてしまい元も子もありません。同様に、在庫である棚卸資産を減らすために不利な支払条件で販売した場合、売上代金の入金が遅れてしまい、運転資本が減らない可能性もあります。

運転資本を減らすポイントは「サイト」

では、どうすれば運転資本を減らせるのか一例を挙げると、「仕入債務の支払いサイト(期間)を延ばすこと」です。極端な例ですが、得意先からの仕入債務を、毎月末締めの翌月10日に支払っているのなら、毎月末締めの翌月末日に変更してもらうのです。同じ発想で、売上債権の回収サイトを短縮することも、運転資本の減少に貢献します。いずれも得意先の協力が必要ですが、どちらも困難であれば、売れ筋ではない商品の仕入を減らして、無駄な在庫を持たないようにすることも、運転資本の減少に繋がります。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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