黒字倒産とは~利益が出ていても倒産する原因を解説~
2022.12.15

黒字倒産とは、文字どおり黒字なのに倒産してしまう状態を意味します。会社は、赤字でも倒産しません。ずっと赤字であれば、いずれ倒産する可能性はありますが、赤字=倒産ではないのです。会社が倒産するのは、会社経営を続けられなくなったときです。特に、外部へ支払うための現金が足りなくなった(支払不能になった)ときに会社が倒産します。つまり、黒字倒産とは、黒字なのに支払いができなくなって倒産することを指しています。
黒字と赤字とは
説明不要かもしれませんが、黒字とは利益が出ていること(収入が支出より大きい)、赤字とは損失が出ていること(収入が支出よりも少ない)ことを指します。つまり、黒字倒産とは収入が支出より大きくて、利益が出ているのにも関わらず、会社が支払不能に陥ることを意味するわけです。ちなみに、黒字も赤字もない状態を「収支トントン」と呼ぶこともあります。このときは、実際の売上が損益分岐点だったときを指すこともあるようです。
黒字倒産する原因を解説
具体的に、黒字倒産してしまうケースを紹介します。Aさんの会社は、現金商売ではなく売掛金や買掛金といった掛取引しています。以下のような取引があった場合、黒字倒産してしまいます。なお、理解しやすくするために少し極端な取引例を紹介します。
4月1日 現金100万円を出資して資本金とした
借方 | 貸方 | ||
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現金 | 100万円 | 資本金 | 100万円 |
4月15日 掛けで、150万円の商品を仕入れた(支払は翌月末)
借方 | 貸方 | ||
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仕入 | 150万円 | 買掛金 | 150万円 |
5月1日 掛けで、200万円を売り上げた(回収は翌月10日)
借方 | 貸方 | ||
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売掛金 | 200万円 | 売上高 | 200万円 |
5月31日 4月1日に仕入れた150万円の買掛金を現金で支払った…となれば良いのですが、手元の現金が100万円しかありませんので、支払えません。このままだと倒産です。
借方 | 貸方 | ||
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買掛金 | 150万円 | 現金 | 100万円しかない |
5月31日の損益 売上200万円-仕入150万円=利益50万円
以上の取引だけを見ると、黒字ですが、売掛金200万円の入金よりも先に、買掛金150万円の支払期限が到来してしまい、手元の現金が100万円では50万円の不足があり支払えません。当然、支払うことは不可能ですから、黒字なのに倒産となってしまいます。
赤字でも倒産しないケース
赤字でも倒産しないケースも紹介しておきます。上記のAさんが、200万円を出資して会社を作り、5月に売上を計上できなかったとします。5月31日の損益は150万円の赤字ですが、買掛金の150万円の支払は問題ないため(手元に現金が200万円あるから)、会社は倒産しません。ただし、このまま事業で赤字が続けば、会社は倒産してしまうリスクがあります。
黒字倒産と債務超過
債務超過とは、貸借対照表の負債総額が資産総額を上回る状態のことです。つまり、資産をすべて売却するなどしても債務を返済できなくなるため、倒産の可能性が高くなりますが、すぐには倒産しません。黒字かつ債務超過の状態でも、支払不能になるまでは存続し続けます。
黒字倒産と粉飾決算
粉飾決算とは、架空売上の計上などによって、実際には赤字の決算を黒字の決算に見せかける虚偽の決算報告のことです。粉飾決算を続けていれば、それが露呈しようとしなかろうと、倒産の可能性は高くなります。ある意味、黒字で倒産するため、粉飾等さんも黒字倒産の一種と言えなくもありませんが、実際には赤字のため、ただの倒産です。
黒字倒産を防ぐには
仕入、在庫、販売、回収というサイクルを描くビジネスの場合は、商品が売れなくても、売上代金を回収できなくても、仕入代金を必ず支払わなければなりません。仕入から回収までの期間が長くなればなるほど、黒字倒産しないためにも、その期間をつなぐための資金が必要になります(潤沢な現金があれば別ですが)。資金調達の手段として分かりやすいのは借入金です。売掛金を売却して資金調達できるファクタリングもあります。
黒字も重要だが最も大切なのは現金
黒字倒産とは何なのか。どうして黒字倒産してしまうのかを紹介しました。会社経営を継続させる上では、黒字を出すことが大切です。赤字を出し続けていれば、金融機関、株主、取引先、従業員との関係が悪化してしまいます。特に銀行などの金融機関から不信感を抱かれれば、新規融資のストップ、既存融資の一括返済といった資金繰りを悪化させる事態が発生してしまうかもしれません。ただし、黒字だから安心というわけではない点は、この記事を読まれた方なら、すでに理解されていると思います。黒字が大事、でもキャッシュフローの方がもっと大事。このことを念頭に置いて経営していきましょう。
【記事の執筆と監修について】
この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓
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