黒字倒産とは何か?原因と予防策をわかりやすく解説
更新日:2025年02月03日

黒字倒産とは、文字どおり黒字なのに倒産してしまう状態を意味します。会社は、赤字でも倒産しません。ずっと赤字であれば、いずれ倒産する可能性はありますが、赤字=倒産ではないのです。会社が倒産するのは、会社経営を続けられなくなったときです。特に、外部へ支払うための現金が足りなくなった(支払不能になった)ときに会社が倒産します。つまり、黒字倒産とは、黒字なのに支払いができなくなって倒産することを指しています。
目次
黒字と赤字とは
説明不要かもしれませんが、黒字とは利益が出ていること(収入が支出より大きい)、赤字とは損失が出ていること(収入が支出よりも少ない)ことを指します。つまり、黒字倒産とは収入が支出より大きくて、利益が出ているのにも関わらず、会社が支払不能に陥ることを意味するわけです。ちなみに、黒字も赤字もない状態を「収支トントン」と呼ぶこともあります。このときは、実際の売上が損益分岐点だったときを指すこともあるようです。
黒字倒産する原因
具体的に、黒字倒産してしまうケースを紹介します。Aさんの会社は、現金商売ではなく売掛金や買掛金といった掛取引しています。以下のような取引があった場合、黒字倒産してしまいます。なお、理解しやすくするために少し極端な取引例を紹介します。
4月1日 現金100万円を出資して資本金とした
借方 | 貸方 | ||
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現金 | 100万円 | 資本金 | 100万円 |
4月15日 掛けで、150万円の商品を仕入れた(支払は翌月末)
借方 | 貸方 | ||
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仕入 | 150万円 | 買掛金 | 150万円 |
5月1日 掛けで、200万円を売り上げた(回収は翌月10日)
借方 | 貸方 | ||
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売掛金 | 200万円 | 売上高 | 200万円 |
5月31日 4月1日に仕入れた150万円の買掛金を現金で支払った…となれば良いのですが、手元の現金が100万円しかありませんので、支払えません。このままだと倒産です。
借方 | 貸方 | ||
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買掛金 | 150万円 | 現金 | 100万円しかない |
5月31日の損益 売上200万円-仕入150万円=利益50万円
以上の取引だけを見ると、黒字ですが、売掛金200万円の入金よりも先に、買掛金150万円の支払期限が到来してしまい、手元の現金が100万円では50万円の不足があり支払えません。当然、支払うことは不可能ですから、黒字なのに倒産となってしまいます。
赤字でも倒産しないケース
赤字でも倒産しないケースも紹介しておきます。上記のAさんが、200万円を出資して会社を作り、5月に売上を計上できなかったとします。5月31日の損益は150万円の赤字ですが、買掛金の150万円の支払は問題ないため(手元に現金が200万円あるから)、会社は倒産しません。ただし、このまま事業で赤字が続けば、会社は倒産してしまうリスクがあります。
黒字倒産と債務超過
債務超過とは、貸借対照表の負債の総額が資産の総額を上回る状態のことです。つまり、資産をすべて売却するなどしても債務を返済できなくなるため、倒産の可能性が高くなりますが、すぐには倒産しません。黒字かつ債務超過の状態でも、支払不能になるまでは存続し続けます。
黒字倒産と粉飾決算
粉飾決算とは、架空売上の計上などによって、実際には赤字の決算を黒字の決算に見せかける虚偽の決算報告のことです。粉飾決算を続けていれば、それが露呈しようとしなかろうと、倒産の可能性は高くなります。ある意味、黒字で倒産するため、粉飾等さんも黒字倒産の一種と言えなくもありませんが、実際には赤字のため、ただの倒産です。
黒字倒産と各種滞納
税金滞納や社会保険料滞納も、黒字倒産の遠因になりえます。滞納して即座に大きな問題になるわけではありませんが、督促に対して未納のままにしたりすると、銀行口座などの重要な資産を差し押さえられる可能性があります。そうなってしまえば事業は成り行かなくなり、黒字倒産してしまう場合もありえますので、十分に注意しましょう。
黒字倒産の予防策
仕入、在庫、販売、納品、回収というサイクルの一般的なビジネスの場合は、商品の売上代金を回収する前に仕入代金の支払期限が到来するため、先に仕入代金を支払わなければなりません。また、地代家賃や人件費などの経費についても、売上代金の入金前の支払いになることが大半でしょう。たとえば、建設業の企業であれば、工事に着手してから売上代金の入金までの期間が長く、建材の仕入代金や現場作業員への人件費の支払が先行するため、黒字倒産の予防が特に必要です。以降では、具体的な予防策について紹介します。
普段から資金繰り管理を徹底する
黒字倒産は、突き詰めれば資金繰りの問題です。資金ショートするタイミングさえ把握できていれば、事前に資金調達するなどの対策をとりやすくなります。資金繰り管理の分かりやすい方法のひとつは、資金繰り表を作成することです。一定期間のお金の流れについて、予算と実績を入力して作ります。資金繰り表を作ることで、資金繰不足に陥りそうな時期を事前に把握しやすくなります。なお、現預金の出入りについて、より細かく過去の実績を確認したい場合には、決算書のひとつであるキャッシュフロー計算書の方が便利です。
過剰な在庫を抱えないようにする
商品(製品)は、売れて初めてお金になります。未完成の仕掛品は売れません。当然のことではあるものの、在庫管理を徹底できずに過剰在庫を抱えてしまう中小企業は少なくありません。受注の予測が外れて在庫が滞留してしまう場合もあれば、大量生産、大量仕入の方が在庫1単位あたりの価格が下がるため、余分な在庫を持ってしまう場合もあるでしょう。過剰在庫は黒字倒産の原因になるだけではなく、在庫の保管費用が収益を悪化させることもあります。在庫管理を徹底するようにしましょう。
運転資金を調達する
前述のとおり、仕入から回収までの期間が長くなればなるほど、売上代金が入金されるまでの間をつなぐ運転資金が必要になります(潤沢な現金があれば別ですが)。運転資金を確保するための資金調達の手段として分かりやすいのは銀行融資やビジネスローンなどの借入金です。また、売掛金を売却して資金調達できるファクタリングや、売掛債権を担保にする売掛債権担保融資などもありますので、運転資金の確保のための資金調達を検討しましょう。
参考)ファクタリングとは
短期的な支払能力の指標をまめに確認する
財務分析の指標の中には、短期的な健全性を測るための指標が存在します。それらをコマメに確認することで、黒字倒産の危険を事前に察知できる場合もありますので、会計ソフトやExcelなどを使って確認できるようにしておきましょう。以下に例を挙げておきます。
流動比率
流動比率とは、1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを表す指標です。
流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
当座比率
当座比率も流動比率と同様の指標ですが、換金性の低い棚卸資産(在庫など)を除いている点で、流動比率よりも厳密に短期健全性を確認できる指標といえます。
当座比率(%) = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
手元流動性比率
手元流動性比率とは、流動比率は当座比率とは異なる概念の指標です。月間の売上代金を回収できるまで、手元資金で運営できるのかを表しています。
手元流動性比率 = 手元流動性 ÷ 月商
※手元流動性=現金 + 預金 + 短期有価証券(1年以内に換金できる有価証券)
※月商=年商÷12(ヶ月)
黒字倒産まとめ
黒字倒産とは何なのか。どうして黒字倒産してしまうのかを紹介しました。会社経営を継続させる上では、黒字を出すことが大切です。赤字を出し続けていれば、金融機関、株主、取引先、従業員との関係が悪化してしまいます。特に銀行などの金融機関から不信感を抱かれれば、新規融資のストップ、既存融資の一括返済といった資金繰りを悪化させる事態が発生してしまうかもしれません。ただし、黒字だから安心というわけではない点は、この記事を読まれた方なら、すでに理解されていると思います。黒字が大事、でもキャッシュフローの方がもっと大事です。このことを念頭に置いて経営していきましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
項目 | 内容 |
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会社名 | 株式会社フリーウェイジャパン |
法人番号 | 1011101045361 |
事業内容 |
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本社所在地 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階 |
所属団体 | 一般社団法人Fintech協会 |
顧問弁護士 | AZX総合法律事務所 |