売掛金の仕訳~掛取引で販売したときに発生する売掛債権の会計処理~

2023.02.07

売掛金

売掛金とは、掛取引(代金を後払い)で販売した分の売上金額を示しています。売掛金が無事に回収できれば相殺されますが、回収不能になると貸倒れとして処理されます。今回は、売掛金の計上と消滅のタイミング、売掛金の管理、売掛金の仕訳について簡単に解説します。

売掛金の仕訳~発生と回収~

売掛金の仕訳は、掛で販売したときと、売掛金を回収したときに記録します。また、売掛金が回収不能になった場合は、貸倒れの仕訳を記録します。以下でいくつかの仕訳例を解説します。

掛けで売り上げたとき

例)商品を5,000円で販売して代金を掛け(後払い)とした場合

借方 貸方
売掛金 5,000円 売上 5,000円

売上債権である「売掛金」が増えたため、借方科目に記入します。相手の「売上」は「収益」のため、貸方へ。

売掛金を回収したとき

借方 貸方
普通預金 5,000円 売掛金 5,000円

売掛金という資産が減少したため貸方に、普通預金という資産が増加したため借方に記入します。

振込手数料が差し引かれて入金された場合や、クレジットカードなどでの決済で手数料が差し引かれて入金された場合は以下のような仕訳になります。

例)手数料500円が差し引かれて入金された場合

借方 貸方
普通預金 4,500円 売掛金 5,000円
支払手数料 500円

売掛金が回収不能になったとき

例)売掛金5,000円が全額回収できないことが明らかになった場合

借方 貸方
貸倒損失 5,000円 売掛金 5,000円

売掛金をマイナスし、貸倒損失として損益計算書に反映します。

掛取引する理由とは何か

商品売買において掛取引を採用する理由は、取引の回数が多くなってくると、そのつど現金決済(お金のやりとり)するのが面倒な場合があるからです。そういったケースでは、月ごとなど一定期間の取引金額をまとめて、売掛金や買掛金で精算すると効率的になります。

売掛金はどんな勘定科目?

売掛金は、掛取引の仕訳で使う勘定科目です。英語で表すと「accounts receivable」です。反対に、仕入れたときには債務として「買掛金」を用います。売掛金は代金を後で受け取る権利がある「売上債権」のため、貸借対照表の資産に計上されます。

未収入金や未収収益との違い

売掛金に似た勘定科目に未収入金や未収収益がありますが、それぞれの違いは以下の通りです。

売掛金 商品の販売やサービスの提供など、通常の営業取引で生じた代金で未回収のもの
未収入金 固定資産の売却など、通常の営業取引以外で生じた代金で未回収のもの
未収収益 家賃や利息の受取など、一定の契約に従って継続的に提供しているサービスで生じた代金で未回収のもののうち、既にサービスの提供が完了している部分

売掛金を計上するタイミング

売掛金を計上するタイミングは、商品を納品した時やサービスの提供が完了した時です。具体的には、納品書を送付した時や請求書を発行した時などになりますが、計上するタイミングがバラバラにならないようにルールを決めておく必要があります。

売掛金が消滅するタイミング

売掛金が相殺されるタイミングは代金を回収した時ですが、代金を回収できなかった時にも消滅します。代金が回収できなかった時のことを「貸倒れ」といいます。貸倒れが発生しないように売掛金を管理し、必要な場合には督促をします。

売掛金を管理する方法

売掛金の管理とは、売掛金の発生から消滅までを管理することです。発生した売掛金を代金回収時に消滅させる処理を一般的に「消込み(けしこみ)」といいます。

売掛金は得意先ごとに管理する必要があるため、会計ソフトで売掛金の補助科目に得意先を設定して補助科目(得意先)別に残高を管理するのが一般的ですが、回収予定までを把握したい場合は、別途エクセルなどで回収予定表を作成するのが一般的です。

売掛金の回収リスクに要注意

掛取引の利便性は高いというメリットがある一方、代金を回収できないリスクがあるというデメリットもあります。特に、大口の取引がある場合、その売上債権を回収できないと、資金繰りが一気に悪化してしまう恐れもあります。そのため、はじめて取引する得意先の信用調査が必要だったり、前金をもらったりといった対策が必要になるのです。また、売掛金の回収リスクを軽減できるサービスもあります。代表的なのが「ファクタリング」です。興味のある方は、参考記事を読んでみてください。

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