抵当権とは?根抵当権との違いや設定についてわかりやすく解説

更新日:2025年06月06日

抵当権

抵当権は、住宅ローンにおいて金融機関が債権を保全するための重要な仕組みです。多くの方が住宅ローンを利用する際に「抵当権」という言葉に触れますが、実際にはその意味や仕組みをきちんと理解しないまま契約を進めてしまうケースも少なくありません。内容を把握していないと、後になって予期せぬトラブルにつながるおそれもあります。この記事では、抵当権の仕組みから設定方法、費用の目安までわかりやすく解説します。

目次

抵当権とは?根抵当権や担保との違い

抵当権とは、融資をする金融機関などの債権者が、債務者の土地や建物に設定する担保権の一種です。債務者がローンを返済できなくなった場合、金融機関は抵当権を設定した土地や建物を売却し、売却代金で返済を受けられます。

ただし、融資には必ずしも担保が必要とは限りません。担保が不要なローンは無担保ローンと呼ばれ、担保が必要な有担保ローンと区別されます。無担保ローンは、担保を差し出さない代わりに、金利が高いなどのデメリットがあります。

住宅ローンは、一般的に担保が必要な有担保ローンです。

抵当権と根抵当権の違い

一般的な住宅ローンのように、契約時にまとまった金額を一度に借り入れるタイプのローンだけでなく、毎月に一定額を継続的に借り入れるローンでも抵当権は設定できます。継続的な借入に対して設定される担保権は、「根抵当権」と呼ばれます。

根抵当権は、将来的に増減する可能性のある債権額に対して、一定の限度額の範囲内で担保するため、企業が事業資金の融資を受ける場合などに適した担保権といえるでしょう。

抵当権と担保の違い

担保は債務不履行に備えて提供される財産の包括的な概念であり、抵当権は、担保の中でも特に不動産に対して設定される権利の一つです。

そもそも担保とは、債務者が約束通りに債務を履行できなくなった場合に備え、債務者が債権者にあらかじめ提供する財産の総称です。この担保によって、債権者は債務不履行のリスクを軽減し、万が一の際には担保とした財産を処分することで、債権を回収する手段を確保します。

担保には、大きく分けて「物的担保」と「人的担保」の2種類が存在します。

  • 物的担保:土地・建物などの不動産、貴金属、有価証券などの動産
  • 人的担保:保証人、連帯保証人

物的担保とは、土地や建物などの不動産、貴金属や有価証券などの動産といった、具体的な物そのものを担保とするものです。これらの財産は、債務不履行が発生した場合に、換価されることで債権の弁済に充てられます。

一方で人的担保とは、保証人や連帯保証人のように、第三者の信用や資力を担保とするものです。債務者が債務を履行できなくなった場合、債権者はこの保証人や連帯保証人に対して、債務の履行を請求できます。

抵当権は、物的担保の一つです。債務者が債権者から融資を受ける際に、その債務の担保として、債務者または第三者の所有する土地や建物などの不動産に設定される権利です。

抵当権設定に必要な手続き

抵当権の設定は、債権者と債務者の間で合意するだけでは不十分です。法的にその内容を明確にし、第三者に対しても効力を主張できるようにするために、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局に登記することが法律で義務付けられています。

この登記を行うことで、抵当権という担保権の存在が公的に記録され、不動産の権利関係が明確になります。

申請の多くは司法書士が代行する

抵当権の設定登記は通常、司法書士が「登記権利者」と「登記義務者」の代理人となって手続きします。

法律の専門家である司法書士が、抵当権設定に必要な書類の作成、関係者との調整、そして法務局への登記申請手続きを代行することで、複雑な手続きをスムーズかつ確実にできます。そのため、債権者である金融機関と債務者双方にメリットがあります。

住宅ローンのように、不動産の購入と同時に抵当権を設定する場合、一般的なには、不動産の売買を取り扱う不動産会社や、融資する金融機関が司法書士を紹介します。

抵当権設定の費用

抵当権を設定する際には、国税である登録免許税が発生します。この登録免許税の税額は、原則として住宅ローンの融資額の0.4%です。たとえば、3,000万円の住宅ローンを組む場合、12万円(3,000万円 × 0.4%)の登録免許税がかかります。

ただし、マイホーム取得を支援するため、一定の要件を満たす住宅に対しては、登録免許税の軽減措置が適用され、通常0.4%である税率が0.1%となります。

登録免許税のほかに、抵当権設定の登記の手続きを代行する司法書士への報酬も必要です。一般的には、数万円から十数万円程度が相場とされ、書類作成費用や登記申請代行費用、調査費用などが含まれます。

司法書士への報酬金額は、依頼する司法書士事務所や、物件の評価額、手続きの複雑さなどによって変動するため注意しましょう。

参考)財務省「登録免許税に関する資料」

抵当権抹消の手続き

住宅ローンを返済し終え、金融機関との間のローン契約に基づく債務が消滅すると、その債務の担保として不動産に設定されていた抵当権は存在意義を失うため、法的に抹消する手続きが必要となります。

しかし、住宅ローンを完済しただけで自動的に登記簿に記載されている抵当権が消えるわけではありません。債務者が自ら法務局に対して抵当権抹消の登記申請をする必要があります。

抹消手続きを怠ると、登記簿上に抵当権が残ったままとなり、将来的にさまざまな不都合が生じる可能性があります。

抵当権は債務者が抹消する

抵当権の抹消登記は、原則として債務者が法務局へ申請しなければなりません。金融機関が自動的に抹消するわけではないため、注意しましょう。

住宅ローンを完済すると、債権者である金融機関から抵当権の抹消登記に必要な書類一式が送付されます。書類が届いたらできるだけ速やかに手続きを進めましょう。

抵当権の抹消登記の手続きは、法的な知識や書類作成、法務局への申請など、一般の方には煩雑に感じられる場合があります。もし自身での手続きが難しいと感じる場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。

抵当権抹消の手続に必要な書類

抵当権抹消の手続きに必要な書類とそれぞれの入手先は次のとおりです。

書類 概要 入手先
登記識別情報または登記済証 不動産の権利関係を示す書類 金融機関
抵当権解除証書または弁済証書 金融機関が債務の完済を証明し、抵当権の解除に同意する書面 金融機関
金融機関の代表者事項証明書または資格証明書 金融機関の法人としての情報を証明する書類 金融機関
委任状(金融機関から債務者への委任状) 金融機関が抵当権の抹消登記手続きを債務者に委任する書類 金融機関
抵当権抹消登記申請書 抵当権を抹消するための申請書類 法務局ホームページ

司法書士などに手続きを依頼する場合は、上記に加えて委任状の作成も必要となります。また、金融機関の代表者事項証明書または資格証明書は、会社法人等番号(13桁の法人番号の先頭の数字を除いた12桁の数字)を記載すれば省略可能です。

抵当権抹消にかかる費用

抵当権抹消には、不動産1件につき1,000円の登録免許税がかかります。土地と建物の抵当権を抹消する場合は、合計2,000円です。マンションのように、土地の共有持分と建物という形で登記されている場合も、原則としてそれぞれ1件として数えられます。

この登録免許税は、法務局に登記申請する際に、収入印紙による納付、電子納付などの方法で納める必要があります。

また、手続きを司法書士などに依頼した場合、報酬が別途で必要です。報酬額は不動産の数、手続きの複雑さなどによって異なりますが、一般的には数万円程度が相場とされています。

参考)津地方法務局「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」

抵当権を設定するメリット

抵当権を設定することには、債権者・債務者双方にメリットがあります。債務者側のメリットには、債務者の信用力を補完できること、低金利で借り入れられることなどがあげられます。債権者側のメリットは、貸倒リスクを軽減できることです。

それぞれのメリットについて、詳しく確認しましょう。

ローンが組みやすい(債務者側)

債務者自身の信用力だけでは、希望する金額の融資を受けることが難しい場合があります。しかし、価値のある不動産を担保として提供し、抵当権を設定することで、債権者である金融機関は融資を実行しやすくなります。

特に、高額な融資となる住宅ローンのようなケースでは、抵当権の設定が融資を受けるための前提条件となることが一般的です。

低金利でローンを利用できる(債務者側)

債権者にとって担保があることでリスクが低減されるため、その分金利という形で債務者にメリットを還元できます。住宅ローンの金利がカードローンなどの無担保ローンに比べて低いのは、不動産という担保があるためです。

長期にわたる返済を考えると、わずかな金利差でも総支払額に大きな影響を与えるため、低金利で借り入れられることは債務者にとって大きなメリットとなります。

貸倒リスクが軽減する(債権者側)

抵当権を設定することで、債務者が万が一約束通りに返済できなくなった場合に、担保である不動産を売却し、その売却代金から債権を回収できます。これにより、貸倒によって損失を被るリスクを軽減できます。

金融機関にとって、融資は重要な収益源であると同時にリスクもともなうため、抵当権の設定は健全な経営を維持する上で不可欠な手段です。

抵当権のデメリット

抵当権の設定には大きなメリットがある一方で、デメリットともいえる部分があります。それは、抵当権を設定した不動産の売却や転用が難しくなる、ローンの返済が滞った場合に不動産の所有権を失う可能性がある点です。

抵当権が設定された不動産は、自由に売却したり、担保に入れたまま別の用途に転用したりすることが難しくなります。売却する際には、原則として抵当権を抹消する必要がありますが、そのためにはローンの残債を一括で返済するか、買主がローンの残債を引き継ぐなどの特別な合意が必要となる場合があるためです。また、新たな担保を設定しようとする場合も、既存の抵当権が障害となることがあるでしょう。

さらに、住宅ローンの返済が滞った場合、債権者である金融機関は抵当権に基づいて担保である不動産を競売にかけます。競売によって不動産が売却されると、債務者はその不動産の所有権を失い、住み慣れた家を失うおそれがあります。

抵当権が設定された不動産は相続できる?

抵当権が設定された不動産でも相続は可能です。しかし、抵当権は原則そのまま残ります。

不動産を相続した場合、その不動産の登記名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へと変更する「相続登記」をする必要があります。この相続登記を行っても、不動産に設定されている抵当権は自動的に消滅するわけではありません。抵当権は、あくまでその不動産を担保とする権利であり、住宅ローンが完済されない限りその効力を維持し続けます。

もし、相続人が被相続人の残りの債務も引き継ぎ、その不動産に引き続き住むなどの意向がある場合は、債務者変更登記を行う必要があります。これは、登記簿上の債務者を被相続人から相続人に変更する手続きです。ただし、金融機関は相続人の返済能力などを審査した上で、債務者変更を承認するかどうかを判断します。

なお、住宅ローンの場合、契約者の多くが団体信用生命保険(団信)に加入しているため、遺族に住宅ローンの借金が残るケースは少ないといえます。保険金でローンが完済されれば、抵当権はその目的を失うため、抵当権の抹消手続きが必要です。

保険に加入しておらず債務が大きい場合は、不動産の売却や相続放棄なども検討しましょう。

抵当権が設定された不動産を売却する方法

抵当権が設定された不動産であっても、法律上は売却が可能です。

ただし、抵当権が残っている不動産は、市場において買い手が見つかりにくい傾向があります。抵当権が設定されたままの不動産を購入すると、将来的に抵当権が実行されるリスクを負うためです。万が一、売主が住宅ローンの返済を滞らせた場合、買い取った不動産が競売にかけられて所有権を失う可能性も否めません。

抵当権が設定された不動産をスムーズに売却するための一般的な方法は、売却と同時に売主が住宅ローンを完済し、抵当権を抹消した状態で買主に引き渡すことです。この場合、売買契約締結後、買主から購入代金の一部または全部を受け取り、それをローンの残債返済に充て、金融機関に抵当権抹消の手続きを依頼するという流れになります。

住宅ローンの返済が困難になり、通常の売却ではローンの完済が難しい場合には、任意売却という選択肢もあります。任意売却であれば、債務者の希望条件で一般のし上で住宅を売却できます。競売に比べると任意売却の方が自由度が高いのですが、金融機関の同意が必要です。

抵当権まとめ

抵当権は、金融機関が債務者の土地や建物に設定する担保権です。住宅ローンの融資の際に設定され、債務不履行時には金融機関が不動産を売却して債権を回収する手段となります。

債務者にとっては、信用力を補完し低金利での借入を可能にするメリットがある一方、返済滞納による所有権喪失のリスクや、売却・転用の制限といったデメリットも存在します。

ローン完済後は、債務者が自ら抵当権抹消の手続きをする必要があり、怠ると不動産売却時に支障をきたす可能性があることも覚えておきましょう。売却自体は可能ですが、通常は抵当権を抹消した上で行われます。返済困難な場合は、任意売却という選択肢も存在します。

このように、抵当権の仕組みを理解することは、不動産取引において重要です。

このメディアの監修者

元吉 孝子

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

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会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
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