資金繰り表とは?初心者の方にもわかりやすい読み方と作り方を紹介

2023.07.26

資金繰り表

資金繰り表とは、企業や個人の一定期間における資金を把握するために作成する表です。資金繰りの管理を怠ると、黒字でも倒産につながりかねません。

資金管理を徹底するため、本記事で資金繰り表の読み方や作り方を確認しておきましょう。

目次

資金繰り表とは

資金繰り表とは、企業や個人の一定期間における資金を把握するために作成する表です。資金繰り表を作成することで、資金不足に陥りそうなタイミングをあらかじめ把握できます。

以下に、シンプルな資金繰り表の例を作成しました。資金繰り表には、予算や実績の数値を入力します。

資金繰り表
(単位:万円)
実 績
2023年10月 2023年11月 2023年12月
予算 実績 予算 実績 予算 実績
前月繰越(1) 500 500 440
経常収入計(2) 200 220 150
経常支出計(3) 150 230 180
1+2-3 差引過不足(4) 550 490 410
財務等収入計(5) 50 50 50
財務等支出計(6) 100 100 100
4+5-6 翌月繰越高 500 440 360

なお、資金繰りとは、会社や事業の収入と支出を管理して現金収支の過不足を調整することです。資金繰りについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

参考)資金繰りとは?経営者が知っておくべき基礎知識を解説

資金繰り表とキャッシュフロー計算書との違い

資金繰り表とキャッシュフロー計算書との主な違いは、分析するタイミングです。資金状況を把握するための管理表という面では、どちらも変わりありません。

キャッシュフロー計算書とは、一定期間の現預金(キャッシュ)の流れ(フロー)を把握し、増減理由を示した資料です。貸借対照表・損益計算書とともに、財務3表を構成しています。

キャッシュフロー計算書の特徴は、3つの活動(営業CF・投資CF・財務CF)に分けてキャッシュフローを示す点です。各キャッシュフローが「+」であれば資金が増加、「-」であれば資金が減少したことを意味します。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書を使い分けることで、会社の財務管理や分析ができます。キャッシュフロー計算書で資金の増減を把握した上で、資金繰り表で将来的な計画を立てるとよいでしょう。

参考)キャッシュフロー計算書とは~読み方、分析する方法、直接法と間接法の違いについて解説~

資金繰り表の必要性

資金繰り表は、資金管理を徹底するために必要です。たとえば、資金繰り表を作成せず、売掛金の代金や入金日の確認を怠ると、諸経費や買掛金などの支払いに必要な現金が不足してしまいます。

資金不足が、結果的に黒字倒産を招くこともあるでしょう。黒字倒産とは、業績が好調で帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足して倒産に至ることです。

ある年の10月の売上高が200万円で、諸費用が110万円の法人をイメージしてください。帳簿の数字上では、90万円プラス(200万円 - 110万円)となります。

しかし、諸費用(110万円)の支払いが11月で、売上(200万円)の入金が12月とすると、入出金のタイミングにずれが生じます。その際、手元に現預金が100万円しかなければ、11月に資金が足りず支払困難に陥ってしまうでしょう。

このような状態になることを防ぐためにも、資金繰り表の作成して入金日や支払日を管理・調整することが大切です。

参考)黒字倒産とは~利益が出ていても倒産する原因を解説~

資金繰り表を作るメリット

資金繰り表を作る主なメリットは、以下のとおりです。

  • 資金繰りの改善点が見つかる
  • 銀行などの金融機関からの融資がスムーズになる

各メリットを解説します。

資金繰りの改善点が見つかる

資金繰りの改善点が見つかる点が、資金繰り表を作るメリットです。

売上高や各利益が記載されている損益計算書を確認すれば、自社が黒字か赤字か確認できます。しかし、現預金が不足しているか、今後も資金に余裕があるかまでは把握できません。

その点、資金繰り表を作成すれば、将来的な資金の増減を見通せます。売掛金の回収サイトが遅い、買掛金の支払サイトが早いなど、資金繰り面の課題も把握できるでしょう。

早めに資金繰り面の課題に気づき、取引先と支払期日や入金期日を交渉する、金融機関から資金調達するなどの対策をあらかじめ講じておけば、資金不足に陥る事態を防げます。

銀行などの金融機関からの融資がスムーズになる

銀行など金融機関からの融資がスムーズになる点も、資金繰り表を作成するメリットです。

資金不足を防ぐためには、銀行から資金を調達することも検討しなければなりません。しかし、融資には審査が必要なため、経営成績や財務内容次第で借りられないこともあるでしょう。

資金繰り表を作成すれば、将来的な資金計画や売掛金の回収見込みを明確に伝えられます。その結果、銀行側はなぜ借入が必要なのか、返済見込みはあるのかなどを確認しやすくなるでしょう。銀行側が必要とする資料を先に提出することで、融資判断にプラスに働く可能性もあります。

資金繰り表の読み方

資金繰り表の読み方がわかるように、構成や重視するべきポイントを紹介します。

資金繰り表の構成

資金繰り表の見本を以下に作成しました。

資金繰り表
(単位:万円)
実 績
2023年10月 2023年11月 2023年12月
予算 実績 予算 実績 予算 実績
前月繰越(1) 500 500 440
経常収入 現金売上高
売掛金回収 150 180 110
受取手形期日落
前受金
受取利息 10 10 10
雑収入 40 30 30
その他営業外収益
その他
経常収入計(2) 200 220 150
経常支出 現金仕入高
買掛金支払 50 130 80
支払手形決済
前渡金
短期貸付金
仮払金
外注費
人件費 100 100 100
その他製造経費
その他販売管理費
支払利息割引料
その他営業外費用
その他
経常支出計(3) 150 230 180
1+2-3 差引過不足(4) 550 490 410
財務等収入 固定性預金払戻
短期借入金 50 50 50
長期借入金
手形割引
投資等
固定資産売却
その他
財務等収入計(5) 50 50 50
財務等支出 固定性預金預入
短期借入金返済 50 50 50
長期借入金返済 50 50 50
投資等支出
固定資産購入
法人税等
その他
財務等支出計(6) 100 100 100
4+5-6翌月繰越高 500 440 360

上の表からわかるように、資金繰り表は主に「経常収支(経常収入・経常支出)」と「財務等収支(財務等収入・財務等支出)」で成り立っています。経常収支は「本業でいくらお金を稼いでいるか」、財務等収支は「お金をいくら借りていくら返したか」や「設備投資や資産売却などの収支」を示した数値です。

なお、書式によって、設備投資や資産売却などの収支を別途「経常外収支」という項目にまとめているケースもあります。

重視するべきポイント

資金繰り表を確認する上で、重視するべきポイントのひとつが「経常収支がどうなっているか」です。経常収支(経常収入 - 経常支出)がマイナスであれば、本業をしても現金が減っていくことを意味します。
返済原資(経常収支 + 設備投資や資産売却などの収支)と財務収支のバランスを確認することも大切です。財務収支がマイナスの上に、返済原資もそのマイナス分を下回っていれば手元資金から返済していることになります。

そのほか、翌月繰越残高の確認も必要です。繰越残高に余裕がなければ、返済困難な状況に陥ります。

資金繰り表の作り方

自分で資金繰り表を用意する際の作り方がわかるように、作成に必要なものや作成方法を紹介します。

作成に必要なもの

資金繰り表を作成するにあたって、以下の資料が必要です。

  • 現金出納帳
  • 預金通帳
  • 受注や売上の管理台帳
  • 手形帳
  • 月次試算表
  • 借入金返済予定表

現金出納帳や預金通帳は、最初の月の前月繰越残高(期首残高)を確認するために用意します。また、受注や売上の管理台帳や手形帳は経常収入、月次試算表は主に経常支出、借入金返済予定表は財務等支出を把握するために必要です。

作成方法

資金繰り表は、エクセルや会計ソフトを使用して作成できます。エクセルで作る場合と、会計ソフトで作る場合に分けて、作成方法を解説します。

エクセルで作る場合

エクセルなどの表計算で資金繰り表を作る際の流れは、以下のとおりです。

  1. エクセルを開き、経常収入・経常支出・財務等収入・財務支出など必要な項目を入力していく
  2. 枠線などを使い、見やすいレイアウトに整える
  3. 計算式を入力する
  4. 用意した資料を参考にして、各月の数値を入力する

計算式は、前月繰越 = (前月の)翌月繰越高、経常収入計・経常支出計・財務等収入計・財務支出計は対応する項目の合計(SUM)、で入力することがポイントです。また、差引過不足や翌月繰越高は以下の計算式になるように入力します。

  • 差引過不足 = 前月繰越 + 経常収入計 - 経常支出計
  • 翌月繰越高 = 差引過不足 + 財務等収入計 - 財務等支出計

計算式を入力したら、事前に誤りがないか試した上で、実務で使うするようにしましょう。

会計ソフトで作る場合

各項目を入力するのにかかる手間を省きたい場合は、会計ソフトの利用を検討しましょう。会計ソフト「フリーウェイ経理」では、「資金繰り実績表」を含むさまざまな帳票を提供しています。

会計ソフトの帳票を作る場合、レイアウトを整える作業や計算式を入力する作業が不要です。用意した資料を参考に、各月の数値を入力しましょう。

気になる方は、以下を参考にしてください。

参考:フリーウェイ経理「出力帳票一覧」

資金繰り表まとめ

資金繰り表とは、企業や個人の一定期間における資金を把握するために作成する表です。資金繰り表を作成するメリットとして、資金繰りの改善点が見つかる点や、銀行などの金融機関からの融資がスムーズになる点が挙げられます。

資金繰り表では、「経常収支はプラスか」「残高に余裕があるか」などを確認することがポイントです。資金繰り表を作成し、資金不足に陥る前に対策を講じるようにしましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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