決算書とは?作成方法、読み方、分析の指標について解説
更新日:2024年02月09日

決算書とは、一定期間における経営や財務の状態を示した複数の書類を指します。具体例は、財務3表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書)や株主資本等変動計算書、個別注記表などです。
本記事では、決算書のうち財務3表の見方・読み方について詳しく解説します。
目次
決算書(決算報告書)とは
決算書(決算報告書)とは、利害関係者に説明するために作成する、一定期間における経営や財務の状態を示した複数の書類のことです。
日本で活動する法人は、事業年度終了日の翌日から2か月以内に決算書を添付した確定申告書を税務署に提出しなければなりません。個人事業主も、青色申告特別控除を受けるためには青色申告決算書の提出が必要です。
参考)青色申告とは
ここから、法人(会社)の決算書を作成することでわかることや、決算書の種類について解説します。
法人・会社の決算書からわかること
決算書から、企業の資産や負債などの財務状態や、利益や損失などの経営成績がわかります。企業が自社の決算書を作成する主な目的は、以下のとおりです。
- 納税額の計算や確定申告をする
- 自社の財政状態や経営成績を把握する
- 自社の財務状態や経営成績を外部に報告する
会社が税務署以外に決算書を提出(報告)する先は、株主や金融機関(銀行)などです。株主は投資判断、銀行は融資する際の判断に決算書を使います。
決算書の種類
決算書には、さまざまな種類があります。代表的なものが以下のとおりです。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュ・フロー計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
上記5種類のうち、貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書を財務3表と呼びます。株主資本等変動計算書は主に株主資本が変動した理由を報告する書類、個別注記表は各書類に記載されていた注記をまとめて表示する書類のことです。
本記事では、財務3表について詳しく解説します。
参考)株主資本等変動計算書とは
参考)個別注記表とは
決算書の見方・読み方1「貸借対照表」
貸借対照表とは、会社の期末時点における財政状態を示した決算書類です。英語でバランスシート(Balance Sheet)と表現するため、頭文字をとってB/Sと記載することもあります。
貸借対照表の構造は、以下のとおりです。
貸借対照表 | |
資産の部 | 負債の部 |
純資産の部 |
貸借対照表では、左側にある「資産の部」の合計額と、「負債の部」「純資産の部」の合計額が一致します。ここから、資産の部・負債の部・純資産の部の概要を確認していきましょう。
資産の部
資産の部には、流動資産・固定資産・繰延資産があります。
流動資産とは、通常の営業活動で生じる資産のことです。また、1年以内に換金(現金化)できる資産も基本的に流動資産に該当します。
流動資産の主な勘定科目は、以下のとおりです。
- 普通預金・当座預金
- 受取手形
- 売掛金
- 有価証券
- 短期貸付金
- 棚卸資産
参考)棚卸資産とは
固定資産とは、1年超の長期にわたって利用する予定の資産を指します。固定資産の主な勘定科目は、以下のとおりです。
- 有形固定資産
- 無形固定資産
- 投資その他の資産
参考)有形固定資産とは
繰延資産とは、会社が支出する費用のうち、効果が1年以上に及ぶものを指します。繰延資産の主な勘定科目は、以下のとおりです。
- 創立費
- 開業費
- 株式交付費
- 社債発行費
- 開発費
なお、ここでは会計上の繰延資産を示しており、税法上の繰延資産とは異なる点に注意しましょう。
参考)繰延資産とは
参考)資産とは
負債の部
負債の部には、流動負債と固定負債があります。
流動負債とは、1年以内に支払う予定があるお金のことです。流動負債には、以下のような勘定科目があります。
- 買掛金
- 支払手形
- 短期借入金
- 未払金
- 預り金
固定負債とは、1年超にわたって返済する義務を負っているお金のことです。固定負債の勘定科目として、以下が挙げられます。
- 社債
- 長期借入金
流動負債として扱うべきか、固定負債として扱うべきか悩んだ場合は、支払い期限が1年以内か、営業活動の中で循環する負債かで判断するとよいでしょう。
参考)負債とは
純資産の部
純資産の部には、株主資本や評価・換算差額等、新株予約権を記載します。
株主資本とは、株主からの出資金や出資金を元手にした事業活動で得られた利益のことです。純資産の部には、主に以下のような勘定科目があります。
- 資本金
- 資本剰余金
- 利益剰余金
- 自己株式
評価・換算差額等とは、有価証券・土地などの購入価格と時価総額の差額を指します。また、新株予約権は、会社が発行する株式を一定期間内にあらかじめ定めた価格で取得する権利のことです。
なお、資産の部が負債の部と純資産の部の合計と一致する原則を応用し、資産の部 - 負債の部で純資産の部の金額を計算できます。
参考)純資産とは
参考)貸借対照表とは
決算書の見方・読み方2「損益計算書」
損益計算書とは、企業の一定期間における経営成績を示した決算書類です。英語で「Profit & Loss Statement」と表現するため、略してP/Lと記載することもあります。
損益計算書で経営成績を判断する際は、「利益」に注目することがポイントです。利益は、以下の計算式に基づき計算します。
利益 = 収益 - 費用
損益計算書における利益は、収益や費用の性質によって以下の5種類に分類できます。
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
各利益の計算式や、特徴を確認していきましょう。
売上総利益
売上総利益とは、企業の基本的な収益力を示した指標です。粗利益(粗利)と表現することもあります。
売上総利益を求める計算式は、以下のとおりです。
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
売上高とは、企業が商品やサービスを提供すること(主たる営業活動)で得た売上の合計額のことです。一方、売上原価は、売上を出すために商品を仕入れた額や、製造にかかった費用を指します。ただし、業種によってどこまでを売上原価に含めるかが異なるため、注意が必要です。
商品を7,000円で1万個仕入れて、すべて10,000円で販売した場合、売上総利益は3,000万円になります((10,000円 × 1万個) - (7,000円 × 1万個))。
参考)売上総利益とは
参考)売上原価とは
営業利益
営業利益とは、企業の本来の営業活動から生じた利益のことです。営業利益は、以下の計算式で求められます。
営業利益 = 売上総利益 - 販売費および一般管理費
参考)営業利益とは
販売費および一般管理費とは、企業の販売活動にかかる費用(販売費)や管理などにかかる費用(一般管理費)のことです。販売費および一般管理費を省略して、販管費と呼ぶこともあります。
販売費の具体例は、以下のとおりです。
- 人件費(営業部門)
- 交通費
- 商品の運搬費
- 広告宣伝費
- 販売手数料
また、一般管理費の具体例は以下のとおりです。
- 人件費(管理部門)
- 光熱費
- 事務所・オフィスの賃料
人件費は、従業員の業務内容によって売上原価に含める場合、販売費に含める場合、一般管理費に含める場合があります。
参考)人件費とは
売上総利益が3,000万円で、販売費および一般管理費が2,000万円の場合、営業利益は1,000万円です(3,000万円 - 2,000万円)。
経常利益
経常利益とは、企業が通常おこなう(経常的)業務で得た利益のことです。経常利益は、以下の計算式で求められます。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
営業外収益は、受取利息・受取配当金・雑収入のように本来の営業活動以外から発生した収益のことです。また、営業外費用は支払利息・雑支出のように本来の営業活動以外に要した費用を指します。
営業利益が1,000万円で、営業外収益が50万円、営業外費用が150万円の場合、経常利益は900万円です(1,000万円 + 50万円 - 150万円)。
参考)経常利益とは
税引前当期純利益
税引前当期純利益とは、企業の最終的な税金を控除する前の利益のことです。税引前当期純利益は、以下の計算式で求められます。
税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
特別利益は、投資有価証券売却益のように本来の営業活動以外で臨時的に発生した収益のことです。また、特別損失は固定資産売却損のように本来の営業活動以外で臨時的に発生した費用を指します。
経常利益が900万円で、特別利益が100万円、特別損失が200万円の場合、税引前当期純利益は800万円です(900万円 + 100万円 - 200万円)。
参考)特別利益と特別損失とは
当期純利益
当期純利益とは、企業の最終的な利益のことです。当期純利益は、以下の計算式で求められます。
当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等
法人税等とは、利益に対して課税される法人税・住民税・事業税のことです。
税引前当期純利益が800万円で、法人税等が270万円の場合、当期純利益は530万円と計算できます(800万円 - 270万円)。
参考)当期純利益とは
参考)法人税等とは
参考)損益計算書とは
決算書の見方・読み方3「キャッシュ・フロー計算書」
キャッシュ・フロー計算書とは、企業の一定期間における現金の流れを示した決算書類です。英語で「Cash Flow Statement」と表現するため、略してC/Fと記載することもあります。
損益計算書で企業がどれだけ儲けたかは確認できますが、キャッシュの増減までは判断できません。キャッシュ・フロー計算書は、損益計算書では把握できないキャッシュの流れを確認するのに役立つ書類です。
キャッシュ・フロー計算書では、キャッシュの流れを以下の3種類に分類しています。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー
- 投資活動によるキャッシュ・フロー
- 財務活動によるキャッシュ・フロー
それぞれの内容を確認していきましょう。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローとは、本業の営業活動によって生み出した現金の流れのことです。
プラスであれば、本業の営業活動でキャッシュを得られていることを意味します。一方、マイナスであれば、営業活動に問題がある可能性があるため注意が必要です。
当期純利益がプラスであっても、売上債権や棚卸資産が増加するなどの理由で、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになることがあります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローとは、設備や有価証券などへの投資を通じた現金の流れのことです。
通常、設備投資を定期的に実施していれば投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスになります。プラスになるのは、所有している資産を売却する場合です。
企業にとって投資活動は必要なことであるため、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることに問題はありません。ただし、営業活動によるキャッシュ・フローのプラスの範囲を超えてマイナスになっている場合、注意が必要です。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローとは、資金調達や借入返済などの財務活動を通じた現金の流れのことです。
財務活動によるキャッシュ・フローがプラスであれば、調達額(出資を受けた額や借入金額)が返済額を上回っていることを意味します。一方、返済額が調達額を上回っている場合、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスです。
プラスであれば、企業の資金面でのやりくりに余裕ができます。ただし、調達した資金が有効に活用されるか確認することが大切です。
なお、会社法第435条第2項で、株式会社に貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表の作成義務が課されているのに対し、キャッシュ・フローについての義務は定められていません。しかし、安定的な経営につながり、金融機関からの借入もしやすくなるため、極力キャッシュ・フロー計算書を作成した方がよいでしょう。
貸借対照表や損益計算書の分析で大切な指標
貸借対照表は健全性を判断する際に、損益計算書は経営成績の良さを判断する際に役立つ決算書です。貸借対照表や損益計算書に記載されている数字を使って各指標を計算すれば、企業の状況を把握できます。
たとえば、貸借対照表の数値を使って、自己資本比率を計算する際の式が以下のとおりです。
自己資本比率(%) = (純資産 - 新株予約権)/ 総資本 × 100
一般的に、自己資本比率が高ければ健全性も高いことになります。
また、流動比率の計算式は以下のとおりです。
流動比率(%) = 流動資産 / 流動負債 × 100
流動比率が高ければ、短期的に返済すべき債務に対して比較的早期に現金化できる資産が多く、短期的な債務の返済能力が高いです。
さらに、損益計算書の数値を使えば、売上総利益率を計算できます。売上総利益率の計算式は、以下のとおりです。
売上総利益率(%) = 売上総利益 / 売上高 × 100
売上総利益率が高いほど、企業の収益性が高いことを意味します。
参考)自己資本比率とは
参考)流動比率とは
企業の決算書の作り方・作成方法
企業の決算書の作り方(作成方法)を簡単にまとめると、以下のとおりです。
- 会計年度中の帳簿記帳を完了する
- 試算表を作成する
- 帳簿上の残高と実際の残高を照合する
- 決算整理仕訳を実施する
- 決算整理仕訳のデータに基づき、決算残高を確定する
- 仕訳した勘定科目を総勘定元帳に転記する
- 試算表を確定する
- 試算表に基づき、決算書を作成する
なお、決算書類の作成には労力や時間がかかります。決算ギリギリになって慌てることのないように、日々会計ソフトで仕訳をこまめに入力することや、専門家(税理士)に依頼することなどがポイントです。
参考)決算とは
参考)試算表とは
決算書まとめ
決算書とは、利害関係者に説明するために作成する、一定期間における経営や財務の状態を示した複数の書類のことです。貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表などが、決算書に該当します。
決算書を作成する目的は、確定申告をはじめ株主・金融機関などに報告するためです。また、自社の状況を客観的に分析することにも役立つため、正確に作成するようにしましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
項目 | 内容 |
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