後払い現金化とは?危険とされる理由について詳しく解説
更新日:2024年06月13日
後払い現金化とは一般的に、後払いで商品を購入し、代金支払い前に購入者が金銭を受け取る資金調達の手段を指します。一見すると便利そうに思う方もいすかもしれませんが、多重債務に陥る可能性や違法な取り立てを受ける可能性がある点に注意しなければなりません。
本記事では、後払い現金化の概要や、危険とされる理由について詳しく解説します。
目次
後払い現金化とは
後払い現金化とは、形式的に後払いで商品売買をする一方で、商品の代金支払い前に購入者が金銭を受け取る仕組みのことです。手数料を支払う分、現金をすぐに手に入れられるため、資金調達を目的に後払い現金化を利用する人がいます。
たとえば、後払いで10万円の商品を購入するとしましょう。仮に購入した商品を8万円で売却できれば、お金がどうしても必要なときに8万円の資金を調達できることになります。
しかし、支払日が到来すると当然、後払い分の金額を支払わなければなりません。上記の例で調達した8万円にまったく手をつけていなかったとしても、2万円自分で別途調達しての支払いが必要です。
このような事情を踏まえて、消費者庁などの官公庁でも後払い現金化に関する注意喚起がされています。
参考)消費者庁「違法な貸付(ファクタリング等)や悪質な金融業者にご注意ください!」
後払い現金化に使われるツール
一般的に、後払い現金化には以下のツールが使われます。
- 後払いアプリ
- バーチャルカード
- キャリア決済
各ツールの概要や、後払い現金化に使われる際の仕組みを確認していきましょう。
後払いアプリ
後払いアプリとは、商品の購入やサービスを利用する際にスマートフォンのアプリを使ってQRコードなどを読み取ることにより、後払い決済ができるアプリのことです。一般的に、商品・サービスを提供する事業者、購入者、決済代行業者の3者で成り立っています。
後払いアプリを利用すれば、残高がなくても利用でき、支払いを一定期間経過後に先延ばしできる点がポイントです。そのため、後払いアプリを使って購入した商品を買取店に売却することにより、現金化することを提案する業者がいます。
バーチャルカード
バーチャルカードとは、プラスチック製の物理的なカードを発行しないクレジットカードのことです。あらかじめチャージした分を商品購入・サービス利用に使える前払い方式(プリペイド)と、支払日にまとめて銀行口座から利用額が引き落とされる後払い方式(ポストペイ)が存在します。
後払い現金化で使われるのは、基本的に後払い方式のバーチャルカードです。後払い現金化業者は、自社の商品・サービスを利用した際にバーチャルカードを利用することを提案することがあります。クレジットカードではなくバーチャルカードを提案する主な理由は、限度額が低い分カード発行の審査が比較的緩いためです。
キャリア決済
キャリア決済とは、購入した商品やサービスの代金を毎月の携帯電話料金と合算して支払う決済サービスのことです。店頭で商品を購入する際にQRコードを提示したり、サービスを利用する際にIDやパスワードを入力したりすることにより、決済します。
クレジットカードを発行できない人でも、キャリア決済であれば利用できる場合がある点がポイントです。そのため、キャリア決済を利用して商品を購入し、後払い現金化して資金調達することを提案する業者もいます。
なお、いずれのツールを使用する際も、現金化の手段はさまざまです。購入した商品を買取店に売却する方法、指定するデジタルコンテンツを購入して業者から代金を受け取る方法などが存在します。
後払い現金化の業者やサイトがアピールすること
後払い現金化の業者やサイトがアピールすることは、主に以下のとおりです。
- 即日で現金化できる
- 審査なしで手軽に現金化できる
それぞれの概要を説明します。
即日で現金化できる
後払い現金化の業者やサイトは、即日で現金化できることをアピールする傾向にあります。主なフレーズは、「即日で現金を支払います」「商品売却で即日キャッシュバック」「レビュー投稿で現金報酬を得られる」などです。
一般的に、資金を調達するためには、手続きなどに一定の日数を要します。そこで、すぐにお金が必要な人のニーズをとらえられるよう、「即日現金化」をアピールして勧誘するのでしょう。
審査なしで手軽に現金化できる
審査なしで手軽に現金化できることをアピールして、後払い現金化の利用を喚起する業者もいるでしょう。主な文言として、「金融ブラックOK」「借金ではありません」「通帳無しで信用情報ブラックでも可」などが挙げられます。
信用情報とは、ローンやクレジットカードの申し込み・契約に関する個人の情報です。利用者の過去の客観的な取引事実が登録されており、ローンや金融機関やクレジットカード会社が審査可否を判断する際の参考として用いられます。
信用情報がブラックの人は、一般的に金融機関で新たな借入をすることや、クレジットカードを利用することなどができません。そこで、後払い現金化の業者が信用情報がブラックな人などに審査なしで手軽なことをアピールして勧誘するのです。
後払い現金化をうたう業者・サイトに注意!
業者の売り込みを耳にしたり、サイト・SNSでうたわれているセールス文言を目にしたりすると、後払い現金化を魅力的な資金調達手段ととらえてしまうかもしれません。しかし、以下の点で後払い現金化をうたう業者・サイトには注意が必要です。
- 多重債務に陥る可能性がある
- 個人情報流出の危険がある
- 違法な取り立てを受ける可能性がある
- 詐欺被害に遭う可能性がある
ここから、後払い現金化をうたう業者・サイトに注意が必要である4つの理由を詳しく解説します。
理由1:多重債務に陥る可能性がある
多重債務に陥る可能性がある点が、後払い現金化をうたう業者やサイトを信用してはならない理由です。多重債務とは、すでに抱えている借金を返済するために新たな借入をすることで、利息支払いがかさみ雪だるま式に借金が増えていく状況を指します。
とくに「即日現金化」「審査なし」「信用情報ブラックOK」などの文言にひかれ、他の資金調達手段がない人が借金返済のために後払い現金化を試みると、多重債務に陥る可能性が高いです。後払い現金化の手数料は高いことが一般的なため、利用後は今まで以上に多額の借金を抱えることになります。その結果、生活環境が悪化するでしょう。
理由2:個人情報流出の危険がある
個人情報流出の危険があることも、後払い現金化を避けるべき理由として挙げられます。
インターネットやSNSなどでしか業者の実態を把握していない場合、勧誘してくる業者が悪質である可能性があります。万が一悪質な業者に自分の個人情報がわたると、ネット上にさらされたり、振り込め詐欺などの犯罪に悪用されたりするでしょう。
一度ネットで拡散された情報は、後から完全に削除することが困難です。後払い現金化の業者に限らず、自分の個人情報を記入・登録する際は必ず相手を慎重に見極めましょう。
理由3:違法な取り立てを受ける可能性がある
違法な取り立てを受ける可能性があることも、後払い現金化の利用を避けるべき理由です。高額な金利や手数料を設定されていると、借金返済に利用した場合に期日までに返済することは難しいでしょう。
それにもかかわらず、代金を期限までに支払えない場合には、時間(深夜など)・場所(勤務先など)を問わずに接触してきたり、自分や家族に対して脅迫まがいの連絡をしてきたりすることもあります。
理由4:詐欺被害に遭う可能性がある
後払い現金化に申し込むことで、詐欺の被害に遭う可能性があることも、危険とされる理由です。
たとえば、支払日前に現金を受け取れることをうたっているのにもかかわらず、商品だけ購入させられて現金を受け取れないケースがあります。また、当初説明された手数料よりも高額の手数料を取られるケースもあるでしょう。
そもそも、「後払い現金化」とうたっていても、実際にしていることが金銭の貸付であれば、本来業者は貸金業者として登録していなければなりません。貸金業者として登録していないにもかかわらず、貸金業を営んでいること自体が違法なのです。
さらに、貸金業者として登録を受けていたとしても、出資法で定める上限金利(20%)を超えていれば、出資法違反として罰則の対象になります。
後払い現金化以外に注意が必要な貸付
後払い現金化以外にも、気をつけなければならない資金調達手段がいくつも存在します。主な例は、以下のとおりです。
- 先払い買取現金化
- 給与ファクタリング
- 違法な年金担保融資
それぞれの概要を解説します。
先払い買取現金化
先払い買取現金化とは、高額な違約金(キャンセル料)を支払う前提で、商品買取業者に商品を売却することを装い、お金を受け取る資金調達方法を指します。先払い買取現金化の流れは、以下のとおりです。
- 商品を売買しない前提で商品画像を送り、業者に商品の買取を依頼する
- 商品の先払い代金として、業者から金銭を受け取る
- 発送期限が到来したら、2で受け取った金銭を返還した上で、違約金(キャンセル料)もあわせて支払う
後払い現金化と同様に、利用者は違約金を含めて高額な金銭を支払わなければならないため、多重債務に陥る可能性があります。また、相手に伝えた個人情報を悪用されるなど、トラブルや犯罪に巻き込まれる可能性もあるため、利用しないようにしましょう。
給与ファクタリング
給与ファクタリングとは、利用者が勤務先に対して有する給与を業者が買い取る仕組みを指します。給与ファクタリングの流れは、以下のとおりです。
- 利用者がファクタリング事業者に給与ファクタリングを申し込む
- 審査後に契約する
- ファクタリング事業者から手数料を引いた分の現金が振り込まれる
- 利用者が給料日に受け取った給与を事業者に支払う
給与ファクタリングも貸金業にあたるため、本来貸金業登録をしていなければなりません。それにもかかわらず、登録なしで勧誘し、違法な取り立てをする業者が存在します。
本来ファクタリングとは、事業者が保有している売掛債権(売掛金など)を期日前に一定の手数料を徴収して買い取る、事業資金の調達手段のひとつであり、それ自体は違法ではありません。しかし、近年「ファクタリング」を装い、あたかも合法であるかのようには違法な貸付けをする業者が存在するため、注意しましょう。
違法な年金担保融資
年金担保融資とは、もともと独立行政法人福祉医療機構が年金受給者の一時的な資金需要に対し、年金受給権を担保として小口の資金を貸す制度でした。しかし、生活費に充てられるべき年金が返済に充てられることで、利用者の困窮化を招くなどの指摘があったため、2022年3月末で受付を終了しています。
そのため、2022年4月以降に年金受給権を担保として借入申し込みを受け付けているサービス・制度は、すべて違法です。資金繰りに困っても、利用してはいけません。
後払い現金化でトラブルに巻き込まれたら?
ここまで紹介してきたとおり、後払い現金化はトラブルや犯罪に巻き込まれやすい資金調達方法のため、利用を避けましょう。万が一、すでに後払い現金化を利用してトラブルに巻き込まれている場合は、すぐに官公庁の相談窓口に連絡しましょう。
金融庁や警察などで、専門の相談窓口を設けています。また、多重債務に関しては、金融庁の多重債務相談窓口や弁護士の問い合わせることも大切です。
参考)金融庁「「今すぐ現金」「手軽に現金」にご注意ください!~いわゆる 後払い(ツケ払い)現金化 に要注意~」
ビジネスで資金調達に困ったときの一般的な方法
ビジネスで資金調達に困った場合も、後払い現金化以外の方法を検討しましょう。主な資金調達手段は、以下のとおりです。
- 融資(金融機関からの借入)
- 出資
- その他(自己資金、知人や親戚からの借入、補助金・助成金の利用など)
融資を利用すれば、金融機関からビジネスへのアドバイスを受けられます。ただし、返済負担がある点、審査に通らなければ利用できない点に注意が必要です。
出資では、主にベンチャーキャピタルや投資家から資金を調達します。返済の義務を負わないメリットがある一方で、経営権を奪われるリスクを抱える点がデメリットです。
後払い現金化まとめ
後払い現金化とは、形式的に後払いで商品を購入し、商品の代金支払い前に金銭を受け取る仕組みのことです。主に資金調達を目的に、利用されています。
しかし、多重債務に陥る可能性がある、個人情報流出の危険がある、違法な取り立てを受ける可能性があるなどの理由で後払い現金化の利用は避けるべきです。事業資金で困った場合は、融資や出資などの資金調達手段を検討しましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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