ベンチャーキャピタルとは?メリットや銀行融資との違いを解説

更新日:2024年05月31日

ベンチャーキャピタルとは

ベンチャーキャピタルとは、未上場の企業に出資し、上場時に売却して利益を得ることを目指す投資会社のことです。企業は出資を受けることで多額の資金を調達できる一方、自社の経営に口出しされる可能性に注意しなければなりません。

本記事では、ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリット・デメリットについて詳しく解説します。

目次

ベンチャーキャピタル・VCとは

ベンチャーキャピタル(Venture Capital、VC)は、未上場のベンチャー企業(設立数年の若い企業)やスタートアップ(先進的なアイデアで急成長を目指す企業)などに出資します。一般的に、投資対象の企業が成長して上場した際に、株式を売却することで値上がり益を得られることを期待して出資するのが、ベンチャーキャピタルです。

ベンチャーキャピタルは、成功すれば多額の利益を期待できる一方で、投資資金を回収できず大きな損失を抱えることもある点が特徴です。つまり、ベンチャーキャピタルはハイリスク・ハイリターンの姿勢で出資しています。そのため、ベンチャーキャピタルが投資先を選ぶ際には、高度な知識や経験・スキルなどが求められます。

企業にとって、銀行からの融資に加えてベンチャーキャピタルからの出資も資金調達の選択肢のひとつです。ベンチャーキャピタルが企業に出資する主な方法には、ベンチャーキャピタル自身が保有する資金を対象企業に出資する、投資家から集めた資金でファンドを組成して対象企業に出資するなどがあります。

ファンドを組成して出資する場合、ベンチャーキャピタルは出資者と契約した期間内に投資資金を回収しなければなりません。

ベンチャーキャピタルの種類

ベンチャーキャピタルは、運営母体や投資対象などによってさまざまな種類に分類できます。主なベンチャーキャピタルの種類は、以下のとおりです。

  • 金融機関系VC
  • 政府系VC
  • 大学系VC
  • 独立系VC
  • 海外系VC
  • 地域系VC
  • 事業会社系VC(CVC)

ここから、それぞれの特徴を解説します。

金融機関系VC

金融機関系VCとは、金融機関が母体となるベンチャーキャピタルを指します。大手金融機関の資金力を背景に、投資の規模が比較的大きい点や実績が豊富な点などが主な特徴です。

三菱UFJキャピタル(MUFG)、みずほキャピタル(みずほフィナンシャル)、SMBCベンチャーキャピタル(SMBC)といった、メガバンクを母体とするベンチャーキャピタルが具体例として挙げられます。そのほか、地方銀行や証券会社、生命保険会社などが母体となるベンチャーキャピタルも、金融機関系VCです。

政府系VC

政府系VCとは、国・地方自治体が主体となって投資を進めるベンチャーキャピタルを指します。そのため、出資する際の原資は、基本的に公的資金です。

政府系VCの具体例として、投資育成が挙げられます。投資育成とは、国(経済産業省)が監督し、地方公共団体や金融機関などが株主として出資する会社・制度のことです。

一般的に、ベンチャーキャピタルは急成長や上場志向型のベンチャー企業に投資するのに対し、投資育成は主に安定成長型の中堅・中小企業に投資します。また、安定的な配当を目的とする点も、投資育成の特徴です。東京中小企業投資育成・名古屋中小企業投資育成・大阪中小企業投資育成などがあります。

そのほか、官民ファンド産業革新機構から新設分割で発足したINCJや、日本政策投資銀行(DBJ)が100%出資するDBJキャピタルなども、政府系VCの具体例です。

参考)東京中小企業投資育成株式会社「投資育成とは」

大学系VC

大学系VCとは、国立大学や私立大学、大学の研究機関などが直接企業に出資するベンチャーキャピタルを指します。最先端の研究をしたり、技術の社会実装を目指したりする企業に対して投資する点が特徴です。

大学系VCの具体例として、東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発)が挙げられます。東大IPCは、東京大学周辺のイノベーションエコシステムの拡大を目指し、2016年に同大学の100%出資で設立された会社です。

そのほかにも、京都大学イノベーションキャピタル(京都大学100%出資)、大阪大学ベンチャーキャピタル(大阪大学100%出資)、東北大学ベンチャーパートナーズ(東北大学100%出資)などがあります。

参考)東大IPC「東大IPCとは」

独立系VC

独立系VCとは、ほかと異なり、親会社なしで独自に運営されているベンチャーキャピタルを指します。親会社の影響を受けず、独自の目線で投資できる点が主な特徴です。

また、独立系VCは基本的に事業提携をしません。株式の売却によって得られる売買差益、キャピタルゲインを主な目的に、企業へ出資します。

独立系VCの具体例は、日本アジア投資(JAIC)、JAFCO、グロービス・キャピタル・パートナーズなどです。

海外系VC

海外系VCとは、主に海外に拠点を構えるベンチャーキャピタルを指します。資金力があるため、積極的かつスムーズに大規模な投資を手がける点、世界中で幅広く投資を展開している点などが主な特徴です。

主な海外系VCとして、GV(旧Google Ventures)やCoral Capital、Sequoia Capitalなどが挙げられます。

地域系VC

地域系VC・地域特化型VCとは、特定のエリア(都道府県や市町村)のみを投資対象とするベンチャーキャピタルを指します。対象地域における産業や資源を発展させる事業に対して、投資する点が特徴です。

地域系VCの母体には、地方銀行や大学、事業会社などがあります。また、投資対象も地域などによってさまざまです。

地域系VCのひとつに、北海道の事業会社や地方銀行が出資する北海道ベンチャーキャピタルがあります。また、新潟の企業を応援して新潟の地域振興や発展をさせることを目的に設立された、新潟ベンチャーキャピタルも地域系VCの具体例です。

事業会社系VC(CVC)

事業会社系VCとは、事業会社が自社にない視点を取り込むため、自己資金でファンドを組成するベンチャーキャピタルのことです。会社・企業を英語で"Corporate"と表現するため、Corporate Venture Capitalを略してCVCとすることもあります。

事業会社とは、営利目的に経済活動する企業・会社のことです。一般的に、金融・コンサル・士業など以外の会社は事業会社に含まれます。

CVCの特徴は、自社の事業との関連性やもたらすシナジー効果を考慮して投資を判断する点です。そのため、投資先に対してノウハウを提供したり、販路開拓支援をしたりすることもあります。

CVCの親会社は、商社・IT関連会社・不動産会社・インフラ会社などさまざまです。

ベンチャーキャピタルとほかの資金調達手段の違い

企業の資金調達手段は、ベンチャーキャピタルからの出資以外にも、銀行から融資を受けたり(銀行借入)、クラウドファンディングを利用したりする方法があります。ここから、それぞれの違いを確認していきましょう。

銀行融資(銀行借入)との違い

銀行融資(銀行借入)とベンチャーキャピタルの主な違いは、返済義務の有無です。

銀行融資とは、企業が銀行の審査を経てお金を借りることを指します。企業は、契約であらかじめ定めた期限までに銀行から借りた元金と利息を返済しなければなりません。

銀行融資の返済方法には、利息を毎月返済して元金を期日に一括返済する期日一括返済と、毎月元金と利息を返済する元金均等返済・元利均等返済があります。元金均等返済が毎月元金の額が一定の返済方法であるのに対し、元利均等返済は毎月返済額(元金+利息)が一定の返済方法です。

負債になる銀行融資と異なり、ベンチャーキャピタルは出資のため、企業は基本的に調達した資金を返済する義務を負いません。ベンチャーキャピタル側は、企業からの返済ではなく保有する株式を売却することにより、資金を回収します。

クラウドファンディングとの違い

クラウドファンディングとベンチャーキャピタルの主な違いは、企業が調達できる資金の規模が挙げられます。

クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を調達する手段を指すことが一般的です。資金の集め方により、購入型・寄付型・金融型・株式投資型といった種類に分けられます。

一般的に、クラウドファンディングは、ベンチャーキャピタルと比べると調達できる資金の規模は小さいです。その分、多くの人々の関心を集められれば、スムーズに資金調達できる可能性があります。

また、クラウドファンディングは、出資者に株式を渡さない点も違いです(株式投資型を除く)。そのため、クラウドファンディングのほうが出資者から経営に関与される可能性は低くなります。

ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリット

企業にとって、ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリットは、以下のとおりです。

  • 多額の資金を調達しやすい
  • ノウハウを得られる
  • 返済義務がないため財務改善につながる

それぞれ詳しく解説します。

多額の資金を調達しやすい

企業がベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、多額の資金を調達しやすい点がメリットです。

金融庁の資料によると、日本のVC平均ファンド規模・1案件あたり平均投資金額の推移は、2010年度以降「1億円以上」で推移しています。つまり、ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合は、億単位の資金調達も期待できるでしょう。

また、ベンチャーキャピタルは基本的に企業の収益力や成長性を見込んで投資するため、銀行から多額の融資を受けられない場合でも、調達できる可能性があります。

参考)金融庁「事務局説明資料(成長資金の供給のあり方に関する検討【総論】)」

ノウハウを得られる

ベンチャーキャピタルのノウハウを得られる可能性がある点もメリットです。

ベンチャーキャピタルは、一般的に豊富な投資実績があります。経営に関する助言や経営資源の提供を受けられれば、自社の企業価値向上につなげられるでしょう。

投資先の企業価値が上がれば株式を売却する際の価格が上昇するため、ベンチャーキャピタル側も積極的にノウハウを提供することがあります。

また、ベンチャーキャピタルから企業を紹介してもらえれば、提携先の発掘や新規取引先の開拓にもつながるでしょう。

返済義務がないため財務改善につながる

銀行からの融資で資金調達する場合と異なり、返済義務が生じないこともベンチャーキャピタルから出資を受けるメリットです。

とくに、設立して間もない段階では、さまざまなことにコストがかかります。そこで、ベンチャー企業からの出資で資金面に余裕を持たせれば、開発や経営に専念できるでしょう。

また、ベンチャーキャピタルからの出資は財務状況の改善にもつながります。出資は「資本」として計上するため、銀行から借りる場合よりも負債比率などの各指標を改善できるでしょう。

ベンチャーキャピタルから出資を受けるデメリット

企業がベンチャーキャピタルから出資を受けるデメリットは、以下のとおりです。

  • 過度に経営介入される可能性がある
  • 株式買取を請求される場合がある

それぞれ解説します。

過度に経営介入される可能性がある

ベンチャーキャピタルから出資を受けると、過度に経営介入される可能性があります。なぜなら、ベンチャーキャピタルから出資を受けるにあたって、株式を譲渡することが一般的なためです。

たとえば、取締役は株主総会に出席した当該株主の議決権の過半数で選任されます(会社法第341条)。そのため、株式の保有割合次第で、ベンチャーキャピタルから経営者や役員を迎えざるを得ないこともあるでしょう。

ベンチャーキャピタルから過度に経営介入されると、理想とする経営は進められません。ベンチャーキャピタルから出資を受ける際は、株式割合に十分配慮しましょう。

参考)e-Gov「会社法 第三百四十一条」

株式買取を請求される場合がある

出資を受けても、すぐにベンチャーキャピタルから株式買取を請求されうる点もデメリットです。

ベンチャーキャピタルから出資を受けるにあたって契約する「投資契約書」の中に、「株式買取条項(株式買取請求権)」が設けられていることがあります。株式買取条項とは、特定の条件が発生した際に、出資した側(投資家)が投資先企業に対して株式を買い取るよう請求できる権利のことです。

資金調達してから、投資契約に違反すると多額の資金を支払わなければならなくなります。必ず契約書の内容を吟味した上で出資を受けるか判断しましょう。

そのほか、当初追加の出資を期待していても、うまく利益を出せなければベンチャーキャピタルが撤退することがある点にも、注意が必要です。

ベンチャーキャピタルから出資を受けるまでの流れ

企業がベンチャーキャピタルから出資を受けるにあたって、以下の流れで進められることが一般的です。

  • ベンチャーキャピタルを探す
  • 各種資料を提出する
  • 査定・審査を受ける

各手順ですべきことを解説します。

ベンチャーキャピタルを探す

出資を受けるためには、まずベンチャーキャピタルを探さなければなりません。

すでに紹介したとおり、ベンチャーキャピタルにはさまざまな種類があります。そのため、サポートを受けられるか、自社の事業に関連する提携先があるか、などを踏まえてベンチャーキャピタルを見つけることが大切です。

ベンチャーキャピタルと接点を持つ際は、知人や取引先から紹介してもらう方法があります。いきなり連絡するよりも、ベンチャーキャピタル側が知っている人・企業を通したほうがスムーズに話を進められるでしょう。

また、イベントやコンテストに参加することも、ベンチャーキャピタルと接触する方法のひとつです。ベンチャーキャピタルが主催するコンテストに参加すると、自社をアピールできる、事業計画に対してアドバイスをもらえる、入賞するとすぐに資金調達できるなどのメリットがあります。

各種資料を提出する

ベンチャーキャピタルと接点を持ったら、各種資料を提出します。なぜなら、ベンチャーキャピタルが投資判断する際に必要なためです。

提出を求められる主な資料として、以下が挙げられます。

スムーズに提出できるように、あらかじめ準備しておきましょう。

査定・審査を受ける

提出資料などに基づき、ベンチャーキャピタルが査定します。査定でチェックされるのは、事業計画の妥当性、事業の将来性などです。

ベンチャーキャピタルが出資を決めたら、投資家に向けて投資審査会を開きます。審査会で投資家から合意を得られれば、企業への出資が正式に決定します。

決定後、細かな契約条件の交渉が必要です。ベンチャーキャピタルから出資を受けたことを後悔しないために、契約内容は弁護士などの専門家に相談しましょう。

条件面の交渉がまとまったら、ベンチャーキャピタルと投資契約を締結し、出資を受けられます。

ベンチャーキャピタルとはまとめ

ベンチャーキャピタル(VC)とは、未上場のベンチャー企業やスタートアップなどに出資し、上場時に売却する企業のことです。運営母体や投資対象などによって、さまざまな種類があります。

ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、一般的に返済義務を負わない点が銀行融資との主な違いです。ただし、出資者に株式を譲渡するため、割合次第で自由に経営できなくなる可能性がある点に注意しなければなりません。

ベンチャーキャピタルから出資を受ける方法として、ビジネスコンテストへの参加が挙げられます。ベンチャー企業やスタートアップなどの経営者で、借入金以外の資金調達を検討している方は、参加を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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