資金調達時の金利はいくら?融資の金利相場と計算方法
更新日:2025年04月08日

起業や事業の拡大を検討する際、課題となるのは資金調達の方法です。その方法は多種多様であり、借入先やローンの種類によって金利や融資スピードは大きく異なります。この記事では、事業資金の調達方法をそれぞれの金利相場とともに紹介し、金利が決まる仕組みを解説します。最適な資金調達方法を見つけるために、ぜひ参考にしてください。
目次
資金調達の方法と金利相場
資金調達の分類方法はいくつかありますが、主な方法は以下の5つです。
- 金融機関から融資を受ける
- 売掛債権を売却する(ファクタリング)
- 投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける
- 自己資金を充てる
- 補助金や助成金を受給する
上記のうち、金融機関から融資を受ける場合は、必ず金利が設定され、元本と利息を返済しなければなりません。また、ファクタリングであれば売掛金を売却したときの売買手数料が発生します。
ここでは、以下の金融機関とファクタリング会社で資金調達する場合の金利や手数料の相場や資金化スピードを紹介します。
借入先 | 金利(年率)、手数料 | 資金化スピード |
日本政策金融公庫 | 0.85%~2.45% | 遅い |
民間金融機関 | 1%~14%程度 | やや遅い |
ノンバンク | 3%〜18%程度 | 速い |
ファクタリング会社 | 1%~30%程度(手数料) | 速い |
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、中小企業やスタートアップを支援する政府系金融機関で、民間金融機関の補完的な役割を担っています。
そのため、民間金融機関よりも金利は低く設定されています。金利相場は0.85%~2.45%程度(令和7年2月3日時点)。
無担保・無保証で借りられる制度もあり、個人事業主でも利用できるといったメリットがあります。ただし、融資スピードは民間金融機関よりも遅い傾向があるため、急いでいる場合に向きません。
民間金融機関(銀行・信用金庫)
民間の金融機関は、多種多様な融資商品を扱っています。
- プロパー融資
- 信用保証付き融資
- ビジネスローン
- 不動産担保ローン
それぞれ担保や保証の有無、資金用途などが異なり、設定される金利にも差があります。
基本的に、銀行や信用金庫はノンバンク系よりも低金利で融資を行っていますが、その分利用者の信用力に重きを置いており、厳しく審査する傾向にあります。
プロパー融資
プロパー融資とは、信用保証協会を通さず、銀行などの民間金融機関が事業者に直接行う融資を指します。保証料がない分、金利が低めに設定されるのが特徴で、一般的な相場は年1%~3%程度です。
ただし、保証がないということは、金融機関にとってリスクの高い融資です。そのため、プロパー融資を受けるには、信用力や実績が重視されます。さらに担保を求められることもあります。
開業後間もない事業主や、業績が芳しくない事業主、資産価値の高い担保などを用意できない事業主は、利用しにくい可能性があるでしょう。
信用保証付き融資
信用保証付き融資は、信用保証協会の保証を利用して融資を受ける方法です。信用保証協会とは、中小企業や小規模事業者の資金調達を支援するために、融資を受ける際に保証人となる公的機関です。
万一債務者が返済できなくなった場合、信用保証協会が弁済するため、担保がなくても融資を受けやすくなります。
ただし、保証料がかかるためプロパー融資よりも金利が高く、一般的な相場は年1.5%~3.0%程度です。設定される金利には、銀行への利息に、信用保証協会への保証料が上乗せされています。
ビジネスローン
ビジネスローンは、使途が事業に関する資金に限定されたローン商品です。銀行のほか、消費者金融や信販会社も扱っています(消費者金融や信販会社のビジネスローンについては後述)。
ビジネスローンは、プロパー融資や信用保証付き融資に比べると、一般的に審査に通りやすい傾向があります。担保を必要としない商品が多いため、資産が少ない事業主も利用しやすいでしょう。
また、融資スピードも速いため、急いで事業資金を調達したい場合にも有効です。
銀行が提供するビジネスローンの一般的な金利相場は年1%~14%程度です。地方銀行よりもメガバンクのほうが、金利はやや低めに設定される傾向にあります。
不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、所有する不動産に抵当権を設定し、それを担保にお金を借りられる商品です。
不動産担保ローンを利用すると、金融機関は担保に設定された不動産を売却し、その代金で債権を回収できます。債権者にとっては、債権回収のリスクが低くなるため、金利を抑えたうえで融資額を大きく設定できます。
銀行の不動産担保ローンの一般的な金利相場は、年1%~9%程度です。
比較的低金利で借り入れできる可能性はありますが、担保不動産に関して細かい条件があること、万一の場合に不動産を手放さなければならない可能性があることには留意が必要です。
消費者金融や信販会社(ノンバンク)
消費者金融や信販会社などのノンバンク系も、ビジネスローンを提供しています。
銀行とノンバンクの大きな違いは、預金業務の有無です。ノンバンクは、預金業務を行わず、与信業務に特化しています。
そのため、ノンバンクには預金者への支払い義務がなく、その分リスクを取った融資が可能です。審査スピードが速いことも、柔軟に審査している証左でしょう。
ただし、ノンバンク系のビジネスローンの一般的な金利相場は年3%〜18%程度と、銀行や信用金庫に比べると高めです。また、初回かつ借入額が小さい場合、上限金利が適用されるのが一般的です。
ファクタリング
ファクタリングとは、保有する売掛金をファクタリング事業者に売却して資金調達をする方法です。売掛先からの入金日を待たず、早期に売掛金を現金化できます。審査は早ければ即日にも完了し、その日のうちに融資を受けられるのが特徴です。
ファクタリングには、利用者とファクタリング事業者の2者間で契約を結ぶ2社間ファクタリングと、利用者とファクタリング事業者、売掛先の3者間で結ぶ3社間ファクタリングの2種類があります。
それぞれの手数料の相場は以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング:10%~30%程度
- 3社間ファクタリング:1%~9%程度
参考)ファクタリングの手数料
【返済方法別】金利(利息)の計算方法
融資を受ける際は、確実な返済計画を立てるためにも、金利の数字だけでなく、具体的な利息の金額も把握しておきましょう。返済は、元金に利息を足した金額を期日までに支払います。
しかし、利息は返済方法により計算方法が変わります。以下の返済方法における、利息計算の方法を把握しておきましょう。
一括返済 | 借入残高と利息を一括で返済 |
元金均等返済 | 元金返済に充てる金額が一定 |
元利均等返済 | 元金と利息が毎回一定 |
一括返済
一括返済は、借り入れたすべての金額と利息を一括で返済する方法です。分割で返済するよりも利息が減り、支払総額を抑えられる特徴があります。計算式は以下のとおりです。
借入残高×金利率×借入期間(日数/365日※)
※うるう年は366日
たとえば、金利5%で100万円を借り、20日後に返済した場合、利息額は2,739円(1,000,000円×5%×20/365)となります。
元金均等返済
元金均等返済とは、毎月同じ金額の元金に利息を足した額を支払う返済方式です。元金が減ると利息も減るため、返済が進むにつれて1回あたりの返済額は小さくなっていきます。
1回あたりの元金返済額は、以下の計算式で求められます。
元金返済額=借入金額÷返済回数
1回あたりの利息は、以下の計算式で求められます。
利息返済額=直前の残高×月利(年利÷12)
たとえば、年利5%で100万円を1年間借りる場合、毎月の返済額と利息は以下のように推移します。
月数 | 毎月返済額(元金) | 毎月返済額(利息) | 毎月返済額(合計) | 残高 |
1か月 | 83,333円 | 4,166円 | 87,499円 | 916,667円 |
2か月 | 83,333円 | 3,819円 | 87,152円 | 833,334円 |
3か月 | 83,333円 | 3,472円 | 86,805円 | 750,001円 |
4か月 | 83,333円 | 3,124円 | 86,457円 | 666,668円 |
5か月 | 83,333円 | 2,777円 | 86,110円 | 583,335円 |
6か月 | 83,333円 | 2,430円 | 85,763円 | 500,002円 |
7か月 | 83,333円 | 2,083円 | 85,416円 | 416,669円 |
8か月 | 83,333円 | 1,736円 | 85,069円 | 333,336円 |
9か月 | 83,333円 | 1,388円 | 84,721円 | 250,003円 |
10か月 | 83,333円 | 1,041円 | 84,374円 | 166,670円 |
11か月 | 83,333円 | 694円 | 84,027円 | 83,337円 |
12か月 | 83,337円 | 347円 | 83,684円 | 0円 |
参考)長期固定金利住宅ローン 【フラット35】「元利均等返済と元金均等返済とは?」
元利均等返済
元利均等返済とは、元金と利息の合計が毎回一定になる返済方式です。元金均等返済では1回あたりの返済額が減少するのに対し、元利均等返済は完済するまで返済額が変わりません。
1回あたりの返済額は、以下の計算式で求めます。
毎月の返済額=借入金額×月利×(1+月利)返済回数÷(1+月利)返済回数-1
利息は次のとおり計算できます。
利息返済額=直前のローン残高×月利
たとえば、年利5%で100万円を1年間借りる場合、毎月の返済額と利息は以下のように推移します。
月数 | 毎月返済額(元金) | 毎月返済額(利息) | 毎月返済額(合計) | 残高 |
1か月 | 81,441円 | 4,166円 | 85,607円 | 918,559円 |
2か月 | 81,780円 | 3,827円 | 85,607円 | 836,779円 |
3か月 | 82,121円 | 3,486円 | 85,607円 | 754,658円 |
4か月 | 82,463円 | 3,144円 | 85,607円 | 672,195円 |
5か月 | 82,807円 | 2,800円 | 85,607円 | 589,388円 |
6か月 | 83,152円 | 2,455円 | 85,607円 | 506,236円 |
7か月 | 83,498円 | 2,109円 | 85,607円 | 422,738円 |
8か月 | 83,846円 | 1,761円 | 85,607円 | 338,892円 |
9か月 | 84,195円 | 1,412円 | 85,607円 | 254,697円 |
10か月 | 84,546円 | 1,061円 | 85,607円 | 170,151円 |
11か月 | 84,899円 | 708円 | 85,607円 | 85,252円 |
12か月 | 85,252円 | 355円 | 85,607円 | 0円 |
参考)長期固定金利住宅ローン【フラット35】「元利均等返済と元金均等返済とは?」
資金調達時の金利に影響する要素
事業資金調達時の金利は、さまざまな要因によって変動します。金融機関は、申込者の審査を通じてリスクを評価し、その大きさに応じて金利を決定します。そして、リスクが大きいほど高い金利が設定されるのが一般的です。
リスクの大きさを決定する要素には、以下のようなものがあります。
- 融資希望者の信用度
- 金融機関が見込む利益
- 担保の状況
- 返済期間の長さ
融資希望者の信用度
金利決定に大きな影響を与えるのが、融資希望者の信用度です。信用度は、年齢や年収、現在の借り入れ残高、過去の返済の状況などから総合的に判断されます。法人が申し込む場合は、業歴や決算の内容も考慮されるでしょう。
信用度が高いと判断されれば金利は低くなる可能性がありますが、低いと判断されれば金利は高くなるか、審査に落ちることもあります。
金融機関が見込む利益
金利は、借入先によっても大きく変動します。前述のとおり、融資を行う金融機関は、大きく以下の3つに分類できます。
- 日本政策金融公庫
- 民間金融機関(銀行・信用金庫)
- ノンバンク(消費者金融・信販会社)
日本政策金融公庫は営利を目的としない公的機関であるため、金利は比較的低く設定されます。一方、ノンバンクは、預金業務を実施していません。銀行などから借り入れたお金を利用者に貸し付けることから、利益を確保するために高金利になりやすい傾向があります。
担保の状況
担保の有無も金利に影響を与えます。担保とは、債務が履行できなくなった場合に備えて、債務者が債権者に提供する財産のことです。
担保があれば、金融機関は債務不履行の際に担保を売却して債権を回収できます。そのため、貸し倒れリスクを回避でき、金利を低めに設定できるのです。
一方、無担保ローンは金利が高くなる傾向があります。
返済期間の長さ
返済期間も金利に影響を与える要素の一つです。一般的に、返済期間が長いほど金利は高く、短いほど金利は低くなります。返済期間が長いほど、金融機関は融資額を回収できないリスクを考慮するためです。
返済期間を短くすれば毎月の返済負担は増えますが、金利が低く設定され、元本の減少スピードも速くなるため、結果としてトータルの利息額を抑えられます。
資金調達時の金利を抑える方法
金利をできるだけ抑えて有利に資金調達したいなら、金融機関からの信用度を高めることが重要です。次のような方法で、自らの信用力を高め、それを金融機関にアピールするよう努めましょう。
- キャッシュフローの見直しを図る
- 担保を用意する
- 経営計画書や事業計画書を作成する
ほかにも、低金利の融資商品を扱う金融機関を選ぶ、返済期間を短くするなども有効です。
キャッシュフローの見直しを図る
キャッシュフローを改善することは、金融機関からの信用を得るうえで非常に重要です。キャッシュフローが悪いと、金融機関は「この企業は返済能力が低いのではないか」と懸念し、融資をためらったり、高い金利を設定したりする可能性があります。
そのため、日頃から資金繰りを把握し、財務状況を良好な状態に保つことが大切です。具体的には、以下の点に留意するとよいでしょう。
- 債権回収を徹底する
- 経費を減らし、利益を増やす
- 不良在庫を処分する など
担保を用意する
前述のとおり、担保の提供により金融機関は貸し倒れリスクを軽減できるため、融資の金利が低くなる可能性があります。担保には、不動産や有価証券など特定の財産を提供する物的担保と、保証人を立てる、つまり債務者以外の第三者の財産全体を担保とする人的担保があります。
どちらか一方、または両方の担保を提供することで、債務者の信用力が補完され、より低い金利で融資を受けられる可能性が高まるでしょう。
経営計画書や事業計画書を作成する
経営計画書や事業計画書は、金融機関に企業の将来性を示すための重要な資料です。金融機関は、現在の財務状況だけでなく、将来性も考慮して融資審査をします。
そのため、長期的な経営方針やビジョンを示す経営計画書や、具体的な事業戦略や財務計画を記した事業計画書を作成し、企業の将来性をアピールすることが重要です。
ただし、これらの資料は説得力のある内容でなければなりません。実現可能性の高い計画を作成し、金融機関に「この企業は将来性がある」と思わせることが大切です。
資金調達の金利まとめ
資金調達のために金融機関から融資を受ける場合、金利は重要な考慮事項です。低い金利で借り入れできれば、利息が抑えられ返済負担を軽減できます。しかし、適用金利が低く設定されるためには、金融機関から信用力を認めてもらうことが重要です。
そのためには、金融機関や商品選びはもちろんのこと、担保を用意したり、キャッシュフローを改善したりすることが大切でしょう。将来性を示すために、丁寧に経営計画書や事業計画書を作成することも有益です。
この記事で紹介した各金融機関の特徴や金利が決まる仕組みを参考に、納得のいく資金調達を進めてください。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
項目 | 内容 |
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