会社の定款とは?記載事項や作成から会社設立の流れを解説

更新日:2024年10月02日

定款

会社の「定款」(ていかん)は、企業経営の根幹を成す重要な文書です。会社設立時に作成が必須とされるこの文書には、会社の基本的な情報や運営方針が記載されます。

本記事では、定款の基本的な内容から作成方法、さらには変更手続きまで幅広くまとめています。定款に関する知識を深めることで、スムーズな会社設立と適切な企業運営を実現しましょう。

目次

会社の「定款」(ていかん)とは

会社の「定款」は、企業設立時に必要不可欠な法的文書です。会社の基本的なルールを定めた「憲法」のような役割を果たし、経営の指針となる存在です。

会社の名称や事業内容、所在地などの基本情報から運営に関する細かな規則まで、会社法に基づいて記載され、最終的に公証人役場にて認証されます。

定款は会社の根幹を成す重要な書類であり、予期せぬトラブルを防ぐ役割も担っています。近年では、従来の紙形式に加え、電子定款の利用も一般的になってきました。

以下では、定款とはどのようなものか、必要とされる理由、認証でかかる費用について詳しく解説します。

定款は会社設立に必要な書類

定款は、会社設立時に必要となる書類です。会社の根本的なルールを定めた「会社の憲法」とも呼ばれており、会社経営の指針となる重要な役割を果たします。

定款には、会社の名称・事業内容・所在地などの基本情報に加え、会社の指針となるさまざまな規則が記載されており、これらの記載事項は会社法によって定められています。

以前は紙で作成することが主流でした。しかし、近年では電子定款の提出も一般的になってきています。

会社に定款が必要な理由

会社設立において定款が必要な理由は、主に「法人格の付与のため」と「会社の自治を守るため」の2点です。

まず、定款を作成し登記することで、会社は法人格を得られます。法人格を持つメリットは、法人口座の開設や社会的信用度の向上、銀行からの融資が受けやすくなることなどです。

次に、定款は会社運営の基本的なルールを定めることにより、予期せぬトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。会社法ではカバーしきれない細かな規則を定款に記載することで会社全体を統率し、共通の原則に基づく運営が可能になります。

このように、定款は会社の憲法ともいえる重要な書類です。

定款の認証手続きに必要な費用

定款認証は、会社の基本規則を定めた文書の正当性を公的に確認する重要なプロセスです。公証人がこの手続きをすることで、定款が会社設立時に発起人全員が合意して作成された原始定款であることの証明が可能です。

この認証手続きには、いくつかの重要な利点があります。たとえば、定款の紛失や不正な改変を防ぎ、また社内での争いが生じた際の混乱を最小限に抑えられます。

ただし、すべての企業形態で定款認証が必要というわけではありません。株式会社・一般社団法人・一般財団法人・弁護士法人などでは必須ですが、合同会社・合資会社・合名会社などの持分会社では、この手続きは不要です。

認証手続きの費用としてかかるものは、次の3つが一般的です。

  • 収入印紙代
  • 認証手数料
  • 謄本交付手数料

このうち、収入印紙代の4万円は固定費であり、認証手数料は会社設立時の資本金の額によって下表のように変わります。

資本金の額 認証手数料
100万円未満 3万円
100万円以上300万円未満 4万円
その他 5万円

「謄本交付手数料 」は謄本1枚につき250円です。作成した定款の枚数によって金額が変わりますが、目安としては2,000円程度とされています。

なお、電子定款の場合には収入印紙代 4万円の支払いが不要になります。電子証明書付きマイナンバーカードなどの準備は必要ですが、コスト面では大きなメリットです。

定款の記載内容

定款には、会社の基本的なルールを記載しますが、その記載内容は会社法によって定められており、具体的には下記の3つに分類されます。

分類 内容
絶対的記載事項 会社の基本的なルールを記載し、必ず定款に含める必要がある事項
相対的記載事項 法律で定められた条件のもと、会社の裁量で定めることができる事項
任意的記載事項 記載が任意とされている事項であり、会社が必要と判断した場合に記載

以下で、それぞれについて解説します。

絶対的記載事項

絶対的記載事項は、会社の根幹に関わる重要な事項のため、定款に必ず記載しなければならないと法律で定められています。具体的には、以下の5つが挙げられます。

  • 商号
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 資本金額
  • 発起人の氏名(名称)及び住所

以下で、それぞれの項目について詳しく解説します。

商号

会社を設立する際には、まず商号(会社名)を定める必要があります。この商号には「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」のいずれかの形態を含めなければなりません。なお、「有限会社」という形態は2006年5月1日以降、新たに設立することはできなくなっているため選択肢には含まれません。

また、商号は日本語表記だけでなく、ローマ字表記でも登録が可能です。特に海外との取引を視野に入れている場合には、ローマ字表記も準備しておいた方がよいでしょう。

事業目的

会社の定款には、事業目的を明確に記載する必要があります。事業目的は、営利目的であることを示し、違法な事業を含まないことが重要です。また、事業内容は客観的かつ明確に記載しなければなりません。

設立直後に行う事業を前半に記載し、将来的に展開する可能性のある事業はその後半に記載します。ただし、あまりにも多くの内容を盛り込むと、会社の事業が不明確になることもあるため注意しましょう。

また、特に許認可が必要な業種では、定款に特定の事項を記載することが義務付けられています。たとえば、旅行代理店やリサイクルショップなどは、定められた事業内容を明記しなければなりません。

本店所在地

本店所在地には、会社の本拠地として記載する住所を定めますが、実際に事業をする場所でなくても構いません。自宅を事務所として使用する場合でも、住所の公開を避けたい場合は「バーチャルオフィス」の利用が有効な手段です。バーチャルオフィスを利用することで、自宅とは別の住所を本店所在地として記載でき、事業運営を支障なく進められます。

資本金額

会社を設立する際には、出資者が出資する財産の価額を定めた「資本金額」を定款に記載します。法律上、資本金に最低額の定めはないため、1円でも記載可能です。ただし、会社の信用を示す意味もあるため、現実的な金額を考慮に入れて決めましょう。また、創業融資などの審査においても資本金額が重要視されるため、融資を検討する場合はそれらの点をあわせた検討が必要です。

発起人の氏名(名称)及び住所

発起人の氏名(名称)及び住所は、会社設立の際に必要となる重要な情報です。発起人とは、定款を作成して会社の設立を企画した人です。株式会社の場合、発起人は会社設立後に出資した資本金の金額に応じて株式が発行され、株主になります。定款には、発起人全員の氏名(名称)と印鑑証明書に記載されている正式な住所を記載する必要があります。発起人は個人だけでなく法人でも構いません。

相対的記載事項

相対的記載事項とは、法的には記載が義務付けられていないものの、定款に記載がないと効力が認められない事項を指します。これらは会社の特性や経営方針に応じて選択的に記載される重要な項目です。

主に、変態設立事項、株式譲渡に関する事項、会社機関に関する事項などが含まれます。これらの事項を定款に記載するかどうかは、会社の戦略や将来的な展開を考慮して慎重に判断する必要があります。以下、それぞれの項目について見ていきましょう。

変態設立事項

変態設立事項には以下の項目があります。

  • 現物出資:出資者の氏名または名称、出資財産の内容と価額、割り当てる設立時発行株式の数を記載
  • 財産引受:会社設立後に有償で譲り受ける財産の内容と価額、譲渡人の氏名または名称を記載
  • 発起人の報酬等:発起人が受ける報酬や特別利益、その受領者の氏名または名称を記載
  • 会社の設立費用:設立時に要した例外的な費用を記載

株式譲渡に関する事項

株式の発行数や譲渡に関する事項は、定款で規定できます。これには、設立時の発行数や金額だけでなく、譲渡時の承認機関も含まれます。承認機関として取締役会株主総会を指定し、「取締役会の承認が必要」などの記載が可能です。また、発起人全員の同意があれば、後から変更も可能です。さらに、株式の譲渡に関して不利益な相手への売買を防ぐための規則を設け、トラブルを未然に防ぐ項目も記載できます。

会社機関に関する事項

監査役代表取締役、取締役会などの役職の設置や選抜に関する事項は定款に記載します。これらの役職は、必須ではないものの設置の有無が経営に影響を与えるため、メリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。会社の規模や公開・非公開の違いにより、設置できる機関に制約があります。特に非公開会社の場合、取締役などの任期は、選任から10年以内に終了する事業年度の最後の定時株主総会が終わるまで延長が可能です。

任意的記載事項

任意的記載事項とは、絶対的・相対的記載事項に該当せず、違法でない内容を記載する項目です。内容に制限はなく、社会的秩序や公序良俗に反しない限り自由に記載できます。これにより会社設立時にルールを定めることが可能です。たとえば、定時株主総会の招集時期や取締役などの人数、役員報酬の決定方法、配当金に関する事項などが挙げられます。

定款作成に活用できる4種のフォーマット

日本公証人連合会が公開している株式会社の定款記載例は、株式の公開状況によって次の4つのパターンに分けられています。

  • 小規模な会社の定款
  • 中小規模な会社の定款
  • 中規模な会社の定款
  • 大規模な会社の定款

ここでは、それぞれのケースについて紹介します。

1. 小規模な会社の定款

小規模な会社の定款例は、株式が非公開で、取締役が1名だけの小規模な株式会社向けのフォーマットです。この定款例は、内容がシンプルにまとめられており、起業者が小規模な会社を立ち上げる際に定款ドラフト作成の参考として利用されることが多いです。最初に小規模企業での事業開始を検討している人にとって、基本的な定款作成のフォーマットとして役立つでしょう。

2. 中小規模な会社の定款

中小規模な会社の定款は、株式が非公開で、取締役が1名以上いる中小規模の株式会社向けのフォーマットです。この定款例は、小規模な会社向けのものと比較すると、内容がより詳細に記されています。中小規模の企業を立ち上げようとする起業者が、定款のドラフトを作成する際に多くの参考になる標準的な例です。具体的な設計が求められる企業に適したフォーマットとなっています。

3. 中規模な会社の定款

中規模な会社の定款記載例は、非公開株式でありながら取締役会を設置して組織を整備した中規模な株式会社向けのフォーマットです。取締役会を設置する場合、取締役を3名以上配置する必要があり、さらに原則として監査役を1名以上置く必要があります。この定款例には、これらの要件を満たすための具体的な内容が含まれています。

4. 大規模な会社の定款

この定款記載例は、株式公開している大規模な株式会社を対象としています。取締役会に加え、指名委員会や監査委員会、報酬委員会といった各種委員会の設置が想定されており、さらに会計監査人を任命する内容が盛り込まれています。

しかし、最初から大規模な会社の定款を参考にするのは推奨されません。大規模企業は多くの事業を展開しているため、事業目的の記載が複雑で、具体的な参考ポイントを見つけにくいことがあります。まずは、自社の事業内容に近い定款を参考にするのがよいでしょう。

参考)日本公証人連合会「定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)

定款作成から会社設立までの4ステップ

ここでは、定款作成から会社設立までの流れを解説します。 主な流れは以下の4ステップです。

  1. 定款を作成する
  2. 定款の認証手続きを行う
  3. 法人登記を行う
  4. 会社設立完了

以下で、詳しく見ていきましょう。

1.定款を作成する

定款作成は会社設立の第一歩です。まず、絶対的記載事項を中心に記載します。絶対的記載事項には、事業目的・商号・本店所在地・資本金額・発起人の氏名と住所があります。これらの項目は必須であり、漏れや誤りがあると定款が無効となるため、注意が必要です。次に相対的記載事項を、最後に任意的記載事項を追加します。これらは、前述のフォーマットを活用することで作成作業を効率化できます。

2.定款の認証手続きを行う

定款の認証手続きは、公証役場で行います。この際、必ず本店所在地の都道府県内の公証役場を利用する必要があります。

まず、定款の作成が完了した後に、該当する公証役場の予約を取りましょう。予約なしで訪問しても認証は受けられないため、事前の確認が不可欠です。

当日は、必要書類と認証手数料を持参し、公証人の確認を受けます。定款に不備があった場合は、その場で訂正を求められることもあるため、誤りがないかどうか再確認しておきましょう。大きな不備がなければ、当日中に認証を受けられます。

参考)日本公証人連合会「公証役場一覧

3.法人登記を行う

法人登記は、会社の基本情報を法務局に登録し、一般に公開するための手続きです。法人登記手続きでは、公証役場で認証を受けた定款とともに、設立登記申請書を法務局に提出します。必要書類は、就任承諾書・収入印紙・印鑑証明書・出資金払い込みを証明する書類などです。書類に不備がなければ、申請から約1週間~10日で登記が完了します。

4.会社設立完了

法人登記手続きが完了すると、法務局から登記事項証明書が届きます。この証明書により、会社設立が正式に完了します。

設立後には次の手続きをしなければなりません。具体的には、税務署への設立届出や青色申告の申請、年金事務所での厚生年金や健康保険の手続きなどです。また、雇用保険のためにハローワーク、労災保険のために労働基準監督署への手続きも必要です。

これらの手続きは、法人の謄本や印鑑証明書が求められることも多いため、事前に準備しておきましょう。

定款を変更する際の注意点

定款を変更する際は、株主総会での特別決議を経て決定されます。この特別決議では、通常、議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席した株主の3分の2以上の賛成が必要です。また、議決権は通常、1単元株に対して1票として与えられるため、株式を多く所有している株主ほど多くの議決権を持ちます。1人1票ではなく、保有する株式数に応じて議決権が割り当てられる点に注意が必要です。

また、定款の変更内容によっては、登記申請が必要になる場合があります。登記申請が必要な主なケースは以下のとおりです。

  • 事業目的の変更
  • 商号の変更
  • 本店所在地の変更
  • 発行可能株式総数の変更
  • 株式発行に関する規定の新設
  • 取締役会や監査役会の設置・廃止
  • 株式譲渡制限の変更
  • 資本金の変更
  • 役員の交代

登記申請には、原則として3万円の登録免許税がかかり、変更事項が複数ある場合でもこの金額です。ただし、本店移転などでは追加の費用が発生し、地域が異なる場合には別途費用がかかります。また、専門家である司法書士に依頼する場合の費用は2万~4万円が相場です。

印紙代が不要な電子定款

電子定款とは、定款をPDF化して提出する形式のことです。この方法では、従来の紙の定款に必要な収入印紙代が不要です。具体的には、紙の定款では収入印紙代として4万円が必要ですが、電子定款ではこの費用が発生しません。これにより、作成コストを大幅に削減できます。

電子定款を利用するには、PDFファイルを作成するための有料ソフトやICカードリーダライタといった機器が必要です。これらの機器に関する初期投資が発生するものの、定款作成後のコストを抑えられるため、長期的には経済的なメリットが期待できます。すでに必要な機器を所有している場合や今後の事業で活用する予定がある場合、電子定款の採用は非常に有効です。

定款まとめ

会社の定款は、企業の根幹を成す重要な法的文書です。会社設立時に必須であり、企業運営の基本ルールを定める「会社の憲法」とも呼ばれています。定款には、商号や事業目的、本店所在地などの絶対的記載事項をはじめ、会社の規模や特性に応じた相対的記載事項や任意的記載事項も含まれます。

定款作成にあたっては、会社の規模や特性に合わせて適切なフォーマットを選択し、必要な情報を漏れなく記載することが重要です。また、作成した定款は公証人による認証を受け、法人登記を行うことで会社設立が完了します。

定款は会社の成長や状況の変化に応じて変更することも可能ですが、株主総会の特別決議など所定の手続きが必要です。こうした定款も、近年では印紙代が不要な電子定款の利用が増えており、コスト削減の観点からも注目されています。

会社の基本方針を明確に示し、将来の紛争を予防する役割も果たすのが定款です。その重要性を十分に理解し、自社に適した内容で作成しましょう。適切な定款作成は、会社の安定した運営と健全な成長の礎となるはずです。これから起業を考えている人も、すでに経営者である人も、定款の重要性を再認識し、自社の定款を見直してみましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
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法人番号 1011101045361
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