株主総会とは?決議事項や決議方法、開催の流れなどを解説

更新日:2024年10月09日

株主総会とは

株式投資をしているのであれば、株主総会という言葉を聞いたことがあるでしょう。株主総会は会社の重要事項を決定する機関で、一定の条件を満たした株主であれば原則として誰でも参加できます。本記事で解説する株主総会の意義や種類、決議内容、開催方法などを確認し、ぜひ参加を検討しましょう。

目次

株主総会とは

株主総会とは、会社の重要事項を決める機関です。株式投資をしている方や、今後株式投資を検討している方は、株主総会はぜひ詳しく押さえておきたいものの1つです。

ここではまず、株主総会の概要および取締役会との違いを解説します。

株主で構成される株式会社の最高意思決定機関

株主総会とは、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議する権限を持つ最高意思決定機関です(会社法295)。株主総会は、株主によって構成されます。

株主は株式の購入を通じ会社に出資しているため、実質的な会社の所有者といえます。所有者が自社に関する重要な事項を決めるために開かれるのが、株主総会です。

なお取締役会設置会社における株主総会は、会社法または定款で定められた事項についてのみ決議可能です。株主総会と取締役会との違いは、次項で確認しましょう。

参考)e-GOV法令検索|会社法

株主総会と取締役会との違い

株主総会と取締役会との違いは、以下のとおりです。

株主総会 取締役会
構成員 株主 取締役
職務内容 株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項についての決議
  • 株式会社の業務執行についての決議
  • 取締役の職務執行監督
  • 代表取締役の選任および解任

取締役会とは取締役で構成され、日常的な業務の運営方法などを決定する機関です。取締役とは株主からの依頼を受けて業務を執行する役職で、株式会社では1名以上置くと定められています。また取締役会を設置するには、3名以上の取締役が必要です。

取締役は、株主総会の決議によって選任および解任が行われます。そのため取締役会よりも株主総会のほうが、上位の機関とされます。

株主総会の2つの種類

株主総会は、招集される時期によって「定時総会」と「臨時総会」の2つにわけられます。ここでは、それぞれの概要を確認しましょう。

1.定時総会

定時総会とは1年に1回、事業年度の終了後に招集および開催される株主総会です。多くの株式会社は、事業年度が終了してから3ヵ月の間に定時総会を開催しているようです。

事業年度終了後を開催時期とする定時総会では、1年の締めくくりとして事業報告や決算の承認、剰余金の配当が議題にあがります。また、翌年度の見通しなども報告されます。

2.臨時総会

臨時総会は、必要に応じていつでも招集および開催ができる株主総会です。臨時開催の議題の一例としては、以下があげられます。

  • 役員の選任および解任
  • 本店の移転
  • 支店の設置または移転および廃止
  • 募集株式の発行(増資)
  • M&A(合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付など)
  • 事業譲渡

臨時総会で話し合われる議題は、定時総会と比較し幅広くさまざまです。開催目的の詳細は、開催に先立ち送付される招集通知で確認しましょう。

株主総会で決定するおもな決議内容

先述のとおり株主総会では、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項が決議されますが、具体的な決議内容としては以下の3つがあげられます。

  • 会社の組織や事業に関わる重要事項
  • 役員の選任および解任、役員報酬に関する事項
  • 株主の利害に関する事項

それぞれの内容を詳しく確認し、株主総会への理解をさらに深めましょう。

会社の組織や事業に関わる重要事項

会社の組織や事業に関わることは経営に直結するため重要性が高く、株主総会での決議事項とされます。決議の具体例を以下で確認しましょう。

決議事項 条文(会社法) 決議方法
定款の変更 466条 特別
事業譲渡 467条 特別
解散 471条3号 特別

決議は決議事項によって、普通決議または特別決議で行われます。

普通決議 特別決議
条文(会社法) 309条1項 309条2項
定足数 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席
※定款による撤廃・緩和も可能
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席する
※定款により3分の1の出席まで軽減可能
決議要件 出席した株主の議決権の過半数
※定款で定めても良い
出席した株主の議決権の3分の2以上
※定款で3分の2を上回る割合を定めても良い

株主総会における決議は原則として、普通決議で決定されます。ただし、会社組織や経営の根幹に関わる重要事項の決議では、より多くの表決数を求められる特別決議が採用されることは押さえておきましょう。

参考)e-GOV法令検索|会社法

役員の選任および解任、役員報酬に関する事項

取締役や会計参与、監査役といった役員は、株主の委託によりその役職に就いています。そのため選任や解任、報酬に関する事項は株主総会で決議されます。決議の一例は、以下のとおりです。

決議事項 条文(会社法) 決議方法
取締役・監査役・会計参与・会計監査人の選任 329条1項 普通
取締役・監査役・会計参与・会計監査人の解任 339条1項 普通
役員の報酬等 361条1項 普通

参考)e-GOV法令検索|会社法

株主の利害に関する事項

株主の利益に関する事項は、事前に株主総会を開催し決議を採る必要があります。具体的な決議内容は、以下のとおりです。

決議事項 条文(会社法) 決議方法
剰余金の配当 454条 普通
資本金の減少 447条 普通
※定時株主総会の日における欠損の額を超えない場合
自己株式の取得に関する事項の決定 156条1項/160条1項 特別
会社の合併 180条2項 特別
募集株式の発行等における募集事項の決定 199条2項 特別
新株予約権の発行における募集の決定 238条2項 特別

参考)e-GOV法令検索|会社法

株主にとっての株主総会の意義とは

株主総会への出席は、株主の権利です。ただし参加には一定の条件があり、株を保有する株主のうち以下に該当する方は株主総会に参加できます。

  • 決算月の権利確定日に株主であること
  • 議決権を持っていること

上記を満たした株主には株主総会招集通知書が送付され、出席が可能になります。しかし実際には、招集通知書を受け取っても株主総会に参加しない株主も多いようです。

ここでは、株主にとっての株主総会の意義を解説します。株主総会に出席する権利がある方は、ぜひ参考にしてください。

経営に参加できる

株主が株主総会に参加する意義の1つめは、経営に参加できる点です。株主総会を通じ経営に参加する方法には、以下の3つがあげられます。

  • 経営の監視
  • 意見の発言
  • 議決権の行使

株主総会では、現在の経営状況や今後の経営方針などが報告されます。それらを精査し監視すれば、不正の防止につながるでしょう。不正がない企業は、従業員からはもちろん社会的な信用力が向上し、業績アップが期待できます。業績があがれば、配当金の増額や株価の上昇につながる可能性があります。

株主総会では、株主も発言可能です。場合によっては、発言内容が採用される可能性もあります。自身の発言が経営に反映されれば、株主としての醍醐味を味わえるのではないでしょうか。

議決権の行使も、株主が経営に関わる方法の1つです。議決権の行使は、株主総会に出席せず代理人に委任することもできます。しかし、株主総会に参加しさまざまな報告を聞いたうえで決議に臨めば、より納得がいく権利行使ができるはずです。

企業や業界の情報収集ができる

企業や業界の情報収集ができる点も、株主総会に参加する意義の1つです。日常生活の中では、経営者の話を聞く機会がない投資家も多いでしょう。株主総会は、経済や業界に詳しい経営者の話を聞けるチャンスでもあります。

資産運用の一環として株式を購入しているのであれば、経済や業績への知見を深めることは非常に要です。株主総会で得た情報や知識を活用することで、資産運用を成功に導けるかもしれません。株主総会をより有益なものにするためには、事業内容や決算などについてあらかじめ確認し参加しましょう。

株主総会実施の4ステップ

株主総会を実施するには、以下の4つの事前準備が必要です。

  1. 株主総会招集の決定
  2. 株主への招集通知
  3. 総会の準備と開催
  4. 議事録の作成と保存

会社の規模によっては、大きな会場が必要になるかもしれません。議題によっては、株主から思わぬ意見や発言を投げかけられる可能性もあります。

株主総会を円滑に開催し有意義なものとするためには、しっかりと事前準備をすることが重要です。

1.株主総会招集の決定

株主総会を招集するためには、取締役(取締役会設置会社においては取締役会の決議)が株主総会招集の決定をします。ここで決定するべき株主総会招集事項は、以下のとおりです。

  1. 株主総会の日時および場所
  2. 株主総会の目的事項
  3. 株主総会に出席しない株主に書面による議決権行使を認めるときは、その旨
  4. 株主総会に出席しない株主に電磁的方法による議決権行使を認めるときは、その旨
  5. 1~4のほか法務省令で定める事項

株主総会を開催する場所に規定はありません。ただし開催場所が本店から著しく離れている場合は、理由の説明を求められるケースがあります。株主総会は原則として対面で行うとされていますが、近年は特例としてバーチャル株主総会を採用する会社も増えているようです。

株主総会の目的事項には、報告事項と決議事項があります。報告事項は、株主総会で株主に伝えるべき事項です。事業報告や計算書類、連結計算書類、連結監査結果などを報告することで、会社の1年の成果を株主に知らせます。

決議事項とは、株主総会で決議が必要な事項です。役員等の選任・解任、役員報酬、剰余金の配当、会社の合併などが一例としてあげられます。

株主が株主総会に出席しない場合の議決権行使方法も、この時点で決定します。書面はもちろん電磁的方法による行使を認めるのかも、決めておきましょう。

2.株主への招集通知

招集事項が決まったら、株主へ招集通知を発送します。会社の種類によっては電子メールや電話での通知も認められますが、一般的には書面で通知が行われます。招集通知の発送期限は、以下のとおりです。

会社の種類 発送期限
公開会社 株主総会の2週間前まで
非公開会社 取締役会設置会社
  • 書面投票・電子投票を採用する会社:株主総会の2週間前まで
  • 書面投票・電子投票を採用しない会社:株主総会の1週間前まで
取締役会非設置会社
  • 書面投票・電子投票を採用する会社:株主総会の2週間前まで
  • 書面投票・電子投票を採用しない会社:株主総会の1週間前まで(定款により短縮可能)

株主総会で書面投票を認める場合は、招集通知と併せて株主総会参考書類および議決権行使書面を送付しなければなりません。また取締役会設置会社では、計算書類および事業報告(監査報告・会計監査報告を含む)も添付します。

なお株主全員の同意があり、株主総会に出席しない株主に書面による議決権行使や電磁的方法による議決権行使を認めない場合は、株主への招集通知の省略が可能です。そのため、小規模な中小企業では、招集通知が行われない場合もあります。

3.総会の準備と開催

株主への通知が完了したら、総会の準備をしましょう。総会では会社からの報告終了後、決議を採る前に株主からの質問を受け付けます。このとき想定される質問を考え、事前に問答集を作成してください。問答集で押さえておくべき主なポイントは、以下のとおりです。

  • 株式や株価
  • 経営戦略
  • 会計税務
  • 情報セキュリティおよびリスク管理
  • 内部統制と法令順守
  • トレンドに関わる事項

株価が大きく動いた、役員が代わったなどのトピックがある場合は、質問が集中することが考えられます。また、SDGsや新型感染症など時流やトレンドに乗った話題についても、質問があがるケースがあります。

問答集が完成したら、リハーサルをしましょう。議事進行や回答内容に法令違反がないかを確認する場合は、弁護士といった専門家を同席させる場合もあります。

総会当日の進行の流れは、以下のとおりです。

  1. 会議成立の確認
  2. 議長の就任
  3. 開会宣言(議長挨拶)
  4. 出席株主数と議決権数の報告
  5. 監査報告
  6. 事業内容の報告・計算書類の報告
  7. 議案上程
  8. 質疑応答
  9. 議案の採決
  10. 審議終了・閉会

議決権は1株あたり1個とし、先述した普通決議または特別決議で行われます。

4.議事録の作成と保存

株主総会が終了したら、議事録を作成します。議事録保存期間は本店に10年間、映しを支店に5年間保管しなければなりません。また株主と会社債権者の請求があったときは、閲覧・謄写に応じる必要があります。

議事録に記載する主な内容は、以下のとおりです。

  • 開催日時および場所
  • 議事の経過要領およびその結果
  • 会社法に定められた一定の内容について述べられた株主総会において述べられた意見または発言の概要
  • 出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名
  • 議長がいるときは議長の氏名
  • 議事録を作成した取締役の氏名

議事録の作成は一般的に、代表取締役が行うとされます。しかし、代表取締役以外の取締役が作成することも可能です。その場合は、作成を担当した取締役の氏名も記載します。

株主総会の開催場所

最後に、株主総会の開催方法を解説します。株主総会はもともと対面により行われてきましたが、ITの発展や新型感染症の発生などにより非対面のバーチャル株主総会を選択する企業も増えているようです。

それぞれの概要およびメリット・デメリットを確認しましょう。

対面による株主総会

対面による株主総会は、昔からの開催方法です。場所に関する法令上の決まりはなく、開催場所と決定理由を招集通知に明示します。

対面による株主総会のメリットは、スムーズなコミュニケーションが取れる点です。表情や身振り手振りを見ながら質疑応答ができるため、意見の食い違いを押さえられます。

一方、対面での株主総会を開催するには、場所の選定や確保といった手間がかかります。広い会場を使用する場合、コストがかかることも押さえておきましょう。

バーチャル株主総会(オンライン株主総会)

IT技術の発展や新型コロナ感染症の発生などにより、近年ではバーチャル株主総会を行う企業が増えています。今後はバーチャル株主総会を採用する企業がさらに増える可能性もあるため、株式投資をするのであればぜひ押さえておきましょう。

バーチャル株主総会には、オンラインのみで総会を実施するバーチャルオンリー型株主総会と、オンラインと対面を併せて実施するハイブリッド型バーチャル株主総会があります。

ハイブリッド型バーチャル株主総会は、さらに以下の2つにわけられます。

項目 ハイブリッド参加型バーチャル株主総会 ハイブリッド出席型バーチャル株主総会
概要
  • WEBサイトなどで配信される中継動画の視聴により参加
  • 当日の決議に参加することはできない
  • インターネット等の手段を用いて株主総会に出席
  • 対面で総会に参加している株主とともに審議に参加し、決議にも加わる
メリット
  • 遠方の株主も株主総会を傍聴できる
  • 株主総会の透明性が向上する
  • 情報開示が充実する
  • 遠方の株主も株主総会に参加できる
  • 開催場所にいなくても、質疑応答を踏まえた議決権の行使ができる
  • 議決権行使の活性化と株主総会の透明性の向上を図れる
デメリット
  • 企業側のIT環境の整備が必要
  • 株主側にも一定のITスキルが求められる
  • 肖像権について事前確認が必要
  • 企業と株主の双方に、一定水準のITスキルが必要
  • 質問希望者が増加することで、質疑応答に時間を要する可能性がある

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会は株主総会を視聴するにとどまるため、決議には参加できません。そのため議決権行使の意思がある株主は、書面や電磁的方法による事前の議決権行使や、代理人による議決権行使が必要です。

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会 は、質疑応答や決議にも参加できます。そのため、より幅広い株主の参加が期待されるでしょう。ただし円滑に運用するには、企業と株主双方のITスキルとWEB環境の整備が必要です。また運用の歴史が浅いため、思わぬトラブルが発生する可能性があることは押さえておきましょう。

株主総会まとめ

株主総会とは、会社の重要事項を決める機関です。一定の条件をクリアした株主は、株主総会に参加する権利を持ちます。株主総会に参加すれば投資する会社の経営に参加できたり、企業や業界の情報を収集できたりするため、ぜひ積極的に出席を検討したいところです。

株主総会には、対面型とインターネットを介したバーチャル型があります。IT技術の発展や新型コロナウイルスの発生に伴い、近年ではバーチャル株主総会を採用する企業も増えています。それぞれの概要やメリット・デメリットを確認し、参加しやすい方法での出席を検討してはいかがでしょうか。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
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