買掛金とは~仕訳、回転率、売掛金や未払金との違いをわかりやすく解説~
更新日:2024年04月16日

買掛金は、掛け取引で使われる基本的な勘定科目の1つです。「掛け」とは、商品・サービスの提供を受けた際に、料金を後で支払う取引を指します。ビジネスでよく使用される取引形態ですが「買掛金」の仕訳にはさまざまなケースがあるため、対応に迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。本記事では、買掛金の仕訳方法の例、買掛金の概要と、仕訳の際に間違いやすい勘定科目について解説します。
目次
買掛金とは
買掛金とは、掛け取引(商品・サービスの提供を受けた側が、後日その代金を支払うことを約束する取引)に用いられる勘定科目です。
買掛金の定義には、以下の2つがあります。
- 支払いの義務があること
- 流動負債であること
以下でそれぞれについて解説します。
買掛金は支払いの義務である
掛け取引によって商品・サービスの購入や原材料の仕入れなどをした際に、後から代金を支払う義務があります。買掛金は、このような一定期間に発生する後払いの会計をまとめて処理する際に便利な勘定科目です。ただし、前提として、当事者間で支払条件が取り決められており、提示された支払期限までに滞りなく精算を済ませる必要があります。
買掛金は流動負債である
買掛金は、貸借対照表の「負債の部」として扱われます。負債には「流動負債」「固定負債」の2つがありますが、買掛金は流動負債にあたります。
流動負債に分類される条件の一つとして、「1年以内に精算される取引」があります。買掛金の多くは、数か月のうちに支払い期限が設けられているため、固定負債ではなく流動負債にあたります。
ただし、支払い期限が1年を越える取引でも、買掛金は企業の営業取引における循環過程にあるものとして「正常営業循環基準」が適用されます。正常営業循環基準では、支払い期限にかかわらず、資本として回収されるまでの循環期間内にある負債が流動負債とされます。
参考)貸借対照表とは
買掛金の基本的な仕訳例
ここでは、買掛金の基本的な仕訳方法を解説します。現金・預金・クレジットカードの支払い方法別に見てみましょう。
掛け(後払い)で仕入れたときの仕訳
一般的な取引では、商品の受け取り時点を仕入れ時期として、支払いの義務はこの時点で発生します。ただし、掛け取引では実際の支払いは後日となるため、買掛金は負債として扱われます。たとえば、20,000円の商品を掛けで仕入れたときの処理の仕方は、以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 20,000円 | 買掛金 | 20,000円 |
仕入れは費用となるため借方に記載します。また、負債となる買掛金は貸方に記載します。
参考)負債とは
後日現金で支払ったときの仕訳
掛け取引で20,000円の商品を仕入れて、後日現金で支払ったときの処理に関する正しい仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 20,000円 | 当座預金 | 20,000円 |
現金での支払いと同じく、仕入時に生じていた負債を支払い、買掛金が消失します。また、当座預金からの支払いを行ったため、貸方に20,000円を記載します。現金払いのときと資産の出所が異なるだけで、基本的な考え方は同じです。
クレジットカードで支払ったときの仕訳
掛け取引で仕入れた商品の代金をクレジットカードで支払うときは、現金や預金での支払いとは仕訳方法が異なります。クレジットカードでの支払いは、買掛金への支払いではなく「未払金」として処理する必要があります。なぜなら、商品の代金はクレジットカード会社によって立て替えられているため、取引の相手もクレジットカード会社とみなされるためです。取引の相手がクレジットカード会社の場合、通常の営業取引以外で発生した負債として扱われるため、買掛金ではなく未払金として仕訳します。たとえば、20,000円の商品を掛けで仕入れて、後日クレジットカードで支払ったときの処理は、以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 20,000円 | 未払金 | 20,000円 |
また、後日クレジットカード会社から口座引き落としをされたときは、次のように処理をします。
借方 | 貸方 | ||
未払金 | 20,000円 | 普通預金 | 20,000円 |
クレジットカード会社から口座引き落としがされると、未払金の20,000円が精算されます。手数料がかかる場合には、その都度貸方表に記載します。
参考)クレジットカードの仕訳
買掛金のイレギュラーな仕訳処理の事例
買掛金の支払いにおいて、イレギュラーな取引が発生することも考えられます。たとえば、以下のような場合が該当します。
- 割引商品や返品する商品があった
- 手形を発行した
- 売掛金と相殺した
ここからは、それぞれのケースにおける処理の方法を解説します。
割引や返品するものがあったときの仕訳
商品を検品する際、汚れているものや破損しているものが混ざっていることがあります。それらを返品する場合、納品の数量が減るため、仕入を減額する必要があります。また、はじめから数が足りていないときや、値引き商品があった際も同様です。このようなケースでの会計処理には、大きく2つのパターンがあります。
- 買掛金と仕入を相殺させる
- 買掛金から返品分を差し引く
たとえば、3,500円分の返品があったときの仕訳方法は、以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 3,500円 | 仕入 | 3,500円 |
買掛金から返品分を差し引く際は、仕入として仕訳して、その後減額処理を追って記載します。
約束手形による仕訳
支払いをするときに、約束手形を使うことがあります。このとき、負債として扱うものは買掛金ではなく「手形」となります。たとえば、掛けで仕入れた20,000円の商品を手形で支払うときの仕訳方法は、以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 20,000円 | 支払手形 | 20,000円 |
現金と手形を併用することも可能です。その際は、それぞれの金額を貸方表に記載します。
参考)約束手形とは
取引先と双方に売掛金と買掛金があるときの仕訳
取引先と自社の双方に売掛金及び買掛金の処理があるときは、双方の了承を得た上で相殺処理をすることが可能です。たとえば、20,000円分を相殺させるときの処理は、以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 20,000円 | 売掛金 | 20,000円 |
売掛金と買掛金の残高を確認して、相殺分を減額処理します。
買掛金と間違えやすい勘定科目
買掛金とよく間違えやすい勘定科目には、以下の3つがあります。
- 売掛金
- 未払金
- 未払費用
以下では、それぞれについて詳しく解説します。
売掛金|代金を受け取る権利
売掛金は、買掛金と同じく掛け取引で使われる勘定科目です。
買掛金は、商品・サービスの提供を受ける際に使われる勘定科目であるのに対して、売掛金は、商品・サービスの販売時に使われる勘定科目です。
前述の通り、買掛金は支払う義務があり、流動負債に分類されます。一方の売掛金は、商品・サービスを掛け取引で販売する際に、「代金を受け取る権利があるもの」として、相手勘定科目に使用します。なお、売掛金も流動資産に分類されます。
つまり、売掛金と買掛金は、1つの取引において相対関係にあります。ある掛け取引において、一方は買掛金として処理をして、その相手方は同じ取引を売掛金として処理をするということです。
参考)売掛金とは
未払金|通常の営業活動以外で発生する未払い金
未払金も、買掛金と間違えやすい勘定科目です。これらの違いは、主に「通常の営業活動において発生する負債かどうか」がポイントになります。
買掛金は、営業取引に使用する商品や材料の仕入れに関する掛け取引で使用します。これに対して未払金は、企業の主となる営業取引以外で発生した負債の仕訳に使用します。
営業取引以外で発生する負債には、以下が挙げられます。
▼未払金に該当するもの
- 固定資産
- 有価証券
- 宣伝費
- 外注費
- 交際費
また、未払金は、「既に役務の提供を受けている」「金額が確定している」といった2点に当てはまる場合に該当します。支払期限が1年以上先の未払金に関しては「長期未払金」として処理します。
参考)未払金とは
参考)交際費とは
未払費用|既に役務提供を受けていて金額が未確定のもの
買掛金や未払金と間違えやすい勘定科目に「未払費用」というものがあります。
通常の営業取引以外で発生した負債という点では未払金と共通しますが、未払金と異なる点として、以下の2点があります。
- 継続して役務を提供されているものに対する負債であること
- 債務の金額が未確定であることs
未払金や買掛金では、事前に金額が確定していることが条件です。一方、未払費用は金額が未確定となっており、継続的に支払いが発生する費用を指します。
具体的には、以下が挙げられます。
▼未払費用に該当するもの
- 給与
- 家賃
- 光熱費
- リース代
- 利息
- 各種保険料
- 通信費
たとえば、電気代は、継続して提供される電力に対して支払うものであり、使用量に応じてその金額が決定されます。
つまり、役務となる電力は支払いより先に提供されますが、一定期間で区切って使用量を測るまで金額は未確定の状態です。使用量が確定した段階で、費用の請求が生じます。このような債務を未払金として扱います。
買掛金の回転期間と回転率からわかること
買掛金は負債として扱われます。そのため、支払いまでの回転期間や回転率をみることで、経営の安定性を推察できるようになります。
回転期間や回転率は、いずれも支払いまでの平均期間を割り出すものです。
買掛金の回転期間と回転率は、それぞれ以下の計算式で求められます。
▼買掛金の回転期間(日数)
買掛残高÷仕入金額×365(日)
▼買掛金の回転率(%)
仕入金額÷買掛残高×100
一定期間を通して、買掛金の回転期間と回転率を比較することで、キャッシュフローの問題点を把握できるようになります。
たとえば、回転期間が長くなっているのであれば、債務状況が芳しくないということが考えられます。資金を調達するために時間がかかっている可能性もあります。
また、買掛金回転率の目安は1,200%以上とされており、この数値が高い場合には、効率的な支払いができていると判断できます。数値が大幅に低い場合には、支払いの遅延や支払条件の悪化が起きている可能性もあります。
買掛元帳の活用
買掛元帳は、買掛金を管理するための補助簿です。
取引先ごとに買掛金の残高を確認できるようになっており、これを使うことで支払いの漏れや忘れを防げるようになります。会計ソフトの種類によっては、仕入れを記載すると自動で買掛元帳に転記されるものもあります。買掛元帳をうまく活用して、買掛金を適切に管理しましょう。
買掛金まとめ
買掛金は、掛け取引で商品・サービスを仕入れるときに使われる勘定科目です。売掛金や未払金、未払費用などと混同しやすい勘定科目のため、適切な仕訳方法を理解しておくことが重要です。また、買掛金は流動負債として扱われるため、回転期間や回転率をみることで企業の債務状況を把握できるようになります。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
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