交際費とは~仕訳、損金算入の範囲、節税方法について解説~
2023.01.30

経費処理において、費用を計上する際に交際費をどこまで計上して良いのかわからないという方もいるでしょう。そこで今回は、経費処理上での交際費の定義や、交際費として認定される項目・除外される項目を、交際費の仕訳例や節税する方法とともに解説します。
交際費の仕訳の事例
交際費の仕訳は具体的にどのようにすればよいのでしょうか。ここからは、交際費の仕訳事例を2つ紹介します。
①取引先を飲食店で接待し、接待費100,000円を現金で支払った。ただし、一人当たりの飲食費は5,000円を超えている。
借方 | 貸方 | ||
交際費 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 |
②お中元の商品50,000円を現金で購入して得意先に渡した。
借方 | 貸方 | ||
交際費 | 40,000円 | 現金 | 50,000円 |
交際費として計上する際のポイント
交際費は該当する経費であれば必ずしも交際費として計上するわけではなく、計上するためには複数の条件を満たしていなければなりません。そこでここからは、交際費として計上する際のポイントを2点ご紹介します。交際費として計上する際のポイントは以下の通りです。
- 領収書にある記載事項の確認
- 税込経理であるか税抜経理であるかの確認
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
領収書にある記載事項の確認
ひとつ目のポイントは、領収書にある記載事項の確認です。交際費のうち飲食接待費は領収書に不備があると計上が認められないため、必ず確認しなければなりません。接待飲食費として計上するためには、以下の項目が記載されている書類の保存が必要です。
- 飲食接待費が発生した年月日
- 飲食接待費を支払った際の相手(得意先または取引先)の名称
- 参加人数
- 金額
- 店名及び住所
- その他飲食接待費であることが証明できる事項
上記の項目が記載されていない領収書は、実際に接待交際費に該当する経費であっても交際費として計上できません。領収書を受け取る際は、必ず必要項目が記載されているかを確認してください。
税込経理であるか税抜経理であるかの確認
ふたつ目のポイントは、税込経理であるか税抜経理であるかの確認です。なぜ確認が必要なのかというと、税込経理か税抜経理かによって、交際費と会議費のどちらであるかを判断する基準を超える可能性があるためです。
交際費か会議費かを判断する際には、5,000円を基準として考えます。このとき、税込経理では5,000円以内の金額でも、税抜経理であれば税金を合算すると5,000円を超えることがあります。そのため、事前に税込経理であるか税抜経理であるかの確認をしておかなければなりません。税込経理であっても税抜経理であっても、5,000円以内であれば会議費として計上します。
このように、会議にかかった費用を確認する際は、会議費か交際費かを判断するために、税込経理であるか税抜経理であるかを必ず確認しなければなりません。
交際費の経理処理上の意味
経費処理における交際費とは、会社の経営のために必要な取引先との付き合いや、交渉などのために支払われる費用のことを指します。取引先との付き合いや交渉にかかる経費は、接待費として捉えられることがよくあります。しかし正確には、取引先との付き合いや交渉のために支払われる、接待費以外の経費のことを交際費といいます。交際費と接待費の区別がつきにくい経費に関しては、多くの場合「接待交際費」として計上します。ただし、区別がつきにくいからといって接待に関する経費全てを接待交際費として計上すると、税金の負担が大きくなるなどの注意点があります。本記事で交際費として認定される範囲と認定されない項目を正確に理解しましょう。
交際費として認定される範囲
法人税法における交際費の範囲は、取引先との接待に関する飲食費などです。ただし、得意先や取引先との飲食費であっても、交際費として計上するためには事業に関連する飲食費でなければなりません。また、飲食費だけではなく、業務に有益な情報を得るための間接的な接待も交際費として計上します。ほかにも、現在は取引がないものの、将来的に取引する可能性がある相手との飲食費も交際費にあたります。
得意先との食事会
前述の通り、得意先との食事会のうち業務に関連する支出であれば、交際費として計上します。この場合、飲食費だけではなくタクシーなどでの送迎費も合わせて交際費となります。たとえば、「得意先との接待のために焼肉屋で6万円と、送迎目的のタクシー代1万円を支払った」場合は、焼肉屋での飲食費とタクシー代どちらも交際費として計上します
交際費から主な除外項目
交際費の対象外になる主な項目は以下の通りです。
- 寄附金
- 売上割戻し
- 得意先への物品交付代
- 販売奨励金など
- 情報提供料
- 社員旅行費用など
それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
参考:国税庁「第1款 交際費等の範囲」
寄附金
相手が欲しいと望むものを無償で提供したり、お金・物品・資産などの経済的な利益となるものを受け取ったりすることを「寄附」と呼びます。また、事業に関係のない相手にお金や物品を渡すことを「寄附金」と呼びます。これらの寄附金は交際費ではなく寄附金として計上するため、交際費には含まれません。
売上割戻し
売上割戻とは、売り上げた商品やサービスの量に応じ、事前に定めておいた割合の金額の一部を購入者に戻す行為です。例えば、「一足500円の靴下を3足まとめて購入した場合、本来であれば1,500円になるところが1,200円で購入できた」というようなケースのことを指します。売上割戻のうち、相手が「人」だった場合は交際費として計上します。一方で、売上割戻の相手が「会社」あるいは「店舗」だった場合は、交際費として計上できません。このように、売上割戻は対象となる相手によって交際費か否かが異なります。
得意先への物品交付代
物品交付代とは、旅行・観劇への招待や、景品または景品引換券を渡すためにかかった経費を指します。得意先への物品交付代は、おおむね3,000円以下の物品であり、売上割戻しの費用(※)と同じ算定基準である場合において、交際費等に該当しないものとすることができます。
物品交付代が交際費に含まれない理由は、事業に関連のない支出とみなされるためです。前述の通り、交際費は事業に関連のある支出しか計上できません。物品交付代を交際費として計上しないように注意してください。
※得意先の事業者に対し、売上高・売掛金の回収高に比例または売上高の一定額ごとに金銭で支出する費用
販売奨励金など
販売奨励金とは、販売業者に自社の製品をより多く販売してもらうために渡すお金を指します。販売奨励金は売上から併殺されることもありますが、経費から支払った場合でも一般的には交際費に該当しません。(一定の場合には交際費に該当します)
情報提供料
情報提供料とは、情報を提供してもらうために支払った費用、または情報を提供して受け取った費用を指します。情報提供料のうち、顧客の紹介を受けるために支払った経費は交際費として計上されますが、契約に基づき、その情報に見合った金額である場合には交際費として計上できません。
社員旅行費用など
社員旅行費用などは交際費に該当しません。なぜなら、社員旅行は事業に関係のない経費だからです。社員旅行にかかった費用は「福利厚生費」として計上しましょう。なお、社員旅行の規模が大きすぎると、税務署側から社員への給与ではないかという指摘を受ける可能性があります。そのため、社員旅行費は、社会通念上合理的といえる金額の範囲内に抑えるようにしましょう。
交際費と混同されやすい費用
交際費は区別がつきにくい経費であることから、交際費と混同してしまうことが少なくありません。そのため、交際費と混同しやすい費用を把握して、間違えないように注意が必要です。交際費と混同しやすい費用は、主に以下の7種があります。
- 会議にかかる費用
- 福利厚生費
- メディアへの取材費
- 社員研修費
- 広告宣伝費
- 接待飲食費用
- 支払い手数料
- 役員賞与
ここからは、それぞれの費用について詳しく解説します。
参考:国税庁「第1款 交際費等の範囲」
会議にかかる費用
交際費として、もっとも混同されやすい費用が会議にかかる費用です。この費用は会議費と呼ばれます。社内会議や株主総会だけではなく、取引先との会議にかかる費用も会議費に含まれます。会議中は、お茶やコーヒー、お弁当などを提供することが多く、これらの費用は会議費として計上されます。ただし、会議は必ずしも会議室で行われるとは限らず、飲食店でお酒を呑みながら行うこともあります。この際、ひとりあたりの金額が5,000円を超えた場合に限り、交際費として計上されます。このように、基本的に会議費は交際費に該当しませんが、例外があるため注意が必要です。
福利厚生費
福利厚生費も交際費と混同されやすい費用のひとつです。福利厚生費とは、社員のモチベーションの維持及び向上のために、給与以外のサービスを提供する際にかかる費用を指します。たとえば、社員旅行や新年会および忘年会、慶事や弔辞の見舞金、健康診断にかかる費用などが福利厚生費にあたります。福利厚生費は社員のために使う経費であって、事業のために使う経費ではないため、交際費には含まれません。ただし、社内の特定の者(役員など)だけが参加する懇親会、慰安旅行などの経費は、税務上では交際費として扱われます。
参考:国税庁「第1款 交際費等の範囲」
メディアへの取材費
新聞や雑誌などのメディアへの取材費や、書籍の出版のための取材費は交際費と混同されがちな費用ですが、交際費には含まれません。取材費とは、具体的には喫茶店で取材した際の飲食費、展示会の紹介のために入った資料館の入館料などを指します。ただし、取材費があまりにも高額すぎる場合は接待交際費として計上することもあるため、金額には注意が必要です。
社員研修費
社員研修費とは、社員のスキルアップまたは資格取得を支援するために行われる、研修にかかる費用を指します。新入社員への研修や業務に関する資格取得のために必要な交通費、新商品開発のための勉強会のための費用などは社員研修費として計上します。なお、社員研修費には上限がありません。
広告・宣伝費
広告・宣伝費とは、雑誌やWebサイトなどへの広告の掲載や、社名入りパンフレットまたはカレンダーなどの作成にかかる費用を指します。交際費は特定の取引先や得意先を相手に接待した場合のことを指しますが、広告・宣伝費は不特定多数の人を対象としているため、交際費に該当しません
接待飲食費用
交際費との区別が難しい費用として挙げられるものが接待飲食費用です。交際費と接待飲食費用の区別としては、接待の相手が誰だったのかが重要です。たとえば、得意先や取引先、事業に関連する人を相手に接待した場合は交際費として計上します。従業員が参加する社内飲食会であれば福利厚生費として計上し、そもそも全く会社と関係のない人との飲食であればその人に対する給与となります。
このように、一見区別が難しい交際費と接待飲食費用ですが、接待する人が事業に関連する人か否かで区別できます。
支払い手数料
支払い手数料とは、金融機関への振り込みにかかる手数料や、弁護士や税理士への謝礼として支払った費用を指します。また、紹介料の支払いが契約書等の書面で事前に決められていたり、紹介料として条件を満たしている場合に支払った費用も、支払い手数料として計上します。
役員賞与
会社の経費に計上するのは、あくまでも事業に関する費用のみです。一方で、接待交際費には事業と無関係な、例えば社長の趣味のゴルフ等の支出が計上されてしまう場合があります。そういった個人的な支出は接待交際費には該当せず、税務調査で役員賞与に認定されることがあります。役員賞与の扱いになった場合には、以下のような税負担が発生します。正しく処理しましょう。
- 法人税:役員報酬を経費に計上するには、定期同額給与でなければならず、追加で発生した役員賞与は損金不算入になり、法人税の負担が増える。
- 所得税:役員に所得税が発生する。会社は、追加で発生した所得税の源泉徴収に漏れがあったことになってしまう。
- 消費税:役員が個人的に消費した分は、仕入税額控除が適用されないため、消費税が発生する。
交際費の限度額|企業規模別
法人税を計算するときに、交際費は損金算入できますが、控除できる額には上限が設けられています。ただし、交際費の限度額は企業規模ごとに異なるため、自社の企業規模の限度額を把握しておかなければなりません。ここからは、企業規模別の交際費の限度額をご紹介します。
参考:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
大企業
資本金が1億円を超える大企業の交際費の限度額は、接待飲食費の50%までです。ただし、期末の資本金の額、または出資金の額が100億円を超えた場合は交際費を損金として算入できません。
中小企業
この項では、資本金1億円以下の企業は中小企業と定義します。中小企業の交際費の限度額は、接待飲食費の50%まで、または年間800万円以下です。限度額は自由に選択できるため、接待飲食費の合計額から、より多く損金算入できる方を選択するとよいでしょう。
例えば、年間の接待飲食費が1,600万円未満だった場合、50%だと800万円未満となります。そのため「接待飲食費50%まで」よりも「年間800万円まで」の限度を選択した方が多くの額を損金算入できます。一方、年間の接待飲食費が1,600万円を超えた場合は「接待飲食費の50%まで」を選択した方がよいといえます。このように、中小企業では2種類から限度額を選択できるため、年間の接待飲食費から算出して最適な方を選択しましょう。
個人事業主
交際費に限度額が設けられている法人に対し、個人事業主やフリーランスは交際費の限度額はありません。そのため、交際費の全額を損金算入できますが、事業形態などから最適な金額を把握して、その金額以内に抑えるように意識する必要があります。
交際費を節税する方法
先ほどご紹介した通り、交際費は企業規模別に限度額がありますが、交際費とその他の勘定科目に適正に計上できれば節税効果があります。では、交際費を節税するためにはどのような方法があるのでしょうか。
交際費を節税する方法として最も簡単、かつ有効な方法が交際費をほかの経費として計上する方法です。交際費に限らず経費計上するためにはそれぞれ条件があるため、その条件に当てはめることで本来交際費として計上する経費を他の経費として計上できます。そこでここからは、交際費を他の経費に計上する方法を2点ご紹介します。今回ご紹介するものは、以下の2通りの方法です。
- 研修費として計上する
- 広告宣伝費として計上する
それぞれの節税方法について詳しく見ていきましょう。
研修費として計上する
ひとつ目の節税方法は、取引先との旅行を研修費として計上する方法です。事業に関する取引先や得意先との研修は、交際費ではなく研修費として経費に算入できます。研修費として計上すれば、当然交際費としての計上額が少なくなります。ただし、取引先や得意先との研修にかかった費用を研修費として計上するためには、研修の実態を証明できる書類を保管する必要があります。議事録やプレゼンテーション資料などは研修の実態を証明する書類となるため、必ず保管しておきましょう。
広告宣伝費として計上する
得意先に贈る社名入りの景品などは、広告宣伝費として計上することで交際費の節税が可能です。先ほどご紹介した通り、得意先や取引先に贈る景品などは相手が特定されているため、通常は交際費として計上します。しかし、敢えて不特定多数の人に渡す景品に該当する社名入りの物にすることで、相手が得意先であっても、交際費ではなく広告宣伝費として計上できます。交際費と広告宣伝費は、景品を渡す対象となる相手が不特定多数か否かという点で区別します。つまり、得意先に渡す景品を、社名入りの景品など不特定多数の人に渡す物にすることで広告宣伝費として計上でき、結果的に交際費の節税につながります。
まとめ
取引先や得意先など、事業に関する相手との接待や贈答品を贈る際にかかる費用は、法人税法では「交際費」として損金算入できます。しかし、交際費として計上するためには複雑な条件があることや、他の経費との区別がつきにくいことなどから、計上方法が難しいと感じる方も少なくありません。今回ご紹介した混同しがちな費用や交際費として計上できる項目などを把握し、正確に経費計上しましょう。
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