交際費とは?経費にできる範囲や会議費との違いなど解説

更新日:2024年11月18日

交際費とは

交際費とは、取引先や顧客との関係を良好に維持・発展させるために支出される費用です。事業の円滑な運営には欠かせないものですが、経費として計上できる範囲や他の費用との違いなど、理解しておくべきポイントがいくつかあります。本記事では、交際費の基本的な知識から経費計上における注意点やポイント、仕訳例までわかりやすく解説します。

目次

「交際費」とは

交際費とは、企業が取引先との良好な関係を築くために支出する費用です。具体的には、接待・飲食・贈答品などが該当し、ビジネス上のコミュニケーションを円滑にする重要な役割を果たします。

ただし、これらすべての支出が交際費とされるわけではありません。一人あたり10,000円未満の飲食費や、福利厚生費広告宣伝費寄付金会議費などは交際費から除外されます。

交際費は、税法上必ずしも事業に寄与する費用として評価されるわけではなく、原則として損金に算入できないのが基本的な考え方です。ただし、法人税の計算においては、一定の条件を満たす場合に交際費を損金として認められます。

一定の条件には、上限金額が設定されているほか、法人の規模によっては費用として認められないこともあるため、注意が必要です。交際費を経費に計上する際は、慎重な対応が求められます。

参考)国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

交際費の範囲とは?他の費用との違い

ビジネス活動を円滑に進めるためには、取引先や顧客との良好な関係を築くことが不可欠です。そのため、多くの企業は「交際費」を活用して、関係者とのつながりを深めています。

では、交際費とは具体的にどのような範囲を指すのでしょうか。また、他の勘定科目とどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、交際費の範囲や「接待交際費」「会議費」「福利厚生費」との違いについて詳しく見ていきます。

交際費の範囲

交際費の範囲には、おもに以下の支出が該当します。

取引先へのお中元やお歳暮・香典・ご祝儀など、相手との関係強化を目的とした贈答品の費用も交際費に該当します。

得意先を招待した懇親会や会食にかかる飲食代・会場費・プレゼント代・帰りのタクシー代も交際費です。

交渉を円滑に進めるためにクライアントを旅行やゴルフ、観劇などへ招待した場合の費用も交際費の対象です。移動手段としての飛行機代やタクシー代も旅費交通費ではなく、交際費として処理します。

得意先や株主など、事業に関係する相手との会食費用の処理は、接待費です。ただし、1人あたりの飲食費が10,000円以下の場合は「会議費」として処理します。

交際費と接待交際費の違い

交際費と接待交際費は、事業に関係する人や企業をもてなしたり、金品をふるまったりする際の費用を指します。両者に大きな違いはなく、同様の費用に対して用いられる勘定科目です。

接待交際費は一般的な呼称であり、税法上は「交際費等」として扱われます。法人税の計算において、これらの費用は原則として損金不算入となり、課税所得から差し引くことはできません。

ただし、一定の措置の範囲内であれば、経費として計上することが認められています。そのため、適切な経理処理をするために、税法上の交際費等の内容について正しく理解することが重要です。

交際費と会議費の違い

会社の業務を進めるうえで、取引先との会食や会議は頻繁に発生します。そうした場合に、「交際費」と「会議費」に正しく区分することは、経理処理上において重要です。ポイントは、その費用が「通常の業務の延長線上」にあるのか、それとも「接待を目的」としているのかという点です。

例えば、取引先との打ち合わせのために飲食を伴う場合について考えてみましょう。この場合、打ち合わせが主目的であり、飲食はその延長線上にあると判断できれば「会議費」として計上可能です。一方、新規顧客獲得のための接待や、取引先との関係強化を目的とした飲食は、「交際費」に該当します。

ただし、1人につき10,000円以下の接待飲食費であっても会議の内容や参加者など、しかるべき書類や情報が保管されている場合は、「会議費」として計上します。

また、10,000円以下の飲食代を会議費として損金算入するには、日付や参加者情報、費用額などを記載した書類の保存が必要です。

交際費と福利厚生費の違い

交際費と福利厚生費は、企業が負担する経費であるものの、それぞれの目的や対象に明確な違いがあります。福利厚生費は、給与以外の形で社員のために使われる費用であり、全従業員を対象に支出される点が特徴です。

両者の違いの具体例として、プロジェクトの完了後に取引先の担当者をねぎらうために開かれる打ち上げ費用は、「接待交際費」として計上されます。それに対して、自社の従業員を慰労するために開催する忘年会の費用は、「福利厚生費」としての分類です。

福利厚生費と認められるためには、すべての従業員が、参加可能であることが条件とされます。新年会や忘年会など、全社員に通知され、ほぼ全員が出席するイベントにかかる費用は、このカテゴリーに含まれるでしょう。ただし、特定の役員や従業員のみが参加する会食は、一般的に接待交際費として扱われます。

交際費と混同しやすいその他の費用

交際費は、企業が取引先との関係を円滑にするために支出する費用ですが、他の費用と混同されやすい特徴があります。

特に、取材費・研修費・広告宣伝費・役員賞与は、状況によっては交際費との区別が難しい場合もあります。これらの費用は、それぞれ独自の目的と特徴を持っていますが、適切に区分し処理することが重要です。

以下では、交際費と混同しやすいこれらの費用について、解説します。

取材費

取材費は、新聞や雑誌の取材活動や書籍の出版に関連して発生する経費です。交際費と混同されがちですが、実際には別の経費として分類されます。

取材費には、取材活動に伴うさまざまな費用が含まれます。取材先への移動にかかる交通費や取材相手との通信に必要な電話料金、資料の郵送料、取材に使う機材の購入費などです。

さらに、関連書籍や資料の購入費用、インタビューのための喫茶店での飲食代や展示会の入館料、カフェ紹介のための飲食費用も取材費として認められます。

これらの費用は通常「取材費」として処理されますが、状況によっては他の勘定科目に振り分けることも可能です。取材の交通費を「旅費交通費」とすることや、取材時の食事を「接待交際費」としても処理できます。

ただし、取材費が高額になる場合には注意が必要です。このような場合、接待交際費として計上しなければならないため、金額と使途を慎重に確認することが重要です。

研修費

研修費は、従業員が業務に必要な知識やスキルを向上させるため、研修などにかかる費用です。研修費は、取引先をもてなす目的で使用される交際費とは異なり、おもに社内における能力向上を支援するために支出されます。

企業は、新入社員のマナー研修や商品の開発に必要な勉強会、業務に不可欠な資格取得のための通学費などを研修費として計上することが一般的です。

研修費の具体例としては、業務に関連するセミナー参加費用、業務上必要な資格の取得費用、将来を見据えた英会話レッスンなどが含まれます。ただし、業務と無関係な資格やスキルを習得する費用は、研修費として認められないケースもあるため注意が必要です。

研修費と交際費を混同しやすい理由の一つは、どちらも企業活動に関連する費用であることにあります。接待交際費には税務上の上限があるものの、研修費には制約がないため適切に仕訳することで節税の効果を期待できるでしょう。

例えば、クライアントとの旅行で社内向けの研修要素が含まれている場合は、「社員の部分は研修費」「クライアントの部分は接待交際費」として処理できます。その際、研修が実施されたことを証明するための資料や議事録の保存が必要です。

広告宣伝費

広告宣伝費とは、不特定多数の人に対して商品やサービスの販売を促進するための広告や宣伝にかかる費用です。雑誌やWebサイトへの広告掲載、社名入りのパンフレットやカレンダーの作成などが挙げられます。

広告宣伝費は、交際費とは異なり、不特定多数の人を対象とした費用である点が特徴です。特定の顧客や取引先など、限られた範囲の人物に対する宣伝活動は、交際費に該当します。

例えば、セミナーの開催費用は、募集段階から参加者を限定している場合は、たとえ宣伝目的であっても交際費に該当するでしょう。しかし、広く一般から参加者を募るセミナーであれば、広告宣伝費として計上可能です。

このように、広告宣伝費と交際費は、その対象となる範囲によって区別されます。

役員賞与

役員賞与は、企業が役員へ毎月の給与とは別に支給する一時金です。一般社員のボーナスに相当し、会社の業績や役員の職務内容に応じて決定されます。

会社法上では役員報酬の一部として扱われますが、税務上は区別が必要です。役員報酬が一定の要件を満たせば損金算入できるのに対し、役員賞与は原則として損金算入できません。

交際費との関係で注意すべき点は、社長の個人的な飲食費を会社の交際費として処理した場合、役員賞与と認定される可能性があることです。その場合、法人税の計算において全額損金不算入となるだけでなく、源泉徴収漏れや消費税の追徴が発生する恐れもあるため、適切な処理が求められます。

交際費を損金算入できるケース

交際費は原則として損金算入できませんが、特定の条件下では認められる特例があります。それは、次の3つです。

  • 社外飲食費が1人あたり10,000円以下のケース
  • 上記金額を除いた費用合計額の50%について、損金算入できるケース
  • 資本金1億円以下の中小法人のケース

ここでは、それぞれのケースについて解説します。

ケース1.社外飲食費が1人あたり10,000円以下

前述のとおり、社外飲食費が1人あたり10,000円以下の場合、一定の要件を満たせば、会議費として全額損金算入できます。

具体的には、1人あたり10,000円以下の社外飲食費であり、かつ必要な領収書などの証明となるものや情報が適切に保管されている場合です。この場合、勘定科目上は「交際費」ではなく「会議費」として計上し、税務申告書上も、特別な調整なく損金算入費用として処理します。

適用されるためには、以下の内容を記載し保存しておかなければなりません。

  • 飲食などが行われた年月日を記録する
  • 飲食に参加した取引先や仕入先など、事業に関係する人物や団体の氏名・名称とその関係を明記する
  • 飲食に参加した人数を記載する
  • 飲食にかかった費用の額、飲食店の名称と所在地を記録する(店舗がない場合は、領収書に記載された支払先の名前や住所を記載)
  • その他、飲食にかかった費用であることを証明するために必要な情報を記載する

税務調査ではこれらの記載事項がチェックされ、情報が不足していた場合、損金算入が認められないケースもあるため注意が必要です。

ケース2.「ケース1」を除いた費用の合計額の50%

交際費等の50%を損金算入できる特例があります。この規定は、1人あたり10,000円以下の社外飲食費を除いた費用の合計額の半分に適用されます。ただし、適切な書類や情報の保管が条件です。

この制度の適用を受けるには、帳簿に以下の事項を記載する必要があります。

  • 飲食の年月日
  • 参加者の氏名・会社名
  • 金額と店名
  • 飲食費であることを示す記載

一般的に、これらの費用は「交際費」または「接待交際費」という科目で計上し、税務申告書上で損金不算入部分を調整します。

なお、資本金の額等が100億円を超える法人は、この制度の対象にはなりません。また、資本金の額等が1億円以下の中小法人は、次のケース3で述べる交際費等の800万円までの損金算入と当該損金算入とのいずれかを選択できます。

ケース3.資本金1億円以下の中小法人

資本金1億円以下の中小法人(大企業のグループ子会社である場合を除く)は、年間800万円まで交際費を損金算入できる特例があります。

この特例では、以下の2つの選択肢から有利なほうを選ぶことが可能です。

  • 接待飲食費の50%(前節のケース2)
  • 800万円の定額

選択の基準は、接待飲食費の総額によって異なります。接待飲食費が1,600万円以下の場合は800万円の定額を選択するほうが有利となるでしょう。一方、1,600万円を超える場合は、接待飲食費の50%を選択することで、より多くの損金算入が可能です。

交際費の具体的な仕訳例

ここでは、接待交際費の具体的なケースを例に挙げながら、仕訳方法を解説します。

【取引先へのお中元を贈答した場合】
取引先へのお中元を現金で購入した場合の仕訳です。取引先へのお中元を現金4万円で購入した場合、仕訳は以下のようになります。

  • 借方:接待交際費 4万円
  • 貸方:現金 4万円

この仕訳は、会社の資産である現金が4万円減少し、その代わりに取引先への贈答という費用が発生したことを示しています。

【取引先を飲食店で接待した場合】
取引先を接待し、飲食代を支払った場合の仕訳について考えてみましょう。取引先を飲食店で接待し、飲食代が10万円だったとします。現金で支払った場合、仕訳は以下のとおりです。

  • 借方:接待交際費 10万円
  • 貸方:現金 10万円

この仕訳は、会社の資産である現金が10万円減少し、その代わりに取引先の接待という費用が発生したことを示しています。仕訳をする際には、摘要欄に接待の内容を詳しく記載しておくと、後に内容を把握しやすくなります。

これらの仕訳例はあくまで基本的なものです。実際には、取引先との関係や贈答品の金額などに応じて、適切な勘定科目や金額を判断する必要があります。会計ソフトを利用している場合は、ソフトに仕訳項目が用意されていることも多いので、そちらを活用すると便利です。

交際費を経費計上するうえでのポイント

交際費を経費計上するうえでのポイントは、以下のとおりです。

  • 領収書を適切に保管する
  • 損金不算入額のルールを把握しておく
  • 消費税について理解しておく
  • 私的な接待を交際費として計上しない
  • 会議費や福利厚生費との違いを正しく理解する

これらのポイントを意識しながら、適切に交際費を経費計上するようにしましょう。

領収書を適切に保管する

交際費を経費として計上するためには、領収書の適切な保管が不可欠です。法人税法では、確定申告書の提出期限の翌日から7年間、繰越欠損金の控除を受ける場合には10年間の保存が義務付けられています。

接待の目的や参加者の情報を記録し、税務調査の時にすぐに提示できるよう準備しておきましょう。また、改正電子帳簿保存法により、電子的にやりとりした領収書は、電子データのまま保存しなければなりません。

損金不算入額のルールを把握しておく

交際費を経費として申告する際には、損金不算入に関するルールを理解しておくことが重要です。交際費は、損金算入できないことが原則になっていますが、特定の条件が整えば特例として認められます。

例えば、社外での飲食費が1人あたり10,000円未満である場合や、中小法人に対する損金算入の特例などが該当します。これらの規定を把握し適切に処理することで、経費計上を円滑にしましょう。

消費税について理解しておく

交際費を経費として扱う際には、消費税に関する知識が欠かせません。消費税には「標準税率10%」と「軽減税率8%」の2つの税率があります。

例えば、飲食店で取引先と食事をする場合、外食になるため消費税は10%です。一方、社内で食事や飲み物を提供する際は、軽減税率の8%が適用されます。

このように、状況によって消費税率が異なるため、経費計上の際は十分に注意しましょう。

私的な接待を交際費として計上しない

交際費として認められるのは、あくまでも事業と関係のある支出です。家族や友人との食事など、個人的な飲食費を経費として計上することは認められません。

税務調査の際に、個人的な支出と事業に関係する支出が混同されていると判断された場合、交際費として認められない可能性があります。

交際費の経費計上には、明確な目的と根拠が必要です。事業に関係する相手との接待であることを証明するため、領収書には日付や金額などの基本情報に加え、接待の目的や参加者などを詳細に記録しておきましょう。

会議費や福利厚生費との違いを正しく理解する

交際費を正確に経費として計上するためには、会議費や福利厚生費との区別を理解することが重要です。特に、飲食代の目的や金額を具体的に確認することで、混同を避けられるでしょう。

例えば、社外の人との飲食で1人あたり10,000円以下の費用は会議費として扱い、10,000円を超える場合には交際費としての仕訳です。また、社内イベントに関連する費用は福利厚生費として処理できます。これらを明確に分けることで、適切な経費処理が可能となります。

交際費まとめ

交際費は、取引先との関係を維持・発展させるための費用であり、原則として損金算入は認められません。ただし、1人あたり1万円以下の社外飲食費など、一定の条件を満たせば損金算入が可能です。

また、会議費や福利厚生費との明確な区別も重要です。経費計上する際は、領収書を適切に保管し、消費税の扱いなど税務上のルールを理解しておく必要があります。

最後に、私的な接待と混同しないよう、目的や根拠を明確にしておくようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

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