約束手形とは?小切手・為替手形との違いや仕訳例についても解説

2024.01.19

約束手形

商品売買などの取引の際は、現金ではなく「手形」で決済されることがあります。手形には「約束手形」と「為替手形」の2種類がありますが、今回は、とくに使用頻度の高い約束手形について。小切手との違いや、受取手形と約束手形を使った仕訳を解説します。

目次

約束手形とは何か?

約束手形とは、手形の振出人(支払人)が、代金の受取人に対して、所定の期日に決められた金額の支払いを約束する証書のことです。手形は、一般的に「売掛金」や「買掛金」よりも支払期日を先延ばしにできます。そのため、手元の現金が少ない場合などでも、支払期日まで余裕を持ってお金の準備ができるという特徴があります。

参考)売掛金とは

参考)買掛金とは

為替手形と約束手形の違いは?

「手形」には、約束手形以外に為替手形があります。この2つの主な違いは、三者間の取引か、二者間の取引かといった点です。

為替手形とは、振出人が発行した内容に基づき、支払人が受取人に対して指定された日に所定の額を支払うための手形です。振出人は手形を発行する人、支払人は手形の内容について支払う義務のある人、受取人は手形の内容について受け取る権利のある人を指します。

基本的に為替手形が三者間の取引であるのに対し、約束手形は振出人と支払人が同じ二者間の取引です。また、為替手形は輸出入のように貿易に関する手続きで主に使われます。

手形と小切手の違いは?

手形と同様、お金の代わりに取引に使われる代表的な証書に「小切手」があります。この両者の大きな違いは「現金化できるタイミング」です。手形は、期日にならないと決済できないのに対し、小切手は受け取った時点から決済が可能です。そのため、小切手を振り出す際は、その時点で当座預金に当該金額以上のお金を預けておく必要があります。手形割引は例外です。

参考)手形割引とは

約束手形を振り出す際の手続き

振出人が約束手形を振り出す際の主な手続きは、以下のとおりです。

  1. 取引している金融機関で当座預金口座を開設する
  2. 金融機関から約束手形の用紙を受け取る
  3. 取引時に約束手形に必要事項を記載し、受取人に交付する
  4. 支払期日までに、必要な金額を当座預金口座に入金しておく

当座預金口座とは、約束手形に関する業務を金融機関に代行してもらうための口座です。当座預金口座を開設するには、金融機関と「当座勘定契約」を締結しなければなりません。

なお、金融機関から約束手形の用紙を受け取る際は、交付手数料がかかることが一般的です。金額は、金融機関によって異なります。

約束手形を受け取った際の手続き3つ

約束手形を受け取った際に取る手続きは、主に以下の3つです。

  • 金融機関に依頼して期日に代金を受け取る(手形取立)
  • 権利を第三者に譲渡する(裏書譲渡)
  • 期日前に金融機関に買い取ってもらう(手形割引)

各手続きの内容を説明します。

金融機関に依頼して期日に代金を受け取る(手形取立)

手形取立とは、受取人が自社と取引のある金融機関に約束手形を呈示して取立を依頼し、期日以降に金額を回収する方法です。

従来、取立を依頼された金融機関は、手形交換所で手形を交換して現金を回収し、受取人口座に振込していました。しかし、2022年11月より手形交換所は廃止され、手形類のイメージデータを金融機関間で送受信して交換・決済を完結する「電子交換所」に移行しています。

なお、手形は期日から3営業日以内の呈示が必要です。また、発行した金融機関以外に取立を依頼する場合は、期日前に依頼しなければなりません。

参考)一般社団法人全国銀行協会「手形交換制度」

権利を第三者に譲渡する(裏書譲渡)

裏書譲渡とは、受取人が第三者に手形(権利)を譲渡することで、現金を受け取る方法です。期日内で約束手形の裏側に日付・名前・住所を記載すれば(裏書)、譲渡できます。

裏書譲渡すれば、期日前でも約束手形を現金化できる点がメリットです。ただし、裏書した約束手形が不渡りになった場合、振出人に支払能力がなければ自分(自社)に支払いを請求される可能性があります。

参考)手形の裏書きとは

期日前に金融機関に買い取ってもらう(手形割引)

手形割引とは、期日前に約束手形を金融機関へ裏書譲渡し、買い取ってもらう方法です。ただし、事前に金融機関による振出人や手形を持ち込んだ人(会社)の審査があります。

裏書譲渡と同様に期日前に資金を受け取れる点が、手形割引を実施するメリットです。一方、現金化にあたって所定の割引料が引かれる点がデメリットとして挙げられます。

また、万が一買い取ってもらった約束手形が不渡りになった際に、手形割引をした側が買い戻さなければなりません。

約束手形のメリット(振出人)

振出人にとって手元に現金がなくても取引できる点が、約束手形のメリットです。振出人は、約束手形を振り出すことで手持ち資金からの持ち出しを先延ばしにできるため、すぐに現預金で支払う場合と比べて資金繰りがよくなります。

約束手形で取引できることを説明することで、一定の信用を対外的に示せる点もメリットです。約束手形を振り出すために必要な当座預金口座を開設するには、所定の審査を経なければなりません。

約束手形のデメリット(振出人・受取人)

「不渡り」が発生する可能性がある点が、振出人・受取人両方にとってのデメリットとして挙げられます。不渡りとは、当座預金の残高不足などの要因により、手形や小切手の決済ができない状況のことです。

不渡りは、その原因によって「0号不渡り」「1号不渡り」「2号不渡り」の3種類に分類されます。0号不渡りは形式上の不備によるもの、1号不渡りは残高不足によるもの、2号不渡りはそれ以外の理由によるものです。

振出人は、万が一1号不渡りを出した場合に信用力が大きく低下します。また、6か月経過しないうちに2度目の不渡りを出すと、借入や当座預金を使った銀行取引を2年間できません。

受取人も、取引相手から受け取った約束手形が不渡りになると現金化できなくなります。本来受け取るはずだった金額が手元に入らなくなることで、資金繰りが悪化してしまうでしょう。

約束手形を振り出した際の仕訳(支払手形)

「満期日に所定の金額を支払う義務」のことを「手形債務」といい、「支払手形」という勘定科目で表します。約束手形を振り出した場合、手形債務が発生し、貸借対照表の負債が増えると考えるため、貸方に支払手形勘定を記入します。
例)10,000円の商品を仕入れ、約束手形を振り出して支払った場合

手形を振り出したときの仕訳

借方 貸方
仕入 10,000円 支払手形 10,000円

約束手形を振り出した場合、手形債務が発生し負債が増えると考えるため、貸方に支払手形勘定を記入します。

手形が決済されたときの仕訳

借方 貸方
支払手形 10,000円 当座預金 10,000円

支払いが完了したことで負債がなくなるため、借方に支払手形勘定を記入します。そして、手形が決済されると口座から引き落とされるため、貸方に当座預金を記入します。

約束手形を受け取った際の仕訳(受取手形)

「満期日に所定の金額を受け取る権利」のことを「手形債権」といい、「受取手形」という勘定科目で表します。約束手形を受け取った場合、手形債権が発生し資産が増えると考えるため、借方に受取手形勘定を記入します。
例)10,000円の商品を販売し、約束手形を受け取った場合

約束手形を受け取ったときの仕訳

借方 貸方
受取手形 10,000円 売上 10,000円

約束手形を受け取った場合、手形債権が発生し資産が増えると考えるため、借方に受取手形勘定を記入します。そして、代金の受け取りが完了したことで資産がなくなるため、貸方に受取手形勘定を記入します。

手形を決済したときの仕訳

借方 貸方
当座預金 10,000円 受取手形 10,000円

代金の受け取りが完了したことで資産がなくなるため、貸方に受取手形勘定を記入します。そして、当座預金に入金されるため、借方に当座預金を記入します。

約束手形に関する注意点

約束手形を利用するにあたって、注意すべき点は主に以下のとおりです。

  • 必要的記載事項が定められている
  • 印紙税がかかる
  • 将来的に廃止される

ここから、各注意点について解説します。

必要的記載事項が定められている

約束手形には、「必要的記載事項」が法律で定められている点に注意しましょう。手形法第75条では、以下を必要的記載事項として定めています。

  • 約束手形を示す文字
  • 一定金額の単純な支払約束文句
  • 支払期日
  • 支払地
  • 受取人またはその指図人
  • 振出日
  • 振出地
  • 振出人の署名

必要的記載事項が記載されていなければ、手形としての効力が生じません。

印紙税がかかる

約束手形を振り出すにあたって、印紙税がかかる点にも注意が必要です。約束手形の作成者は、所定の金額の収入印紙を購入して手形用紙に貼り付けなければなりません。

貼付する収入印紙の金額は、約束手形に記載された額によって異なります。2023年4月1日時点における、印紙税額は以下のとおりです。

手形に記載された契約金額 税額
10万円未満 非課税
10万円以上100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 600円
300万円を超え500万円以下 1,000円
500万円を超え1,000万円以下 2,000円

たとえば、250万円の手形を振り出す場合、600円の収入印紙を購入して貼付します。

参考)国税庁「No.7103 約束手形又は為替手形」

将来的に廃止される

約束手形が、将来的に廃止される予定である点にも注意しましょう。日本政府・産業界・金融界は、2026年の約束手形廃止に向けた取り組みを実施しています。

約束手形は現金が手元に入るまでの期間が長い点や、期限前の現金化には割引料がかかる点で受注側企業の資金繰りに悪影響を及ぼしていることが、廃止予定となっている主な理由です。

現在支払いに約束手形を利用している場合、現金での支払いや電子記録債権(でんさい)による支払いへの移行を検討しなければなりません。電子記録債権とは、手形が抱える問題点を克服する新たな金銭債権のことです。

参考)中小企業庁「約束手形を振り出している発注者の皆様へ」

手形サイトの数え方(計算方法)

手形サイト(手形に関する支払期間)の数え方・計算方法は、手形の振出日から支払期日までです。一般的に30日・60日・90日など1か月単位で手形サイトは設定されます。

手形サイトが長く設定されると、振出人(支払う側)にとって有利に働くでしょう。なぜなら、金額を用意するまでに長い猶予があるためです。

それに対して、受取人は手形サイトが短い方がよいでしょう。手形サイトが短ければ、受取人は早い段階で約束手形を現金化できるため、資金繰りがよくなります。

約束手形のまとめ

今回は、商品代金を先の期日に支払うことを約束する「手形」について解説しました。使い方によってはとても便利な手形ですが、もし不渡手形を出してしまうと、会社やお店の信用低下は避けられないため、十分な注意が必要です。日々、健全な資金繰りに努めるのはもちろん、決済日の前に口座の残高確認を怠らないようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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