棚卸資産とは何か~評価方法の種類~

2022.03.18

棚卸資産

多くの企業では、原価の大小にかかわらず在庫を保有しています。在庫は期末に棚卸資産として評価額を定めますが、棚卸資産の評価額をどのように決めているか正確に把握していない人も多いのではないでしょうか。ここでは、棚卸資産の概要と、評価方法、評価の届出などについてお伝えします。棚卸資産は、利益にも影響する重要なものですので、しっかりと理解しておきましょう。

棚卸資産と棚卸業務とは

棚卸資産とは、いわゆる「在庫」のことを指します。そのため、小売業であれば「商品」などになりますし、製造業であれば「原材料」や「仕掛品、半製品、製品」などになるでしょう。 事業で取り扱うものが土地や建物など不動産になれば、販売前で保有する土地や建物も「在庫」となるため、住宅販売会社が保有する自社土地などが棚卸資産となります。

棚卸業務とは、全ての在庫を確認する業務のことです。抱えている棚卸資産は、決算のときに一覧で提出することになっており、正確な数、評価額を表記しなければなりません。また、評価額は貸借対照表に記載されます。商品や製品を多数そろえている小売業や製造業は、正確な数を把握するために、棚卸業務というチェック作業が必要になります。

棚卸資産の評価方法の種類

仕入税額控除

棚卸資産は、保有する数と共に評価額も計算しなければなりません。その評価方法は、大きく分けて5つあります。製品や商品など在庫を保有する企業は、棚卸資産の評価額が貸借対照表に記載されますので、自社に合う最適な方法を選択するようにしましょう。

個別法

個別法は、仕入をしたときの価額で評価する方法です。仕入先から購入したときの原価をそのまま評価額にするもので、ひとつの在庫品の原価がある程度の大きいものや、数が大量ではないものなどに向いている方法です。棚卸資産をしっかりと把握できる範囲内であれば適しているでしょう。

先入先出法

先入先出法は、最初に仕入れたものから順に販売している(製造に使われている)という考え方の方法です。棚卸資産になるものは、新しいものが残されているという認識ですので、継続的に安定した原価で仕入と販売(製造)を繰り返している場合に適している方法といえます。

後入先出法

先入先出法とは反対に、後に仕入れたものから出ていくという考え方ですが、2009年からは評価方法としては廃止されています。

平均原価法(総平均法と移動平均法)

平均原価法とは、棚卸資産となる材料、商品などの原価を平均して評価額とする方法です。「総平均法」と「移動平均法」があり、総平均法は何年までなど一定期間を設けて、期間ごとの平均原価を計算し、総平均原価を計算します。また、移動平均法は、在庫が移動するたびに平均原価を計算する方法で、評価額を知りたいタイミングにすぐ評価額がわかりますが、日々の管理で手間がかかります。

売価還元法

売価還元法とは、異なる商品(製品)などの棚卸資産をグループに分類し、加重平均をする方法です。在庫品が多い小売業などで、管理業務の負担を減らせるメリットがあります。 ※計算式:期末在庫棚卸高×原価率=期末在庫高

最終取得原価法

最終取得原価法とは、期末に最も近い仕入価格を基にして評価額を出す方法です。長い期間で価格の変動が大きい場合は適していませんが、期末に偏って仕入をしたときなどに適しています。

棚卸資産の評価方法は届出る

棚卸資産の評価方法に何を選択したのか、企業は所轄の税務署に対して届け出をする必要があります。届け出期間は、一般法人であれば、設立後の第1期の確定申告提出までとなります。(合併により設立された法人で仮決算をした場合の中間申告をするときは、その中間申告の提出まで。)

届け出なかった場合

なお、届け出がない時は、法定評価方法となる「最終仕入原価方法」が選択されます。また、届け出た評価方法以外で確定申告を提出した場合も、法定評価の「最終仕入原価方法」で評価されることがあります 。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加

同じカテゴリの記事

経理の外注とは?アウトソーシングのメリット・デメリットや費用相場を紹介
連結決算は中小企業にも必要?メリットとデメリットを解説
経費とは何か?計上するメリットと注意点をわかりやすく解説
管理会計とは何か?業務、目的、財務会計との違い
会計とは何か~企業での業務内容、財務、経理、簿記との違いを解説〜
経理とは?役割、業務内容をわかりやすく解説
制度会計とは何か?管理会計との違いを簡単に解説
粉飾決算とは何か~種類、刑罰、事例、予防について解説~
税効果会計とは何か?必要性や手順、差異についての解説
売上原価とは?計算方法から仕訳方法まで説明!
売上総利益(粗利)とは何か~計算方法と付加価値との関係~
営業利益とは何か~計算方法、経常利益との違いについて
経常利益とは~計算方法、分析、活用について解説~
特別利益と特別損失とは~金額が大きくても問題はない?~
法人税等とは何か~含まれるもの、申告、仕訳~
当期純利益とは何か~計算式、経常利益との違いについて解説~
決算書の見方・読み方とは?代表的な3種類(財務3表)も説明
貸借対照表(バランスシート)とは?見方や損益計算書との違いも紹介
資産とは何か~流動、固定、繰延の違い~
負債とは何か~流動と固定、有利子と無利子の違い~
純資産とは何か~株主資本、評価・換算差額等、新株予約権~
損益計算書とは何か?基本的な内容から活用方法まで紹介
キャッシュフロー計算書とは~読み方、分析する方法、直接法と間接法の違いについて解説~
個別注記表とは~記載事項と中小企業が作成する際のポイントを解説~
株主資本等変動計算書とは何か~特徴、作成目的、記載方法について解説~
附属明細表(附属明細書)とは~役割と種類~
減価償却で固定資産を費用にする~定額法と定率法~
のれんとは、目に見えない資産価値のこと
製造原価報告書とは~項目と計算方法について~
租税公課とは何か~対象になるもの、ならないもの~
交際費とは~仕訳、損金算入の範囲、節税方法について解説~
役員報酬とは~経費になるのは、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与~
法定福利費とは~福利厚生費との違い~
人件費とは何か~雇用によって発生する費用~
会議費とは~5,000円の基準は税抜?~
債務超過とは~倒産との関係、解消する方法、予防策について~
現金主義とは~メリット、発生主義との違いを実際に計算~
修繕費と資本的支出の見分け方
黒字倒産とは~利益が出ていても倒産する原因を解説~
税務調査とは何なのか?もしもに備えて必ず知っておきたいこと
税理士とは~頼む仕事の決め方、コストを抑える方法~
破産と倒産の違いとは何か?
棚卸資産とは何か~評価方法の種類~
割賦とは何か~メリット、デメリット、リースやレンタルとの違い~
寄付金とは~法人が寄付したら節税できる?~
資本金とは?~増資と減資、税金との関係などについて解説~
Excel会計の問題点とは何か?
新収益認識基準(収益認識に関する会計基準)とは?ポイントを説明
税理士の独占業務とは~税理士以外の税務相談は違法?~
国際財務報告基準・国際会計基準IFRSとは?日本基準との違いをわかりやすく解説