未収金(未収入金)とは~仕訳、具体例、回収手段、管理方法~

更新日:2023年12月12日

未収金

未収金とは、本来の事業活動とは異なる売買取引において発生した、未回収の金銭債権を表す勘定科目です。未収金は、決算時や会計処理時などに用いられるため、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。1年以内に回収することが前提とされるため、未収金は流動資産として計上されますが、1年を経過すると、扱いが固定資産に変わります。そのため、帳簿が正しく記入できていない場合、正確に把握することが難しくなってしまいます。そこで今回は「未収金」について、「売掛金」や「未収収益」などよく似た勘定科目との違いや、仕訳・回収方法など、ポイントとともに詳しく解説します。

未収金の仕訳

この章では、未収金の仕訳方法を、次の各ケースごとにご説明します。

  • 売掛金の仕訳方法:自社のサービスを売買したケース
  • 未収金の仕訳方法:固定資産を売却したケース
  • 未収収益の仕訳方法:不動産の貸付をし、1年以上回収し続けられるケース

続いて、売掛金、未収収益と比較して、詳しく解説します。ぜひ、未収金・売掛金・未収収益の仕訳の理解に役立ててください。

仕訳例①売掛金|自社商材の売買

売掛金は、事業本来の商品やサービスを売買取引した際に発生します。例えば、自社商品を30万円で取引先に販売し、支払期日を翌月に設定しました。このケースでは、以下のように仕訳をします。

借方 貸方
売掛金 300,000円 売上 300,000円

仕訳例②未収金|固定資産の売却

未収金は、本来の事業とは異なる取引で生じた、未回収の金融債権のことです。例えば、営業で使用していた社用車を、30万円で第3者に売却し、支払期日を翌々月に設定しました。このケースでは、以下のような仕訳方法がとられます。

借方 貸方
未収金 300,000円 社用車の売却収入 300,000円

仕訳例③未収収益|不動産の貸付

未収収益とは、本来の事業とは異なる取引で生じた、未回収の金融債権をさします。未収収益は、継続した取引であることが、未入金との大きな違いです。例えば、通信会社が保有する不動産を、20万円で第3者に貸付け、支払期日を毎月月末に設定しました。このケースでは、以下のような仕訳方法がとられます。

借方 貸方
未収収益 200,000円 貸付家賃収入 200,000円

未収金は未回収の金銭債権

未収金は、正式名称を「未収入金」といい、本来の事業活動とは異なる売買取引で発生した、未回収の金銭債権を指す言葉です。例えば、食品製造メーカーが、営業で使用していた社用車を売却し、その代金が未回収の場合に使われます。最終的に回収することを前提としているため、貸借対照表では「資産・負債・純資産」のうち「資産」に該当し、売買取引から経過している年数が1年以内であれば「流動資産」に分類されます。ただし、1年を超えて回収できていない場合は長期未収金として扱われるため「固定資産」へ変更することが必要です。

未収金の具体例

未収金の具体例は以下の通りです。

  • 有価証券を売却した際の未回収金
  • 自社で所有する複合機やパソコンなど、備品を売却した際の未回収金
  • 自社用車を売却した際の未回収金
  • 自社で管理する建物を売却したり、貸し出した際の未回収金

未収金の定義は「本来の事業以外で行われた売買取引による、未回収の金銭債権」です。したがって、自社で提供していない商品やサービスで発生したもののみが、未収金として扱われます。本来の事業として扱っている場合は、売掛金として扱われるため、区分を間違えないよう気を付けましょう。

未収金と混同しやすい勘定科目の解説

未収金と混同しやすい勘定科目に「売掛金」と「未収収益」の2つがあります。判別方法は、以下の3点を区分けすることがポイントです。

  • 分類1:金銭債権が営業活動と関連しているか否か
  • 分類2:取引の継続性があるか
  • 分類3:貸借対照表の資産種別は何になるか

例えば、

  • 営業活動に関連しない取引
  • 単発的な取引
  • 流動資産に分類されている

これらの項目すべてに該当する場合には「未収金」として判別できます。売掛金と未収収益も、同様の分類方法でみてみましょう。

売掛金:営業活動かつ1年以内で回収できる金銭債権

売掛金は、自社の商品やサービスを提供した際、その対価として発生します。営業利益の中核を表し、資産として計上されます。

  • 事業本来の営業活動で行われた、売買取引による金銭債権
  • 取引を始めた段階から1年以内に回収できる
  • 貸借対照表の分類としては「流動資産」に当たる

以上のことから、売掛金として判別されます。

参考)売掛金とは

未収収益:営業活動以外かつ1年以上継続する資産

未収収益とは、事業本来の商品やサービスとは異なった資産を売却し、発生した金融債権のことです。例えば、利息や家賃などが該当し、営業活動に関連しない取引のことを表します。

  • 営業活動に関連しない取引
  • 取引を開始した段階から、1年を越えて回収し続ける継続的な取引
  • 貸借対照表の分類としては「資産」に当たる

以上のことから、未収収益として判別されます。

未収金を回収する3つの手段

債権の回収には、法律で定められたルールがあります。できるだけ早く、円滑に回収するために、回収遅れの兆候がみられる場合には督促状の送付から始めることがおすすめです。この章では、催促状から法的措置まで、未収金を回収するための3つの手段をご紹介します。

回収方法①|催促状を送る

回収方法の1つ目は、催促状を送付することです。相手に、未払いの事実を確認できます。送付方法は普通郵便ではなく、内容証明郵便がよいでしょう。内容証明郵便とは、送付の事実と書面の内容をコピーし、郵便局に残せる方法です。催促状の内容だけでなく、送付した日付・事実を記録することで、相手の言い逃れを防ぎます。また訴訟時に、送付の証拠として提出することが可能です。1通1,300円〜と、普通郵便よりコストはかかりますが、こちらの本気度を伺わせられるでしょう。多くの場合、催促状を送付した段階で支払いに応じてくれることでしょう。

回収方法②|直接債務者と交渉する

回収方法の2つ目は、直接債務者と交渉することです。相手にプレッシャーを与える点で、催促状よりも強力な手段といえます。交渉の際は、債務者に面会のアポイントを取りましょう。事前に約束をしないままでの訪問には居留守が使われる可能性があり、また、恐怖心から警察に通報される恐れがあります。また、直接の訪問には時間や人員、コストがかかります。対面での催促は心理的負担も大きく、あまりおすすめできません。

回収方法③|法的措置をとる

回収方法の3つ目は、法的措置をとることです。債務者に対して、最も強いプレッシャーがかかる方法でしょう。

未払いに対する法的措置として、以下の4つが挙げられます。

  • 公正証書
  • 支払督促
  • 民事調停
  • 少額訴訟

いずれも強力な法的効力があり、未収金回収に効果的です。催促状の送付や、直接交渉でも支払われなかった場合、最後の手段として有効でしょう。ただし、法的措置による債権回収には時効があり、また、自己破産をされる恐れもあります。きちんと未収金を回収するためには、時効期日の確認や、恐怖を与えない態度で接することが必須でしょう。

参考)督促状とは

未収金を管理する2つの方法

代金の未回収を防ぐためにも、常に未収金が発生しないようにすることが重要です。この章では、未収金を管理する2つの方法を、ポイントとともにご紹介します。

管理方法①|発生主義で管理する

未収金を管理する1つ目の方法は、発生主義で会計を行うことです。発生主義とは、支出や収入が決まった時点で計上する会計処理方法のことをいいます。発生主義に基づけば、売掛金や債権、資産状況などの正確な把握と記録が可能です。例えば、自社商品を販売した時点で計上することで、どの時期にどの位の支出・収入があったかが確認できます。現金のやり取りが行われたときに計上する現金主義では、現金の推移は把握できても、正確な債権残高の把握ができません。

参考)発生主義と現金主義

管理方法②|債務側の信用状態を確認する

未収金を管理する2つ目の方法は、債務側の信用状態を確認することです。債務側の支払・返済能力をあらかじめ確認・把握しておくことで、未払いの可能性が予測でき、損失を防ぐことが可能です。また、債務側の支払能力に応じて、与信枠を設定することもポイントです。与信枠とは、支払・返済能力に応じて、貸付の上限を決めたものをいいます。未収金を発生させないためにも、取引先の支払能力に応じた与信枠の設定がおすすめです。

未収金まとめ

今回は未収金と、売掛金・未収収益の違い、仕訳方法、債権の回収方法などについて説明しました。未収金は、債権の把握が非常に重要です。損失を生まないためにも、勘定科目や仕訳方法など、徹底した管理が必須でしょう。また、未収金の回収には、時間やコスト、労力がかかります。未収金には時効があり、自己破産される恐れもあるため、債務者の支払能力はあらかじめ確認しておくことが有効です。発生主義で管理・与信枠を設定するなど、未回収のリスクを防止する対策がポイントでしょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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