請求書とは?作成方法や書き方の注意点をわかりやすく解説

更新日:2024年06月16日

請求書とは

請求書とは、商品やサービスの対価を請求するために発行する書類を指します。正確な請求書の作成は円滑な取引とトラブル防止につながり、取引先とのやり取りにおいて重要な役割を果たします。しかし、請求書の書き方に定まったフォーマットはなく、記載項目や注意点も理解しにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、請求書の基本知識から作成方法、書き方の注意点、さらにはインボイス制度施行や電子帳簿保存法の改正による注意点までわかりやすく解説します。

目次

請求書とは

請求書とは、商品やサービスの提供者が取引相手に対価を請求するための文書を指し、取引相手との間で行われた業務やサービスに対する対価を文書化し確認するのが目的です。さらには、金額の不一致や請求漏れなどの問題を防ぎ、請求額が支払われない場合には、未払いを証明する証拠書類としての役割も果たします。

商品やサービスが完全に納品されたとしても請求者が請求書を作成し送付しなければ、対価は支払われないことが一般的です。対価を確実に受け取り、不必要な問題を避けるためにも請求書は適切かつ確実に作成・送付することが求められます。

請求書の必要性

請求書は、請求側と受領側の双方にメリットがあります。

請求側にとっては、サービス内容を明確に示して取引の存在を証明する手段であり、金額の食い違いや支払い忘れなどのトラブルを未然に防ぐのに役立ちます。口頭だけでは曖昧になりがちなやり取りも、請求書により取引明細の文書化が可能です。

一方の受領側では、請求書が税務調査時の支出証明として機能します。また電子的な請求書であれば、過去の請求履歴を容易に確認できる利点もあるため、適切な経費処理や記録管理に有用です。

このように、双方にとって請求書は重要な役割を果たすため、トラブル回避と透明性の確保によりスムーズな決済手続きを可能にします。そうした取引の正確性と信頼性を高めるためにも、請求書の発行と保管は業務上欠かせません。

請求書と他の書類との違い

企業間の取引では、下記のような一連の過程を経て最終的に売手側が買手側へ請求書を送付します。

文書名 目的
見積書
  • 契約を結ぶ前に、提供予定の製品やサービスの価格、数量、範囲などの詳細を発注者に伝えるための書類
  • 発注者は提供内容を検討し、注文を進めるか否かを決定
  • 双方の理解を明確にし、のちの誤解を防ぐ役割
注文書
(発注書)
  • 製品やサービスの購入を希望する際に、発注者側によって発行される発注の事実を表明するための文書
  • 注文書を受け取った受注者は、注文の受け入れを示すために「注文請書」を発行することもある
納品書
  • 製品やサービスが納品された際に作成される文書
  • 通常は納品時に「受領書」とともに添付され、受け取った受領印のある受領書は、製品やサービスの引き渡しを証明する文書となる
請求書
  • 提供した商品やサービスの対価を取引相手に請求する文書
領収書
  • 金銭受領の事実を証明するための文書

請求書は、納品後に発行し金額を明示して支払いの請求をします。発行のタイミングは、個別の納品ごとに請求する場合や一定期間分をまとめて請求するタイプがあります。

請求書作成にあたり準備するもの

請求書を適切に作成するには、いくつかの準備が必要です。

まずは請求書のひな形(フォーマット)を用意しましょう。ひな形があれば、効率的に請求書を作成できると同時にミスも削減できます。発注先からフォーマットが指定されていれば指示に従い、指定がない場合には市販のテンプレートや専用サービスを利用しましょう。

次に、請求書への押印も一般的に必要とされています。押印することにより発行者の証明となり、改ざんのリスクも低減できます。法人であれば角印、個人であれば実印を使用するケースが多いです。

さらに電子請求書の場合は、自社のロゴデータの貼り付けが可能です。請求書にロゴが入ることで、会社のブランディングにもつながり、信用度の向上が期待できます。

請求書の準備ができたら、郵送用の封筒と切手を準備しましょう。また、請求書が多い場合には「請求書在中」のスタンプがあると便利です。

請求書の作成パターン

請求書を作成するパターンは、以下の3つが挙げられます。

  • 表計算ソフトで作成する
  • 市販のソフトで作成する
  • 請求書用紙に記入する

請求書に決まった様式はなく、WordやExcelを使って作成できます。また、請求書用紙を購入し、それを手書きで作成することも一つの方法です。さらに、効率的に請求書を作成したい場合には、市販のソフトウェアやクラウド会計ソフトの利用がおすすめです。

ここでは、それぞれの方法について解説します。

表計算ソフトで作成する

表計算ソフトや文書作成ソフトを使用して、請求先・発行者の詳細・発行日・請求額・取引の内容・振込先・支払い期限などの必要な情報を含め、電子印鑑や企業のロゴを配置して請求書を作成します。

作成作業を簡素化するために、ExcelやWordのテンプレートをウェブサイトからダウンロードして使用することも可能です。無料で利用できるテンプレートも多く存在しているため、自分の作業スタイルに合ったものを見つけて利用することをおすすめします。

市販のソフトで作成する

市販のソフトやクラウドベースの会計ソフトを利用して、請求書の作成が可能です。これらの会計ソフトは簡単に操作でき、多くの場合フォーマットを保存する機能も備えています。

また、見積書・納品書・請求書を一元管理できるため、同じデータを何度も入力する必要がなく、作業効率が向上します。さらに、一部のサービスでは、請求書の郵送代行を依頼することも可能です。

請求書用紙に記入する

手書きで請求書を作成するには、請求書用紙を購入したうえで請求情報を記入する方法があります。WordやExcel、会計ソフトを使用した作成と比較して時間と労力を必要とし、住所などの情報を都度記入する必要があるものの、改ざんを防ぐといった利点もあります。請求書用紙は、文房具店や100円ショップ、オンラインショッピングサイトなどで購入可能です。

請求書用紙には、簡単に記入できるものから詳細な情報を含めたものまで、さまざまな種類があります。必要とする内容の請求書用紙を選び、購入しましょう。

請求書の基本的な記載項目

請求書の基本的な記載項目は以下のとおりです。

  1. 作成者の氏名または名称
  2. 登録番号
  3. 請求書番号
  4. 受領先の事業者名
  5. 振込期限
  6. 請求金額
  7. 取引日・品目・単価・数量
  8. 軽減税率対象の有無
  9. 消費税対象額・消費税額
  10. 振込先口座・手数料の負担先

以下、それぞれについて解説します。

1.作成者の氏名または名称

請求書に記載する「請求者名」とは、請求の主体である法人名または個人事業主の氏名を指します。必須項目は正式名称または氏名であり、住所や電話番号の記載は任意です。

個人事業主の場合は、氏名に加えて屋号を併記することもあります。法人の場合には、部署名まで記載するケースもあります。

重要なのは、請求の責任を最終的に負う主体の名称や氏名を正確に記載することです。書類作成者の名前を記すのではなく、実際に請求する当事者の名前を記入する必要があります。たとえば、配偶者が請求書を作成したとしても、個人事業主本人の氏名を請求者名欄に記さなければなりません。

このように、請求者を明確に識別できるよう、適切な名称や氏名を請求書に記載する必要があります。

2.登録番号

「適格請求書(インボイス)」の場合は、適格請求書発行事業者の登録番号を記入します。適格請求書とは、消費税の仕入税額控除を受けるために必要な請求書です。なお、適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者のみです。

登録番号は、以下の構成になっています。

  • 法人番号を有する課税事業者

    「T」 + 13桁数字の法人番号

  • 上記以外の課税事業者(個人事業者など)

    「T」 + 13桁の数字

適格請求書発行事業者の登録番号を取得するためには、適格請求書発行事業者の申請をしたうえで登録を受けなければなりません。登録申請は、管轄のインボイス登録センターに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を郵送するか、e-Taxを通じて申請します。

3.請求書番号

請求書番号とは、社内で付与する通し番号のことを指し、請求書の項目として記載します。必須ではありませんが、請求書管理の効率化のために使われます。

重要なのは番号の重複を避けることです。重複があると同一番号の請求書が複数存在し、あとから確認する際に混乱を招きます。誰が見てもわかりやすい付番ルールを設けましょう。

請求書番号を付けるメリットは2点あります。1点目は、見積書や納品書など関連書類と組み合わせて一元管理できることです。書類間で同一番号を使えば、相互に関連付けて管理でき、請求漏れ・請求忘れを防げます。2点目は、取引先からの問い合わせにスムーズに対応できることです。請求書番号から該当書類を特定でき、迅速かつ正確な対応で取引先の信頼を得られます。

4.受領先の事業者名

宛名部分には、受取側の企業名や個人名、商号を入力します。敬称としては、個人宛ての場合は「様」を、企業や部署宛ての場合は「御中」を使用し、双方の併用は避けましょう。

記載例は以下のとおりです。

  • 請求先が個人の場合→「〇〇〇  様」
  • 請求先が会社の場合(会社宛)→「〇〇〇株式会社  御中」
  • 請求先が会社の場合(担当者宛)→「〇〇〇株式会社 担当者名  様」

会社の担当者宛ての場合、会社名に対する敬称は不要となる点に注意が必要です。

5.振込期限

請求書には、支払期日を適切に記載する必要があります。支払期日は、月末など取引先との約定によって設定されるのが一般的です。取引先の支払いルールを事前に確認し、それに従って記載します。和暦または西暦のどちらの表記でも構いませんが、発行日の書き方と統一しましょう。

支払方法には、都度方式と掛売方式(請求書払い)の2種類があります。都度方式は取引ごとに請求し、掛売方式は毎月の取引をまとめて請求する方式です。定期的な取引がある場合には、掛売方式が一般的です。

例として「○○年10月末日までにお支払いください」といった文言を記載します。

6.請求金額

請求書には、請求内容や金額を適切に記載する必要があります。まず、請求対象に応じて消費税の税率(標準税率10%か軽減税率8%)を区分し、税抜の小計金額と消費税の合計金額を記載します。複数の取引をまとめる場合は、内容別に分けて記載しましょう。

金額の表記に関しては、一般的な1,000といった「3桁区切りのスタイル」を用い、単位は「円」か「¥」のいずれかで統一します。

また、金額の付け足しや書き換えのリスクを防ぐため、次のような表記が一般的です。

  • 「¥」の場合:「¥1,000-」のように金額の後ろに、伸ばし棒「―」を付ける
  • 「円」の場合:「金1,000円也」のように、金額の後ろに「也」と書き添える

消費税の取り扱いについても、内税・外税の別を明記したうえで単価は税抜、最終的な合計には消費税を加算する形式が一般的です。

また、前月の請求残高や当月の新規請求分などを分けて記載することで、入金の流れを明確にします。小数点以下の消費税の切り捨て・切り上げルールも事前に取引先と決めておきましょう。

7.取引日・品目・単価・数量

請求書には取引内容を具体的に記載する必要があります。商品名や製品名、数量などを正確に記したうえで、軽減税率対象の場合はその旨を明記しなければなりません。

ただし、すべての内容を細かく列記すると請求書が煩雑になるおそれがあります。そこで便利なのが「一式」という表記です。ひとくくりにして簡潔に記載できるメリットがあります。

一方で、一式表記には内容の詳細がわかりづらくなるデメリットもあるため、状況に応じて使い分ける必要があります。記載のわかりやすさと請求書としての見栄えのバランスを考慮し、状況に合わせて一式表記か個別記載かを使い分けましょう。

8.軽減税率対象の有無

請求書上で軽減税率対象の商品やサービスがある場合、その旨を適切に記載しなければなりません。ただし、品目ごとに「軽減税率対象」と明記する必要はなく、次のような記載方法が認められています。

  • 記号を用いた表示:特定の商品に「※」のような記号を付与し、それが軽減税率適用商品であることを明示
  • 商品の税率別区分:請求書内で商品を税率に応じて分類し、それぞれの税率が適用される商品群であることを表示
  • 請求書の分割発行:税率別に請求書を作成し、それぞれの税率に応じた請求書を発行する

適格請求書では、軽減税率対象かどうかをわかりやすく表記することがポイントです。

9.消費税対象額・消費税額

請求書作成時には、取引内容に応じて、標準税率(10%)と軽減税率(8%)の適用がある商品を明確に区分し、それぞれの税率に基づく合計金額を記入します。

たとえば「食料品」のように軽減税率が適用される商品群には、その情報を請求書上に明示しなければなりません。請求書の内訳欄にマークを入れるなどにより、軽減税率対象の取引を識別しやすくする工夫も必要です。

10.振込先口座・手数料の負担先

まず振込先の銀行名のほか、支店名・口座種別・口座番号・口座名義を記載します。通常、取引にともなう振込手数料は支払側の負担ですが、合意により請求側が振込手数料を負担することもあります。手数料の支払方法を事前に明らかにし、問題を未然に防ぐことが重要です。

請求側がサービスの一環として手数料を負担する場合には、手数料を引いた金額で請求書を発行します。一方、取引相手に手数料の負担を求める場合には、「振込手数料は貴社負担にてお願いします」等の文言を請求書上に記載しましょう。

請求書作成から入金までの流れ

請求書は商品の納品後、または納品と同時に準備します。

  1. 請求金額の確定

    見積もり段階で、計算した請求額が正確であることを検証し確定します。とくに掛売方式(請求書払い)の場合には、取引内容が複数になるため、慎重なチェックが必要です。

  2. 請求書の作成

    請求書には法律で定められた様式は存在しませんが、消費税の仕入額控除を受けるためには、適格請求書が必要なため注意しましょう。請求書の内容が適切であることを確認したあと、請求書を発行します。

  3. 請求書を送付

    請求書が準備できたあと、取引先に送付します。その際、送付する請求書のコピーを作成し、自社で保管することを忘れないようにしましょう。請求書は法律で一定期間の保管を義務づけられているのがその理由です。請求書の送付方法としては、「郵送」や「メールでPDF形式の請求書を送る」などの方法があります。

  4. 支払期日に請求金額が振り込まれているかの確認

    まず、請求書に記載された支払期日に振り込みが行われているかを確認しましょう。その際、振り込まれた金額が正確であるかを確認します。金額に誤りがある場合は、取引先に確認の連絡をします。

  5. 「売掛金」の消し込み

    振り込まれた金額が正しければ、請求書発行時に記帳した「売掛金」を消し込みます。消し込む際には、金額や取引先などの詳細が正確であることを確認しましょう。金額だけを見て判断すると、同じ金額の売掛金が存在する場合に誤りを生じさせる可能性もあります。

  6. 振り込みがない場合の催促

    支払期日に振り込みがない場合には、取引先への催促、督促が必要です。ただし催促をする前に、まずは自社の手続きに誤りがないかを確認しましょう。

請求書作成における注意点

請求書は、取引の際に発生する重要な書類です。適切な請求書の発行と保管は、事業運営において欠かせません。

請求書の作成から発行、保管に至るプロセスには細心の注意を払う必要があります。遅延や記載ミスがあれば、取引先との関係に支障をきたす可能性もあるためです。また、2023年10月からはインボイス制度が導入され、請求書に関する新たな規定が設けられました。

ここでは、請求書の発行から保管に至るポイントと、インボイス制度導入による変更点について解説します。

請求書は速やかに作成し発行する

商品やサービスの納品が完了した時点で、請求書を作成し送ります。単発取引の場合は都度請求書を作成しますが、定期的な取引がある場合や月に何度も取引が行われる場合は、1か月分の取引を一括して請求書にまとめることが一般的です。

いずれのケースでも請求書の発行や送付が遅延すると、クレームの原因となる可能性もあるため、迅速な対応が求められます。日常的に効率的な請求書発行の流れを確立しておくことが重要です。

また、請求書には必要な項目を記載することは言うまでもありませんが、記載内容に誤りがあると大きなトラブルにつながる可能性があります。とくに、金額や振込先の情報の誤りには注意が必要です。請求書を作成したあとは、記載内容をしっかりと確認してから送付しましょう。

電子発行の請求書は電子保存する

受け取った請求書の保管期間は、事業主の種類や請求書の形態によって異なります。法人は最低7年間、赤字年度は10年間の保管が義務づけられています。個人事業主の場合は、最低5年間の保管が必要です。また適格請求書の場合には、法人・個人事業主ともに7年間の保管を要します。

請求書を送付した側が請求書の写しを作成した場合には、受領した請求書の場合と同様に保管が義務づけられています。写しを作成しなかった場合の保管義務はありませんが、適格請求書を発行する場合は、送付側も控えの保管が必要です。

さらに2024年1月からは、電子取引で授受した書類のデータ保存が完全に義務化されています。たとえばメールやクラウドサービスなどから受け取ったPDF等の請求書は、電子データのまま保存し改ざんができず、検索可能な状態で保管する必要があります。電子データを交付した側も、同様に控えを電子データで保存しなければなりません。

インボイス制度導入による変更点を確認する

インボイス制度により、消費税の仕入税額控除を受けるには適格請求書の発行・保存が必須になりました。

インボイス制度導入後の主な変更点は以下のとおりです。

  1. 請求書の書式が変わる

    現行の区分記載請求書に加え、適格請求書発行事業者の登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額の記載が必要です。受領者側での追記は認められません。

  2. 適格請求書と従来の請求書を区分して保存する必要がある

    消費税の仕入税額控除には適格請求書が必須です。適格請求書と従来どおりの請求書は、混同しないよう区分して保存しなければなりません。

なお適格請求書は、登録申請により登録された課税事業者のみが発行可能であり、免税事業者は発行できないため注意が必要です。

請求書まとめ

請求書は取引における適正な決済と、円滑なコミュニケーションを確保するための重要な書類です。発行側は取引の証明や金額の食い違い防止、受領側は支払証明や過去の履歴確認に役立ちます。

請求書の作成では、発行者情報や請求額、取引内容などの必須項目を正確に記載しなければなりません。インボイス制度導入にともない、適格請求書の発行と従来の請求書との区別、保存も義務づけられています。

2024年の1月には電子帳簿保存法の改正により、電子取引のデータ保存が完全義務化されました。請求書の適切な発行と保管を心がけていきましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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