税金を滞納するとどうなる?払えない時の解決法や対策も紹介
更新日:2025年01月27日

税金を滞納するとペナルティが発生するうえに、銀行や取引先などからの信用を失います。そのため、滞納しないように日頃から心がけなくてはなりません。本記事では、税金を滞納した場合に生じることや、払えない時の対処法について解説します。
目次
税金の具体例
税金は、社会保障・福祉・社会資本整備・教育・防衛などの公的サービスを運営するために、法人や国民・市民が納付しなければならないお金です。税金は納付先によって、国税と地方税に分類できます。
それぞれの具体例を確認していきましょう。
国税とは
国税とは、国に対して納める税金のことです。国税の具体例として、以下の税金が挙げられます。
- 所得税
- 法人税
- 相続税
- 贈与税
- 消費税
- 印紙税
- 酒税
- 登録免許税
- 自動車重量税
上記のうち、所得税・法人税・相続税・贈与税は直接税です。それに対し、消費税・印紙税・酒税・登録免許税・自動車重量税は、間接税に分類されます。
なお、直接税は税金を納付する人と税金を負担する人が同じ税のことで、間接税は納付を指定されている人と税金を負担する人が異なる税のことです。
地方税とは
地方税とは、地方公共団体に納付する税金のことです。また、地方税は道府県に対して納付する「(都)道府県税」と、市町村に対して納付する「市(区)町村税」 にさらに分類できます。
地方税の具体例は、以下のとおりです。
- 個人住民税(道府県民税・市町村民税)【道府県税・市町村税】
- 法人住民税(道府県民税・市町村民税)【道府県税・市町村税】
- 事業税【道府県税】
- 固定資産税【市町村税】
- 都市計画税【市町村税】
- 不動産取得税【道府県税】
- 自動車税【道府県税】
- 軽自動車税【市町村税】
なお、上記はすべて直接税に該当します。
税金を滞納するとどうなる?
滞納とは、税金や保険料などを定められた期限までに納めないことです。税金を滞納すると、以下のような事態を招きます。
- 延滞に対するペナルティが発生する
- 督促状が届く
- 財産調査が実施される
- 財産が差し押さえられる
- 取引先からの信用を失う
- 銀行からの借入が難しくなる
滞納するとどうなるかについて、詳しく確認していきましょう。
延滞に対するペナルティが発生する
税金を滞納(延滞)すると、その期間に応じてペナルティが発生します。
国税を滞納した場合に与えられるペナルティが、延滞税です。原則、本来納付すべき日の翌日から、実際に納付した日までの日数に対して、利息に相当する延滞税がかかります。
2021年1月1日以降、納付期限までの期間・納付期限の翌日から2か月を経過する日までの延滞税に適用されるのは、年7.3%と「延滞税特例基準割合 + 1%」のいずれか低い割合です。また、納付期限の翌日から2か月を経過した日以降については、年14.6%と「延滞税特例基準割合 + 7.3%」のいずれか低い割合が適用されます。
地方税の場合は、延滞金や還付加算金を支払わなければなりません。延滞金の割合は14.6%(1か月以内の納付は7.3%)、還付加算金の割合は7.3%です。ただし、2024年度時点では、事業者などの負担を軽減するために延滞金や還付加算金に対して、国内銀行の貸出約定平均金利を考慮した割合を適用する特例措置が設けられています。
なお、納付に関して仮装や隠ぺいがあれば重加算金、期限内申告で正当な理由なく実際より過少に申告すると過少申告加算金、正当な理由なく期限後申告したことなどには不申告加算金が課される場合がある点にも注意が必要です。
参考)国税庁「No.9205 延滞税について」
参考)総務省「加算金、延滞金、還付加算金」
督促状が届く
税金を滞納すると、督促状も送られてきます。
国税の場合、督促状が送られてくるのは原則として納付期限から50日以内です。ただし、万が一50日を過ぎてから督促状が発送されたとしても、督促状の効力は無効になりません。
一方、地方税の場合は、納付期限を経過してから20日以内に督促状が送られることになっています。送付対象は納付期限までに納めていない相手のため、期限が経過してから発送日までに納付されていたとしても、各自治体は督促状を発送します。
参考)国税庁「第37条関係 督促」
参考)八王子市「納期限を過ぎてから市税を納付しましたが、督促状が届いたのは何故でしょうか。」
財産調査が実施される
税金を滞納した場合、財産調査も実施されます。財産調査とは、どれくらいの財産を保有しているのかを把握するために、滞納者の勤務先や取引のある金融機関、取引先などに対して調査することです。
財産調査では、相手の意思に関係なく滞納者や関係者の住居を捜索することもあります。また、調査の対象は、不動産・預貯金・給与・生命保険・動産・債権などさまざまです。
財産が差し押さえられる
督促状が届いてからも税金を納付しないままでいると、財産が差し押さえられます。
差し押さえとは、支払い義務のある人に対して財産の処分を禁じることです。差し押さえの対象となる財産は、財産調査の結果に基づき決められます。
差し押さえの具体例は、本来自分が受け取る給与が勤務先から国や自治体などに納付される、所有する不動産の登記簿に「差押」と表示されて売却できなくなる、預貯金の残高が減るなどです。差し押さえられた財産は、換価(換金)して滞納中の税金に充てられます。
取引先からの信用を失う
税金を滞納すると、取引先や顧客からの信用を失います。なぜなら、税金を払えないことが周囲に広まると「資金力がない」「事業の継続性に不安がある」「約束を守らない」企業(個人事業主)と認識されかねないためです。
信用力がなくなると、今後の取引に支障をきたします。その結果、売上・利益減少につながり、状況はさらに悪化するでしょう。
なお、取引先に対する売掛金の差し押さえのタイミングで、自社の税金滞納を知られる可能性があります。
銀行からの借入が難しくなる
税金を滞納すると、銀行融資が難しくなります。なぜなら、審査の際に返済能力に懸念がある会社・人物であると判断されるためです。
法人・個人事業主の場合は事業性融資、個人の場合は住宅ローンやマイカーローンなどの審査の場面で、滞納の影響が現れます。税金を払うお金が不足しているにもかかわらず、銀行からの資金調達もできないと、資金繰りは悪化するでしょう。
なお、口座が凍結されている銀行には、差し押さえの事実がすぐに知られます。差し押さえ口座がない銀行相手でも、借入を申し込む際に必要な納税証明書を用意できないため、融資を受けることは困難です。
税金を滞納しそうな場合の対処方法
税金を滞納しそうな場合の対処方法として、以下が挙げられます。
- 資金調達できないか検討する
- 国・自治体や専門家に相談する
- 納税の猶予を認めてもらう
それぞれ確認していきましょう。
資金調達できないか検討する
資金繰りが悪化し始めたら、税金を滞納する前に資金調達方法を検討しましょう。なぜなら、税金を滞納してしまうと資金調達それ自体が難しくなるためです。
主な資金調達方法として、取引銀行から融資を受ける方法が挙げられます。銀行に状況を説明して、借入できないか確認しましょう。
また、売掛金をいくつも有する場合は、ファクタリングを利用する方法もあります。ファクタリングとは、売掛金をファクタリング業者に買い取ってもらうことで、期日前に手数料を引いた分の現金を得られる方法です。
参考)ファクタリングとは
そのほか、インターネット上で不特定多数の相手に出資を呼びかけるクラウドファンディングもあります。補助金・助成金も資金調達方法のひとつですが、受け取るまでに時間がかかるためすぐに資金繰り改善が必要な場合にはなじみません。
国・自治体や専門家に相談する
税金を滞納する前に、国や自治体にも相談することも対処方法のひとつとして挙げられます。なぜなら、制度や特例が適用できるにもかかわらず、利用せずに滞納してしまうことがあるためです。所轄の税務署や自治体の窓口に確認してみましょう。
また、税理士や弁護士などに相談することも大切です。ビジネスで付き合いのある専門家に尋ねれば、自社(自分)が置かれている状況を踏まえて、適切なアドバイスを受けられる可能性があります。
納税の猶予を認めてもらう
どうしても一括での納税が困難であれば、納税の猶予を認めてもらう方法を考えましょう。期限内に納付できない場合には、期限後に分割して納付する猶予制度を活用できる場合があります。
たとえば、国税を期限内に納付できない場合に一定の条件を満たせば、税務署長の承認を受けることで1年以内の期間に限り、分割納付が可能です。また、猶予期間中は延滞税が軽減されます。
地方税の納付が困難な場合も、条件を満たせば徴収猶予を適用可能です。いずれにしても、まずは期限前に所轄の税務署や自治体の窓口に相談しましょう。
参考)財務省「Q&A ~身近な税について調べる~Q国税を期限内に納付できないときは、どうしたら良いですか?」
参考)東京都主税局「納税が困難な方に対する猶予制度について」
税金滞納を防ぐための対策
そもそも、税金滞納しそうな状況に陥らないために、日頃から以下の対策を心がけましょう。
- 資金繰り管理を徹底する
- 納税手続きを早めに済ませる
各対策について、詳しく解説します。
資金繰り管理を徹底する
税金の滞納を防ぐためには、資金繰り表を作るなどして、資金繰りの管理を徹底することが大切です。
手元に税金を支払う資金がない場合に、滞納が発生します。そのため、日頃から現預金の流れを考慮しつつ、納付期限に向けて必要な資金を積み立てておきましょう。
また、必要な資金を把握するため、納付金額の目安や税金の仕組みを理解しておく心がけも必要です。
納税手続きを早めに済ませる
納税手続きを早めに済ませることも、税金滞納を防ぐための対策として挙げられます。なぜなら、「うっかり忘れ」や「納税怠慢」も滞納が発生する要因であるためです。
早めに手続きすれば、納税資金があるにもかかわらず納付を失念する事態を防げます。税金の種類によって納付時期が異なるため、あらかじめスケジュールに入れておきましょう。たとえば、法人税の期限は原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。
税金の滞納まとめ
税金を滞納すると、期間に応じて延滞税などを支払わなければなりません。また、督促状を受け取ったにもかかわらず滞納を続けると、財産が差し押さえられます。
取引先や銀行からの信用も失うため、事前に資金調達をしたり、国や自治体に相談したりして滞納を防ぐことが重要です。また、滞納しそうな状況に陥らないように、日頃から資金繰り管理を徹底しましょう。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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