地代家賃とは?仕訳例や計算方法、家賃との違いなど解説

更新日:2024年12月21日

地代家賃とは

地代家賃とは、事業で利用する土地や建物を借りて使用するときに支払う費用のことです。地代家賃の範囲は多岐にわたるため、本記事で含まれる項目や含まれない項目、計算方法などを正しく理解して、適切に処理しましょう。仕訳例や家賃との違いなども解説します。

目次

「地代家賃」とは?賃貸料や家賃との違い

「地代家賃」とは、事業をするために必要な土地や建物を借りて使用するときに支払う費用を計上するための勘定科目のことです。

具体的には、事務所や倉庫、店舗などを借りるときに発生する賃料が該当します。これらの支出を管理し、損益計算書を作成する際に「地代家賃」としてまとめて処理が可能です。なお、地代家賃は法人の決算書では「販売費及び一般管理費」の科目となります。

似た言葉に「賃貸料」や「家賃」がありますが、それぞれ違いがあります。

「賃貸料」は、土地や建物に限らず、物品を借りて使用するときに支払う使用料を計上する際に使われる勘定科目です。つまり、「地代家賃」よりも広い概念といえます。

一方、「家賃」は一般的に建物を借りる際に支払う賃料を指すことが多く、土地を借りる際に支払う「地代」とは区別して考えられるでしょう。そのため、会計処理上も「家賃」の勘定科目を使用する場合は、「地代」と分けて仕訳する必要がある点に注意が必要です。

地代家賃に関する消費税の取り扱い

地代家賃を計上する際は、消費税の取り扱いに注意が必要です。消費税法では、地代家賃は「地代」と「家賃」に分けて考えられます。

地代は、原則として非課税です。ただし、以下の場合は課税対象となります。

  • 貸付期間が1か月以下の場合
  • 駐車場として土地が利用される場合

一方、事務所や店舗などに対する家賃は、原則として課税対象です。ただし、社宅など住宅として使用することが前提で借りた場合は非課税となります。

つまり、地代家賃の消費税は借りている物件の種類や用途、契約期間によって異なるため、それぞれのケースに応じて適切な処理をする必要があるでしょう。

参考)国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」

地代家賃として計上できる費用

地代家賃として計上できる費用には、基本的に事業を営むために必要な土地や建物を借りて使用する場合に支払う費用が該当します。これらの費用は、賃貸借契約に基づいて支払うものであれば、地代家賃として経費に計上できるでしょう。

ただし、事業とは関係のない費用や、私的に利用している部分の費用は、地代家賃として計上できません。

地代経費として計上できる費用には、次の5つが挙げられます。

  • 土地の賃料
  • 事務所や店舗、オフィスなどの家賃
  • 駐車場代
  • 建物や駐車場の管理費、共益費
  • 20万円未満の契約更新料および礼金

それぞれの費用の概要や計上できる条件などを解説しましょう。

土地の賃料

地代家賃として計上できる費用のひとつに、土地の賃料があります。

土地の賃料とは、更地などを借りて事業に利用する場合に発生する費用のことです。たとえば、土地だけを借りてそこに建物を建てて事業をする場合が挙げられます。

土地の賃料を「地代」として仕訳する場合もありますが、その際は、建物の賃料などを「家賃」として区別して仕訳する必要がある点に注意しましょう。

事務所や店舗、オフィスなどの家賃

事業をするうえで欠かせない事務所や店舗、オフィスを借りる際に支払う家賃も、地代家賃として計上できます。

これは、事業拠点として利用する物件の家賃が該当し、賃貸借契約に基づいて支払っていることが前提となるでしょう。

レンタルオフィスやシェアオフィスなども、契約に基づいて事業拠点として利用している場合は、同様に地代家賃として計上できます。

駐車場代

地代家賃として計上できる費用には、駐車場代も含まれます。

駐車場代とは、事業で利用する車両を駐車するために必要な駐車場を借りる際に発生する費用のことです。

具体的には、従業員が通勤に使用する自動車や顧客への訪問に使用する営業車が使用する駐車場代金が該当します。また、商品を運搬するためのトラック、あるいは配達に使用する自転車などが駐車場を利用する場合も対象です。

ただし、私用で利用する車両を駐車するための駐車場代は、地代家賃として計上できません。

建物や駐車場の管理費、共益費

事業用に借りている建物や駐車場の管理費、共益費なども地代家賃に含められます。

管理費とは、建物の維持管理に必要な費用で、清掃費や電気料金、さらには水道料金やエレベーターの保守点検費用などが対象です。

共益費とは、建物の共用部分の維持管理に必要な費用で、廊下や階段の照明、あるいは共用トイレの清掃費などが該当します。

管理費や共益費は、事業に関連していて賃貸借契約に基づいて支払うものであれば、地代家賃として計上可能です。

20万円未満の契約更新料および礼金

20万円未満の少額な契約更新料および礼金については、例外的に地代家賃として一括計上することが認められています。

事業用の土地や建物を借りる際、契約更新料や礼金を支払うケースがあるでしょう。契約更新料や礼金は、原則として「前払費用」として処理し、契約期間に応じて費用計上していくのが一般的です。

しかし、少額な繰延資産については、簡便な処理を認めるという税法上の特例があります。ただし、この特例が適用されるのは、あくまで20万円未満の場合です。20万円以上の契約更新料や礼金は、契約期間に応じて費用計上していく必要があります。

地代家賃に計上できない費用

事業に関連する費用であっても、すべて地代家賃として計上できるわけではありません。地代家賃に計上できない費用には、以下のようなものがあります。

  • 物件の仲介手数料
  • 20万円以上の契約更新料および礼金
  • 建物の減価償却費、ローンの利息
  • 一時的に利用した駐車場代

これらの費用は、別の勘定科目を使用して計上する必要があるでしょう。地代家賃に計上できない費用を誤って計上してしまうと、経費が過大に計上され、税務調査で指摘を受ける可能性があります。

それぞれの費用がどの勘定科目に該当するのか、詳しく解説しましょう。

物件の仲介手数料

事業用の土地や建物を借りる際、不動産会社に仲介手数料を支払うことがあります。

仲介手数料は、地代家賃として計上できません。なぜなら、仲介手数料は、土地や建物を借りるために支払う費用ではなく、不動産会社に仲介を依頼したことに対して支払う費用であるためです。

そのため、仲介手数料は、「支払手数料」という別の勘定科目を使用して計上します。支払手数料は、事業をするうえで必要なサービスの対価として支払う費用を計上するための勘定科目です。

20万円以上の契約更新料および礼金

契約更新料や礼金は、事業用の土地や建物を借りる際に支払う費用ですが、20万円以上の場合は地代家賃として一括計上できません。

20万円以上の契約更新料や礼金は、税法上「繰延資産」として扱われます。繰延資産とは、将来にわたって収益をもたらす資産のことです。

契約更新料や礼金は、将来の契約期間にわたって事業に役立つと考えられるため、繰延資産として計上し、その効果が及ぶ期間に応じて費用計上していく必要があるでしょう。

具体的には、「長期前払費用」といった勘定科目で処理し、契約期間に応じて償却していきます。償却とは、資産の価値を少しずつ費用に振り替えていく会計処理のことです。

建物の減価償却費、ローンの利息

事業用に利用する土地や建物を所有している場合、建物の減価償却費やローンの利息を経費として計上できます。ただし、これらの費用は地代家賃として計上できません。

減価償却とは、固定資産の取得価額を、その耐用年数に応じて費用配分する会計処理のことです。建物を事業用として使用している場合、その建物は固定資産として計上され、減価償却費を経費として計上できます。

しかし、減価償却費は、建物を「使用」することに対する費用であり、建物を「借りる」ことに対する費用である地代家賃とは性質が異なるでしょう。そのため、減価償却費は、地代家賃とは別の勘定科目を使用して計上します。

また、住宅ローンの利息も、性質が異なるため、地代家賃として計上できません。しかし、住宅ローンを借り入れて事業にも利用する建物や土地を購入した場合、そのローンの利息は「利子割引料」として経費計上可能です。

一時的に利用した駐車場代

駐車場代を経費として計上する場合、一時的に利用した駐車場代と、月極駐車場のように継続的に利用する駐車場代では、勘定科目が異なるため注意が必要です。月極駐車場のように、毎月定額で支払う駐車場代は「地代家賃」として計上します。

一方、コインパーキングなどを利用した際の駐車場代は、「旅費交通費」で仕訳するのが一般的でしょう。旅費交通費とは、業務で移動する際に使用する交通機関の料金や、出張時の宿泊費などを計上するための勘定科目です。

コインパーキングの利用目的が、顧客訪問や取引先との打ち合わせなど、業務上の移動であれば、旅費交通費として計上できます。

個人事業主の自宅の家賃は地代家賃として計上できる?

自宅の一部を事務所や倉庫として利用している場合、あるいは事務所は別にあるものの自宅でも業務をする場合などは、自宅の家賃の一部を地代家賃として計上できます。多くの個人事業主にとっては、関心の高い項目ですが、正しく理解して適切な処理をする必要があるでしょう。

自宅の一部を地代家賃とするためには、プライベートな居住スペースと事業スペースを明確に区別する必要があります。そして、家賃の全額を経費として計上できません。プライベートな居住スペースを除いた、事業に利用している部分のみを抜き出して計上する必要があります。

これを「家事按分」と呼び、事業に利用している割合に応じて家賃を按分しますが、按分の基準としては、床面積や使用時間などが考えられるでしょう。

たとえば、自宅面積の3分の1を事務所として利用している場合は、家賃の3分の1を地代家賃として計上できます。あるいは、1日のうち4時間を自宅で業務に利用している場合は、家賃の4分の1を地代家賃として計上できるでしょう。

家事按分をする際は、合理的な基準を用いることが重要です。

【パターン別】地代家賃の仕訳例

地代家賃の仕訳は、取引の内容によって異なります。ここでは、代表的な次の3つのパターン別に仕訳例を紹介しましょう。

  • 【基本】地代家賃の仕訳例(預金で家賃を支払った場合の仕訳例)
  • 【家事按分】地代家賃の仕訳例(自宅の一部を事業用として使用している場合の仕訳例)
  • 【前払い家賃】地代家賃の仕訳例(家賃を前払いした場合の仕訳例)

これらの仕訳例を参考に、それぞれのケースに応じて適切な仕訳をしてください。

【基本】地代家賃の仕訳例

地代家賃の仕訳の基本は、借方を地代家賃として、貸方に支払方法を記載します。

たとえば、事務所の毎月の家賃14万円と管理費1万円を現金で支払った場合、以下のように仕訳しましょう。

管理費や共益費などは家賃と合算して地代家賃として処理し、現金や当座預金で支払った場合は、貸方科目を「普通預金」から「現金」や「当座預金」などに変更します。

【家事按分】地代家賃の仕訳例

自宅の一部を事業用として使用している場合は、家事按分をして、事業用部分の家賃を地代家賃として計上します。

たとえば、毎月の家賃15万円の住宅のうち、面積の30%を事務所として使用する場合を考えましょう。この場合の毎月の家賃支払時における仕訳例は、以下のとおりです。

決算時に、年間の家賃の合計額(15万円×12か月=180万円)を按分し、支払時に地代家賃として計上していたプライベート分の家賃(180万円×70%=126万円)を「事業主貸」勘定に振り替えします。

結果として、地代家賃(180万円×30%=54万円)が正しく計上されるでしょう。

毎月の支払いの都度、家事案分をすることも可能ですが、このように支払時にすべてを地代家賃として処理して、決算時にまとめて振り替えるという方法でも可能です。

【前払い家賃】地代家賃の仕訳例

翌月分の家賃を当月に前払いした場合の仕訳例について解説します。たとえば、毎月の家賃15万円のオフィスを事務所として使用する場合を考えましょう。9月20日に10月分の家賃を支払う場合、次のような仕訳をします。

翌月分の家賃を支払った場合は、「前払費用」として処理しましょう。翌月10月1日に前払い費用を地代家賃に振り替えるため、以下の仕訳をします。

このように前払費用を使用すると、翌月分の家賃支払いを正しく計上できるでしょう。

確定申告時の収支申告書の記入例

確定申告では、地代家賃の金額を正確に申告する必要がありますが、確定申告時に使用する書類は、白色申告と青色申告で異なります。

白色申告の場合は「収支内訳書」に記入しましょう。収支内訳書の「地代家賃」の欄(全体4ページのうち2ページ目)に、年間の地代家賃の合計額を記入します。

一方、青色申告の場合は「青色申告決算書」に記入しましょう。青色申告決算書の場合、「損益計算書」の部に「地代家賃」の項目があり(全体8ページのうち2ページ目)、ここに年間の地代家賃の合計額を記入します。

いずれの場合も、地代家賃の領収書や賃貸借契約書などを保管しておき、必要に応じて提出できるようにしておきましょう。

また、家事按分をする場合は、按分計算の根拠となる資料も合わせて保管しておく必要があります。たとえば、床面積で按分している場合は、間取り図や不動産登記簿謄本などが根拠資料となるでしょう。

地代家賃を計上するうえでの注意点

地代家賃は、正しく計上しないと税務調査で指摘を受け、追徴課税や加算税などのペナルティを課される可能性があるでしょう。ここからは、地代家賃の計上について知っておきたい注意点を、次の通り4点紹介します。

  • 生計を一にする配偶者や親族に支払う賃料は計上できない
  • 返金されることが決まっている敷金は計上できない
  • 住宅ローン控除の適用外となる可能性がある
  • 賃貸借契約書を保管しておく

地代家賃の計上に関するルールを正しく理解し、適切な処理をするためにも注意点を確認しましょう。

生計を一にする配偶者や親族に支払う賃料は計上できない

地代家賃を計上する際の注意点として、生計を一にする配偶者や親族に支払う賃料は、経費として認められないという点があります。

たとえば、生計を一にする親が所有する物件を事業用として借りている場合、その親に支払う家賃は地代家賃として計上できません。

そのため、親族間で物件を貸し借りする場合は、事前に税務上の影響をよく確認しておくことが重要です。なお、上記の例で、親と生計を一にしていなければ、地代家賃として計上できます。

返金されることが決まっている敷金は計上できない

賃貸物件を借りる際、敷金を支払うケースが一般的でしょう。敷金は、家賃の滞納や部屋の損傷があった場合に備えて、貸主に預けておくお金のことです。退去時に部屋の状態に問題がなければ、敷金は借主に返金されます。

契約した時点で、いずれ返金することが決まっている敷金については、地代家賃として計上できません。敷金は、あくまでも預け金という資産であり、家賃とは性質が異なるためです。

賃貸契約の解約時に敷金から原状回復費用を使った場合は、「修繕費」として仕訳します。修繕費とは、建物の修理や修繕にかかった費用を計上するための勘定科目です。敷金から原状回復費用を差し引いた残額は、借主に返金されます。

住宅ローン控除の適用外となる可能性がある

住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りて住宅を取得した場合に、一定の条件を満たせば所得税や住民税が控除される制度です。住宅ローン控除を利用する際に、事業用として住宅の一部を使用している場合は、注意が必要でしょう。

住宅ローン控除の適用条件のひとつに、「取得した住宅の床面積の2分の1以上の部分が自己の居住の用に供するものであること」というものがあります。つまり、住宅の半分以上を居住用として使用していないと、住宅ローン控除を受けられません。

そのため、自宅の一部を事務所として使用している場合、事務所スペースが広くなればなるほど、住宅ローン控除の適用外となる可能性が高くなります。

仮に事業用スペースが広くなった場合、地代家賃として経費計上できる額は増えますが、住宅ローン控除の適用外となる可能性がある点は注意が必要です。

住宅ローン控除と地代家賃のどちらを優先するかは、個々の状況によって異なります。住宅ローンの残高や金利、事業規模などを考慮して、総合的に判断する必要があるでしょう。

賃貸借契約書を保管しておく

地代家賃を経費として計上する際は、賃貸借契約書を会計の根拠資料として必ず保管しておく必要があるでしょう。

賃貸借契約書は、借主と貸主の間で締結される契約書であり、物件の所在地や賃料、契約期間などの重要な情報が記載されています。

税務調査では、地代家賃が適切に計上されているかどうかを確認するために、賃貸借契約書の提出を求められることがあるでしょう。

そのため、賃貸借契約書を保管していないと、経費として認められない可能性があります。賃貸借契約書は、地代家賃を適切に計上するために必要な重要な資料です。

地代家賃まとめ

地代家賃とは、事業をするために必要な土地や建物を借りて使用するときに支払う費用のことを指します。地代家賃として計上できる費用は、土地や建物の賃料、駐車場代など多岐にわたるでしょう。

ただし、物件の仲介手数料や20万円以上の契約更新料・礼金、建物の減価償却費などは地代家賃に含められません。

これらの費用を誤って地代家賃として計上してしまうと、税務調査で指摘を受ける可能性があるため注意が必要です。

また、個人事業主が自宅の一部を事業用として使用している場合は、家事按分をして、事業用部分とプライベート用部分の家賃を明確に区別する必要があります。家事按分は、床面積や使用時間などを基準にしますが、合理的な方法で按分することが重要です。

地代家賃を正しく理解し適切に処理すれば、事業の健全な経営につながるでしょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
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  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
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