個人事業主の家事按分とは?計算方法や対象の経費を紹介

更新日:2024年06月28日

家事按分とは

個人事業主の家事按分とは、プライベートとビジネスを兼ねた支出のうち、業務に利用した額のみ経費として計上することを指します。計上時は、事業との関連性や必要性、妥当性などがポイントです。

本記事では、家事按分とは何かを説明した上で、押さえておくべきポイントを解説します。

目次

家事按分とは

家事按分とは、個人事業主のプライベートとビジネスを兼ねた支出のうち、業務に利用した額のみを経費として計上することです。

本来、家事上の費用(家庭内の事柄に関する費用などのプライベートな支出)は、必要経費として認められていません。ただし、個人の業務においてひとつの支出が家事と業務の両方にかかわりがある費用(家事関連費)については、業務遂行上直接必要であることが明らかである場合に限り、一部を経費として計上できます。

なお、状況によって家事関連費の一部を経費として計上できないケースもあるため、注意が必要です。

参考)国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」

家事按分した費用を経費計上するための要件

家事按分自体に、明確な定義や決まった計算方法などはありません。ただし、家事按分した費用を経費として計上するためには、以下の要件を満たすことが必要です(所得税法施行令第96条)。

なお、不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得を生み出す業務に必要なものかどうかは、支出額のうち業務遂行上必要な部分が50%を超えるかで判断します。また、50%以下でも、必要な部分を明らかに区分できる場合は、相当金額を必要経費として算入可能です。

参考)e-Gov「所得税法施行令 第九十六条」
参考)国税庁「法令解釈通達 〔家事関連費(第1号関係)〕」

家事按分のポイント

要件を踏まえ、家事関連費を家事按分で経費計上する際のポイントは、主に以下のとおりです。

  • 事業との関連性・必要性を証明できるか
  • 対象の経費額が収入から妥当と判断できるか
  • 算出する比率に明確な根拠はあるか

ここから、各ポイントを解説します。

事業との関連性・必要性を証明できるか

経費として計上する費用が事業と関連することや、事業に欠かせないことを証明できるかがひとつのポイントです。

たとえば、自分のなかではビジネスで着用するつもりで服・靴・メガネなどを購入していても、プライベートでも着られるようなものであれば、基本的に必要経費として認められないでしょう。また、会社員と異なり個人事業主自身に「福利厚生」の概念はないため、健康診断や人間ドックを受けた際の費用も必要経費に該当しません。

このように、事業と関連しないにもかかわらず経費として計上していると、のちに税務署から指摘を受ける可能性があります。関連性・必要性があいまいで、証明できるものもないのであれば、経費計上は断念した方がよいでしょう。

対象の経費額が収入から妥当と判断できるか

対象の経費額が収入から妥当と判断できるかも、家事按分で経費計上する際のポイントです。たとえ事業との関連性を証明できたとしても、収入と比較して異常に高額な場合は認められない可能性があります。

たとえば、年収300万円台の個人事業主が1,000万円前後の高級車を購入して家事按分で経費計上した場合、たとえビジネスで使っていたとしても税務署から厳しくチェックされるでしょう。また、定期的に10万円前後の会食をして経費計上している場合も、税務署から不自然に受け取られる可能性があります。

算出する比率に明確な根拠はあるか

算出する比率に明確な根拠はあるかという点も、家事按分を考える上で大切なポイントです。支出した家事関連費のうち、いくらを家事按分するかについて明確な決まりはありません。家事按分の比率を大きくした方が所得が低くなるため、税負担も軽減できるでしょう。

しかし、家事按分で業務部分の比率を過大にすると、税務署から指摘を受ける可能性があります。自分の感覚で事業分・プライベート分の比率を決めず、明確な根拠に従って計算しましょう。

青色申告と白色申告で考え方が異なる

青色申告を利用している人と白色申告を利用している人では、家事按分についての考え方が異なる点に注意しましょう。

青色申告とは、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をすることで、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる制度を指します。一方、白色申告は青色申告より手続きがシンプルな分、節税面のメリットが少ない制度です。

青色申告の場合、家事関連費のうち事業向けの支出が50%以下であっても家事按分できます(所得税法施行令第96条第2項)。その意味では、青色申告の方が家事按分においてもメリットがあるでしょう。

しかし、白色申告でも必要な部分を明らかに区分できる場合は相当金額を必要経費として算入可能なため、実務上大きな違いはありません。

家事按分対象の経費例とその計算方法

家事按分対象になる経費は、主に以下のとおりです。

  • 家賃
  • 水道費・光熱費
  • 通信費
  • 自動車関連費
  • パソコンなどの購入費

それぞれの概要と、家事按分で経費計上する際の一般的な計算方法を解説します。

1. 家賃

住宅内に事業用で使用しているスペースがある場合、家賃を家事按分で経費として計上できます。

家賃を家事按分で計上する際は、全体の床面積のうち事業用に使用している床面積の割合を計算の根拠とすることが一般的です。たとえば、延べ床面積100平方メートルの住居で、床面積40平方メートルをオフィスとして使用していれば、家事按分の比率は4割と計算できます。そのため、家賃が20万円であれば経費として計上するのは8万円です(20万円 × 40%)。

また、事業に使用している時間を根拠に計算する方法もあります。たとえば、1週間のうち業務に使用している時間が51時間(8.5時間/日、週6日間稼働)であれば、按分率は約3割です(51時間 ÷ 168時間)。家賃が20万円であれば、6万円を経費として計上できます(20万円 × 30%)。

なお、賃貸ではなく持ち家の場合でも、建物の固定資産税などは家事按分で経費計上が可能です。

2. 水道費・光熱費

住宅内に事業用で使用しているスペースがある場合、水道費や光熱費も家事按分で経費として計上できます。水道費・光熱費は、事業で使用している時間を根拠に按分比率を算出することが一般的です。

また、光熱費のうち電気代は使用しているコンセントの数を根拠に、家事按分の比率を計算する方法もあります。たとえば、住居に差し込み口が15個あり、そのうち業務に使っているコンセントが3個であれば、按分比率は2割です。

3. 通信費

業務に使っているのであれば、自宅で支出している通信費も家事按分して経費計上できます。

通信費の家事按分比率は、使用日数や使用時間を使って計算することが一般的です。たとえば、1週間で業務使用時間が51時間であれば、按分比率は約3割と計算できます。そのため、インターネット料金が5,000円の場合は、約1,500円を経費として計上可能です。

なお、携帯電話はプライベート共用にせず、ビジネス専用として別途持っていた方が経費の計算がしやすいでしょう。業務用の携帯電話を持つことには、個人の番号を取引先に知られずに済むメリットもあります。

4. 自動車関連費

業務に使用するのであれば、プライベートに使う自動車の購入費用やガソリン代なども家事按分できます。ガソリン代を家事按分する際に計算の根拠になるのが、走行距離です。

たとえば、月の平均走行距離が400kmで、そのうち業務で走った距離が100kmであれば、家事按分の比率は25%と計算できます。そのため月のガソリン代が5,000円の場合、経費計上できるのは1,250円です。

なお、業務中に使用した高速料金や駐車料金などは、原則として全額経費に計上できます。

5. パソコンなどの購入費

事業に使用するのであれば、自宅で使うパソコンやコピー機を購入する際の費用も家事按分の対象です。一般的に、パソコンやコピー機を購入した際の費用の按分比率は、業務に使用している日数や時間に基づいて計算します。

たとえば、1週間のうち業務に使用する時間が51時間であれば(按分比率約3割)、2万円のコピー機で経費計上できるのは6,000円分です。

家事按分の記帳方法

家事按分で経費計上する際は、当然帳簿に記帳しなければなりません。記帳方法は、毎月記帳するか、1年分をまとめて記帳するかによって異なります。

ここから、7月から事業を開始し、家賃が20万円(普通預金口座から引き落とし)で家事按分比率が4割のケースを例に、それぞれの記帳方法を確認していきましょう。

毎月記帳する場合

毎月家事按分して記帳する場合の記帳方法(仕訳の方法)は、以下のとおりです。

日付 借方 貸方 摘要
2024年7月1日 地代家賃 80,000 普通預金 200,000 自宅兼事務所の家賃
事業主貸 120,000

今回、家事按分比率が4割のため、借方に8万円を地代家賃として経費計上し、残りの12万円(プライベート支出分)を事業主貸としています。事業主貸は、経費にできない支出がある場合に用いる勘定科目です。

また、20万円は普通預金から払い出されるため、貸方に記載しています。

1年分をまとめて記帳する場合

決算時に1年分をまとめて家事按分の処理をする場合、毎月の仕訳方法は以下のとおりです。

日付 借方 貸方 摘要
2024年7月1日 地代家賃 200,000 普通預金 200,000 自宅兼事務所の家賃

毎月記帳する際は、家事按分のことを気にする必要がないため、地代家賃として全額(20万円)を記帳しています。

続いて、決算の際に以下の記帳が必要です。

日付 借方 貸方 摘要
2024年12月31日 事業主貸 720,000 地代家賃 720,000 家賃の家事按分
(事業主貸6割)

7月から12月までの6か月間にかかった家賃は、120万円です。そのうち、家事按分比率は4割のため、72万円(120万円 × 6割)を地代家賃から事業主貸に振り替えました。

なお、毎月「事業主貸」として記帳し、決算時にまとめて「地代家賃」に振り返る方法もあります。

家事按分で押さえておくこと

家事按分で押さえておくべきことは、以下のとおりです。

  • 適正でなければ追徴課税が発生する
  • 比率を計算した際のエビデンスを残す
  • 判断に困る場合は専門家に相談する

それぞれ解説します。

適正でなければ追徴課税が発生する

税務調査の結果、申告内容や金額が適正でないと判断された場合、追徴課税(追加で課される税金)が発生する点を理解しておきましょう。税務調査とは、税務署などが納税者が正しく確定申告しているかを調査することです。

家事按分による経費計上が適切かどうかは、税務署が決めます。自分では問題のない申告をしたつもりでも、税務署の見解が異なれば不足している分の納税額に加えて、追徴課税も支払わなければなりません。家事按分で経費計上する際は、慎重な対応が必要です。

比率を計算した際のエビデンスを残す

家事按分の比率を計算する際、関連するエビデンスを残すことを心がけましょう。税務調査がある場合、税務署の担当者に対して家事按分の根拠を説明しなければなりません。

根拠が不十分であれば、家事按分が認められない可能性があります。税務署に納得してもらえるよう、計算の根拠を残したメモやデータ、領収書などを保存することが重要です。

判断に困る場合は専門家に相談する

家事按分で判断に困った場合は、専門家(税理士)に相談することも大切です。家事按分の計算方法に、確実な方法はありません。計算の根拠があいまいな場合や、どのように計算すればよいかわからない場合は、追徴課税を防ぐために専門家に相談した方がよいです。

税理士に依頼すると、当然費用が発生します。ただし、税理士事務所によって初回無料のケースもあるため、確認してみてください。なお、確定申告には期限があるため、気になったら早めに相談するようにしましょう。

家事按分まとめ

個人事業主の家事按分とは、プライベートとビジネスを兼ねた支出のうち、業務に利用した額のみを経費として計上することです。

家事按分を増やせば、税負担を軽減できる場合があります。ただし、事業との関連性・必要性を証明できるか、比率に明確な根拠はあるかといった点を意識しなければなりません。

家事按分対象の具体例は、家賃や水道費・光熱費、通信費などです。一般的に、家賃は全体に占める事業用の床面積の割合で按分比率を計算します。

家事按分は、適正でなければ追徴課税が発生することがある点に注意が必要です。計算に根拠や自信を持てない場合には、専門家への相談も検討しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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