営業利益とは何か~計算方法、経常利益との違いについて
2023.01.09

営業利益とは、企業が主力の事業で稼いだ利益を表しており、その企業の業績を評価する指標のひとつです。そのため、営業利益を上げることは企業の評価を上げることにも繋がり、金融機関からの融資や株主からの投資を受けやすくなるなど多くのメリットを得られます。そこで本記事では、営業利益の構成要素や計算方法について解説します。さらに、経常利益との違いや、営業利益と従業員へのボーナスの関係性についても紹介します。
営業利益の構成要素
営業利益は、売上高、売上原価、販売費・一般管理費により構成されています。
損益計算 | 売上高 | ||
売上原価 | 販売費・一般管理費 | 営業利益 |
売上高
売上高は、メインとしている事業で得た売上を指します。メインではない事業で得た売上は「営業外収益」に含まれるため雑収入などとして計上し、売上高には含みません。
売上原価
売上原価とは、販売した商品に係るコストです。製品を販売する場合は、製品を製造するための材料費や人件費などを売上原価として計上します。メインの事業で販売した商品やサービスにかかるコストである売上原価は、以下の計算方法で算出されます。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 ー 期末商品棚卸高
例えば、1個500円の食器を販売しており、期首に10個の在庫があったとします。そして、この食器を当期に100個仕入れ、期末に20個売れ残っていた場合は以下のように算出されます。
5,000(期首商品棚卸高)+50,000(当期商品仕入高)ー10,000(期末商品棚卸高)=45,000
よって、この場合の売上原価は45,000円です。
このように、売上原価は初めに期首商品棚卸高・当期商品仕入高・期末商品棚卸高をそれぞれ算出し、計算式に当てはめることで簡単に算出できます。
販売費及び一般管理費
販売費・一般管理費とは、売上原価以外で販売した商品に係るコストを指し、具体的には営業活動に関連して発生するコストを示します。営業活動に関連して発生する主なコストは、営業活動における人件費や交際費、通信費などが含まれます。
販売費の主な内訳
販売費とは、販売費及び一般管理費のうち、販売に直接要した費用です。会社におけるメイン事業の商品や、サービスを販売するための営業活動にかかったコストを指します。営業活動における人件費・交通費・広告宣伝費・商品の運搬費などが含まれます。販売費に関する勘定科目は、以下の通りです。
- 販売促進費
- 広告宣伝費
- 荷造運賃
- 接待交際費 など
このように、営業活動に係るコストが販売費です。
一般管理費の主な内訳
営業活動に係るコストである販売に対して一般管理費とは、企業の運営活動に係るコストのことを指します。例えば、本社の家賃や水道光熱費、コピーに必要なインク代や用紙代、経理スタッフの人件費などが含まれます。一般管理費の勘定科目の一例は以下の通りです。
- 給与や役員報酬
- 水道光熱費
- 消耗品費(インク代や用紙代など)
- 地代家賃
- 保険料
- 旅費交通費
- 租税公課 など
このように、企業の運営に係るコストは一般管理費に含まれます。
営業利益の計算方法
前述の通り、営業利益は売上高・売上原価・販売費及び一般管理費で構成されています。したがって、営業利益は3つの要素を用いて算出できます。営業利益の計算方法は以下の通りです。
♢計算式
営業利益 = 売上高 ー 売上原価 - 販売費・一般管理費
営業利益 = 売上総利益 - 販売費・一般管理費
実際に営業利益が黒字の会社と赤字の会社を例にとり、営業利益を計算してみましょう。
まず、売上総利益(売上高ー売上原価)が1,000万円、販売費及び一般管理費が600万円だった場合、営業利益は△400万円と算出されます。この結果、営業利益がプラスを示すことから、この企業は黒字経営であるとわかります。
次に、売上総利益が1,000万円であるのに対し、販売費及び一般管理費が1,200万円だった場合、営業利益は▲200万円と算出されます。この結果、営業利益がマイナスであるため、この企業は赤字経営であることがわかります。
このように、営業利益は売上高・売上原価・販売費及び一般管理費の数値を計算式に当てはめることで算出できます。
売上総利益(粗利益・粗利)とは
先ほど、営業利益の計算を一例から算出した際に、売上総利益が出てきました。そこで、売上総利益とは何かについて確認しましょう。
売上総利益とは、事業年度中にメインの事業から得た利益を指し、売上高から売上原価を差し引くことで算出できます。財務諸表のひとつである損益計算書に含まれており、損益計算書で科目の先頭に記載されています。
なお、売上総利益は「粗利益」や「粗利」と呼ばれることもありますが、すべて同じ意味を表します。
営業利益と経常利益との違い
経常利益と営業利益は、意味を混同されがちですが、営業利益と経常利益は異なる意味を持ち、示す指標も異なります。そこでここからは、経常利益の概要を解説するとともに、営業利益との違いについて確認します。
まず、経常利益は会社全体の利益を示します。営業利益はメインとする事業のみに関する利益であるのに対し、経常利益はすべての事業から経常的に得た利益を指します。
なお、経常利益を算出する際には、営業外収益と営業外費用の算出が必要です。営業外収益とはメインとしている事業以外で得た収益を指し、営業外費用とはメインとしている事業以外に係るコストを指します。
このように、営業利益と経常利益は算出の際に含まれる利益や事業の範囲に違いがあります。混同しないように注意しましょう。
※参考:経常利益とは何か~混同しやすい利益との違いや活用・分析方法~
経常利益の計算方法
事業全体の利益である経常利益は、以下の計算式で算出できます。
♢計算式
経常利益 = 売上高 ー 売上原価 - 販売費・一般管理費 + 営業外収益 - 営業外費用
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
なお、上記の計算式で算出した経常利益がマイナスだった場合は、経常利益ではなく経常損失と呼ばれます。
営業利益を増やす方法
営業利益の計算方法から分かるとおり、営業利益を増やすには「売上を増やす」「売上原価を減らす」「販売費及び一般管理費を減らす」の3つの観点があります。ここでは、営業利益を増やしたいときの視点について簡単に紹介します。
売上を増やす
- 商品単価を上げる(値上げする)
- いち顧客あたりの購入点数を増やす
- 顧客数を増やす(新規開拓、リピート購入の促進)
売上原価を下げる
- 仕入先に価格交渉する
- 大量仕入れで単価を下げる
- 別の仕入先を検討する
販管費を削減する
- 無駄な固定費を探し出して削減する
- 変動費の中で、売上に貢献しない費目を削減する
営業利益とボーナスの関係性
営業利益はボーナスの総額を決める重要なベースとなります。そこで、営業利益とボーナスの深い関係性について、ボーナスに関する制度や業績連動型賞与を解説し、業種別のボーナス平均額を紹介します。
ボーナス(賞与)に関する制度
ボーナス(賞与)とは、毎月支払われる給与に別途支給される賃金です。年に数回定期的に支払われる場合もあれば、成績に応じて臨時的に支払われる場合もあります。ボーナスは必ずしも支給しなければならないというわけではなく、ボーナスの有無は各企業が自由に決められます。しかし、ボーナスを支給する場合は支給時期・算定期間・支給対象者・条件などの就業規則を明確に定めなければなりません。ボーナスを支給すれば社員のモチベーション向上が期待できるため、企業成績を見て前向きにボーナスの支給を検討し、支給する際は適切に就業規則を定めましょう。
参考:厚生労働省「労働基準法の施行に関する件」
業績連動型賞与について
賞与は、大きく基本給連動型賞与・業績連動型賞与・決算賞与の3種類に分けられます。このうち業績連動型賞与とは、営業利益や経常利益を基準に賞与額を決める仕組みです。日本経済団体連合会の調査によると、約6割の企業が業績連動型賞与を導入しており、そのうち約半数が営業利益を指標に賞与額を決めています。業績連動型賞与は、その名の通り業績に連動して賞与が決められるというメリットがある一方で、決算時期に業績が下がった場合は賞与が業績を圧迫するという側面も有しています。
参考:日本経済団体連合会「2019 年「夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」の概要」
【業種別】ボーナスの平均額
業種別にボーナスの平均額を紹介します。厚生労働省が行なっている毎月勤労統計調査のデータによる業種別のボーナス平均額は以下の通りです。
業種 | ボーナス平均額 |
電気・ガス業 | 794,941円 |
情報通信業 | 671,032円 |
学術研究等 | 534,138円 |
金融業・保険業 | 625,813円 |
教育・学習支援業 | 520,472円 |
※事業所規模5人以上の結果
参考:毎月勤労統計調査
営業利益のまとめ
企業がメインとする事業で得た利益を表す営業利益。営業利益を算出することで、企業の経営が黒字であるか赤字であるかを判断できます。また、経営状態の指標だけではなく、業績連動型賞与を実施している場合は賞与額を決める指標にもなるなど、汎用性の高い指標です。営業利益とともに経常利益や営業利益率についても知り、会社経営の安定化と向上を図りましょう。
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