前受金とは~仕訳、消費税、会計処理の注意点を解説~

2024.01.19

前受金

前受金とは、サービスや商品の提供前に、一部または全額を受け取るお金、すなわち「手付金」や「内金」などを指します。例えば、無形サービスであるコンサルティングの提供を完了する前に受け取った手付金や着手金などが、前受金に該当します。本記事では、前受金の解説から仕訳例、また混同しやすい勘定科目までご紹介します。

前受金の仕訳例

前受金に関する理解を深めるため、ここからは前受金の仕訳例を実際に見てみましょう。

手付金(内金)受け取ったときの仕訳

例)10,000円の商品の予約注文を受け、手付金500円を現金で受け取った場合

借方 貸方
現金 500円 前受金 500円

手付金(内金)を受け取ったときは負債が増えるため、貸方に「前受金」を記入します。

残金を受け取ったときの仕訳

例)10,000円の商品を引き渡し、代金の残額を掛けで支払ってもらう場合

借方 貸方
売掛金 9,500円 売上 10,000円
前受金 500円

商品を引き渡したタイミングが「商品を引き渡す義務」を果たしたタイミングです。仕訳では前受金という負債が減少すると考え、借方に記入します。また、商品を引き渡したら、全体の料金から手付金を差し引いた残高を受け取ります。

前受金は契約負債の一種

前受金とは、サービスを提供する前の「預かり金」のような意味合いを持ちます。もし何らかの事態に起因してサービスや商品を提供できなくなったときは、前受金を返還しなければなりません。前受金は、サービスや商品の代金を事前に受け取ったに過ぎず、その後はサービスの提供義務が残っています。ただし、サービス提供完了後に売上の勘定科目に振替します。すなわち前受金とは、お金を売上計上するまで一時的に処理するための勘定科目です。そのような経緯から、前受金はサービス提供義務を表す契約負債の一部として扱われます。契約負債とは、商品やサービスを提供する前にもらった負債を指します。

前受金は消費税非課税

前受金として一時的に計上された料金に対して、消費税はかかりません。なぜなら、前受金は売上と異なり消費に関する勘定科目ではないためです。消費税の課税対象は「資産の譲渡・資産の貸付け・役務の提供」であり、前受金はいずれにも当てはまりません。ただし、後に売上として計上したときには課税対象として扱われます。基本的に、サービスを提供したタイミングでの税率で課せられます。前受金から売上に勘定科目を振り替えるときには、消費税も忘れずに計上しましょう。

前受金の会計処理の注意点

前受金の仕訳を実行するときには、3つの注意点があります。個々に注意点を解説します。

入金後の商品の動向を注視

前受金から売上高へ適切に振り替えるためには、入金後に商品やサービス動向の注視が重要です。入金後の商品やサービスの動向を把握していなかったときには、前受金を売上の勘定科目へ振り替えることを忘れ、負債のまま取り残してしまう可能性があります。前受金の残高がある事実は、取引内容について正確に処理されていないことがあり得ます。このような状態は、企業の財務諸表の信頼が損なわれかねません。

会社により勘定科目が異なるケース

勘定科目は、各会社独自のルールに従って選定できます。つまり、経理担当者は会社の勘定科目についてルールを確認しておく必要があります。また、どの勘定科目を使ったらよいか・どのように仕訳をしたらよいかの判断に迷ったときは、自己判断せず上司や責任者に判断を仰ぐことも重要です。

建設業の請負工事には「未成工事受入金」

前受金は、サービス内容の有形・無形を問わずに使える勘定科目です。ただし建設請負工事に関しては、前受金を使用せず「未成工事受入金」で処理します。なぜなら建設業の工事は、工事期間が長く、工事1件の単価が高いためです。一般会計の前受金として処理するのではなく、建設業界独自の勘定科目で処理します。請負工事の着手金や前払金が入金されたときには、以前の処理方法を確認しましょう。

参考)建設業会計の特殊な勘定科目、仕訳のポイントを解説

前受金かどうかを見極めるポイント

前受金の意味合いを理解していても、類似した勘定科目と混同してしまうことがよくあります。以下に、前受金と分かるポイントを2つご紹介します。2つのポイントをもとに、前受金と他の勘定科目を見極めましょう。

負債か資産かを確認

該当の勘定科目が負債科目であるか資産科目であるかに着目します。負債科目は、サービスを提供しなければならない・料金の支払いをしなければならない「義務」、資産科目は、サービスの提供を受ける・お金の支払いを受ける「権利」 上記のように区別すると分かりやすいでしょう。前述の通り、前受金は負債科目です。なぜなら、会計における契約負債は原則として1年以内に返済する義務があります。つまり、前受金を受け取ることは、サービス提供義務の負債を負うということです。

損益の関連性

前受金か他の勘定科目かを区別するには、将来的に見て損益への影響の有無で判断する手法もあります。前受金はサービスや商品などの納入後、売上高に振り替えられるため、損益に影響があります。注視しなければならないことは、売上に振替をする時期です。前述の通り、前受金を売上の勘定科目として計上できる時期は、サービスの提供が終わったタイミングです。前受金を売上として振替計上するタイミングを誤ると、期間損益に影響がでてしまうため、丁寧に管理する必要があります。

前受金と混同しやすい勘定科目

最後に、混同しやすい勘定科目をまとめて解説します。

前払金|前受金と逆の勘定科目

商品の仕入れや販売の際に、商品代金の一部を先に支払ったり受け取ったりすることがあります。このお金が「手付金(内金)」です。商品を受け取る前に代金を先払いした場合、「前払金」という勘定科目を使って仕訳します。前払金は手付金を事前に支払うことによって生じる「商品を受け取る権利」のため、貸借対照表の資産に含まれます。

参考)前払金(前渡金)とは~仕訳、具体例、前払費用との違い

前受収益|収益の繰延べの処理で用いる勘定科目

保険料の前払いに対しては「前払保険料」、地代の前受けに対しては「前受地代」などを使って振替え処理をします。その他の費用を前払いした場合や、収益を前受けした場合は、前払費用や前受収益の勘定科目に具体的な費用名や収益名を入れてください。その際は「すでに支払っているもの」「すでに受け取っているもの」なので、費用名や収益名の頭に「前払~」「前受~」と記します。

参考)前受収益とは?仕訳方法や前受金との違いをわかりやすく解説

仮受金|内容や金額が分からないうちに受け取ったお金

内容や金額が分からないうちに受け取ったお金が「仮受金」です。仮受金を受け取った段階では「後で本来の勘定科目に振り替える必要」があるため、貸借対照表の負債が増加します。仕訳では貸方に仮受金を記入します。仮受金は、お金を受け取ったものの内容が分からないときの仕訳で使う勘定科目です。不明なお金を受け取ったら、まずは仮受金を負債に計上。内容が判明したら相殺します。仮払金と同じように、決算まで残っていると、決算書を見られたときに印象が悪くなる可能性もあります。仮受金が何のお金なのかをすぐに調べるようにしましょう。

参考)仮受金の仕訳~不明なお金を受け取ったとき、内容が分かったとき~

売掛金|後日受け取る約束で売り上げた対価の未回収額

売掛金は、掛取引の仕訳で使う勘定科目です。英語で表すと「accounts receivable」です(知らなくても問題ありませんが)。反対に、仕入れたときには債務として「買掛金」を用います。売掛金は代金を後で受け取る権利がある「売上債権」のため、貸借対照表の資産に計上されます。掛取引の利便性は高いというメリットがある一方、代金を回収できないリスクがあるというデメリットもあります。特に、大口の取引がある場合、その売上債権を回収できないと、資金繰りが一気に悪化してしまう恐れもありますそのため、はじめて取引する得意先の信用調査が必要だったり、前金をもらったりといった対策が必要になるのです。また、売掛金の回収リスクを軽減できるサービスもあります。

参考)売掛金とは?仕訳例や買掛金との違いも解説

預り金|一時的に預かったときに使う勘定科目

預り金とは、役員・従業員・取引先などが負担すべきお金を、会社や個人事業者が一時的に預かったときに使う勘定科目です。預り金は、本人に返金される場合もあれば、第三者への支払いに充てられる場合もあります。預り金は、「従業員の所得税や社会保険料などを会社や個人事業者が本人に代わって納付するために一旦預かるお金」と、お金の流れをシンプルに考えると理解しやすいかもしれません。預り金とは反対に、お金を立て替えるときの勘定科目は「立替金」です。

参考)預り金とは~仕訳、納付、含まれるものについて~

前受金まとめ

前受金とは、サービスや商品の提供前に、一部または全額を受け取るお金、すなわち手付金や内金などのことを指します。サービス内容の有形・無形を問わずに使える勘定科目です。一方で、建設業の工事費用には前受金ではなく、「未成工事受入金」を使用します。建設業の工事は、工事1件の単価が高いためです。また、前受金に消費税はかかりません。ただし、売上に勘定するタイミングで消費税が課税されるため、動向を注視する必要があります。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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