車両運搬具とは~仕訳、適用範囲、減価償却について解説~

2023.03.02

車両運搬具

車両運搬具とは、仕訳の際に使用する勘定科目の一つです。社用車をはじめ、業務上で使用する車全般が車両運搬具に含まれます。ただし、車輪のついたものや車と認められるものすべてにおいて、車両運搬具の勘定科目を使用するわけではありません。車両運搬具の勘定科目を使用するには一定の基準が存在しているため、適用範囲について理解を深めておくことが重要です。この記事では、車両運搬具の適用範囲をはじめ、耐用年数と減価償却の方法、仕訳方法について解説します。

車両運搬具の仕訳

車両運搬具は、減価償却のほか、購入・売却時にも仕訳が必要になります。ここでは、それぞれ3つのケースを想定して解説します。

車両運搬具を購入したときの仕訳例

車両運搬具を購入したときには、現金や預金が支出されるため、貸方へ記載します。一方で車が手元に入ってくるため、借方の勘定科目は「車両運搬具」となります。

200万円の新車を購入した場合の例を見てみましょう。運送費をはじめとする購入にかかった諸費用は合計で40万円かかりました。それらの雑費はまとめて車両運搬具として計上できるため、以下のような記載になります。

借方 貸方
車両運搬具 2,400,000円 現預金 2,400,000円

車両運搬具を売却したときの仕訳例

車両運搬具を売却したときは、帳簿価額より高く売れた場合と低く売れた場合で記載方法が異なります。帳簿価額で50万円の社用車を販売した場合の記載内容は、以下のとおりです。

▼例①60万円で販売できて利益が出たケース

借方 貸方
現預金 600,000円 車両運搬具 500,000円
固定資産売却益 100,000円

▼例②30万円で販売して損失が出たケース

借方 貸方
現預金 300,000円 車両運搬具 500,000円
固定資産売却益 200,000円

車両運搬具の支払いが翌月以降になるときの仕訳例

車両運搬具を取得する際は、現預金で支払っているとは限らず、翌月払いやローン払いを選択することもあります。そのようなケースでは、勘定科目に「未払金」を用います。100万円の車を購入して、支払いが翌月になる場合の例は以下のとおりです。

借方 貸方
車両運搬具 1,000,000円 未払金 1,000,000円

なお、1年を超えるローン払いの場合には「未払金」ではなく「長期未払金」の勘定科目を使用します。

車両運搬具の仕訳の注意点

車両運搬具の仕訳をするうえで、注意しておきたいポイントがあります。

減価償却では1円残す

耐用年数に応じて減価償却する際、最後に1円を残しておきましょう。簿価1円資産として残すことで、その資産を現在も使用していることが分かります。このように固定資産を1円残すことを「備忘価額」といいます。使わなくなった時点で除却して、いつまでも残り続けたままにしないように処理をすることが重要です。

たとえば、耐用年数4年の100万円の社用車を購入して、定額法で減価償却した場合、1年目から3年目の償却額は25万円です。4年目はついては、償却額を24万9999円にして1円の簿価を残します。

手数料や車の付属品は車両運搬具に含める

車両運搬具は、購入にかかった手数料や付属品にかかった費用を含めた額で計上する必要があります。

たとえば、車両購入時に発生した運搬費・購入手数料・エアコン・ラジオ・スペアータイヤなどの購入費が挙げられます。それらを含めているかどうかで、「少額の減価償却資産」のラインを超えるかどうかが変わる可能性があるため注意が必要です。

車両運搬具の適用範囲

車両であればすべて車両運搬具として分類されるわけではなく、車両運搬具には一定の条件が設定されています。仕訳の際は、どのような車両が「車両運搬具」に含まれるのか確認しておくことが重要です。ここでは、車両運搬具に含まれるものと、車両運搬具に間違われやすいものを紹介します。

車両運搬具に含まれるもの

業務で人やものを運搬するために使用される車両は、車両運搬具に含まれます。代表的なものとして、以下が挙げられます。

▼車両運搬具に該当するもの

  • 自動車
  • 自転車
  • 電気自動車
  • バイク
  • リヤカー
  • レッカー車
  • 消防車
  • 救急車
  • 除雪車
  • 霊柩車
  • 電車
  • 蒸気機関車
  • トロッコ など

上記のように、「業務で資源(人・もの問わず)を運搬するために使用する」「車輪がついている」の2つの条件を満たしていれば、ほとんどの場合は車両運搬具に含まれます。

参照:e-Gov法令検索『減価償却資産の耐用年数等に関する省令

車両運搬具に間違われやすいもの

「業務で資源を運搬する」「車輪がついている」を満たしていればほとんど車両運搬具に含まれると前述しましたが、例外もあります。

たとえば、クレーン車やブルドーザー・ロードローラーなどは機械装置に勘定されます。
主な使用目的が人や物の運搬ではなく、作業場において作業するために使用する車両や機械については、車両運搬具には該当しません。また、車輪がついているものであっても、運搬以外の用途で使用する場合には、車両運搬具には含まれません。キャスター付きの椅子や机・棚、コピー機などが挙げられます。

このように、物資を運搬できるもの、車輪付きのものがすべて車両運搬具に含まれるわけではないため、気を付けましょう。

参考:国税庁『第5節 車両及び運搬

車両運搬具の耐用年数

車両運搬具は種類によって耐用年数が異なります。適用される耐用年数に応じて、減価償却することが可能です。ここでは、主な車両運搬具の耐用年数について解説します。なお、減価償却の方法については後ほど解説します。

車両運搬具の耐用年数一覧

車両運搬具の耐用年数は『減価償却資産の耐用年数等に関する省令』によって定められています。主な車両運搬具の耐用年数は、以下のとおりです。

車両運搬具の分類 車両運搬具の種類 耐用年数
鉄道用 電車 13年
蒸気機関車 18年
特殊自動車 消防車・救急車 5年
除雪車 4年
霊柩車・レッカー車(小型) 3年
タクシー・レンタル・教習所用 自動車 3年
大型乗用車 5年
前掲以外のもの 一般乗用車 6年
小型車(総排気量が0.66リットル以下) 4年
ダンプ式のもの 4年
電気自動車 4年
自転車 2年
バイク 3年
リヤカー 2年
トロッコ(金属製) 5年

参照:e-Gov法令検索『減価償却資産の耐用年数等に関する省令

中古車を購入した際の耐用年数

中古車は、前項で紹介した表をもとに計算して耐用年数を計算します。ただし、計算する際には以下のルールがあります。

▼中古車の場合の計算ルール

  • 耐用年数の全部を経過している場合は、元の耐用年数の20%が耐用年数になる
  • 耐用年数の一部だけが経過しているものは、経過した年数を差し引いた後、差し引いた年数の20%を加えたものが耐用年数になる
  • 1年未満の端数は切り捨てる
  • 計算結果が2年以内の場合は、耐用年数は2年となる

たとえば、軽自動車を中古で購入した場合の耐用年数の考え方は、以下のようになります。

  • 4年以上経過したもの…4年×20%=8か月 ⇒2年に満たないため、耐用年数は2年
  • 1年経過したもの…4年-1年+(4年×20%)=3年8か月 ⇒端数を切り捨てるため、耐用年数は3年

参照:国税庁『No.5404 中古資産の耐用年数

車両運搬具の減価償却の方法①|定額法

減価償却の方法は2つあり、そのうちの一つが「定額法」です。基本的には「総額÷耐用年数」の計算で、毎年計上する額が決まります。ただし、割り切れない数が生じたときのために、「総額×定額法の償却率」でも算出できることを覚えておきましょう。

たとえば、耐用年数が3年のものは償却率が0.334であるため、車両運搬具を100万円で購入した場合は以下の計算になります。

100万円×0.334=33万4千円

また、1円未満の端数は切り上げられて1円になることもあわせて覚えておきましょう。

車両運搬具の減価償却の方法②|定率法

減価償却のもう一つの方法が「定率法」です。定率法は、購入時の償却額がもっとも高く、年数を経るほどに償却額が下がる方法です。ここでは、定率法の計算方法について解説します。

定率法の計算方法

定率法で毎年計上する額は、以下の計算式で算出します。

未償却残高×定率法の償却率

また、上記の計算結果が償却保証額に満たなくなった年以降は、以下の計算になります。

改定取得価額(満たなくなった年の残高)×改定償却率

たとえば、耐用年数4年で100万円の車を定率法で減価償却する場合は、以下の計算になります。

■償却率:0.5
■改定償却率:1
■保証率:0.12499

1年目:100万円×0.5=50万円
2年目:50万円×0.5=25万円
3年目:25万円×0.5=12.5万円
4年目:12.5万円×0.5=6.25万円

車両運搬具の耐用年数別の償却率・改定償却率・保証率

定率法で車両運搬具の減価償却を実施する際の償却率・改定償却率・保証率は、以下のとおりです。

車両運搬具の種類 耐用年数 償却率 改定償却率 保証率
自転車・リヤカー 2年 1 - -
バイク・自動車(レンタル・教習用)・霊柩車・レッカー車 3年 0.677 1 0.11089
自動車・除雪車 4年 0.5 1 0.12499
消防車・救急車・大型乗用車(レンタル・教習用)・トロッコ 5年 0.4 0.5 0.108
電車 13年 0.154 0.167 0.0518
蒸気機関車 18年 0.111 0.112 0.03884

参照:e-Gov法令検索『減価償却資産の耐用年数等に関する省令

車両運搬具の取得価格ごとの減価償却の方法

減価償却の方法は、車両運搬具の取得にかかった費用によって選択できます。取得原価が10万円未満であれば「少額の減価償却資産」にあたり、その年の経費として扱えます。また、取得原価20万円未満であれば、3年間での一括償却資産の損金算入を選択することが可能です。さらに、取得原価が30万円未満で、なおかつ中小企業であれば、「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が受けられます。いずれも、耐用年数によらない減価償却が可能であるため、うまく活用しましょう。

参考:国税庁『No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
参考:国税庁『No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

車両運搬具の減価償却費の仕訳方法

車両運搬具の減価償却費の仕訳方法は、主に直接法と間接法の2種類が存在します。それぞれの方法について紹介します。

直接法|資産からの控除

直接法は、減価償却費を直接資産の価値から差し引きます。そのため、貸方には減価償却の対象である「車両運搬具」を記載します。

たとえば、200万円の自動車を購入して、その年度の減価償却費として100万円を計上した場合、仕訳方法は以下のとおりです。

借方 貸方
減価償却費 1,000,000円 車両運搬具 1,000,000円

直接法を利用するメリットは、その時点における資産の価値が一目でわかる点です。

間接法|減価償却累計額の利用

間接法では、減価償却費を直接資産の価値から引くのではなく、減価償却累計額に加算して表示する方法です。そのため、貸方には「減価償却累計額」を記載します。

たとえば、200万円の自動車を購入して、その年度の減価償却費として100万円を計上した場合の仕訳方法は、以下のとおりです。

借方 貸方
減価償却費 1,000,000円 減価償却累計額 1,000,000円

間接法では資産の価額が変わらないため、取得価額が一目で理解できるメリットがあります。

車両運搬具まとめ

車両運搬具は、業務に使用する車両をはじめとする固定資産に使用する勘定科目です。車両運搬具の分類によって異なる法定耐用年数が定められているほか、償却方法にも種類があります。正しく経費を計上するために、車両運搬具の減価償却について理解を深めておきましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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