融資の保証料の仕訳~返金の有無による会計処理の違い~

更新日:2024年03月20日

保証料の仕訳

今回は、融資の保証料の仕訳について解説します。融資の保証料とは、中小企業や個人事業主が銀行などの金融機関から事業資金の融資を受ける際に、信用保証協会に保証人になってもらうための費用のことです。 融資の返済ができなくなった場合は信用保証協会が代わりに返済してくれるため、保証人や担保を用意できなくても融資を受けられるというメリットがあります。信用保証協会とは、中小企業・小規模事業者の金融円滑化を目的として、信用保証協会法にもとづいて設立された公的機関です。保証料の仕訳は、返金の有無によって異なります。

保証料の会計処理

保証料は原則として、借入した時に一括で支払います。会計処理は返戻条件によって変わります。ポイントは、繰上返済をして保証期間が短縮された場合に、短縮期間の保証料が返金されるかどうかです。

保証料が返金される場合の仕訳

繰上返済をした際に保証料が返金される場合は、支払った保証料のうち未経過部分は前払費用となります。支払時に全額を長期前払費用に計上し、決算時に当期保証期間分を支払手数料として費用に振り替えます。

保証料支払時の仕訳例

信用保証協会に300,000円の信用保証料を支払った(保証期間は60カ月の場合)

借方 貸方
長期前払費用 300,000円 現金 300,000円

決算時の仕訳例

当期末で保証期間が6カ月経過している場合

借方 貸方
支払手数料 30,000円 長期前払費用 30,000円

当期の保証期間分の保証料を月割りにし費用に振り替えます。

300,000円×6カ月÷60カ月=30,000円

繰上返済をして保証料が戻ってきた時の仕訳例

借入金を繰上返済して保証料の返戻金80,000円が入金された。当期首における長期前払費用の残高が90,000円で、当期保証期間が4カ月の場合。

借方 貸方
預金 80,000円 雑収入 10,000円
支払手数料 300円 長期前払費用 90,000円

まず、当期の保証期間分の保証料を月割りで費用に振り替えます。

300,000円×4カ月÷60カ月=20,000

長期前払費用を相殺し、差額の10,000円を雑収入に計上します。

保証料が返金されない場合の仕訳

繰上返済をした際に保証料が返金されない場合は繰延資産となります。借入期間中において月割りで繰延資産償却として費用にします。ただし、20万円未満の保証料は支出時に全額費用にできます。

保証料支払時の仕訳例

信用保証協会に300,000円の信用保証料を支払った。

借方 貸方
長期前払費用 300,000円 現金 300,000円

決算時の仕訳例

当期末で保証期間が6カ月経過している場合

借方 貸方
繰延資産償却 30,000円 長期前払費用 30,000円

当期の保証期間分の保証料を月割りにし費用に振り替えます。

300,000円×6カ月÷60カ月=30,000円

保証料が20万円未満の支払時の仕訳例

信用保証協会に100,000円の信用保証料を支払った。

借方 貸方
支払手数料 100,000円 現金 100,000円

20万円未満の保証料は支払時に全額費用に計上できます。

参考)繰延資産とは

参考)前払費用とは

保証料に消費税は掛かる?

保証料は課税対象にはなりません。消費税法では、国内の資産譲渡などで利子を対価とした貸付金、その他の政令で定める資産の貸付け、信用の保証としての役務の提供などには消費税を課さないとされています。本来、消費税は事業者が対価を得て事業をする場合は課税の対象としていますが、これらは課税の対象としてなじまず、社会的政策配慮から非課税取引となっています。

保証料の金額は?

保証料の金額は、借入金額、保証料率、保証期間、借入金の返済方法などによって決まります。信用保証協会は地域ごとに存在しますが、例えば、東京信用保証協会における計算例を参考に解説していきます。

返済方法が満期一括返済の場合

保証料の計算式は以下の通りです。

保証料=借入金額×保証料率×保証期間(月数)÷12

例えば、借入金額が1,200万円、保証料率が年率1.15%、保証期間が24カ月、借入金の返済方法が満期一括返済の場合の保証料は、以下のようになります。

1,200万円×1.15%×24カ月÷12=276,000円

最後に12で割るのは、保証料率が年率で示されているのに対し、保証期間は月数であるためです。もし1円未満の端数がでた場合は、1円未満を切り捨てます。

返済方法が均等分割返済の場合

返済方法が分割の場合は「分割係数」を用いて計算します。分割係数は信用保証協会のホームページに掲載されています。分割返済の場合、返済によって借入金残高が減っていくため、その減少分を保証料の計算に反映させるために分割係数が使用されます。

分割返済回数 均等分割係数
2回以上6回以下 0.70
7回以上12回以下 0.65
13回以上24回以下 0.60
25回以上 0.55

先ほどの例の場合、24回の均等分割払いで支払った場合は均等分割係数は0.60となるため、以下のようになります。

1,200万円×1.15%×24カ月÷12×0.6=165,600円

据置期間がある場合

借入金を返済する際に一定の据置期間が設けられる場合があります。据置期間とは、融資実行から第1回返済月までの元金返済が猶予されているとみなされる期間です。据置期間の終了後に均等分割払いをする場合は、据置期間と分割払いの期間を分けて計算し、それぞれを合計します。

例えば、据置期間が6カ月の場合の保証料の計算は以下の通りです。

1,200万円×1.15%×6カ月÷12=69,000円

残りの18カ月を均等分割払いにすると均等分割係数は0.6のため

1,200万円×1.15%×18カ月÷12×0.6=124,200円

保証料は69,000円+124,200円=193,200円

※ 参考サイト:東京信用保証協会/信用保証料の計算例

融資の保証料の会計処理まとめ

本記事では、融資で資金調達して保証料を支払った場合の会計処理を解説しました。中小企業や個人事業主であれば、銀行からの融資でプロパーではなく保証協会の保証つきで借入をすることも多いと思います。定期的に必要な会計処理のため、適切に処理できるように正確に理解するようにしましょう。

参考)資金調達とは

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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