前払費用とは何かわかりやすく解説!長期前払費用との違いや仕訳も紹介

2023.09.14

前払費用

前払費用とは、貸借対照表上で「資産」として扱う勘定科目のひとつです。主に継続的に受けるサービスに払った費用のうち、翌期にまたがる部分に使います。

前払費用の概要や税金との関係、具体的な仕訳方法などについて、本記事で確認していきましょう。

目次

前払費用とは

前払費用とは、企業が決済処理する際に使う勘定科目のひとつです。一定の契約に基づき、事業に必要なサービスを継続的に受けるために数か月あるいは1年分を先払いした金額のうち、提供が翌期にまたがる分を前払費用として計上します。

貸借対照表上で、前払費用を計上するのは「資産」の部分です。ここから、前払費用が「費用」にもかかわらず資産として計上する理由や、前払金との違いなどについて解説します。

前払費用が資産になる理由

前払費用が「サービスや保証(便益)を受けるための権利」である点が、資産として計上する主な理由として挙げられます。

そもそも、会計では有形・無形問わず、金銭的価値のあるものが資産です。その中には、将来的に金銭的価値が生じるものも含まれます。

前払費用は、土地や建物のように実体がなく、換金性もありません。しかし、今後サービスなどの提供を受ける権利を有するため、金銭的価値が将来的に生じるという意味で前払費用を資産として計上します。

前払金と前払費用の違い

前払費用と混同しやすい勘定科目のひとつに、「前払金」があります。「前払金」とは、原料を仕入れる際や商品を購入する際の手付金や内金、不動産売買の解約手付金のように、購入時に前払いした費用のことです。

前払金と前払費用は、すでに先払いしている点では共通しますが、支払い対象に「継続性があるか、ないか」が異なります。前払金が一時的な商品購入やサービスの提供に対して使うのに対し、前払費用は継続してサービスの提供を受ける点が具体的な違いです。

基本的に、前払費用はサービスの提供に対してのみ使用します。

前払費用の具体例

前払費用の具体例は、以下のとおりです。

  • 地代(土地を借りる際に支払う)
  • 賃料(事務所などを借りる際に支払う)
  • 各種リース代(車や複合機などのリースに支払う)
  • 支払利息(借入金の利息を支払う)
  • 各種保険料(会社の保険料を支払う)

ただし、上記の費用でも、前払いしていて今後継続して提供を受けるサービスに関するものでなければ、前払費用の対象外です。

短期前払費用と長期前払費用の区別

前払費用を、短期前払費用や長期前払費用として計上することがあります。短期前払費用と長期前払費用を区別する際の基準のひとつが、ワン・イヤー・ルール(1年基準)です。

ワン・イヤー・ルールとは、流動資産・固定資産、流動負債・固定負債を「1年」を基準に区別するルールを指します。原則として、決算日後1年間に現金化・費用化するものが流動資産で1年超が固定資産、1年の間に支払期限が到来するものが流動負債で1年超が固定負債です。

ここから、短期前払費用と長期前払費用の概要を紹介します。

短期前払費用とは

短期前払費用とは、前払費用のうち「短期前払費用の特例」の条件を満たすものです。1年以内に役務提供を受ける前払費用は、短期前払費用に該当する可能性があります。

短期前払費用で計上するメリットは、課税負担を軽減できる可能性がある点です。短期前払費用に該当するための条件については、後述の「前払費用と税金の関係」で詳しく解説します。

長期前払費用とは

長期前払費用とは、1年を超えて費用となる部分の前払費用のことです。「1年を超えて費用になる」とは、3年契約の車両保険料のようにサービスを受けられる期間が1年を超える部分を指します。

たとえば、24か月分の賃料を先払いし、決算時にすでに6か月経過している場合、12か月分(1年以内に費用になる)が「前払費用」、6か月分(24か月 - 12か月 - 6か月経過)が「長期前払費用」です。

なお、ワン・イヤー・ルールが適用されるため、長期前払費用は固定資産に計上します。一方、短期前払費用・前払費用は1年以内のため流動資産に計上する点に注意しましょう。

前払費用を会計処理するタイミング

前払費用は、以下の3つのタイミングで会計処理します。

  • 支払時
  • 決算時(会計期末)
  • 翌期に入ってから

前払費用は、原則として支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものとされています。

しかし、実務上は支払時に費用として計上し、決算時に翌期の費用になる分を「前払費用」として振替処理することが一般的です。また、翌期に入ってから「前払費用」を費用に再振替します。

ただし、短期前払費用の特例を使うケースなど、会計処理方法が異なる場合がある点に注意が必要です。

前払費用と税金の関係

前払費用を会計処理するにあたって、税金との関係も理解しておかなければなりません。ここから、前払費用と消費税の関係や、短期前払費用の特例の扱いについて解説します。

消費税は費用化のタイミングで計上する

消費税は、費用化のタイミングで計上します。なぜなら、国内取引の場合、消費税の納税義務は課税資産の譲渡や貸付けおよび役務の提供のタイミングで成立することが、定められているためです。

そこで、誤って支払時に一緒に消費税分の金額も計上しないようにしましょう。サービスの提供を受けるまでは、消費税分を計上できません。

参考:国税庁「No.6141 納税義務の成立の時期」

短期前払費用の特例で全額損金計上できる

本来、前払費用は、支出時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきですが、特例を適用すれば前払費用を「短期前払費用」として全額対象年度の損金に算入できます。ただし、「短期前払費用」で計上するためには、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 支払日から1年以内に提供を受ける役務にかかるものに支払った場合
  • 継続して適用する場合

「継続して適用する」とは、毎年同じように扱うということです。今期利益が上がったからといって、急に短期前払費用として扱うことはできません。

また、借入金を預金や有価証券などに運用する場合の支払利子のように、対象外の支払いもあります。

参考:国税庁「No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合」

前払費用の仕訳方法

ここから、前払費用の仕訳方法を以下のケースに分けて紹介します。

  • 基本的な前払費用の仕訳方法
  • 短期前払費用の特例を使う場合の仕訳方法
  • 長期前払費用を使う場合の仕訳方法
  • 消費税の課税事業者に該当する場合の仕訳方法

会計期間が4月1日~3月31日の企業と仮定して、各ケースの仕訳方法を確認していきましょう。

基本的な前払費用の仕訳方法

賃料30万円のオフィスに入居した際(1月1日入居)、1年分(360万円)を普通預金から支払ったケースで仕訳を考えます。

まず、支払時の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方
賃料 3,600,000円 普通預金 3,600,000円

支払った全額を、借方の賃料と貸方の普通預金に記載しています。

続いて、決算時の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方
前払費用 2,700,000円 賃料 2,700,000円

決算時点(3月31日)で3か月しか経過していないため、当期の費用に算入できるのは90万円(30万円 × 3か月)です。そこで、残りの270万円を前払費用として資産に計上しています。

さらに、翌期に入ってからの仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方
賃料 2,700,000円 前払費用 2,700,000円

前期末に資産計上した前払費用270万円を再振替し、翌期の経費(賃料)として処理しています。

短期前払費用の特例を使う場合の仕訳方法

先ほどと同様に、賃料30万円のオフィスに入居した際(1月1日入居)、1年分(360万円)を現金で支払ったケースで仕訳を考えます。ただし、今回は短期前払費用の特例を使う点がポイントです。

短期前払費用の特例を適用する場合、全額を対象年度の損金に算入できます。そのため、仕訳処理が必要なのは、以下のように支払時のみです。

借方 貸方
賃料 3,600,000円 現金 3,600,000円

上記のように、短期前払費用の特例を適用すれば、決算時に費用を振り替えたり、翌期に入ってから再振替処理したりする必要がありません。

長期前払費用を使う場合の仕訳方法

今回は、賃料30万円のオフィスに入居した際(1月1日入居)、2年分(720万円)を普通預金から支払ったケースで仕訳を考えます。

まず、支払時の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方
賃料 7,200,000円 普通預金 7,200,000円

これまでと同様に、支払った全額を借方の賃料と貸方の普通預金に記載しています。続いて、決算時の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方
前払費用 3,600,000円 賃料 6,300,000円
長期前払費用 2,700,000円

決算時点(3月31日)で3か月しか経過していないため、当期の費用に算入できるのは90万円(30万円×3か月)です。残り630万円のうち1年以内に費用となる360万円を「前払費用」、1年を超えて費用となる270万円(30万円 × 残り9か月)を「長期前払費用」に計上しています。

最後に、再振替仕訳する際の処理例が、以下のとおりです。

借方 貸方
賃料 6,300,000円 前払費用 3,600,000円
長期前払費用 2,700,000円

再振替仕訳で、決算時と逆の仕訳をします。

消費税の課税事業者に該当する場合の仕訳方法

仕入税額控除の関係で、消費税の課税事業者に該当する場合は消費税がかかる取引の仕訳方法に注意しなければなりません。消費税の課税事業者とは、自らの意思で届出を出しているか、基準期間に課税売上高が1,000万円を超えるなどで消費税の納税義務がある事業者のことです。

賃料22万円(うち消費税2万円)のオフィスに入居した際(1月1日入居)、1年分(264万円)を普通預金から支払ったケースで仕訳を考えます。

まず、支払時の仕訳例が以下のとおりです。今回は消費税の関係をわかりやすくするため、最初に全額前払費用を計上しています。

借方 貸方
前払費用 2,640,000円 普通預金 2,640,000円

続いて、決算時点での仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方
賃料 600,000円 前払費用 660,000円
仮払消費税等 60,000円

3か月経過しているため、費用(賃料)として計上できるのは60万円です。また、すでに3か月分は提供を受けたため、6万円を仮払消費税等として計上します。

そして、翌期の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方
賃料 1,800,000円 前払費用 1,980,000円
仮払消費税等 180,000円

残り9か月分の賃料と仮払消費税等を計上しています。

前払費用まとめ

前払費用とは、事業に必要なサービスを継続的に受けるために先払いした金額のうち、提供分が翌期にまたがる金額のことです。サービスなどを受けるための権利ととらえて、貸借対照表上で資産に計上します。

短期前払費用の特例を適用すると、対象年度に全額損金として算入できる点がメリットです。また、1年を超えて費用となる部分は長期前払費用として計上します。

支払時・決算時・翌期に入ったときが、前払費用を会計処理するタイミングです。前払費用の性質を正しく理解した上で、仕訳するようにしましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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