立替金とは~仕訳、混同しやすい勘定科目との違いについて解説~

2023.01.25

立替金

今回は「立替金の仕訳方法」について解説し、立替金と混同しやすい「仮払金」「貸付金」「預り金」などの用語も、あわせて解説します。また、立替金を仕訳する際に「実際どのように帳簿へ内容を記載するか」についても、表を使って説明しています。 いくつかの仕訳パターンを紹介しています。

立替金を支払うときの仕訳

立替金が発生した際には、帳簿に記載しておく必要があります。帳簿に記載しておくことで、立替金を「資産」として計上できるのです。実際に、立替金を支払うときの仕訳方法について、表を使ってご説明します。たとえば、従業員への給料25万円のうち、5万円のみ一部前払いした場合だと以下のような仕訳方法です。以下の仕訳方法は、「普通預金」から5万円を立て替えたケースですが、小口現金から支払い立て替えたケースでは、貸方の普通預金の枠内を変更して「現金」と記載します。

借方 貸方
立替金 ¥50,000 普通預金 ¥50,000

借方 貸方
立替金 ¥50,000 現金 ¥50,000

立替金に消費税が影響することはない

立替金は、従業員や取引先など他者が負担すべき経費等を当社が事前に支出してあげる費用です。そもそも他者が負担すべき費用であり、当社の経費ではないため、消費税や法人税などの影響は一切ありません。

立替金は単に費用を立て替えたにすぎません。後日回収する必要があり、回収した際にその取引に対して課税されることはありません。

立替金を回収したときの仕訳

立替金を回収したら、その都度消込処理をしておきます。あとでまとめて処理をしようとすると、処理件数も増えてミスも多発しやすいため、1件ずつ処理しておくとよいでしょう。実際に、立替金を回収したときの仕訳方法について、表を使ってご説明します。たとえば、取引先が支払うことで約束していた配送料を回収した場合だと、以下のように仕訳けます。

借方 貸方
現金 ¥300 立替金 ¥300

立替金回収までに時間を要するときの対応

立替金が発生したときには、あとで回収をしてその都度消込処理をすることが基本です。ただし、立替金回収までに時間が長くかかることもあり、その際は、通常の立替金回収処理とは別の処理が必要です。このようなケースでは、帳簿に立替金ではなく「貸付金」として記載し、返済期限を設けておきます。

返済期限を設けていないとその間の利益も発生しないため、いつまでたっても回収できないままになってしまいます。従業員のような特定の人物からの返済には、返済期限を設けて利息をつけることも検討しましょう。

立替金が売上金扱いになるときの対応と仕訳

領収書を取引先(社外)へ渡さないときは、立替金は収入として処理せざるを得ない場合があります。領収書を取引先へ渡せば、通常の立替金回収処理で問題ありません。ただし、「領収書がない」「領収書の宛名が誤って自社になっている」などのことがあれば、取引先へは渡せないため究極的には収入として処理することも視野に入ります。よって、領収書は以下の点を明確にして作成します。

  • 領収書の発行者名
  • 領収書の宛名
  • 領収書の明細や金額
  • 領収書を最初に受け取る人
  • 領収書を最終的に受け取る人

特に「領収書の宛名」「領収書を最終的に受け取る人」は、計上する際に重要な項目となるため、明確にさせておく必要があります。宛名については、「会社名が抜けている」「宛名表記が上様」となっていると、領収書として認められないことがあるため注意しましょう。

取引先が支払うべき経費を例に考える仕訳方法

ここでは、取引先が支払うべき経費がどのように計上されるかを例にあげて、仕訳方法をご説明します。立替経費の領収書を顧客へ渡す場合と渡さない場合で帳簿への記載事項が変わります。

(例)顧客が支払うべき経費20,000円を立替金として支払った。翌月に売上300,000円と立替金として支払った経費20,000円が普通預金に入金された。

領収書を顧客へ渡す場合の仕訳

領収書を顧客へ渡す場合は、経費を立替金として支払った際に立替金で仕訳し、入金時に立替金を回収したことが分かるように仕訳をします。

【経費立替時】

借方 貸方
立替金 ¥20,000 現金 ¥20,000

【入金時】

借方 貸方
普通預金 ¥320,000 売上高 ¥300,000
立替金 ¥20,000

なお、先に領収書を渡してしまうと、万が一回収できない可能性もあるため、渡した後は、当社の経理処理の際にはコピーを証憑として保管しましょう。

領収書を顧客へ渡さない場合の仕訳

領収書を顧客へ渡さない場合は、経費を立替金として支払った際に旅費交通費などの該当の経費科目で仕訳し、入金時に売上金として仕訳をします。

【経費立替時】

借方 貸方
旅費交通費 ¥20,000 現金 ¥20,000

【入金時】

借方 貸方
普通預金 ¥320,000 売上高 ¥320,000

立替金が発生するパターン

まずは、立替金が発生するパターンについて、2つに分けて解説します。

従業員への支払い(社内立て替え)

従業員が支払うべき費用を、会社が代わりに立て替えるときに立替金が従業員に対して発生します。

  • 会社が一括して立て替え、あとで複数名の従業員から集金するケース
  • 1人の従業員が支払いできないときに会社が一時的に立て替え、あとでその従業員から返済してもらうケース

実際に立替金として発生しやすい費用は以下のとおりです。

  • 給料の前払い
  • 旅費
  • 保険料
  • 会費

取引先への支払い(社外立て替え)

取引先が支払うべき費用を、自社が代わりに立て替えるときに立替金が社外に対して発生します。

  • 自社が一時的に立て替え、あとで取引先から返金されることを約束して進めるケース
  • 取引の都合上、自社が一時的に立て替え、あとで領収書を渡して返金してもらうケース

実際に立替金として発生しやすい費用は以下のとおりです。

  • 手数料
  • 配送料

立替金と混同しやすい用語

立替金と混同しやすい用語について解説します。「立替金とはどこがどのように違うか」「立替金とどのように関係するか」についても、ご説明します。

仮払金について

仮払金とは、当社の経費となる費用を概算払いとして従業員などに事前に支出する費用です。例えば、取引先へ手土産を持っていく際に、先に会社から手土産を買うためにいくらか渡しておく費用を指します。

そもそも当社の経費であるため、回収の必要はありません。ただし、費用化するにあたっては、従業員などから領収書の提出を求め、金額確定と過不足の精算をする必要があります。また、領収書がない、または領収書が出せない費用のため費用化できず、やむなく収益として受け入れるケースがごく稀にあります。こうした場合にはその収益に対して法人税負担が生じます。

立替金と混同しやすい勘定科目が、この仮払金です。立替金と仮払金は、どちらも会社が一時的に支払いをし、資産として計上する点では共通しています。ただし、仮払金は「会社の経費を事前に支出しておく勘定科目」で、立替金は「他者の負担すべき金銭を事前に支出する勘定科目」であることが、立替金と仮払金の大きな違いです。また、仮払金は「経費」としていずれ計上されますが、立替金は経費として計上されることがないことも2つの違いです。

貸付金について

貸付金とは、取引先や従業員へ貸した金銭のことです。立替金と違い、貸付金には返済期限が設定されます。返済期限を設定し、この期限までに資金回収できないときには、貸付金として再度計上します。また、貸付金の使用用途を明確にさせる必要はありません。

預り金について

預り金とは、本来会社では負担しない費用です。支払期限前に取引先や従業員から、一時的に費用を預かっておき、あとで支払いをします。たとえば、社会保険料や所得税は、従業員であれば「給料からの天引き」で費用を預かり、それを使って税務署などの第三者へ支払いをします。第三者への代わりに行った支払いは、支払った費用分だけ、あとで従業員本人から返金してもらう必要があるのです。立替金は、従業員本人からあとで支払ってもらう勘定科目をさします。一方で、預り金は、従業員本人から先に支払いに必要な費用をもらって支払う勘定科目をさします。これが、預り金と立替金の違いです。

立替金まとめ

ここまで、主に立替金の仕訳方法について解説しました。いくつかの仕訳パターンがあるため、初めはややこしく感じることがあります。後でまとめて処理をしようとせず、慣れていないときは、1件ずつ確実に処理することをおすすめします。混同しやすい用語の違いをしっかりと理解しておき、領収書も丁寧に作成しましょう。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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