繰延べとは~前払費用と前受収益の仕訳~

2018.02.13

費用と収益の繰延べ

当期の支払いや入金について処理しているものの中には、次期分に該当する費用や収益が含まれている場合があります。決算整理では、当期分に該当しない部分の費用(前払費用)と収益(前受収益)を、当期分の費用と収益が正確になるように修正します。今回は、この「繰延べ」について。

費用の繰延べとは?

当期に支払った費用に次期以降分も含まれている場合、決算時にその分を除く処理をします。これを「費用の繰延べ」といいます。

費用の繰延べの仕訳

たとえば次期にまたがる期間の保険料を支払う場合は、以下の通りに仕訳します。

支払時

例)7月1日に、火災保険料1年分(7月~翌年6月分)12,000円を現金で支払った場合(※決算は年1回、12月31日とする)。

借方 貸方
支払保険料 12,000 現金 12,000

期中に1年の契約で支払う保険料は、次期以降分も含めた実際の支払い金額で費用計上します。

決算時

例)12月31日(期末)において、当期7月1日に支払った火災保険料から、未経過分を繰延べた場合。

借方 貸方
前払保険料 6,000 支払保険料 6,000

前払いしている次期以降の「支払保険料(費用)」分を、「前払費用勘定(資産)」に振替え、残高を当期分の金額に修正します。

12,000円÷12ヶ月=1,000円(1ヶ月分の保険料)

当期分(7月~12月分)6,000円、次期以降分(1月~6月分)6,000円

上記の計算により、当期の会計上の支払保険料(費用)の残高は、6,000円になります。

翌期の処理

例)1月1日に前期末に繰延べた火災保険料を再振替した場合。

借方 貸方
支払保険料 6,000 前払保険料 6,000

翌期の期首には、期末に繰延べた分を再度費用の勘定科目に戻し入れ、新しい期の費用として再振替仕訳を用いて計上します。

収益の繰延べとは?

当期に受け取った収益に次期以降分の収益が含まれている場合、決算時にその分を当期の収益から除く処理をします。これを「収益の繰延べ」といいます。

収益の繰延べの仕訳

収益の繰延べは、次期分を含めて受け取った金額にて処理します。

受取時

例)8月1日に、得意先から地代(土地の賃料)1年分(8月~翌年7月分)240,000円を現金で受け取った場合(※決算は年1回、12月31日とする)。

借方 貸方
現金 240,000 受取地代 240,000

期中に1年の契約で受け取る地代は、次期以降分も含めた実際の受取り金額で費用計上します。

決算時

例)12月31日(期末)において、当期7月1日に受け取った地代から、未経過分の繰延べを処理した場合。

借方 貸方
受取地代 140,000 前受地代 140,000

前受けしている次期以降分を「前受収益勘定(負債)」に振替え、「受取地代(収益)」の残高を当期分だけの金額に修正します。

240,000円÷12ヶ月=20,000円(1ヶ月分の地代)

当期分(8月~12月分)100,000円、次期以降分(1月~7月分)140,000円

これで当期の会計上の「受取地代(収益)」の残高は、140,000円になります。

翌期の処理(再振替仕訳)

例)1月1日に前期末から繰延べた地代を再振替した場合。

借方 貸方
前受地代 140,000 受取地代 140,000

翌期の期首には、期末に繰延べた分を再度収益の勘定科目に戻し入れ、新しい期の収益として計上します。

費用の繰延べには前払費用、収益の繰延べには前受収益

今回は、費用と収益の繰延べについて解説しました。保険料の前払いに対しては「前払保険料」、地代の前受けに対しては「前受地代」などを使って振替え処理をします。その他の費用を前払いした場合や、収益を前受けした場合は、前払費用や前受収益の勘定科目に具体的な費用名や収益名を入れてください。その際は「すでに支払っているもの」「すでに受け取っているもの」なので、費用名や収益名の頭に「前払~」「前受~」と記します。

【記事の執筆と監修について】

この記事は、株式会社フリーウェイジャパンが執筆および監修をしています。当社は1991年に創業し、税理士事務所向けの会計ソフトの販売からスタートした会社です。2009年から中小企業・個人事業主の方向けにクラウド型の業務系システムの開発・販売を開始しました。当メディアは2012年から運営しており、会計や金融など経営に関する幅広い情報を発信しています。また、当社は本当に無料で使える会計ソフト「フリーウェイ経理Lite」を提供しており、ご利用いただければ費用をかけずに業務効率化が可能です。詳しくは、こちら↓↓

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