未払金とはどんな勘定科目?仕訳や未払費用との違いも解説

更新日:2025年04月24日

未払金

未払金とは、提供を受けたサービスの支払いが未了の場合に用いる勘定科目のことです。営業外で生じた支払義務に対して使う点が、未払費用との違いです。本記事では、未払金とはどのような勘定科目か説明したうえで、仕訳の例も紹介します。

目次

未払金とは

未払金とは、サービスの提供を受けたにもかかわらず、現時点ではまだ代金の支払いが完了していない項目に使う勘定科目を指します。継続する取引ではなく、単発の取引に対して使用する点がポイントです。

貸借対照表で未払金を計上する際は、「負債」に記載します。また、一般的に貸借対照表の基準日から1年以内に支払い期日が設けられているため、負債のなかの「流動負債」に計上しましょう。

未払金が発生する具体例

未払金が発生する具体的なケースは、以下のとおりです。

  • クレジットカードを使い、ECサイトで事務所に設置する複合機を購入した
  • 従業員がセミナーを受講し、後日に参加料を現金で支払う予定
  • 新聞広告を掲載し、後日に広告料を振り込むことになっている

なお、自社で販売するための商品を購入したり、材料を仕入れたりする場合は、後払いでも未払金としては計上しません。詳しくは、未払金と混同しやすい勘定科目との違いで説明します。

未払金と混同しやすい勘定科目との違い

未払金と混同しやすい主な勘定科目は、以下のとおりです。

  • 買掛金
  • 未払費用
  • 長期未払金
  • 未収入金

間違えて計上しないように、それぞれの違いを押さえておきましょう。

買掛金の違い

「未払金」は、あとで代金を支払う義務という意味では「買掛金」と同じです。では、なぜ両者を使い分けるのでしょうか?その理由は、営業活動で発生した支払義務と、営業外の活動で生じた支払義務を区別するためです。

分けるメリットは、何か課題があったときに対応策を考えやすいから。たとえば、流動負債が増えて当座比率が前期より悪化したとします。買掛金が原因ならば、得意先への支払いサイクルをのばせるか検討する方法もあります。たまたま前期だけ未払金が増えたのなら、その回収に努めるだけで十分かもしれません。

といったように、未払金と買掛金を分けた方が対策を考えやすいのです。これが1つの勘定科目だったら、個々の取引が営業活動に関係するかどうかを確認しなければならず、非常に手間です。

未払費用との違い

未払金と未払費用の主な違いとして、継続する取引に対する支出であるかどうかが挙げられます。

未払費用とは、契約に基づき継続したサービスを受けるケースで、すでに提供を受けたサービス分の費用を支払っていないときに使う勘定科目です。仕訳時点で事務所の家賃の支払いが済んでいない場合、サブスクリプションサービスの費用をクレジットカードで支払っている場合などで使われます。

未払金はすでにサービスの提供が完結している場合に使うのに対し、未払費用は今後もサービスを受ける場合に使う点がポイントです。

長期未払金との違い

未払金と長期未払金の主な違いとして、支払期限が挙げられます。

長期未払金は、未払金のうち仕訳時点で支払期日までの期間が1年を超えるときに使う勘定科目です。長期リース契約で機械を購入する場合などに使うことがあります。

未払金は一般的に支払期日まで1年以内の場面で使い、貸借対照表上で流動負債に分類されるのに対し、長期未払金は1年超で固定負債にあたる点がポイントです。

未収入金との違い

未払金と未収入金(未収金)の主な違いとして、債務に該当するか債権に該当するかという点が挙げられます。

未収入金とは、営業活動以外の取引で発生した代金が未回収の場合に使う勘定科目です。会社名義の土地を売却するも、まだ代金が振り込まれていない場合などに使われます。

未払金は自社が未払いのときに使い、未収入金は相手が未払いのときに使う点がポイントです。そのため、未払金は債務(負債)に該当するのに対し、未収入金は債権(資産)に該当します。

なお、どちらも営業外の取引が対象である点は共通です。

未払金の仕訳例

未払金の仕訳例について、タイミング別(商品以外のものを購入する・代金を支払う・セミナーに参加して、後で参加費を支払う)に紹介します。具体的な数字を使って、確認していきましょう。

商品以外のものを購入したとき

例)80,000円のパソコンを購入し、代金を後日に支払うことにした

借方 貸方
消耗品費 80,000円 未払金 80,000円

商品以外のものを購入し、代金を後日支払う場合、「未払金」という負債が増加したと考え、貸方に未払金を記入します。

代金を支払ったとき

例)購入したパソコンの代金を後日、現金で支払った

借方 貸方
未払金 80,000円 普通預金 80,000円

代金を支払ったときは、「未払金」という負債が減少するため、借方に未払金を記入します。

セミナーに参加するとき

従業員が参加したセミナーの参加費を後で支払う場合の仕訳例を、まとめて紹介します。

例) 従業員がセミナーに参加し、後日に主催者へ参加費3千円を支払う

借方 貸方
研修費 3,000円 未払金 3,000円

「商品以外のものを購入したとき」と同様に、貸方に「未払金」を計上しています。

借方 貸方
未払金 3,000円 普通預金 3,000円

次に、現金で参加費を支払ったタイミングで、「代金を支払ったとき」と同様に借方に「未払金」を計上します。

未払金を計上する際に気をつけること

未払金を計上する際は、以下の点に気をつけましょう。

  • 極力、年度またぎの経費精算をしないようにする
  • 内容を明確にする

具体的にどのようなことをすべきなのか、詳しく解説します。

極力年度またぎの経費精算をしないようにする

年度またぎの経費精算は、極力しないように心がけましょう。

年度またぎで未払金を計上すること自体は、問題ではありません。ただし、経理担当者には未払金の勘定を管理する手間がかかります。

また、年度またぎをする場合、貸借対照表上の「未払金」の項目が増えます。数値によっては、取引金融機関から理由を詳しく尋ねられる可能性があるでしょう。理由次第で、金融機関からの信用が低下し、今後の融資審査に影響を及ぼすことがあります。

内容を明確にする

あとで何の未払金なのか混乱しないように、仕訳時に摘要欄・備考欄などで内容を明確にしておきましょう。たとえば、先ほどの「商品以外のものを購入したとき」であれば「〇〇家電でオフィス用パソコンを購入」、「代金を支払ったとき」であれば「パソコン購入代金分、引き落とし」などと記載します。

また、会計ソフトを利用している場合は、勘定科目をさらに細かくグループ分けした補助科目を使うこともポイントです。補助科目を利用すれば、どのようなものに対して支払いがあるのかを詳しく把握できるため、経営判断にも役立ちます。

未払金の計算がうまくいかない場合に確認すること

「支払金額と一致しない」「貸借対照表においてマイナスが発生する」などで、未払金の計算がうまくいかないことがあるでしょう。ここでは、それぞれ確認すべきことや対策を解説します。

支払金額と一致しない場合

未払金と支払金額が一致しない場合は、仕訳時に計上した金額が正しいか確認しましょう。例えば、未払金として8万円計上すべきにもかかわらず、7万円を計上していれば当然、代金支払時の仕訳で相違が生じます。

また、実際に支払った金額に誤りがないか確認することも大切です。本来は8万円を支払うべきにもかかわらず誤って9万円を振り込んでいると、差が生じます。

万が一、誤入金していた場合は、早急に取引先に連絡しましょう。取引先と相談のうえ、一度全額返金してもらう、差額分を返金してもらう、次回の支払いに充当するなどの対応が必要です。

貸借対照表でマイナスになった場合

決算で貸借対照表を作成した際、未払金の合計がマイナスになった場合は、計上漏れがないかを確認しましょう。計上漏れがあると未払金が少なく表示されるため、マイナスになることがあります。

また、支払額が実際よりも多い場合も、貸借対照表作成時に未払金になることがあるでしょう。マイナスになると原因の究明や修正作業などに手間がかかるため、別の担当者や上司が定期的にチェックするなど、管理体制を整えておくことが大切です。

なお、原因が前期の会計処理にあることが判明した場合は、修正申告などの対応をしなければなりません。

未払金の処理がうまくいかない理由

自社で未払金の処理がうまくいかない場合は、主に以下の理由が考えられます。

  • 対応できる従業員が少ないため
  • 社内の連携に手間取るため

各理由について説明したうえで、対策も紹介します。

対応できる従業員が少ないため

自社で経理業務に対応できる従業員が少ないために、未払金の処理がうまくいかないことがあります。

未払金を正しく扱うためには、担当者に会計に関する知識や会計スキル・経験が必要です。担当者が未払金の概要や目的を把握していなければ、誤った勘定科目を用いたり、計上漏れが発生したりする可能性があります。

また、会計の経験が浅い担当者を業務にあてることで、計算ミスが発生するリスクも高まるでしょう。

さらに、会計の部署に属する従業員が少なければ、チェック体制を整えることもできません。会計・経理業務の属人化が進むことにより、未払金の処理でミスが発生する可能性が高まります。

そのほか、従業員が少ないと各担当者への精神的・身体的負担が重くなる点も、ミスの発生を招きやすい理由です。

社内の連携に手間取るため

会社によっては、社内の連携に手間取るために未払金の処理がうまくいかないこともあります。

未払金の管理は、経理の部署だけに関係する作業ではありません。たとえば、業務用のパソコンを購入するケースであれば、総務部やシステム部、実際にパソコンを使う部署などで取引をすることが一般的です。

経理の担当者は、取引をした部署に正しい情報を伝えてもらえなければ、都度確認が必要なため余計な時間がかかります。そのため、入力・確認が必要な項目を社内ではっきりさせておくことが必要です。

なお、会計システムがあれば、担当者にかかる会計業務の負担を軽減したり、各部署でデータを共有したりできます。そのため、対応できる従業員が少ない・社内の連携に手間取るなどの理由で未払金の処理がうまくいかないという抱えている事業者も、会計システムを導入して解決できることがあるでしょう。

未払金まとめ

今回は、商品以外のものを仕入れたときの仕訳で使う「未払金」について紹介しました。未払金は、何かを買った代金を後で支払う義務という観点で「買掛金」と似ています。両者を区別するポイントは、営業活動に関連するかどうか。関連していれば「買掛金」、関連していなければ「未払金」を使います。しっかり理解して、適切に仕訳しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階
所属団体 一般社団法人Fintech協会
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