繰延資産とは~会社設立や事業の開始準備の費用の処理~
2018.10.09

繰延資産とは、数年間にわたって償却(費用計上)できる資産のことです。繰延資産には、本来なら「費用」なものの、会計上で特殊な処理が認められている支出が計上されます。
繰延資産の3つのポイント
- 繰延資産とは数年間にわたって償却される費用のことで、本来は費用なものの、会計上は資産として計上できる。
- 会社法上の繰延資産は、創立費、開業費、株式交付費、社債発行費、開発費の5つで、均等償却か任意償却のいずれかを選択できる。
- 税法上の繰延資産は、償却期間が定められており、その期間で均等償却する。
繰延資産は、起業家の強い味方
たとえば、創立費や開業費など、会社の設立にかかった支出を繰延資産に計上できます。起業した直後は、売上が順調にのびるか不確実。そんなときに費用を資産に計上できる、つまり支出が減って利益が増える繰延資産は、強い味方ですね。また、繰延資産は「会社法上」と「税法上」とに分類できます。なお、会社法上の繰延資産は、税法上の繰延資産に含まれます。会社法上の繰延資産とは
会社法上の繰延資産とは、企業会計上での繰延資産です。以下の費用を支出したときは、繰延資産として資産計上できます。
- 創立費:定款の作成費、設立登記の登録免許税など、会社設立のためにかかった費用
- 開業費:広告費、接待費など、会社の設立登記後、事業を開始するまでの間にかかった費用
- 株式交付費:新株の発行、又は自己株式の処分のためにかかった費用
- 社債発行費:社債を発行するためにかかった費用
- 開発費:新技術の採用、新市場の開拓などのためにかかった費用
会社法上の繰延資産の償却
会社法上の繰延資産の償却期間と償却限度額は、以下のとおりです。
償却期間
まず、償却方法について均等償却か任意償却かを選びます。均等償却を選択する場合、創立費、開業費、開発費は5年以内に、株式交付費は3年以内に、社債発行費は社債の償還期限内に償却する必要があります。任意償却を選んだ場合には、いつ、どれだけの金額を償却しても構いません。
償却限度額
企業会計上の繰延資産の償却限度額は、帳簿上の残存価額です。
税法上の繰延資産とは
会社が支出する以下の費用(資産の取得に要した金額および前払費用を除く)のうち、支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶものです。以下の費用を支出したときは、繰延資産として資産計上できます。
- 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
- 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立退料その他の費用
- 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
- 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
- 上記以外に、自己が便益を受けるために支出する費用
税法上の繰延資産の償却
税法上の繰延資産の償却期間と償却限度額は、以下のとおりです。
償却期間
償却期間が定められています。詳しくは、国税庁のホームページ「繰延資産の償却期間」にてご確認ください。
償却限度額
償却期間で均等償却をします。償却限度額は、以下の計算式で算出します。
繰延資産の額 × 当期の月数 ÷ 償却期間の月数
繰延資産を活用して節税を
会社法上の繰延資産で「任意償却」を選べば、償却期間の制約はありません。好きなタイミングで、自由な回数で償却できます。つまり、利益が多く出たときには償却金額を多くして、利益が少ないときには償却額を減らす(またはゼロにする)ことが可能なのです。税法上の繰延資産では、こういった運用はできませんので、会社法上の繰延資産をうまく活用して、節税に取り組みましょう。
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