事業主貸と事業主借の違いとは?仕訳例や確定申告時の処理方法を解説

更新日:2026年01月04日

事業主貸

この記事では、事業主貸の基本事項とそれぞれの仕訳例、仕訳のポイントを詳しく解説します。併せて、確定申告における処理方法についてもわかりやすく紹介します。個人事業主であれば、確定申告を自分でしようと考える方も多いでしょう。初めて確定申告する方や仕訳処理のを再確認したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

事業主勘定とは?必要性を確認

事業主勘定とは、個人事業主が帳簿を記載するにあたり、事業とは関係ない資金の出し入れがあったときに使用される勘定科目のことです。

個人事業主の場合、売上から日々の生活費といった個人的な支払いをします。反対に、個人のお金で事業に必要な資金を立て替えるケースもあるでしょう。そのため、事業とプライベートの口座が区別されていないと、それぞれのお金を混同するおそれがあります。

使ったお金とプライベートに使用したお金を明確に区別し、正しい帳簿を作成するために用いられる勘定科目が、事業主勘定です。

事業主貸と事業主借の違い

個人事業主の会計では、「事業主貸」と「事業主借」という2つの勘定科目を使用します。

  • 事業主貸
  • 事業主借

それぞれの基本事項と使用するケースを確認し、正しい使い分けを目指しましょう。

事業主貸

事業主貸は、事業用の資金をプライベートに使用した場合に用いる勘定科目です。具体的には以下のようなケースで使用します。

  • 事業用のクレジットカードで私用の買い物をした
  • オフィス兼自宅の家賃を事業用口座から支払った
  • 現金売上でプライベートな食事をした
  • 事業用口座から、国民年金保険料や所得税、住民税を納めた

このように、事業用口座や現金売上からプライベートな支払いをしたときには、事業主貸を使用することになります。

なお、国民年金保険料や所得税、住民税などの社会保険料や税金は、事業に必要な経費には含まれません。あくまでも個人の支出のため、事業主貸として仕訳しましょう。

事業主借

事業主借は、プライベートなお金を事業に使用したときに使う勘定科目です。事業のお金をプライベートに使用する事業主貸とは、反対のケースを仕訳する際に用いられます。

事業主借の具体例を、以下で確認しましょう。

  • 個人のクレジットカードで事業用の備品を購入した
  • 個人のお金で、出張にかかる交通費を立て替えた
  • 事業用口座に売上以外の個人的なお金を入金した
  • 個人のお金で事業資金を補てんした

なお、事業主借として使用した個人のお金は、事業主貸との相殺により、確定申告時に精算します。精算の方法は、「期首に必要な事業主勘定と元入金の処理」で詳しく解説します。

事業主貸の仕訳例

ここからは、事業主貸と事業主借の具体的な以下の5つの仕訳例を紹介します。

  1. 事業用の現金を私生活の支出や生活費の補てんに充てたとき
  2. 事業用の普通預金口座からプライベートで必要なお金を引き出したとき
  3. 事業用のクレジットカードで私物を購入したとき
  4. 事務所と自宅を兼ねた物件の家賃を支払ったとき
  5. 個人的な税金や保険を事業用の資金で支払ったとき

それぞれを詳しく見ていきましょう。

ケース1:事業用の現金を生活費の補てんに充てたとき

1つ目の仕訳例は、事業用の現金を生活費の補てんに充てたときです。

例えば、現金で受け取った売上高から、10万円を生活費として使用したとしましょう。その場合の仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
事業主貸 100,000円 現金 100,000円 個人の生活費として支出

資金を現金から支出したため、借方の勘定科目には現金を記載します。摘要には、支出した理由を明記しましょう。

ケース2:事業用の普通預金口座からプライベートで必要なお金を引き出したとき

仕訳例の2つ目は、事業用口座からプライベートで必要なお金を引き出したときです。

例えば、家族との食事代として1万5,000円をおろした場合の仕訳を、以下で確認しましょう。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
事業主貸 15,000円 普通預金 15,000円 家族との食事代として支出

事業用口座から資金を支出しているため、貸方の勘定科目は普通預金となります。

仕訳に会計ソフトを利用する場合は、貸方の補助科目に口座を開設している金融機関名と、口座番号を入力しましょう。

ケース3:事業用のクレジットカードで私物を購入したとき

3つ目の仕訳例は、事業用のクレジットカードで私物を購入したときです。

仮に、事業用クレジットカードで、プライベートで使用する5万円の鞄を購入したとします。その際の仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
事業主貸 50,000円 未払金 50,000円 個人の買い物として50,000円を〇〇カードで支出

クレジットカードで支払った場合には、その時点ではお金が引き落とされないため、貸方の勘定科目は未払金とします。

その後、カード料金の引き落とし日には、口座から料金を支払う仕訳をしましょう。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
未払金 50,000円 普通預金 50,000円 〇〇カード引き落とし

ケース4:事務所と自宅を兼ねた物件の家賃を支払ったとき

仕訳例の4つ目は、事務所と自宅を兼ねた物件の家賃を払ったときです。

月々の家賃が20万円の自宅を事務所としても使用しており、家賃を事業用口座から引き落とす場合は、以下のように仕訳をします。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
事業主貸 140,000円 普通預金 200,000円 自宅兼事務所の家賃
(按分比率:30%)
地代家賃 60,000円

自宅兼事務所として家賃を払っている場合、事業に使用している部分は地代家賃として経費計上し、残りの部分は事業主貸とします。

この方法は、家賃だけでなく水道光熱費についても適用可能です。詳細は、「家賃や水道光熱費は家事按分をする」で解説します。

ケース5:個人的な税金や保険を事業用の資金で支払ったとき

事業主貸の仕訳例の5つ目は、個人的な税金や保険料を、事業用の資金で支払った場合です。

例えば、住民税の納付のために事業用口座から3万円を引き出した際の仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
事業主貸 30,000円 普通預金 30,000円 住民税納付のため支出

税金や保険料は、事業に必要かどうかで、経費になるか事業主貸になるかが変わります。具体例を挙げると、事業で使用している車の自動車保険料や、店舗に掛けている火災保険料は、経費として認められるため、「保険料」として計上しましょう。

事業主借の仕訳例

次に、事業主借の仕訳例を、以下の4つのケースで解説します。

  • 個人のお金を事業用に使用したとき
  • 個人のクレジットカードで事業用の備品を購入したとき
  • 業務で必要な交通費を個人のお金で支払ったとき
  • 売上以外のお金を事業用口座に入金したとき

それぞれを詳しく確認し、不備のない仕訳を目指しましょう。

ケース1:個人のお金を事業用に使用したとき

事業主借の仕訳例の1つ目は、個人のお金を事業用に使用したときです。

仮に、事業資金の不足により5万円を個人の普通預金から補てんした場合の仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 50,000円 事業主借 50,000円 個人の普通預金口座から事業用口座へ入金

ケース2:個人のクレジットカードで事業用の備品を購入したとき

仕訳例の2つ目は、個人のクレジットカードで事業用の備品を購入したときです。

例えば、業務で使用する営業車のガソリン代8,000円を、個人のクレジットカードで支払ったとしましょう。その場合の仕訳は、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
車両費 8,000円 事業主借 8,000円 営業車のガソリン代を、個人のクレジットカードで支払い

クレジットカードで事業主借の支払いを行った場合、クレジットカード利用料の支払日の仕訳は不要です。

事業主貸では、利用料の支払日に未払金を支払う仕訳が必要なため、混同しないようにしましょう。

ケース3:業務で必要な交通費を個人のお金で支払ったとき

3つ目の仕訳例は、業務で必要な交通費を個人のお金で支払うケースです。

仮に、出張費として5万円の支出があったとしましょう。代金を個人の普通預金口座から支払った場合は、以下のように仕訳をします。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
旅費交通費 50,000円 事業主借 50,000円 出張費代を個人の普通預金口座から支出

ケース4:売上以外のお金を事業用口座に入金したとき

事業主借の仕訳例の4つ目は、事業活動で得た以外のお金を事業用口座に入金したときです。

事業資金が不足した場合、個人の普通預金口座から補てんするケースもあるでしょう。仮に、7万円を補てんした場合の仕訳例は、以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金 70,000円 事業主借 70,000円 個人用口座から出金し、事業用口座に入金

なお、事業主借として個人の預金口座から補てんしたお金は、確定申告時に事業主貸と相殺します。そのため、事業主借で仕訳たお金を個人口座に返却する必要ありません。

事業主勘定を利用する際のポイント

ここからは、事業主勘定を仕訳する際に覚えておきたい以下のポイントを解説します。

  • 事業主貸は経費計上できない
  • 税金は種類によって事業主貸と租税公課に分類される
  • 家賃や水道光熱費は家事按分をする
  • 大きすぎる事業主勘定は厳しく見られるおそれがある

それぞれを詳しく確認し、不備のない仕訳を目指しましょう。

事業主貸は経費計上できない

ポイントの1つに、事業主貸に仕訳たものは経費計上できない点が挙げられます。経費計上をしたい支出を記帳する際には、別の勘定科目を使用しましょう。

経費計上できる代表的な勘定科目は、以下のとおりです。

勘定科目 概要 具体例
旅費交通費 業務で使用した交通費
  • 電車賃
  • バス代
  • 出張で必要な宿泊代
  • 出張に関する日当
交際費 取引先との付き合いで必要な費用
  • 取引先との食事代
  • 贈答品代
  • お中元・お歳暮
  • ゴルフコンペ開催の費用
会議費 打ち合わせに必要な費用
  • 会議室の使用料
  • 会議で提供される飲食代
  • 資料作成費用
  • 開催地が遠方の場合の宿泊費
消耗品費 備品や什器に使用する費用
使用可能期間が1年間未満、もしくは取得価額が10万円未満のものが対象
  • 文房具
  • 10万円未満のパソコン
  • 10万円未満のプリンター
  • オフィスで使う椅子
福利厚生費 従業員のために支出した、給与以外の費用
  • 慶弔見舞金
  • 健康診断費用
  • 社員旅行の費用
  • 残業時の食事代
新聞図書費 業務で使用する参考書籍や新聞の購入費用
  • 新聞購読料
  • 官報購入費用
  • データベース使用料
  • 有料サイト購読料
雑費 他の勘定科目に当てはまらない少額の費用
  • 振込手数料
  • クレジットカード年会費
  • 粗大ごみ処分料
  • クリーニング代

経費として認められるにもかかわらず計上が漏れると、税額が増える可能性があります。反対に、経費に該当しない出費を経費として計上すると、経費の水増しによる脱税とみなされるおそれがあります。

支払った費用がどの勘定科目に該当するか迷っている、仕訳に不安があるという方は、税務署窓口で確認すると安心です。

税金は種類によって事業主貸と租税公課に分類される

事業主勘定を考えるうえでのもう1つのポイントには、税金の分類があります。税金の納付を仕訳する際に使われる勘定科目は、以下の2つです。

  • 租税公課:事業を営むうえで必要な税金
  • 事業主貸:社長や社員などの個人的な税金

租税公課としては、たとえば収入印紙や事業用不動産等の固定資産税、不動産取得税、事業用自動車にかかる自動車税などが該当します。これらの税金は、租税公課として事業の経費計上が可能です。

一方、個人にかかる所得税や住民税、相続税、贈与税などは事業主貸に分類され、経費には認められません。

家賃や水道光熱費は家事按分をする

事業用とプライベート用での明確な線引きが難しい支出は、家事按分を行ったうえで、経費計上しましょう。家事按分とは、事業とプライベートを兼ねた支出について、利用した割合で費用をわける処理のことです。

例えば、職場を自宅兼オフィスとしている場合は、家賃や水道光熱費、通信費が家事按分の対象となります。プライベート用の車を、営業や仕事の移動にも使用している場合は、自動車関連費用も家事按分が可能です。

一例を挙げると、毎月の水道光熱費を家事按分する場合、1週間の業務時間を基に計算します。仮に、毎日8時間ずつ5日間働いた場合、按分比率は約24%((8時間×5日)÷(24時間×7日))です。

毎月の水道光熱費が3万円の場合、経費計上できる金額は、7,200円(3万円×24%)と算出できます。また、残額の2万2,800(3万円-7,200円)は事業主貸として仕訳、経費計上はできません。

大きすぎる事業主勘定は厳しく見られるおそれがある

事業主貸と事業主借は、損益計算には関係がないため、金額によって所得や税金額が変わることはありません。しかし、事業主勘定が大きすぎると、以下の理由から、税務署に厳しく見られる恐れがあります。

厳しくチェックされる理由
事業主貸が多い場合
  • 売上の過少申告が疑われるため
  • 経費の水増しが疑われるため
事業主借が多い場合
  • 未申告の収入を疑われるため
  • 相続や贈与などで得た資産の保有を疑われるため

事業主勘定を適正な金額に収めるには、個人事業主であっても、事業用とプライベート用の支出を明確に区別しましょう。

確定申告における事業主勘定の処理方法

青色申告をしている方は、確定申告時に事業主勘定の金額を記載する必要があります。具体的には、青色申告決算書の貸借対照表における事業主貸と事業主借の欄に記入しましょう。

貸借対照表には、事業主貸と事業主借を相殺したうえで、残った金額を記入します。例えば、確定申告時の事業主貸が30万円、事業主借が20万円の場合、貸借対照表の事業主貸欄に10万円(30万円-20万円)と記載してください。

期首に必要な事業主勘定と元入金の処理

次年度を迎えるにあたっては、事業主勘定の期末残高を元入金に組み込み、0円にする処理が必要です。

この処理を実施しない限り、次年度の仕訳を始められません。。確定申告が終了したら、以下の式を活用し、組み込み処理を速やかに進めましょう。

  • 翌期首の元入金の額=元入金の期末残高+事業主借の期末残高-事業主貸の期末残高+青色申告特別控除前の所得金額

仮に、前年度に以下の実績があったとします。

金額
元入金の期末残高 500万円
事業主借期末残高 300万円
事業主貸の期末残高 700万円
青色申告特別控除前の所得金額 300万円

この場合、翌期首の元入金額は400万円と計算できます。前期の実績次第では、計算結果がマイナスになるケースもありますが、その状態で期首を迎えても問題はありません。

事業主貸まとめ

事業主貸は、事業用の資金をプライベートに使用したときに用いる勘定科目です。一方、事業主借は、プライベートなお金を事業用に利用したときに使います。

事業主貸と事業主借は、損益計算には関係ありません。そのため、金額が大きくても、会計上の問題はないでしょう。

しかし、事業勘定が大きすぎると、売上の過少申告や経費の水増しを疑われるケースがあります。トラブルを防ぐには、事業用とプライベートの資金を明確に区別するといった対策が効果的です。

事業主貸と事業主借は、青色申告決算書の貸借対照表に記載する必要があります。また、来期に向けた準備として、元入金への組み込み処理が必要です。

自分自身で確定申告を実施しようと考えている個人事業主の方は、勘定科目や申告の手順などを事前に押さえ、スムーズで不備のない納税を目指しましょう。

このメディアの監修者

元吉 孝子

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
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所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。

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