ファクタリングの仕訳~勘定科目や注意点について解説~
更新日:2025年10月27日

ファクタリングは、売掛金を早期に現金化するための手法として利用されることが多く、銀行融資やビジネスローンなどと異なり負債を増やさず資金繰り改善できるメリットが注目されています。そのため、資金調達スピードを重視する中小企業や個人事業主の間で需要は高まっていますが、ファクタリングを利用する際には、貸借対照表や損益計算書への影響を十分に考慮しながら仕訳処理が必要です。売掛金から未収入金、さらに売掛債権売却損の計上といった複数の勘定科目を使い分けるため、経理担当者は正確な知識が求められます。 ここでは、ファクタリングの基本的な仕組みや仕訳の方法、さらに決算時や税務処理などで注意すべき点について解説します。
目次
ファクタリングの仕組み
ファクタリングは、売掛金を専門の会社へ譲渡または保証してもらうことで、資金化をスピーディーに行う仕組みです。
一般的なファクタリングの流れは、まず企業(あるいは個人事業主)が顧客への商品やサービスを提供し、売掛金が発生します。その後、資金調達を急ぐためにファクタリング会社と契約を結び、売掛金を譲渡し手数料を差し引いた金額を受け取ります。最終的には、売掛先が支払った売掛金をファクタリング会社が受けとる形で契約が完了します。
ファクタリングには主に買取型と保証型があります。買取型では売掛債権をファクタリング会社に売却することで資金を受け取り、貸倒リスクをファクタリング会社が負担します。保証型では、万一の回収不能時に保証が適用される保険の仕組みで、手数料ではなく保証料を支払います。
また、買取型ファクタリングは2社間・3社間方式などの契約形態によっても流れが違います。ただし、いずれの場合もファクタリング会社へ支払う手数料は売掛債権売却損として計上し、取引そのものは消費税の対象外になる点が特徴的です。
参考)ファクタリングとは
通常の売掛金の仕訳
会計処理は現金が入った段階だけを集計する業務ではありません。将来的に入金される売掛金が発生した段階でも、帳簿に売上として計上します。そのため、「売掛金発生時」と「売掛先からの入金時」に仕訳する必要があります。100万円の売掛金が発生した場合を例に解説します。
売掛金が発生したときの仕訳
通常の売掛金処理では、現金が入っていなくても売上が実現した(売掛金を請求できる)段階で勘定科目に入れます。勘定科目はそのまま「売掛金」です。その際、帳簿に記載した段階から売上に消費税が課税されます。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 100万円 | 売上 | 100万円 |
売掛先から入金があったときの仕訳
そして、現金が入金された時点で借方を「普通預金」として、貸方を「売掛金」として記載します。この仕訳により売掛金はプラスマイナスゼロになり、売上と普通預金の金額が最終的に一致します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100万円 | 売掛金 | 100万円 |
ファクタリングを利用したときの仕訳
ファクタリングを利用した場合は、「売掛金発生時」「ファクタリング契約時」「売掛金譲渡代入金時」のタイミングで仕訳します。100万円の売掛金が発生した場合を例に解説します。
売掛金が発生したときの仕訳
売上が発生した段階では通常の会計処理と同様、取引先に請求書を起こした段階で「売掛金」と「売上」を仕訳します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 100万円 | 売上 | 100万円 |
ファクタリング契約をしたときの仕訳
売掛債権の譲渡契約を結んだ段階では売掛金を消して「未収入金」とします。未収入金とは資産を売却し、のちほど売却金額が入金される場合を指しています。この段階では、まだ現金を取得していません。契約を締結し、ファクタリング業者から入金されるまでに使用する勘定科目です。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 未収入金 | 100万円 | 売掛金 | 100万円 |
売掛金の譲渡代金が入金されたときの仕訳
契約後、ファクタリング会社から実際に譲渡代金が入金された段階で仕訳します。この段階における手数料は「売上債権売却損」として計上します。
たとえば手数料が5万円引かれた場合、仕訳は以下表の通りです。ファクタリング業者から入金された95万円を「普通預金」、手数料の5万円を「売掛債権売却損」として仕訳します。この仕訳によって、前項目で入金された「未収入金」がプラスマイナスゼロになります。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 95万円 | 未収入金 | 100万円 |
| 売上債権売却損 | 5万円 | ||
ファクタリング契約と入金が同日だった場合の仕訳
ファクタリングの契約形態には2種類あり、そのうちの2社間ファクタリングは取引先に債権譲渡の通知や承認が必要ないため、即日入金されることがあります。即日入金があった場合、会計処理を「売上金発生時」と「ファクタリング契約と売掛金譲渡代入金時」の2つにまとめることができます。
売掛金が発生した時
売掛金が存在しないと取引が成り立たないため、取引先に請求書を発行する段階で仕訳が必要です。他の取引と同じく、「売掛金」と「売上」を計上します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 100万円 | 売上 | 100万円 |
ファクタリング契約と売掛金の譲渡金の入金時の仕訳
即日入金された場合は、未収入金を勘定科目として決算書類に記載する必要がなくなるため、ファクタリング契約時の処理を省くことができます。以下表の通り、直接「売掛金」に対して、「普通預金」「売上債権売却損」として計上します。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 95万円 | 売掛金 | 100万円 |
| 売上債権売却損 | 5万円 | ||
ファクタリングの仕訳の注意点
以降では、ファクタリングの仕訳に関して注意すべきポイントについて解説します。
手数料は「売掛債権売却損」で仕訳する
ファクタリングは、売掛債権を株や債券のように「金融商品」を売買している取引と同じ扱いです。そのため、売掛譲渡債券において入る予定だった金額より「損が発生した」ため、それを「売掛債権売却損」として仕訳しなければなりません。
一方、ファクタリングと比較されることも多い売掛債権担保融資は「売掛債権を担保にした貸付」になるため、金融機関から融資を受けた場合と同じ「借入金」の項目に計上します。なお、勘定科目に「売掛債権売却損」の項目がない場合は、「雑損失」や「支払手数料」などにしても構いません。
ファクタリング取引に消費税はかからない
ファクタリングで売掛金を譲渡することは「金銭債権などの譲渡」にあたります。そのため非課税取引となり、ファクタリングの手数料に消費税はかかりません。ファクタリング会社は取引金額や手数料に消費税を上乗せして請求できないため、注意しましょう。ただし、ファクタリング会社が売掛金の債権譲渡登記をした費用には消費税がかかるため、支払い後の仕訳が必要です。
参考)ファクタリングの手数料
現金入金までに決算期末をまたぐ場合
ファクタリング契約時から現金入金までに決算期末をまたぐ場合、まだ入金されていないとしてもその売上に税金が課されます。そのため、売上が現金化される前に売上を元に計算した法人税や消費税を払う必要があります。
ファクタリングの仕訳まとめ
ファクタリングは融資とは違う資金調達の手法であるため、会計処理の仕方がわからず、難しく感じるかもしれません。通常の会計処理と仕訳や勘定科目は異なりますが、現金化する前の支払いに「未収入金」を使用することや「売掛債権売却損」の仕訳方法を知っていれば問題なく処理できます。ただし、注意点を理解していなければ、法人税や消費税を多く払ってしまうこともあります。勘定科目を事前に理解して、ファクタリングの会計処理を正しくできるようになりましょう。
このメディアの監修者

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社フリーウェイジャパン |
| 法人番号 | 1011101045361 |
| 事業内容 |
|
| 本社所在地 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階 |
| 所属団体 | 一般社団法人Fintech協会 |
| 顧問弁護士 | AZX総合法律事務所 |







