減価償却で固定資産を費用にする~定額法と定率法~

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固定資産の取得費用を数年間に配分して計上する減価償却。減価償却を用いれば、損益を正しく把握できる、法人税額を抑えられるなどさまざまなメリットがあります。ただし、減価償却の計算方法にはいくつか注意点があります。今回は、減価償却の基礎知識をはじめ、資産取得費用を配分するメリットと注意点、減価償却の会計処理の方法について詳しく解説します。※2021年11月30日に更新

減価償却すると正確に損益を計算できる

減価償却とは、業務に用いる固定資産の取得費用を使用可能な期間で分配分、経費として計上する手続きです。減価償却資産の取得に要した金額を、一度にすべて経費として計上するのではなく、定額法や定率法などで各年分の必要経費として配分することで、毎年の正確な損益を把握できるようになります(定額法と定率法については、後ほど詳しく解説します)。

ただし、固定資産の使用可能期間が1年未満、あるいは取得費用が10万円未満の物は減価償却できません。また、法人だけでなく事業を営む個人事業者についても減価償却します。(所得税法 第四十九条)

減価償却資産とは何か

減価償却できる資産を「減価償却資産」と呼び、該当するのは事業で使われる建物・建物附属設備・機械装置・器具備品・車両運搬具などです。この減価償却資産は、年月の経過等とともに劣化し、その価値が下がる物が対象です。土地や骨董品など、年月の経過によって価値が減少しない資産については減価償却資産に含まれません該当しません。

固定資産の取得費用を一括計上する問題点

長期使用を想定する固定資産の取得費用を、取得時に一括で経費として計上すると、該当する事業年度の利益が大幅に減ってしまい、売り上げと経費のバランスが崩れてしまいます。投資した設備や機械などの固定資産は、壊れて使えなくなるまで利益を生みます。正確な費用を計上するためには、固定資産が使用できる期間にわたって分割して計上する必要があるのです。

例えば、年間200万円の売り上げ(家賃収入)が予想される建物に対して、建築費用5,000万円がかかったとします。この経費を一括で計上してしまうと、その年度は4,800万円の赤字となり、損益のバランスが崩れてしまいます。

減価償却では、経費を一括計上するのではなく、建築費用5,000万円を耐用年数(仮に50年とする)に配分して、毎年の経費を計上します。すると、[200万円-(5,000万円÷50年)=100万円]の黒字となり、毎年の損益を正確に把握できるようになります。このように、実際の財務状況と整合性を取るために、何年かに分割して費用を計上する減価償却が用いられます。

減価償却の仕訳処理の方法

減価償却の対象となる固定資産を費用化する場合には「直接法」と「間接法」という2つの方法があります。詳しくは、別の記事で解説していますので、そちらも参照してみてください。参考)減価償却費の仕訳~直接法と間接法(減価償却累計額)~

減価償却する3つのメリット

減価償却によって固定資産を分割して経費に計上することで、複数のメリットがあります。ここからは、減価償却のメリットを3つ紹介します。

法人税額の負担を減らせる

法人税とは、法人の利益に課税される税金です。購入した固定資産に対して減価償却せず、一括で経費として計上してしまうと、翌期以降は投資した設備から生まれる利益だけが発生します。その結果、法人税の納付額も増加してしまいます。減価償却により、固定資産を購入した翌期以降の利益急増を抑えられるため、法人税の納付額も抑えられます。

減価償却費相当分の現金が手元に残る

減価償却で費用を計上すると、翌期以降における経理上の利益は減るものの、現金の支出は発生しません。このような支出を非現金支出と言います。減価償却費は非現金支出のため、毎年計上した金額分を手元に残せます。

例えば、500万円の設備を5年かけて減価償却した場合、会計上は5年目まで毎年100万円ずつ費用として計上されます。しかし、企業としては設備の取得時に500万円すべて支払っているため、翌期以降の現金の支出はありません。

このように、減価償却に相当する資金が社内に留保される「自己金融効果」が期待できるため、自社の財務状況を良く見せるメリットがあります。

損益を正しく把握できる

減価償却は、費用と利益のバランスを正しく把握するためにも役立ちます。取得した固定資産を一括で経費として計上してしまうと、設備投資費用とその設備が生んだ収益のバランスを把握できません。減価償却で数年間にわたって計上することにより、設備投資をしたことで設備投資をしたことで収益にどのような変化が表れたかを正確に把握できるようになります。

減価償却する際の注意点

減価償却によって経費を計上すれば、節税や損益把握ができるなど、さまざまなメリットがあります。しかし、減価償却する際にはいくつか注意点もあります。ここからは、減価償却をする際の注意点について紹介します。

減価償却資産の対象になる条件を把握する

減価償却ができる固定資産について把握しておく必要があります。減価償却資産にあたる資産とは、業務で使用する資産のうち下記の項目を満たす固定資産が対象です。

▼減価償却の対象となる固定資産の条件

  • 使用可能期間が1年以上
  • 取得費用が10万円以上
  • 年月の経過により価値が減少する資産

また、固定資産には「有形固定資産」と「無形固定資産」があります。有形固定資産とは、物理的な形態を持っていて1年以上使用する事業用資産です。有形固定資産のうち、建物・附属設備・構築物・機械装置・器具備品などは減価償却資産に該当します。

無形固定資産とは、物理的な形態はないが価値を有する事業用資産です。減価償却資産として扱われる資産には、ソフトウェア・商標権・特許権・意匠権などが挙げられます。有形固定資産や無形固定資産以外にも、家畜や樹木といった生物も減価償却資産となります。

減価償却資産の対象外になる資産についても把握する

減価償却資産に該当しない固定資産は、減価償却の対象にはなりません。例えば、100万円以上の美術品や骨董品などは時間が経過しても価値が下がらないため、減価償却資産には該当せず、減価償却できません。

また、建設中の資産や棚卸資産も非減価償却資産のひとつです。建設中の資産は固定資産として計上できず、建物が完成して使用を開始してからでなければ減価償却の対象とならないため注意が必要です。棚卸資産とは、小売業の商品や製造業の原材料などの在庫全般を指します。在庫は売り上げ原価として計上されるため、減価償却の対象とはなりません。

法定耐用年数を基準に計算する

減価償却資産を業務に利用できる耐用年数は税法で定められています(法定耐用年数)。例えば、測定工具の法定耐用年数は5年、事務机のうち金属製は15年、金属製以外の事務机は8年、小型自動車は4年、自転車は2年です。減価償却する際は、法定耐用年数を参考に計算してください。なお、法定耐用年数は国税庁のホームページから確認できます。

少額減価償却資産の特例とは

減価償却には、少額減価償却資産にあたる「10万円以上30万円未満の減価償却費」について、一括で費用計上できるとする特例があります。ただし、特定を適用されるためには、以下の条件を満たす必要があります。

▼少額減価償却資産の適用要件

  • 青色申告をしている個人事業主および中小企業者等であること
  • 1つ当りの取得費用が30万円未満であり、かつ年度内で合計300万円未満であること
  • 確定申告時に、青色申告決算書又は法人税の確定申告書に必要事項を記載していること

この特例を適用すれば、所得を圧縮でき節税につながります。なお、少額減価償却資産の特例は、期間限定で定められた特例です。本来は2020年3月31日期限でしたが、令和2年度税制改正で2022年3月31日期限に延長されています。

減価償却の会計処理の方法

減価償却の会計処理は、「定額法」と「定率法」の2種類があります。それぞれの会計処理の方法を紹介します。なお、平成28年度税制改正により、建物附属設備および構築物の償却方法は「定額法」のみとなったため注意してください。

償却費の額が毎年同額となる「定額法」

定額法とは、減価償却費が毎年均等になるように配分する会計処理の方法です。法定耐用年数の期間で取得費用を配分することにより、毎年同額の減価償却費を計上できます。減価償却費は下記のように計算します。

減価償却費 = 取得費用 × 定額法の償却率

償却費の額が年々減少する「定率法」

定率法とは、最初の年ほど減価償却費が大きく、後になるにつれ減少していく会計処理の方法です。未償却の金額に対して、毎年一定の割合で償却します。具体的な計算方法は下記の通りです。

減価償却費 = 期首未償却残高 × 定率法の償却率

定率法の償却率は、耐用年数に応じて割合が定められています。例えば、法定耐用年数10年の平成24年4月1日以降に取得した減価償却資産には、0.200(20%)をかけます。

※計算方法を変更したいとき

減価償却を計上している途中で減価償却の計算方法を変更したい場合には、法人の場合は変更しようとする事業年度開始の日の前日までに、所轄の税務署長に申請書を提出して承認を受けなければなりません。

定率法における償却保証額と改訂償却率

定率法で会計処理する場合には「償却保証額」と「改定償却率」について把握しておくことが重要です。

定率法では、毎期の未償却残高に償却率をかけ続けるため、償却を終了できません。そのため、ある程度の償却が進んだ段階で、均等に償却する計算方法へと変更する必要があります。そのために設定されている金額が「償却保証額」です。

償却保証額とは、資産の取得費用に耐用年数に応じた保証率をかけた金額です。償却保証額を定めておけば、定率法の償却率をかけ続けるよりも、償却年数を短くできます。ただし、償却保証額を定めたからといって、その額が直接償却額になるわけではありません。

定率法で計算した額が償却保証額を下回ると、その年度から「改定償却率」を使って減価償却をする必要があります。改定償却率とは、定率法による減価償却費が償却保証額を下回った年度以降に適用する償却率です。

改定償却率を用いることにより、償却保証額を下回った年度以降の減価償却費が一定となり、定額法的な償却計算が可能になります。

1円を残して減価償却する備忘価額

2007年度に法改正により、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産については、未償却残高が1円になるまで減価償却ができることとなりました。この1円とは、減価償却した固定資産が残存していることを示す備忘価額です。備忘価額として残した1円は、対象となる減価償却資産を売却または廃棄した時点で帳簿から削除することになります。なお、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産については、従来の償却方法により減価償却し、償却可能限度額(取得価額の95%)まで償却した後、5年間で1円(備忘価額)まで均等償却します。

減価償却の方法や耐用年数を自由に決められる?

減価償却すると節税効果が期待できるため、業績がよい年度には減価償却費を多めに計上したいと考える方もいます。そこで出る疑問が、「減価償却の方法や耐用年数を自由に決められるか」という点です。

独自に決めた計算方法や耐用年数は、税金を申告後に税務調査などがあった場合に認められない恐れがあります。認められなかった場合、再度法定耐用年数を使い、定額法か定率法で計算しなければなりません。修正の手間や追加の税金の発生を防ぐためにも、定額法か定率法で計算し、耐用年数も法定耐用年数を採用することが望ましいといえます。

減価償却を正しく理解して活用しましょう

減価償却すると節税につながり、損益を正確に理解できるメリットがあります。ただし、減価償却の対象とならない固定資産もあり、計算方法にも種類があるため、正しい知識を身に付けておくことが重要です。 減価償却の会計処理をはじめ、定額法・定率法などの計算方法を的確かつスムーズに処理するには、会計ソフトの活用や税理士への相談を検討するのもひとつの手といえるでしょう。

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